BMW G310GS 試乗、第2段をYoutubeチャンネルにUPしました。
上のタイトル、または下の画像から飛べます。
高速道路でもG310GSは十分な走行性能を示してくれました。
*この試乗シリーズは迷走さんがオーサーの『迷走ライダーの眠れぬ日々』とのコラボ企画です。
『BMW G310GS プチ試乗記』をご覧ください。
GSの最高速度は、公称143㎞/h。
昔からBMWの公称最高速度は、瞬間的にその速度に達することができるという意味ではなく、その速度で走り続けることができるという意味でつかわれる。
VTの最高速度は、165km/hとも、170km/h以上とも言われる。
シングルエンジンながら9,250rpmで最高出力を発揮する高回転型GSは、潜在能力としては160km/hは出せる力を持っているはず。
それを143km/hと言っているのは、ギヤ比と、オーバーレヴ防止のリミッターで、143kmで加速をやめるようにセットしているのだと考えられる。
それは、我がMOTOGUZZI V7が、まだまだエンジンには余力充分なのに、各ギヤ7,000rpmでリミッターを効かせてそれ以上出させないのと似ていると推察するのだ。
つまり、日本の高速道路の制限速度、120km/hの巡行は、エンジンパワーとしては余裕。
今回の試乗では全くの新車だったために、上まで回すことはしなかったため、最高速チャレンジはしていない。
しかし、低く小さいながらも非常に優れたウィンドプロテクション性を発揮するスクリーンは、首から下の胴体を完全に無風状態にし、フロントカウルの造形(ライダーからから見るコックピット周りの角のあたりは、初代VTを彷彿とさせる)により、ハンドル操作する両手首から先も、高速では”ほんのり”風が減衰されている。
このカウルの優れたところは、市街地走行や郊外をゆっくり流している時には、「そよ風」が胸のあたりにもちゃんとくるところだ。速度を上げると胴体は無風になる。
振動は確かに来ていた。
しかし、長時間走って見ないと、それが連続高速走行を妨げるものなのか、影響を与えないのかは分からない。
今回の短い(と言っても、破格に長い時間と距離を許してくださった。BMWモトラッド札幌西さんには本当に感謝だ)試乗ではそこまでわからなかった。
高速走行で言うべきだったことを一つ落としていた。
それは、高速走行時の安定性だ。
軽量なバイクは高速走行になるとハンドリングは重くなるものの、どこかふわふわして接地感が希薄になることが多い。
高速でリフトが働くためだ。
高速で走っていると、ヘルメットがなんだか浮いてきて後ろへ持っていかれるような力を感じることと現象的には似ている。
しかし、GSはそれを全く感じなかった。
特徴的なフロントの「クチバシ」のデザインも含め、空力のデザインが秀逸なのではないだろうか。
直進性が強まるだけでなく、リーンが重くなり、しかも、傾くにしたがってその特性が変化することが多く、非常に扱いにくくなる。
MOTOGPでは、ダウンフォースを適切に得るためのボディワークがここ近年の研究テーマだ。
しかし、空力が飛躍的に向上したマシンは、速く走れるようになったが、ライダーに過大な筋力を要求するようになった。多くのライダーがそのままでは腕上がりを起こして、レースディスタンスの間、握力、腕力を維持できなくなり、完走さえままならなくなった。そこで筋膜を切開して筋肉がパンパンに腫れてきても逃げがあるようにするという手術を、ライダーたちは受けるようになった。
まさに恐ろしいことだ。
おっと、話を戻そう、
GSのボディは、確かにダウンフォースを生んでいるようだ。
しかし、そのことに試乗時に気づかないほど、自然なものとなっていた。
気づくべきヒントは、レーンチェンジ時の”重さ”にあったのだろうが、下道で有った安定性の延長に感じられ、ダウンフォースのせいだとは思わなかったのだ。
だから今、書いているのは僕の推察に過ぎない。
しかしもし、この推察が当たっているならば、このマシンはとんでもなく優秀な空力マシンでもある、ということになろう。
そのボディワークをもう一度見た時、そのフォルムは、どこかKTMのマシンにも似たものを感じさせる。(と、言ったら、BMWのエンジニアに失礼か)
GSの中で一番小さいということもあるだろうが、私の視点からすると、一番精悍で一番カッコイイ。
BMWがインドで現地の法人と提携して生産しているこのGSは、
310㏄と、今までのBMWではあり得なかった小排気量であり、
また、日本での販売価格も100万円を切る安さである。
これは、今、世界最大の販売市場であるアジアをメインターゲットとした世界戦略車である。
しかし、「廉価版」という感じを一切させない、
一台のモーターサイクルとしての、BMWらしい真摯な造り込みには、驚嘆せざるを得ないのだ。
