2016年9月2日

Dance with R65(4)


ニセコパノラマライン。
北海道のドライブガイドやツーリングガイドには必ずと言っていいほど載る、名道のひとつだ。
おおらかでさまざまなRからなるカーブ。良好な路面、見晴らしのいい景色。
走り屋にも、観光客にも愛される、ニセコ連山を南北に縦断する快走ロードである。


道道58号線から、道道66号線、ニセコパノラマラインに入った僕たちは、北上して岩内側へ走っていく。
しばらくは登り。一番高いところを少し走ったら、今度は下りになっていく、快走ワインディング・ロード。

景色もいいのだが、ここでは写真のためには止まらない。
二台でぐいぐい走っていく。



パノラマラインは、余り攻め込まずに、楽に流して走るのが気持ちいい。
流すといっても、周囲に車がいないときには、リスキーにならないような範囲で、旋回を楽しむのもよい。

走り終わった後、寄った喫茶店で、ST4さんと、珈琲を飲みながら、思い出して話した。

「やはり、パノラマは攻めると速すぎますね。」
「出るバイクだと、あっという間に立ち上がりから直線の加速で200kmなんて届いちゃう。」
「その点、R65やV7だと、そこまで瞬時には加速できないわけで。」
「でも、ただ遅いわけじゃなくて、コーナーでも開けていけば、ちゃんとトラクションかかって、旋回しながらぐいぐい内側へ入っていくというか、コーナリングの醍醐味はしっかり味わえる。」
「樹生さんは二次旋回をとても重視してますよね。とにかく開けていく感じで。」
「でも、完全に立ち上がりラインに乗ったことが確認できたら、そこからの全力加速はやめちゃう。やると速度が乗りすぎるんです。」
「そう、だから速く見えないんだけど、コーナーではかなり遊んでる。」



そういうST4さんも、相当にコーナリングは楽しんでいる感じだ。
大きくゆったりと180°回り込む中速(我々には高速)コーナー。

ぐるーっと回り込むそのコーナーにアウト側から侵入したST4さんは、クリッピングを相当奥にとっていて、速度を上げて旋回しながら、ラインは徐々にイン側へ入れてくる。
そこから全開までもっていけば、再びアウトへ加速しながら寄っていけるし、7割くらいの開け方なら、そうしてクリッピングを過ぎ、脱出のラインが描けたところでさらに開度を上げていくような、楽しくて安全な走り方も可能。

通過速度よりも組み立てを楽しむ。
そんな感じだ。




写真のピントが自分のジャケットに来て、後ろのST4さんがボケボケ…。
でもこの写真、ST4さん、フルバンクしている…。

ST4さんの走りは、向き変えを入れるタイプ。
減速しながら奥まで入っていき、そこで曲がり始めのポイントを明確にして、アウト→イン、と、旋回してくる。
向き変えの瞬間から1~2秒ほどが最大バンク角で、ここで向きを変えると、即、開けての旋回加速に移る。パーシャル区間が短い走り方だ。



ひとつ上の写真と連続だが、このカーブも相当に回り込んでいた。
立ち上がりが見える頃には、バイクはだいぶ起きてきている。


絶対速度が速くなくても、メリハリを利かせた楽しいワインディング・ランは、十分可能なのだ。



走りやすく、速度の乗りやすいニセコパノラマラインだからこそ、時として(実際にはほとんどいつもだが)自制心も必要だ。

飛ばしすぎないように。
気を付けて。

このあたりの感覚も共有できるので、走るのが楽で、かつ、とても楽しかった。



ゆきかぜのタコメーターも5000rpmを行ったり来たりして。
力が連続的になる空冷ツインの中速域は、ワインディングの走りにはとても扱いやすく、頼りになる。




ニセコパノラマラインを岩内方向へ降りて行ったら、途中で左折。
道道268号線の新見峠に入る。

この道は殆ど1車線から1、5車線の狭い道で、カーブはとても小さく、山の森の中を走るので、見通しもよくない。

ただ、気持ちよい緑の風を感じることができるし、空気の気持ちよさも、また格別なのだ。

この道こそ、五感を研ぎ澄ませて、全身で風景を感じながらゆっくり走るのこそがふさわしい。

でも、走りのリズムがだいぶ整ってきたので、ちょっとだけ、速めに走ってみた。

といってもフルに突っ込んだりしない。フルブレーキの2割程度で入っていくのだが、ここでのフロントの面圧を感じてのブレーキング感覚や、切り返し、クイックな向き変え等を、ほんのちょっとずつ、いろいろ試して遊んでみる。

ST4さんは、複合コーナーを単一のラインでつないでみたり、一度インをかすめて奥まで行き、そこでくるっと向きを変えて、またインをかすめて立ち上がる、ダブルアペックス走法をしてみたり、深く回り込んだコーナーでは意図的に多角形コーナリングをしたりと、これも楽しんでいるようだ。

道のリズムに合わせて、ラインがたわみ、伸び、急にたたまれ、そしてまた伸び…、そのつど車体が右に傾き、左に傾き、…。

道を縫って、ダンスするように、峠を駆け抜けていく。

「リズムが心地よいですよね。」
「飛ばしすぎると、バーッと直線で加速、我慢してフルブレーキ、瞬時に向き変え、リーン、と、リズムを通り越して、余裕がなくなってしまって。」
「あぶない領域に近づいてしまうし、それではほんとは楽しくない。」




ダンスするように、舞うように。
でも、自分勝手なリズムでなく、道に基づき、道に働きかけ、ともに走る他者(他車)の呼吸も、自分の呼吸と重ねて、風景と走りを感じながら…。


ワインディング・ランの楽しさは、そういうところにあると思う。
2台なら、同じ道への自分とは違うアプローチに触れることも新鮮で楽しい。

「ここで、そう来るか!?」
「えっ、それじゃ……。 …あ、なるほど。」
などと、自分と道、自分とマシン、自分と、相手+相手のマシン、その調和、シンクロを楽しみながら、道を駆けていく喜びは、これは相当に楽しい。


ほぼ一時間走って、ニセコ町にある喫茶店の駐車場に止めたときには、
ふたりはすっかり笑顔になっていた。

「楽しかったですね。」
「いやあ、面白かったですね。」
「速くないとは言いつつも、コーナーの中とか、けっこう速く走ってしまいましたね。」
「いやいやいやいや。」

などと言いながら、開店時間ぴったりの店に入ったのだった。

喫茶店では写真撮影は遠慮した。

コーヒーと、クルミとラムレーズンのケーキ。

とてもおいしく、香りよく。

走りのリズムは保ったまま、神経のピリピリを解放してくれるような、
そんなコーヒータイムとなった。

今日のワインディングのメインはこれにておしまい。

30分ほど休憩して、また走り出す。
もう少し、別の、走りの世界が、まだ開けている。(つづく)

2 件のコメント:

  1. > 道道58号線から、道道66号線、ニセコパノラマライン

    あぁ!フォトを撮影した三叉路だ。。(ワタシはそのあと南方~道道207~昆布)

    樹生さん、教えてくれてありがとう。

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    1. tkjさん、tkjさんが北海道へ来てから、もう1か月ですね。
      秋田への帰省と重なっていなければ、ぜひ、ご一緒したかったのですが…。
      赤井川の道の駅で「白党」食べてもらって、感動しました。(^^)
      もっと定番の観光地もあるのですが、こうした何気ない風景の中に
      バイクライディングの「出会い」の素敵さが詰まっているような気もするのです。
      tkjさん。ありがとうございます。

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