2014年3月9日

「3C」について。

今日、和歌山利宏氏のDVD『コーナリングを科学する』を改めてみてみた。
和歌山氏のライディングは本当に美しい。
さて、その中で和歌山氏がDVDの最後の方で大切だと言っていたのが、「3C」だった。


和歌山氏は話すのはあまり上手ではないけれども、文章はとても上手い。
このDVD、和歌山氏の2軸理論(後に並足ライディングとして発展・整理される)が説明された、
画期的なDVDなのだが、和歌山氏自身、何十年もやってきた1軸の動きから2軸に転向したばかりなので、時々説明がついていってなかったりする。
それもまた、和歌山氏の人のよさというか、誠実にライディングを求める姿勢に非常に共感してしまって、DVDの欠点とは思えないのだった。
もっと予算と時間がとれて、例えば昔ライダースクラブビデオが1万2千円で売ったように(そしてその価値はあった。何と言っても、当時そんなライディングビデオはなかったのだから)、もっと高額になっても本格的に作ったなら、DVDのライディング教科書と言えるほどの内容になったろうに…とも思うが、それはしょうがないことだと思う。

さて、その中で和歌山氏がDVDの最後の方で大切だと言っていたのが、「3C」だった。
3Cとは、

 ☆ Confidence(自信) 

 ☆ Comfort(快適)

 ☆ Concentration(集中)

「自信を持って、快適に、集中して走る。」…それが大切だと言う。

本当にそうだと思う。

一昨年だったか、もっと前だったか、空自のブルーインパルスの訓練風景を特集したTV番組を見たことがあった、たぶんNHKだったと思う。
実際に飛行中の訓練状況にカメラとマイクが入り、宿舎でのものも流れていた。
ほんの一瞬のミスで飛行機が接触したり、墜落したりしたら、大惨事になる。
決してミスの許されない中で、師匠と弟子の1対1の訓練が、それが映画などと全然違って驚いた。
見たこともないほど非常に厳しい訓練なのだが、それは「訓練内容」であって、師匠の言葉遣いや態度は、とてもジェントルなのだ。弟子も、猛烈に緊張しているのだろうが、決して萎縮していない。萎縮するとパフォーマンスが落ちてしまう。わずかのパフォーマンスの低下も許さない、許されない、そんな極限の厳しさの中では、☆ Confidence(自信)、☆ Comfort(快適)、☆ Concentration(集中)を最大に保持することが必須なのだ。
だから、過剰なものは何もない。
師匠は飛行しながら、必要な指示を、わかりやすく、的確に、短く伝える。決して怒鳴ったり、けなしたりしない。そんな夾雑物を持ち込めるほど、ブルーインパルスの現場は「ゆるく」はないのだった。二人の会話はごく普通に見える。しかし、それは無駄をそぎ落とし、自信と快適と集中を最大限に保持するためのものだったのだ。
本当の厳しさとはこういうものかと、驚嘆した。

我々が公道上でバイクを走らせるとき、通常はそこまで厳しくしなくても、交通ルールがあり、みながそれに従い、速度も相応に抑えていれば、安全はたいていの場合は保持できる。
しかし、オートバイで走ることにはいつも転倒の可能性が付いて回っているし、時速40kmを超えれば、コンクリートの壁に正面から激突すれば死亡する確立も高い。
そんな危険な状況の中で、呼吸が止まるほど攻めて走るのは、自殺行為だ。
それは自分の状況を理解できない「甘さ」であり、その甘さは本当の速さの対極にあって、成長を妨げるものだ。
本人は必死で頑張っているつもりだから、それが「甘さ」「ゆるみ」であることに気付きにくい。
しかし、自信を保持し、気持ちよさを保持し、最大限に集中して走る状況をいかに作れるか、ということが、死がいつもどこかで自分を見ているバイクライディングにおいては、非常に重要なのだ。
そのことが分からないうちは、本当には速く走れない。
バイクに乗せてもらって運にすべてをゆだねて命拾いを繰り返しているだけの、おろかな行為をしているに過ぎない。

