注意:今回の考察には、自分の感覚を表現するために四苦八苦したものの、理論的にはめちゃくちゃな部分が(すべてではないものの)多く含まれています。あくまで一個人のライディング体感を解釈、表現しようとして妄想しているだけ、と言う前提でお読みください。
BMW G310GSの、徹底した安定感をベースとしながらの非常に高いコーナリング性能。
フロント19インチのホイール径も関係しているだろうが、個々の数値もそうだが、すべてが関連し、統合されて、安定性をベースとするジオメトリーとなっている。
それは、ライダーの着座位置まで固定するかのようなところにまで及んでいる。
おそらく、ヨー運動の中心が開けても閉じても極端に変わらないように設計されているのだ。
リフトアップやダウンを抑えたロングスイングアーム、フロントのやや強めのダンパー、
重心位置(勝手に想像しただけ)と前後輪の位置関係。
すべての要素が、「中庸」というか、極端な前輪荷重や後輪荷重を招かないように作られているように感じる。
下の図は、これも勝手に、G310GSのロール軸を考えてみたものだ。
今はなきバイク雑誌『バイカーズステーション』誌では、ホンダのOBエンジニアである2名を招いて、バイクの車体の解析記事や基本的改善のセッティングの記事を精力的に作っていた。
赤のラインは、ホンダの「仮想ロールセンター」。これはNSR500や、RC30、VFR750F(Ⅲ型)などの設計責任者を歴任してきた本多和郎氏が語ったもので、リアタイヤの接地点とステアリングヘッドパイプ下端中心を結ぶ線をバイクが傾いていく時の動的なロール軸と考える、というもの。
緑のラインが1980年代の『ライダースクラブ』で当時編集長の根本健氏がバイクの動きの解説の中で言っていたもの。リアタイヤの接地点からエンジンのクランク軸近辺を通り(横置きクランクの場合)、フロントフォークと直交するラインをロール軸としていた。
バイクのトラクションがどのように車体を前進させるかを考えてみると、リヤタイヤの駆動力はリヤホイールのアクスルからスイングアームを押す形で車体に伝えられ、スイングアームピボットからフレームを押すという順番でいくはずだが、
ライディングしている感覚で言えば、リヤタイヤが路面を蹴り、それが緑の軸を伝ってフロントまで伝わっている…という感覚に近い。(これが錯覚だとしても)
そうすると、力の伝わるベクトルを表す緑のラインと、フロントフォークが直交する意味も分かる。そうでないと、ハンドリングがニュートラルにならないと考えられるからだ。
この、緑のラインでロール軸を考えた場合、ステップとBMWが設定していただろう着座位置を結んでみると、ロール軸上から直交するラインで結ぶことができる。
おそらく、フレームのねじれ中心もライダーのお尻、膝、足首の作る三角形の中に設計されているのではないだろうか。
リヤのスイングアームも縦方向には強い剛性が与えられていたのに対して、横方向は薄目で(といっても普通の暑さだが、縦方向と比べると薄い…)ここでも横方向の適度なねじれが設計されていることが想像される。
剛性を保ちながらも、微細に横方向にはライダーを中心としてたわみながら旋回するG310GSは、旋回にストレスをほとんど感じさせないように設計されていると思われた。
つまり、旋回時のヨー中心が車体のセンター近くにあり、これが前後どちらかのタイヤを積極的に使うコーナリングをさせず、常に両輪がバランスしてニュートラルに旋回する特性をつくっているのではないか…と考えたのである。
ここから下の考察はさらに理論的にめちゃくちゃである。
ただ、妄想してみたかっただけ…ということでお許しいただきたい。
トラクションを掛けて自分の過重がリヤに移る感じの時、普通のライディングポジションでライダーの体重がそのままリアタイヤの接地点方向へ向かうかのようにも感じられるし、(これも実際に加速度が高くなると上体を伏せる等の必要が出てくるので、一概には言えない…というか、乱暴な推測だ。)(ただ、そんな感じがする…というだけだ)
ブレーキング時には、リヤの接地点を円の中心としてロール軸のラインを半径として考えたとき、ライダーの荷重が徐々に同心円状にバイクにかかっていくように感じられたのだった。
例えばニーグリップを強くしめて上体を支えようとすれば、膝方向へほぼ水平に前、やや斜め下へ体重がかかっているように感じ、
気を抜いて腕で上体を支えようとすれば、やはり同心円状のラインの接線方向へ腕から体重がかかっていくように感じられた。
↑ここも理論的にはめちゃくちゃです。「そう感じた」、というだけです。(感じたことは本当です。)
ライダーの逆操舵多様に備えて(…かなと感じられたが…)太い倒立型フロントフォークをおごるなど、フロント周りで『ヨレ感』を感じさせず、荷重を広く受け入れるようにした上で、伸び、圧ともにダンパーをやや強めにし、急激な姿勢変化を徹底的に嫌って、安定させる……そういう手法で仕上げられたのではないか……とも感じられた。
