三国峠を下りて、糠平湖沿いには、タウシュベツ橋梁跡など、観光スポットが点在し、昔と違って案内看板や駐車場もきれいに整備されていた。
そして、朝早い時間ではあるが、たくさんの車やバイクが停まっていた。
僕はパスする。
糠平湖は、ダムによってできた人造のダム湖だ。
ダムは1955年に完成。発電用のダムで、人造湖として道内3位の面積と道内4位の貯水量を持つ。道東の重要な電力源になっている。
糠平温泉郷から幌鹿峠へと入った。
ヘヤピンが続く幌鹿峠は、樹々が繁って路面には苔が生え、ずるずるに滑った。
慎重に、慎重に、峠を上る。
峠の頂上を越えると、路面の苔は消え、乾いたアスファルトが木陰から顔を出す。
快調に、しかし、気をつけてゆっくり下っていく。
やがて然別湖が始まると、道は1車線の狭い、車の離合も難しい道幅となる。
国立公園内にある道道だから、簡単に崖を崩し、湖畔を固めて道幅を広げるわけにはいかない。
狭い狭い道だが、僕らには、これくらいがちょうどいいように感じられた。
温泉郷は、やはり賑わっていた。
今年は道内の観光地はどこも賑わっている感じがする。
これが円安、外国人観光客増加の影響(恩恵?)なのか。
僕はやはりここもパス。
ナイタイ高原へと向かった。
道東では、晴れて遠くまで見晴らせると、大地の向こうが青紫っぽく見える。
これは十勝平野と、開陽台で起こることで、どうしてかは、いろいろ可能性は考えるものの、本当のところはわからない。
麓からナイタイ高原テラスまで、快適な2車線の道で7㎞。
牧場は全体を見渡すことが不可能なほど広い。
今は立派な半地下の「ナイタイテラス」と称したレストランもできて、景観を守りつつも大規模観光地になってきている。
これも、25年前は、売店もあったし、広い駐車場もあったが、知る人ぞ知るスポットという感じだった。
北海道各地の洗練化、観光地化は、着実に、全道的に進んでいる。
それはもちろん、道路の改善も同時になされ、かつて難所と言われていたところが、橋やトンネルで快適に、迅速に、移動、到達できるようになってきていることが大きく関係もしている。
そして、それは我々ライダーが観光客化してきていることをも意味している。
昔から見れば、バイクと見ると無法者だと思われたり、暴走族と思われたりすることも減った。
同時に、バイクツーリストに対して、「つらい旅でしょう、大変ですね」と好意的な声を掛けたり視線を向けてくれる人もなくなった。
充実した装備で、キャンプは貧乏だからではなく、敢えての楽しみで。
豪華なバイクと豪華ないでたちが4人以上一緒にいたら、たいていの場合は迷惑省みず、爆音立ててぶっ飛ばしていく中年ライダーたち。
愛車は自慢するもので、精一杯労わり、慈しむ物ではなくなってきている。
すべてのライダーがそうなったわけではない。
すべての観光客が表面的に絶景をカメラに収めてSNSに上げ、バズることしか考えているわけではないように。
しかし、大きなものを得たと同時に、同じだけのものを失いつつある気持ちも、僕はしてしまう。
60代の僕に、20代の頃の旅は、もう、できないとわかっているのだが。
(つづく)
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