2016年9月1日

Dance with R65(3)


2016/8/28 7:50
「望羊の丘」を下る。
左カーブを立ち上がってくるST4さんと、R65。
1.5車線の道でも、やや左を常にキープ。立ち上がりでもアウト(右)にはらまない。
車体は起こし気味に、荷重のかけ方でリヤタイヤによる外側へのキック(トラクションによる内向力)を与えている。
美しい。
速度は60km以下。ゆっくりでも、スポーツライディングはできる。
安全を考慮し、ライディングを考える、そんな人ならではのラインと立ち上がり姿勢だ。




2016/8/28 8:28

京極町の道の駅、「名水の郷きょうごく」の手前のコンビニでトイレを借りる予定だったが、混んでいたので、道の駅へ移動した。

朝8:00、まださすがに混んではいなかったが、早くも駐車場に遊動の係員の方が何人もいた。
バイクはトイレから一番遠いところへ誘導される。

(ここでの写真はありません。)

トイレに寄り、缶コーヒーを飲みながら、ベンチに座って少しだけ話す。
すでに日差しは熱いくらいで、気温もだいぶ上がってきている感じだ。

「ここはいつも混んでるでしょう、だから寄らないことが多いんです。」
とST4さん。
「あ、僕もそうです。」
「ひとりひとりお話しすると、いい人が多いんですけど、バイクの団体というか、バイクがたくさんいるところって、なんか、なんとなく苦手なんですよね。」
「ああ、僕もそうです。というか、人が多い所って苦手なんですよね。」
「そう、…そうなんですよね…。」

人と走るのが嫌いなわけではない。人間嫌いというわけでもない。
でも、同じバイク乗りでありながら、バイク乗りの団体さんにどうも入っていけない感じが、時としてあったりもする。

「いや、すごくいい団体さんもあるんですが、周囲に威圧感を与えていたり、たばこの吸い殻を投げ捨てて走り去ったりするのを見ると、なんか少し腹立ったり、悲しくなったりしますね。」
「自分の乗ってるメーカーだけが最高!みたいなノリで、ぐいぐい押されてきても、自分はどうも乗り切れないし、そもそも、そんなにメーカーそのものにはこだわりはなかったりして…。なんか申し訳ない感じなんですよね」
僕なんかも春先には「kawasaki」の刺繍が背中にでかでかと入ったライムグリーンのウォームブルゾン(懸賞で当たった^^;)を着て、モトグッツィに乗っているのだ。ああ、ないわー、というやつだ。

さて、コーヒーも飲み干したら、そろそろ走る。
ニセコ方面へ、向かおう。道道478号線を西へ。

倶知安の街から、道道58号線を、ニセコ連山の方へ、登っていく。
いよいよ山岳ワインディングの始まりだ。
2016/8/28 8:46
道道58号、倶知安ニセコ線。
どうやら、この道のことを「裏パノラマ」というらしい。
最近のライダーの中では道道604号を裏パノラマと呼ぶことも多いらしいが、道道604号、走りの面では裏パノラマという呼称にふさわしいが、景観では、道道58号の方が、「裏パノラマ」っぽいのかもしれない。

自転車でヒルクライムする人たちがいた。
かなりの速度でぐいぐい上がっていく。
驚かさないように、右に寄り、速度とアクセルを絞り気味にして追い抜く。

カーブが増え、民家もなくなって、速度が上がってくる。
気持ちよく走れる。
空も青く、風もここちよい。


青空に聳える峰が近づいてくる。
ニセコ、アンヌプリだ。
道幅は狭くなり、やがて完全1車線に。
見通しの悪いブラインドのヘヤピンが続く。
カーブミラーが命だ。

若い頃、広島県に住んでいたときには、こんな道だらけだった。
北海道では今や珍しい道だ。

ST4さんと、僕は、狭い道を慎重に、でも、立ち上がりでは少し開け気味にして、どんどん登っていく。
いつも対向車が突然きたりするのだが(それは相手にとっても同じことだ。)、今日は狭い中ですれ違う車はなかった。やはり時間が早かったからだろうか。

やがて峠を登り切り、五色温泉に着く。
五色温泉から先は広い2車線道路。大型バスも通る。今度は下りになる。

ちょっと下っていくと、蘭越方向が見下ろせる、展望のいいところに出る。

安全に配慮しながら、2台を停めた。

2016/8/28 8:56
空が近い。

もう9時になるが、この時間帯なら、まだ車の通りも少ない。
紅葉の時期には大渋滞になるのだが、今日はガラガラ。殆ど車も通らない。

「やっぱり、ここですよね。」とST4さんが言う。
2人でヘルメットも脱ぎ、風に吹かれる。

晴れ渡った空。

走ってきた爽快感が体を包んでいる。

だいぶ、走りのリズムに体がなじんできた。

「今日の走りのペース」、「今日の走りのリズム」
が二人の間で次第に了解点として、成立しつつある。

ソロでなく、2台、あるいは数台で走るとき、この「今日の走り」の了解点を、
互いに敬意をもって探っていくこと、焦らずに構築していくことがとても大事だ。

たった一日の同行で完全にリズムが揃うことはまずない。
それは、一緒に走ることの前提なのだ。
そのうえで、今日の走りを共通のものとして作り上げていく。
それも、ソロでない走りの楽しさの大きな部分だ。