僕のMOTOGUZI V7(2013)は、着座位置によって旋回の特性を変えることができるが、
特にまだ余裕のある速度(低い速度域)でのフルトラクション旋回を試みるときにライダーの体重をリアタイヤの接地点に思い切り掛けるようにしてみると、リヤの接地点がヨー運動の中心でその前方、車体全体が円弧を描いて回転していくようなそんな感覚を味わえる。
もちろん、これは極端な場合で、実際にヨー中心として感じるのは、もう少し前方だが、それにしても車体センターからみれば後方へ移動している。
これが、MOTOGUZZIV7の二次旋回と通常呼ばれているアクセルオンでのぐいぐい曲がる旋回性を楽しいものにしているのだが、BMW G310GSは、その醍醐味よりも、安定した姿勢の中でアクセルを開けたり閉めたりしての路面を蹴る感覚を味わわせようとしているように感じられた。
安定していて、グリップ感が豊かで信じられるから、「もうひと寝かし」が安全にできる。
これはV7では少しセンシティブな領域だ。
豊かなストローク量は確保しつつも、強めのダンピングで緩やかな姿勢変化とし、ローリング方向は絶妙な配置で軽快で、かつ、フロント19インチタイヤの慣性や、車体全体の大きさなどから神経質さのない動きを見せ、いつでも同じ、信頼できる手ごたえをライダーに返そうとしていた。
この安心感をベースに、ライダーは路面と、風景と、自分の心との相関で、思い切り走りを組み立てて言ってよい。
普通に乗っていれば穏やかで分かりやすい特性のバイク。
積極的に扱うと、その安定性に頼りながら、そのおかげで思い切ったライディングが可能となり、結果としてのパフォーマンスは相当に高いものを発揮する。
そうしたキャラクターだと言えると思う。
そう1980年代、GSがパリダカで優勝し、K100が登場した頃の、あのBMWの性格そのままなのだ。
その意味では一見ロバのように見えて、いざという時にはカモシカのように急激に方向転換しつつジャンプできるような(実際にはそこまでではないけれど)、鋭い切れ味を内に秘めたV7とは、性格は大きく異なる。
「アドベンチャーモデルとネオクラシックネイキッドを比べて何言ってんの?当たり前だろ?」という声も聞こえてきそうだが、
アドベンチャーモデルとネイキッドの違いという「カテゴリー」の違いとは別の次元の「設計思想」の話なのだ。
それにしても、今回のBMWの試乗は強烈な印象だった。
実は、少し前に試乗したトライアンフのボンネビルT120の時も、強い個性を感じた。
また、昨秋の試乗でのMOTOGUZZIの現行V7, 850TT, V100Mannderroでは、やはり各社に強烈な個性を感じた。
対して、昨秋試乗したカワサキのNinja1000SXと、Z900RSは、非常によくできたバイク、素晴らしい完成度を感じ、かつてのカワサキのような強い個性は感じなかった。
これをどう考えたらいいのだろう…。
カワサキの4発で育った僕としては、ちょっととまどっているところなのだ。
樹生さん、G310GSのハンドリングについて
返信削除図解入りの非常にためになる考察、
お疲れ様でした&ありがとうございます。
拙ログにはまだポストしていないのですが、
9月12日から書きかけの記事のタイトルが…
”BMW G310GS ハンドリングの秘密を探る”で
用意してある画像が…
https://blog-imgs-172.fc2.com/m/e/i/meisourider/20180221_095a.jpg
https://blog-imgs-172.fc2.com/m/e/i/meisourider/20240829_g310gs.jpg
こんな感じなので…
不思議なシンクロニシティを感じつつ
ニヤニヤしながら拝読させていただきました。
最も私の記事はライダーが介在しない
マシンのみで考えたBMW開発陣の
設計意図を読み解く…と言うと大げさですが
樹生さん流に言うと妄想を展開したものですが、
まとめ切れずに放置してあります。
ところでG310GSのハンドリングは
R1200RやF700GSやF800S等、
これまで私が経験して来た
BMW各モデルに共通する傾向です。
ところで、初めて走るルートの
ブラインドコーナーに進入し
コーナーリング=旋回を開始してみたら
思った以上に奥の方でRがキツクなっていた
…と言うような状況に遭遇した時、
CT125ハンターカブでさえ
リアにトラクションを駆けたり
内足への荷重を増やしてやると
明確に二次旋回力が高まります。
それはバイクにのる醍醐味でもありますよね。
実は樹生さんや私自身が記事を
書きかけているこうしたバイクの構造から
ハンドリングを読み解くのとは、
また別の視点からここのところ
ずっと頭を離れないでいることがあります。
どうしてBMWの開発陣は
総じてこうしたハンドリングの
マシンづくりをするのだろう?
