2019年2月26日

旅を。

2018年 夏。三国峠。RZが停まっていた。
50代後半の僕。
僕等が若い頃、人生を旅に例える歌は、それこそたくさんあった。
「人は誰もただひとり旅に出て…」(1968年シューベルツ・「風」作詞北山修 作曲はしだのりひこ)
「俺たちの旅」(1975年中村雅俊・作詞作曲小椋佳)タイトルに旅がついたヒット曲で同盟のドラマもヒット。
同じく1975年都はるみの「北の宿」(作詞阿久悠作曲小林亜星)も、「旅」という単語は使われていなくても、女の一人旅の歌である。



「津軽海峡冬景色」石川さゆり(1978年作詞阿久悠作曲三木たかし)も旅の歌だし、
「緑の中を走り抜けてく真っ赤なポルシェ/一人旅なの私気ままにハンドル切るの」の、
山口百恵「プレイバックパート2」(1978年作詞阿木耀子作曲宇崎竜童)もまあ旅の歌と言える。

あまたあるご当地ソングも、当時は皆、「旅」の匂いを強烈に放つ旅ソングだった。
1979年久保田早紀の「異邦人」(作詞作曲久保田早紀)
1987年の石原裕次郎「北の旅人」(作詞山口洋子作曲弦哲也)


他、数えきれないほどだ。

そして、若者は「旅」をするものだ…という時代の空気がまた、あった。

これは、高度経済成長期、田舎から東京など大都市への集団就職や、農村から冬季の出稼ぎなど、生きるためには、田舎から都会へ旅立つものだという、そんな経済的背景も大きく作用していたかもしれない。

都会に出ていく若者の歌としては、
1975年の太田裕美「木綿のハンカチーフ」(作詞松本隆作曲筒美京平)
男が待っている歌では1980年松村和子「帰ってこいよ」(作詞平山忠夫作曲一条のぼる)
などがある……と、もうへんでやめておこう。

支笏湖畔を走る。2018年

ただ、この「旅」は、高度経済成長期だけではなく、それ以前から、日本人の心性の中にあったものだと思う。
平安時代の伊勢物語の中の「東下り」では、都で自分のことを価値がないと思い詰めた男が京ではない東の国に、自分がいるべきところを求めて長い旅に出る。
江戸時代の松尾芭蕉は「奥の細道」に代表されるように、旅を繰り返し、人生最後の句も
「旅に病んで夢は枯野を駆け巡る」だった。

とにかく日本人は旅好き。

そこへバイクブームがやってきて、メジャーは80年代の後半から一気にレーサーレプリカへとなだれ込んでいくのだが、バイクでの旅もまた、大きなひとつの青春のあり方となった。

例えば、北海道。
大きなリュックを背負い、鉄道やバスで旅する若者をその大きなバックパックの姿から「カニ族」と呼んだ。
やがてバイクブームが来ると、夏の北海道にロングツーリングで行くことが一つの憧れとなっていく、バイクに荷物を満載し、エンジン音を響かせて旅する若者たちを「ミツバチ族」と呼んだ。
ツーリングマガジン「アウトライダー」が創刊されたころは、このミツバチ族の時代だった。
秋田県にかほ市。10月。鳥海山を望む。レンタカーと。
レーサーレプリカに革ツナギで、リアに荷物を満載して北海道を旅する若者もいた。

バイクは、峠でローリングするだけのものよりもまず、旅するものだったのだ。
そう、暴走族をモチーフとした漫画でさえ、旅の匂いがまだしていた。
基本的に「暴走族」には「シマ」があり、その中で「暴走」する。
田舎の誰もいない道を集団で暴走したりはしない。元々「暴走族」は、旅とは違うベクトルを持つものだ。
ローリング族もまた、地元の峠を持ち、同じ峠でずっと走り続ける。集団を作り、互いに眺めたり、交流したり、ギャラリーが出たりする。
これも、旅とは違うベクトルを持つものだった。

昔もまた、「旅」とは違うバイクの楽しみ方はかなり存在していて、旅を好む層は、実はそれほど多くはなかったのかもしれない。

それでも一定数は存在していたと思われる「バイク旅」を愛する人々。
バイクで「旅」をしてしまう人たち。

その人たちが殆ど見かけられなくなった。
相変わらず、ツーリングに出かける人たち、そんなグループとは結構すれ違ったりするのに、そんな気がするのだ。

それは、どうしてだろうか。(つづく)

3 件のコメント:

  1. お久しぶりです。一昨日、タイヤを交換しました。今度はパイロットアクティブにしてみました。
    まだ、皮むきが終わってませんので詳しいインプレはまだ出来ませんが、ラウンド形状はBT-45より丸く、素直な印象です。レイラさん曰く、BTよりは軽快になるだろうとのことでした。
    ではまた。http://blog.reira-sports.com/?p=31171

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    1. すみません、小五郎です。

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    2. 小五郎さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      ミシュランタイヤ、パイロットアクティブですね。
      ライフも長くいいタイヤだと聞いたことがあります。
      基本的な性格はバイクが勿論持っているのですが、
      タイヤを替えると、またそのタイヤならではの世界が広がって、
      愛車の走りが少し変わったりする。
      それがまた楽しいですよね!
      北海道の私の春はまだまだ先ですが、
      春の走り出しを楽しみに待ちたいと思います。

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