BMW G310GS 試乗第3弾
第3弾は、もう一度手稲山のワインディングを上って降りてきます。
慣らし中ですので、大きすぎる負荷は掛けられませんが、少しだけ開けてみて、上の回り方を想像してみました。
また、下りながらのブレーキングテスト等もやってみました。
結論としては、このGS、走らせる人が走らせると、相当に速い!!
ツーリングバイクであると同時にスポーツライディングを楽しめるバイクでした。
*この試乗シリーズは迷走さんがオーサーの『迷走ライダーの眠れぬ日々』とのコラボ企画です。
基本にあるのは、スタビリティ。安定していて、不意の挙動など起こさない。
動きに唐突なところがなく、手ごたえが急変するポイントもないので、常にバイクを信頼していられる。
同時に、積極的に操作を加えていくと、基本特性はそのままに、それを受け入れ始める。
具体的には、
コーナリング時、ただバンクしているだけでも安定性、旋回性は非常に高い。
曲げようとしないのに曲がることはないが、曲げようとすると、驚くほどよく曲がる。
バンク角も驚くほど深く、その深い状態での安心感も大きい。
その安心感に身を委ねて走って行っても、サスの設定やフレーム剛性の設定もあるのだろう、まず破綻することはない。「身を委ねる」ことができるので、ツーリング時に、風景を含むランドスケープを味わえる。
どんな天候、どんな路面、どんな時間でも、道でも、疲れを最小限にしながら走り抜け、走り続けていく、そういう「旅」の道具として、最高の相棒になると思われる。
それだけでも旅バイクとして独特であり、個性的であるのだが、
その先を求めて行った時にその懐の深さが現われる。
バンクした状態からアクセルを開けてトラクションを掛けていくと、リヤを主体としながら、前後輪が完全にバランスして旋回加速を強めていくという、トラクション旋回が非常に楽しい。
しかも、それを強めて行った時にどうなるかというと、
僕のゆきかぜ号のように、さらに内向力を強めるというような芸当はない。
応力が増えた分だけ、徐々にフロントタイヤを外に押しているような感覚が、両輪が完全にバランスしていた中に入り始める。
4輪でいうプッシュアンダーの傾向がライディングで加わってくるのだ。
その時、G310GSは急に旋回半径を大きくしたりしない。
タイヤのストレスに屈曲店がなく、ある所から急にズルッと滑り出すのではないか…という不安感がない。
徐々に、旋回ストレスをためながら、少しずつ起き上がり、両輪で外へ少しずつ、穏やかに逃げ始めるのだ。
これで安全マージンが減ったように感じたなら開けすぎていたアクセルを緩やかに戻して行けばいい。ちょうどいいところまで戻すとまたバランスして安定した定常円旋回に入っていく。
ここでさらに旋回力を高めたいなら、深いところでもグリップ感の豊富なリヤのグリップを生かし、キャンバースラストを生かしながらリヤに荷重をかけ気味にしてタイヤの踏面が路面をややねじるようなトラクションをかけるようにしていけばよい。
言葉にするとめんどくさいようだが、オートレースでの旋回時の過重のかけ方のイメージに近い。
リヤを微妙に外に出し、キャンバースラストに踏面がねじれて生じるコーナリングフォースを加えて旋回していくような感じで、リヤに仕事をさせていくイメージだ。
すると、安全マージンを保ったまま、G310GSは痛快な旋回を始める。そこで少々路面が荒れていても、ドンとショックを与えたまま、長いストロークのあるサスペンションは、しっかり減衰を効かせて姿勢変化を過大に起こさないまま、ライダーに信頼感を返してくれる。
1980年代に、速い使い手のセローにかかると、下りでナナハンがぶち抜かれて全くついていけない……、と言われていた、その伝説は、こういうことだったのか…と、勝手に想像されるくらいだ。
さらにここで勝手な妄想を楽しんでみよう。
この、運動性が高いににもかかわらず、常に一定の手応えを残し、過度のシャープさを与えず、人間の操作のリズムにエンジンや車体のレスポンスを合わせていく…という、このアプローチは、まるで1983年からのヤマハ、YZR500のようだ…ということだ。
そう、人間の感性に馴染み、信頼性の上に、ライダーの積極的なコントロールに忠実に答えようとする「ヤマハハンドリング」である。
BMWのアドベンチャーモデルに試乗して、「ヤマハハンドリング」の匂いを嗅いでしまう…という、80年代からのライテクオタクの妄想をも掻き立てる。そんなバイクなのだ。
もちろん、旅バイクとしての本質は、長距離走行を敢行した時に初めて顔を見せるだろうし、やや荒れ気味の林道を安全なペースでどこまでも走り続けるアドベン能力も、スーパー林道を延々走り続けるような状況で初めて理解できる(テストできる)だろう。