(つづく)
樹生さん、おはようございます。
返信削除記事を読んですぐ昨晩のうちに
コメントしたかったのですが、
本日早朝出発のため断念しました。
早速ですが、素晴らしい推察に感嘆しました。
ご存知のように某BS誌では
随分以前から積極的に空力と、
ボディパーツの形状変化による影響を
考察し記事化していましたね。
ただ、自分にとっては関心が薄いもので
高速道路を使用しない、
スピードを出さない、
微妙なハンドリング等の変化が
空力の影響きよるものか看守可能な
感性やセンサーがそもそも自分に無い…
と感じていたからです。
ですが、今回の記事を拝読して
ハタと思い当たることがあります。
4輪の話で恐縮なのですが、
私はルノーのクリオや
プジョー106ラリー、
そしてフィアットのパンダクロスと
欧州の小型MT車ばかり乗り継いで来ました。
バイクと異なりクルマでは
頻繁に高速道路を利用するのですが、
いずれのクルマも100km/h前後から
明確に空力の影響を感じます。
フロントの接地感が明確になり、
ドッシリとした安定感が増すのです。
これ欧州ミニバンでも同様で、
オイル交換時にエンジン下に
まるでスポーツカーのような
整流板?まであって驚いたことがあります。
私が手に入れて来た欧州小型車は
日本円で200万前後、
本国では200万を切る価格帯の
(こうした表現は好きではありませんが…)
大衆車です。
いわば庶民の足です。
少し乱暴ですが、日本では軽自動車に
置き換えても差し支え無いクラスの
クルマたちばかりです。
そんな価格帯・クラスのクルマでも彼ら彼女らが
高速をアクセルベタ踏みでブッ飛んで行けるのは
この安心感があるからに違いありません。
以前から欧州小型車と同様クラスの
様々な日本車に乗る機会がありましたが、
あの特にフロント周りの安定感が増す感じを
不幸にして感じたことは皆無です。
…と話が4輪にズレてますが、
樹生さんご自身も述べてる通り
それが空力によるものかどうかは
まだG310GSで高速を走行した経験がない
私にはわかりかねますが、
樹生さんの推測は
非常に的を射たものであると思います。
BMWのホイールはダメージを受け易いと
言われることがありますが、
スポークのデザインに関しては
ライディングやマシンの剛性バランスのみ
考えてデザインされてるのでは無く、
万が一のクラッシュの際に
衝撃吸収してライダーへのショックを
和らげることまで考えれていると言います。
実は私は歴代BMW各モデルの
ホイールのスポークデザインが
あまり好みではありません。
G310GSも然りです。
ですが、それを意識してあらためて
G310GSのスポークデザインを見ると、
なるほどなぁと納得せざるを得ないのです。
そこまでライダーのことを考えて
バイクを作っているメーカーを、
私は知りません。
そんなメーカーが、しかも地元に
アウトバーンを擁する国が
空力のことを考えずにバイクを設計することなど
あり得ないと思うのです。
そんな訳で樹生さんの推測は
間違いなく当たっていると、
個人的には思います。
今度の記事も新たなG310GSの
能力と魅力に気づかせてくれる、
素晴らしいさで
とても読み応えがありました。
最終的な評価を楽しみにしています。
今日は珍しく電車での移動なので、
朝、新幹線の中でこれを書いています。
迷走さん、確信のない推測でしたが、迷走さんに支持いただくと、ほっとします。ありがとうございます。力を得られた感じです。
削除でも、実際のところは、何度も高速で走って検証しなければわからないところだとは思いますが。
ホイールの話、全く知りませんでしたが、そう言われてみると、確かに一部に強い外力がかかった場合、くの字に曲がったところが受け止めて折れて(歪んで)くれることで、緩衝してくれそうですね。
私がGSについて空力のことを考えたきっかけは、リヤフェンダーというか、シート裏の処理を見たことでした。「圧力だまり」をつくらないように裏側処理をしていたのが(ボルトの頭回りは除きますがー整備しやすいようにだと思いますが)印象的でした。
棒BSS誌、「源さん先生」の空力チューンはドカティ本社の人も見たということですが、BMWも見たのかもしれませんね。もちろん、それとは無縁に独自の研究成果かもしれませんが。
それにしても、今BS誌のような雑誌がないということが、とても寂しく感じます。
素人には絶対に到達できないプロの領域で、圧倒してほしいものなのですが。
私のインプレッションは所詮長年のバイク好きの個人の素人技。
大間違いも含まれているのかもしれませんが、素人だからこその、間違っているかもしれなくても、ああだこうだと推理して楽しむ、そういう楽しみ方もまだ手離したくない気がしています。
出張、お疲れ様です。
風邪などひかれませぬように。