2024年10月10日

G310GSのハンドリングについて考える(2)

BMWG310 GSを試乗して驚いたのは、コーナリング中にギャップを越えても、フロントブレーキかけても進路が乱れない安定性の高さ。
にもかかわらず、傾けただけで非常によく「曲がる」という驚きのコーナリング能力の高さだった。
安定性を重視していくと、ハンドリングはダルになり、逆に旋回性を上げていくと、ハンドリングは敏感になっていくというが通常だと思うのだが、(もちろん、最近はこの2つを同時に満たすバイクも増えてきているのだが、それにしても、)まさに驚くべき(もう驚くを3回言ってしまった)旋回能力の高さだった。
なぜ、こんなことが可能なのか。


(筆者はバイク好きなただの一素人にすぎません。書いていることは単なる素人の横好きな推量であり、当たっている保証はありません。お読みになる方は決して鵜呑みにすることなく、ご自分で判断なさってください。)

まず、ホイールベースは1425㎜と、このクラスのアドベンチャーモデル、スズキのVストローム250の1420㎜とほぼ同じ。
しかし、例えばヤマハのセロー250の1360㎜よりかなり長いし、本田のCBR250Rの1380と比べてもやはり長い。
背の高いアドベンチャータイプとして、ホイールベースも長く取り、縦横のバランスをとるとともに、大柄な車体で、動きに安定性を出しているのが分かる。
おそらく上の図の緑の丸か、もう少し上あたりがエンジンの重心位置になるかと思うのだが、前後輪の接地面との間に、ほぼ2等辺三角形を描くようになっている。
(黄色の丸はクランク軸位置かと思って書いたが、もう少し後ろのようだ。)
まずはバランスよく、両輪で曲がっていくようなフィーリングを得られる車体と言えるのではないだろうか。


スイングアームが長い、ということは前回書いた。
スイングアームが長いと、アクセルオンオフでのリヤの姿勢変化に比較的影響を与えなくなる。(全く与えないわけではない)
フロントフォークのキャスター角は、「63.3°」と公称されている。よく見る言い方にすると、26度57分…約27度のキャスター角である。
Vストロームのキャスター角は25度10分、セロー250のキャスター角は26度40分。
CBR250Rは25度30分で、この4車の中では一番寝ている。
一般的に言えば、キャスターが建つほどハンドリングはクイックになっていくから、これもかなり安定性よりのものだと言えるだろう。

しかし、下のフロントフォークの写真から分かるように、Fホイールのアクスルシャフトは、Fフォークの軸線よりも前に出されている。つまりリーディングアクスルなのだ。


リーディングアクスルにすると、トレールが減る。
もしもFフォークの軸上にアクスルがあった場合は、下の写真のA-Cがトレールにあたるわけだが、リーディングアクスルの実車ではB-Cがトレールの値となり、A-B分だけトレールが短くなっている。
トレール値は98 mm。CBR250Rと同値である。
Vストロームは100mm、セロー250は105mmである。


トレール値は、もしゼロだと、フロントタイヤは何かの拍子にどっちに向くか分からなくなり、乗れたものではない…どころか、押し歩くのも不可能だろう。
逆に大きすぎると、車体が曲がってから後からついて舵角がようやくつき始める感じで、ハンドリングレスポンスが非常に鈍くなる。(厳密にはそうではないのだが、大雑把に言えばそうだ)

G310GSは、大き目に与えたキャスター角でハンドリングに安定性を加えておき、トレールを短くすることで少しの軽快さを加えた…というか、ハンドリングがダルになりすぎないようにしているのだと思う。


そして前後ともコシのあるサスペンション。減衰力をやや強めにして、急速な姿勢変化を抑制し、安定した中で、ゆっくり大きく動くことに関しては、それを妨げない--つまり、乗り心地を悪くしない--そのバランスを作り出しているのだと思う。

その場合、ライダーをどこに座らせるかも、マシンのバランスをとるうえで非常に重要になる。


アドベンチャータイプであるG310GSは、シートにも前後にゆとりのある設計にしているが、その形状やシートのクッション性などから、自然と「ある位置」へとシッティングポジションが決まるように作られている。
上の写真はその位置に腰を据えているが、リヤシートのとの段差が見た目よりも鋭角に立ち上がっており、そこでヒップをホールドした走りが気持ちよくポジションとしても巡航時は最も自然につくられているのだ。



僕の”ゆきかぜ”、MOTOGUZZIV7(2013)のシートは、見た通り、前気味から後ろの段差に当たるまで、場合によっては段差に半分かかるくらいまで、前後にシッティングポジションが取れるようになっており、しかもその座る位置でハンドリング特性を変えて楽しめるというライディングの楽しさと工夫に満ちた設計になっている。

対してBMWのG310GSでは、設計者が意図したところにライダーを座らせ、理想的な前後の過重バランスをライダー込みで実現し、どこまでもニュートラルで素直なハンドリングを提供しようとしているように思える。

さて、次回はロール軸の設計について、また素人なりの妄想を進めてみたいと思う。
(次回で一応の最終回です。)

(筆者はバイク好きなただの一素人にすぎません。書いていることは単なる素人の横好きな推量であり、当たっている保証はありません。お読みになる方は決して鵜呑みにすることなく、ご自分で判断なさってください。)

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