と言う疑問です。
また同時に私自身、リアタイヤへ
明確な駆動を与えて2次旋回が高まるのを
バイクに乗ることの醍醐味とまで
考えているのに、
それが明確に無いBMW車のハンドリングや
乗り味に魅了されているのだろう?
と言うこをしきりと考えています。
先ほどの初めて走るルートの
ブラインドコーナーで見えてなかった
奥の曲率が深いコーナーなど、
何度BMW Motorradでクリアしたかしれません。
その時、どう走っていたのかなと
自身にも問いかけながら
日々G310GSで走っています。
何故なら奥で曲がり込んでいるコーナーで、
バンク角を増やしてクリアした…
クリアする印象や記憶が自分に無いからです。
ツーリングで遭遇するコーナーでさえ、
立ち上がり時にはマシンを積極的に起こしていく、
次のコーナーやセンターをはみ出して来る対向車に備え
ラインの自由度を残しておくのがセオリーで、
コーナー出口の曲率がタイトでも
マシンをそこでさらに寝かすのは悪手だと
個人的には考えるからです。
そう言う走りをそもそも好まない自分が
BMWに乗っていて困ったことが無いのは、
どうしてなんだろう…と自身の記憶を探りながら
G310GSを走らせています。
そうすると、あまりに当たり前過ぎて
気づかなかったことが見えて来ました。
樹生さんはとっくにお気づきの通り、
2次旋回の高まりこそないものの、
普通に良く曲がるマシンなのだと言う
当たり前のことに、
本日ようやく気づくに至りました。
CT125ハンターカブのノーマルFサスが
どうしようも無いので、
コーナー進入時にリアブレーキのみしか使わないで、
ピッチング方向の動きが出ないように
工夫していたこともあり、
最近、めちゃくちゃ
リアブレーキ使用頻度が高まっています。
R1200Rのころからそうなのですが、
フロントディスクをいじるなら、
リアブレーキのディスク厚を増やしたり、
ブレーキのコントロール性をあげる方が感心があります。
あ…すみません。
話の論点がズレて来てしまいました。
要は減速時にしろ、
立ち上がり時にしろ、
減速急激なGをフロントにかけたり
立ち上がり時にリアにトラクションを与えたり、
積極的なスポーツライディングを楽しむなら
全然有りな話なのですが、
バイクに余計なモーションを極力与えず
淡々とロングツーリングをこなすには、
BMW のこうしたハンドリングが
やはり大正解なのではないかと、
くどくど述べた割には
至極当たり前の結論に達してしまったような訳です。
ともかく、もう少しG310GSで走り込み、
対話を重ねて最終的な結論を出したいと
考えています。
G310GS、OEMタイヤがめちゃいいですね。
ハンドリングと相まって不安感が全くありません。
細め?のタイヤサイズ含めて
非常に気に入っています。
とりとめとまとまりの無い
長文コメントで申し訳ありません。
いつもの事ですが、乱筆乱
お許しください。
迷走さん、コメントありがとうございます。
削除写真拝見しました。同じようなことを、別々に考えていたのですね。
「普通によく曲がるマシン」…言ってしまえば身も蓋もないようでありながらこれに尽きるのかもしれません。とにかく「よく曲がる」のに驚いて試乗の前半はコーナリングの度に素っ頓狂な声を上げてしまうほどでした。普通に走っている限り、フロントから曲がらなくなっていくような感じが全くなく、両輪でバランスしたままぐいぐい曲がり続けるその感覚。特性に屈曲点がないので怖さはなく、ただただよく曲がる。すごい特性だなと思いました。やはり、すべてのBMWの低通する特性なのですね。よほどそれを狙って実走テストを繰り返しながら仕上げて行かないと、こうはならない…ような感じを、受けていました。
うーむ、BMWおそるべし。……です。