同様のことは、柏秀樹氏のライディング論にも見られるし、『ライダースクラブ』今月号(2014年4月号)付録のDVDの中で宮城光氏も、注意すると同じことを言っているのが聞き取れる。

反対に、マインドコントロールや洗脳は、まず、合宿などで状況的にこの3Cを奪い、猛烈に不安にさせておいて、唯一の救いとして「教義」や「法則」や「真理」を注入する。
それらに共通するのは、その3Cを奪いに来るまでは、気持ち悪いくらい「好意的」に「笑顔」ですり寄ってくることだ。何事も過剰には気を付けた方がよい。

人が物を買うのは、何か満たされないものがあり、それが買うことによって満たされると信じられるときが多い。
だから、売り手は買い手の「不安」や「焦り」を引き出そうとする。
「数量限定」や「あと残り5つです、お急ぎください!」などもそうだ。
それは商売上のことだからやむを得ないにしても、あまり過剰にその手を使う売り手には気を付けた方がいい。同じように、あまりに客をちやほやする、「お客様」扱いする売り手も気を付けるべきだ。

おっと、話が脱線してしまったが、

 ☆ Confidence(自信) 

 ☆ Comfort(快適)

 ☆ Concentration(集中)

命の掛かっているバイクライディングでは、絶対に必要なものだ。
いつでもそれを保持するのは難しいものだが、この3Cから遠ざかるほどに危険度は増していくということは、覚えておいた方がいいと思った。

9 件のコメント:

  1. 勉強になりましたm(__)m

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    1. 竹さん、こんにちは。お久しぶりです。
      今日、たまたま見直したDVDでしたが、言われている3C、バイクライディングに限らず、何事でもそうだな…と、改めて思いました。
      無理せず、できるだけ3C状態に近いところに自分を置いておけるように、気をつけ、自分自身配慮して行きたいと思いました。
      それにしても、春はまだまだ遠いですね。われらの北海道は…。
      仕事は年度末の追い込みに入りましたが、気持ちはできるだけゆっくりと春を待てたらいいなと思います。

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  2. こんにちは、樹生さん。

    なるほど、3Cですか・・・
    cnfidence、特にこの言葉は考えさせられました。
    車体のコンディション、ライダーの技量とその時のメンタル。
    これらすべての把握無くしては自信は得られませんから。

    和歌山さんの常足(なみあし)走法、試しています。
    ブレーキリリースからのターンイン、内足のステップワーク、内足の一瞬の内旋による「タメ」・・・
    これにより遠心力が抜重されてステアが更に内側へ切れてゆく・・・

    やってるつもりですが僕の場合、なんだか結果的に「当て舵」打ってるのと一緒じゃ・・・

    3Cを忘れず、ぼちぼちやってくしかありませんねw

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    1. ソロさん、こんにちは。
      どんなに下手でも、初心者でも、「自信」は必要で、それを育てるのが指導者の役割…というよりも、それをつぶさないのが指導者というものだと、そう言われているようです。それは、一見厳しく見える指導よりも、ずっと厳しいものですね、学び手にとっても指導者にとっても。「自分は厳しい」と勘違いしている指導者は、自分自身にゆるゆるで学び手を下手に罵倒しているだけの人も、残念ながらかなり多くいると思います。
      赤ちゃんが生きること、そのこと自体が非常に厳しいものですが、赤ちゃんはまた、よく泣くのと同じくらいよく笑います。今、現実を精一杯生きて、今を心から楽しんでいるからです。
      バイクライディングにおける厳しさも速さも、同じものだと私は考えています。(「競技」としてのレースでは、また違う要素も大きいと思いますが、本当の根っこは同じはずだと思います。)