本の入口、もしかして前庭からちょっと眺めただけの試乗だったかもしれない。
だが、それでいいのだ。
試乗なんて、そういうものだ。
オーナーとなり、数知れないカーブ、注ぐ太陽光、叩きつける雨粒、舞い上がる埃、進路を揺るがすような風、ライトの光以外何も見えない闇の中の走行…、そういう二人だけの世界を築き、走り続けることでしか、そのバイクの真の姿は、見ることができないものだから。
それにしても、素晴らしい経験だった。
これだからバイクは面白い。
何と言うか動画を拝見し
返信削除記事を拝読させていただき、
あまりの樹生さんのバイクの素性を読み取る
読解力の凄さに舌を巻いています。
また同時に言葉こそ異なるものの、
G310GSがただのツーリングバイクではなく
スポーツモデルとしても成立している…
と言う点に於いて、
同じ結論に達していることは
驚くと同時にとても嬉しい事でもありました。
さすがです、と言うと
上から目線になってしまうかもですが
本当に感心&感動しました。
私の場合、短時間試乗のため
今回の樹生さんの動画や記事ほど
細かく分析できてはいないのですが…
例えば2次旋回に関してなのですが、
かつて私が2010年に書いた
R1200Rのインプレ内に記載してあるのですが…
『唯一記しておきたい事があるとすれば、
アクセルを開けていった時の
いわゆる二次旋回が弱いと感じました。
ニュートラルではあるのですが、
トラクションを駆けて行った時に
グイクイ曲がっていくような感覚は
やや希薄に思えます。』
https://meisourider.blog.fc2.com/blog-entry-78.html
これ、実はFシリーズの2モデルや
R1200Rの後期型DOHCエンジンを
搭載したモデルに全て共通する感覚です。
なので、たぶんG310GSに同様の
ハンドリングが与えられていると
予想しています。
BMW Motorradの開発陣が
アンチスクワット効果を含め、
強力な2次旋回性を与えることなど、
本来容易いはずです。
それを与えていないのには、
何らかの理由があると考えます。
つまりフロント荷重を与えて
1次旋回で一気に向きを変えるハンドリングや、
2次旋回アクセルを開けてグイグイ曲がる特性を
あえて与えないと言うのは、
フロント、リア、どちらかのタイヤに
極端に仕事をさせることを
厭うているように感じます。
フロント&リアの両輪等分に
荷重を与え両輪共に減っていくような、
そうしたコーナリングや走りを
求められているのかな?とか
思ったりもしています。
いずれにせよ私の戯れ言は
2006年?に初めて購入したBMW Motorrad
F800SからR1200RのOHCエンジンを搭載した前期モデル、
DOHCエンジンを搭載した後期型、
そしてF700GSや通人知人の各R-GSシリーズを
乗らせてもらった長きに渡る?経験や知見から
導き出した特長や傾向、
そしてツーリングモデルに秘められたスポーツ性等、
G310GSの約3時間の試乗で、
ほぼ全て、そして間違いなく
見抜いている事…、
いや本当に凄いです。
勿論、以前から樹生さんの醸す言葉や
紡ぎ出される文章や写真、動画は
全てリスペクトしていましたが、
今回の動画と記事で
さらにそうした気持ちが増しました。
凄過ぎて、うまい表現ができません。
実は樹生さんも既にご存じのように、
今回のコラボ企画は
G310GSの購入を考え迷っている自分に、
バイク仲間として一言、
後押ししてもらいたかったのが本音です。
G310GSの凄さや素性を見抜けず、
残念な動画やインプレも散見され、
それに辟易してたこともあり、
樹生さんであれば間違いなく
G310GSの良さを理解してくれるだろう…、
と言う甘えもありました。
ですが、私の遥か上を行く解像度の高い、
渾身のインプレ動画&記事、
ありがとうございました。
樹生さんのインプレ動画と記事で
1本新たな記事が書けてしまいそうな
気さえしています。
迷走さん、バイクそのものやMOTOGP、GPライダーたち、バイク文化、また、名だたるバイクショップや名メカニックたちに直接触れてきた迷走さんにそこまで褒めていただけるとは、感動で胸が詰まるようです。
削除>フロント、リア、どちらかのタイヤに
>極端に仕事をさせることを
>厭うている
と言う、迷走さんの考えには、はっとさせられました。
ロングスイングアーム、
4軸逆回転クランク、
後傾シリンダー、
フロント、リーディングアクスル
(試乗時には気づかず、写真を見直して気づきました)
ダンパーの効いた前後サス、
それらすべてが、
その特性の為になされている
と考えると、一つ、見えてくるものがあるように思えます。
「G310GSの謎」
私ももう一本、記事を書いてみたくなりました。