2016/8/28 9:02

「いやー。気持ちよかったですね。」
「やっぱり、バイクっていいですよね。」

「バイクに一時期、乗れないことがあって、車で走ってみたんだけれど、
やっぱり何か足りない。
バイクじゃないと味わえない何かがあるんです。
車は、車内の空気ごと移動しているけれど、
バイクは、その土地土地の空気の中を、走っていくじゃないですか。
カーブ一つ曲がるとさっと気温が変わったり、走っていて、何かの匂いがして来たり。
そういうのって、とってもいいなって思う。」

「走っていると空気の質感みたいなものが感じられて、その中を疾走していることに
とても充実感を感じます。」

「自分の場合、200km以上とか、そうなってくると、
速度そのものに意識が行ってしまって、それは何か違うという感じがしたんですよね。」

「もっと常速で、スポーツできるバイク、走りの実感も得られて、
風景や空気感が感じられるバイク、そういう条件でバイクを見るようになってきました。
メーカーの伝説やブランドは、尊重するけれども、自分にとっては
あまりそこのロイヤリティには興味がなくて。」

「でも、自分のしたい走りにとって、そのバイクがどんなふうにできているか、については興味があります。」


 そう話すST4さんは、実は相当にメカにも詳しいのだった。


BINGのキャブレター。
この構造の話も面白かった。
 ベストなセッティングが難しく、季節や標高によっても微妙に違ってしまうなど、その時々の国産の現行型マシンを買って乗ってきた僕には、新鮮な話が多かった。

CRかFCRに付け替えても面白いかもしれない…と話してくれた。

当時のBMWバイクについては、ライダースクラブで読んだ程度の知識しかない僕だ。
(永山育生氏の『BMW BIKES』はほぼ毎号熟読していたが)

ST4さんに許可を得て、ちょっと寄って撮らせてもらった。


 特徴的なことはいくつもあるが、このグリップ。
根本よりも先の方が太くなっていて、しかも根本は断面が円形なのに、グリップエンドは四角いのだ。
けっこうな速度で、何時間もぶっとんでロングツーリングに行ってしまう、ゲルマンのバイク。
グリップにも当時の使われ方に応じたデザインが垣間見られる。


 当時のBMWバイクのタンクのラインは、手書きなので有名だ。
寄って見せてもらうと、確かにそうで、本当に微妙なゆれと、筆のあとが見て取れる。重ね塗りの初めのところを発見した。

合理主義のBMWバイク、でもこういうところに職人の手作業。



 バイエルンの青い空と白い雲、そしてプロペラがイメージされたBMWのエンブレム。
これが陶器製だ。

黒い塗装のテールカウルに移った青空と白い雲。






ST4さんと、R65、V7を並べて止めて気づいた。

「この2台、似てますね。」

縦置き、空冷ツイン、シャフトドライブ、中間排気量、という共通点があることは前提として、
R65は僕がイメージしていたよりもずっとスポーティで、走りそうな表情をしていた。

V7ゆきかぜも、モトグッツィの旗艦たちとはその表情がだいぶ違う。
もう少しライトな感じ。
でもどこか精悍さも、感じさせる。



「さて、また走りましょうか。」
「行きましょう。」

走りのステージは、始まったばかり。あと1時間、走りを楽しむ。(つづく)

4 件のコメント:

  1. お久しぶりです。ルイです。こういうの良いですね、ものすごく楽しそうなのが伝わってきます。私も少しですがスペイン北部の短い夏をV7と楽しんでおります。安全第一、お気をつけて。

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    1. ルイさん、こんにちは。
      スペインからコメント、ありがとうございます。
      ピレネーの山々、どんな風景なんでしょう。
      そして、その麓の村々。農村の風景…。

      V7とルイさんにとって、残り少ない今年の夏が、
      さらに思い出深い、豊かなものとなりますように。

      国境を跨いで、V7に乗る方とコメント交流できるなんて、
      今さらながら、インターネットの力に驚いています。

      ルイさん、よろしければまた、気が向いた時にご覧いただいて、
      コメントください。

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    2. 北海道の様にマイナス気温になったり沢山の積雪はありませんが、私のいるバスク地方のビルバオは札幌と緯度が同じくらいで、あり得ない話ですがこのまま真っ直ぐ行けば「ゆきかぜ号」とすれ違ったりするのかな、なんて考えるのも面白いですね。(まあ、そもそも緯度に関係なく方向さえ向いていれば良いのですが・・・) 海と山に囲まれたバスクのツーリングもオススメですよ。

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    3. ビルバオはバスク地方の中心都市なんですね。インターネットでバスク地方の写真などを見てみると、行きたくなります。ビスケー湾を眺める丘や、歴史的な建物、きれいな海辺。
      V7が似合う道がいっぱいありそうです。
      こういうところに、V7はとても合うのだなあ…と思いつつ、するとやはり、日本で暮らす僕のV7に日本語の「ゆきかぜ」と名前を付けたのって、よかったのかもしれないな…と、思ったりもしました。
      いつか、ヨーロッパをゆっくり時間をかけてツーリングしてみたいです。

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