      常足走法、されているのですね、あれ、なかなか難しくて、コーナーも速度も状況もひとつとして同じものはないので、常に試しつつ、試行錯誤の中で少しずつ「実感」を積み上げていくしかない…と私も思います。
      難しくて、でも毎回のチャレンジが楽しい!次のコーナーが待ち遠しい。
      ライディングを楽しみつつ、生きていることをかみしめつつ、うきうきしつつ、走っていきたいと思います。

      私も3C、出来るだけ忘れずにいたいと思います。

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  3. 近年のバイクは限界性能 ことさら安定性が高く、乗り手が意識しなくても恐ろしく速く走れてしまう。
    ゆえに限界点を高めた走り、高める乗り方を、「しなくても」済んでしまう。
    ここに大事故への布石がある。

    限界なんてどうでもいい。速さも関係ない。
    自分のコントロール下で思いのまま。バイクとの一体感の中で。
    公道で、「身の丈」の走りを、いつまでも楽しみたいです。

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    1. そう言う意味では、「Control」は如何でしょうか?4つ目の「C」。www

      特に極低速。信号で止まろうとして、あと2秒で青になるとき。
      一本橋の応用編。(←そもそも教習所での「基本」は応用することで意味を成す)

      また、中速域でも十分な安定性で思い通りにコーナーをトレースできると、気持ち良いですよね!

      バイクをコントロールする。コントロールできるようになってきた。そんな感覚は、
      バイクに乗る、バイクと共に生きる醍醐味のひとつだと思います。

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    2. tkjさん、こんにちは。ありがとうございます。
      「昔の事故は転倒してのものが多かったが、最近の事故は曲がりきせずに飛び出してのものが多い」とどこかで読んだ記憶があります。
      ABSも進化し、トラクションコントロールも普及し始め、バイクの性能としての安全性は高まってきていますが、それは従来の運転ペースであったら安全マージンが増えるということで、それを前提に速度が上がると、限界を超えた時の運動エネルギーが大きくなっていて、いきなり現実の「速度」に投げ出されることになります。

      3つのCを頭と心に、そして4つめのC=Controlを具現化させて、安全に楽しく走りたいです。

      バイクを自分の意志の下に。あらゆる状況下において、自分でコントロールしている実感を大きく持って走る。
      tkjさんのおっしゃるとおり、醍醐味のひとつだと思います。
      バイクライディンは、本当に楽しい。できればその楽しさを手離さずに生きていきたいと思います。

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  4. 樹生さん こんにちは
    4Cですか?私もよく信号手前で一本橋走行やってます。グッチは低速になればなるほど
    トルクリアクションが出て操作が難しくなりますが、でも非常に面白い!

    このユラユラ挙動を抑えて、ハンドリングとブレーキング、アクセルワークに集中します。
    車体を揺さぶるエンジンの振動を感じながら信号停止の寸前までこの状態をキープ。
    もうエンジンはアイドル付近の1000回転くらいまで落ちていますが、実はここから。
    信号が青になった瞬間にアクセルあおると、身震いしながら猛牛のように加速に
    移り路面を蹴っていく感覚は、グッチ独特の走りで癖になります。
    このトルク感がすべてのスピードレンジを支配するので、ライディングは繊細な
    操作をバイクに要求されるのです。

    マルチエンジンとチェーンドライブ、ラジアルタイア、倒立ショックならばあっという間に
    通り過ぎる道が、グッチだといろいろ考えながら走ってる自分がいて、はたと気が付くのです。
    実にグッチは面白いものです(笑)

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    1. いちさん、こんにちは。
      私のV7はトルクリアクションが緩やかなので、そこまではいきませんが、アクセルを開けると、リアを持ち上げながら路面を蹴って進む感覚はしっかり感じます。いちさんのルマンや現行のビッグブロックエンジンはすごいでしょうね。
      マルチにはマルチの、ツインにはツインの、それぞれに独特の味があって、バイクは面白いですね。

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