赤井川の道の駅でトウモロコシを買って、僕はゆきかぜと国道393号線を南へ走った。
倶知安町との町境を樺立トンネル(標高約470m/長さ2001m)で越えていく。
風に当たっているうちに、心がほぐれてくる。
倶知安町の市街地には入らず、いつもの裏道を進む。
「農の風景」
手つかずの自然も、圧倒される素晴らしさがあるが、僕の場合、心が落ち着くのは、人の暮らしが自然と融合している「農の風景」だ。
やがて京極町へ入り、小さな市街地を抜けて、脇道に入り、そのまま、森の中の道を進んで望羊の丘へ。
僕の前を先行していたオフロードバイクの人が、国道から同じ脇道に入り、望羊の丘の方向へ走って行った。そう、僕が追走するような形になった。
もう何十回も望羊の丘へ来ているが、こういう風になったのははじめてだ。
望羊の丘も、次第に訪れる人が増えつつあるようだ。
望羊の丘として紹介されているスポットは、道の脇に小屋がある場所で、そこは駐車スペースもある。ただ、小屋には入れないし、トイレもない、自動販売機もない(電気が来ていないから)当然、灯りもない。
そもそも観光地ではないのだ。
それでも、何年前からだろう、以前はなかった『望羊の丘』の大きな木の看板が立てられたりもしていた。
この1.2年、その看板も再びなくなっている。
ここは京極町大富。町営の牧場だったところで、今は牧草地。
つまり、牛などに与える飼料を栽培している広大な畑だ。
ただの草原のように見えても、畑だから立ち入りは絶対にしてはならない。
その牧草地の中を貫く道は、「民間林道」とされているから、通行はできるものの、林の管理や農作業優先の道だと考えなければならない。
あくまで、おじゃましているという意識を忘れないように、通行することが大事な場所だ。
さて、看板からさらに1kmほど進むと、道はさらに丘を上っていく。
そして到着した僕のお気に入りの場所が標高410m。
道がY字路になっていて、その又の少し広くなっている部分に駐輪が可能だ。
尻別岳(1107m)
ゆきかぜを止め、エンジンを切ると、辺り一帯、セミの鳴き声に包まれて、まるで大きな耳鳴りがずっとしているかのようだ。
春には小鳥のさえずりがずっと聞こえ、
秋には虫たちの声がずっと奏でられる。
そして夏の日中にはセミの声が響くのだが、
こんなに大きく、ずっとなり続けているのは、初めてだったかもしれない。
ここまで来ても、陽射しはじりじりと焼くようで、北海道とは思えないほど。
風が動くとやや涼しさを感じるが、セミの声が暑さに油を注いでいる。
逃げ切れやしない。
走って逃げてきたときに、いつも思うことだ。
いくら走っても、どこまで走っても、逃げ切れやしないのだ。
それは、初めてバイクに乗った若い頃から、今まで変わっていないことだし、
若造だった頃から、はっきりと分かっていたことだった。
逃げ切れやしない。
できるのは、せめてひと時、逃走してみることだ。
そして帰っていく。
22の夏も、62の夏も、それは変わらない。変わっていない。
なんだ。
一緒じゃないか。
あの時も、今も、
僕には、モーターサイクルがある。
DT50が
GPz400F-Ⅱが、
ZZR400が、
SRV250が、
GPZ1100が、
ずっと、僕の側にいた。
そして今、
ゆきかぜが隣にいる。
それは、それだけで
十分しあわせなことじゃないか。
(真夏日の逃走 完)
楽しく読まさせていただきました。北海道もそんなに暑いのですね。文面から暑さが伝わってきました(笑)
返信削除こちら関東エリアも猛暑で、日中はとてもバイクに乗る気になれず、涼しさを期待して先日何十年ぶりに夜のツーリングに行ってきました。が、、、涼しかったのは、箱根の上くらいで、道中ずっと暑かったですね。若き日の夏の夜の走りはもっと、快適だったな、と思い出しながら走ってました・・・笑。
spiderさん、今年も関東は猛暑でものすごいですね。
削除北海道はもうお盆で夏は終わりで、あっという間に短い秋に突入です。
関東では8月一杯暑い日が続きそうですね(最近は9月も暑いですね)
夏バテにご注意ください。かくいう私も短い夏なのに、夏バテ気味です…。