2013年10月20日

レディ。

11月も20日になった。
今日は日曜日。
朝から今週末に迫った広島でのイベントの準備を急ぐ。
正直、間に合うかどうかは微妙な線まで来てしまった。


昨日の朝ちょっと走ったいつものルート。
GPZ1100に乗った18年間も、その前のSRV250の時も、転倒事故で廃車にしてしまったZZR400も、一番熱く走っていたGPz400F-Ⅱのときも、最初のバイクDT50の時も、バイクに乗ってからずっと、僕はバイクで走るのが大好きだった。速くても、遅くてもいい。バイクの上で、走っていたい。そう思い続けてきた。

それでも、今年ほど全く同じコースを繰り返し走ったシーズンはない。
まだ見ぬ土地、まだ感じたことのない風、空気の雰囲気、そんなものに触れたくて、新しい道にバイクと走りに行くことを、僕はずっと無上の喜びとしてきたからだ。

今年、コースが限られたのにはわけがある。
自分に許された時間が2時間以内しかない時、片道1時間以内で走ることを余儀なくされる。
札幌の市街地を横断、縦断していたら、それだけで、時間のほとんどを費やしてしまう。
片道1時間以内で、都会の喧騒を抜け、幹線道路の車の渋滞を避け、ほどよくカーブもあり、走りながら眺める景色に季節を感じることもできる…となると、さすがに選択肢はかなり絞られてしまう。

それで、我が家からそれほど混んだ市街地や幹線道路を走らなくてもいい、市街地とは反対側、裏側の小さな峠二つと、郊外の幹線道路の裏道を繋ぐ、往復約50kmのコースに、固定されてしまったのである。



いくらバイクに乗るのが好きでも、同じコースばかり走っては面白くなくなる。
…と、僕も思っていた。GPZ1100となら、この全く同じコースを繰り返し走るだけのショートショートトリップでは、さすがに苦しくなっただろう。

だが、V7は、いまのことろ、…という限定は必要だが、同じコースを走っていても、飽きることがない。
バイクが語りかけてくるからだ。
GPZは寡黙だった。こちらから働きかけると、きちんと正直に、実直にそれに応えてくれたが、自分から何かを語りかけてくることは少なかった。
脇役に徹した力持ち。限りなくタフな黒子。たよりになるピレネー犬。そんな存在がGPZ1100だった。
そのくせ、GPZの本気のパワーとコーナリング能力を開放してやれば、発売から15年を越えた今日でも、相当に速くワインディングダンスが可能だった。

V7は違う。
低速で流していても、エンジンの鼓動が語りかけてくる。
カーブを流して通過しても、軽いコーナリングの中に、駆ける喜びがある。
嬉々として、走りたがる。
見た目はおばさんっぽいのに、実は跳ねっ返りのじゃじゃ馬レディと言うわけだ。

ドカティのように香り立つようないい女でもない。
アグスタのように美しすぎて危険な香りがするわけでもない。

澄ました地味なおばさんが、実はすごい腕前だった…みたいな、面白さがある。

僕が、V7と長く付き合っていくには、
まずはこのV7の語りかけを、十分に理解して、体になじませて、
ほぼ、無意識で受け流すようになるまで走り込み、乗り込むことが必要だ。
その上で、その豊かなインフォーメーションを僕の五感で感じながら、それを意識することなく、
僕とV7とで駆け抜けていく技術を学ばねばならない。

ちょっと個性の強い、でも表面的には控えめな、凄腕なパートナー。
昔、寺沢武一の漫画に『コブラ』というのがあり、そのコブラのパートナーに「レディ」という名のアーマロイドがいた。
レディは最強のパートナーだ。そして本当は、コブラの生涯の相棒、最愛の人なのだ。
しかし、「アーマロイド」なので、毎回登場するボンドガールのようなコブラの恋の相手になるお姫様たちのように女女(おんなおんな)していない。

V7スペシャルは、
危険な匂いのする週末の恋人でもなく、
忠実に、控えめに尽くしてくれる内助の功の妻でもなく、
「レディ」のような、相棒になりうる相手かもしれない。

それに応える甲斐性が僕にあるのか、そっちが問われそうな気がする。

2 件のコメント:

  1. 同じV7乗りとして、すごく良くわかります。 V7だと、普通の道をただ走っているだけでも楽しいのです。正直、信号待ちで排気音聞いてるだけでも楽しい思います。 
     ましてやワインディングなら、同じ道でも楽しいでしょう。しかも、乗り易い癖に、奥の深いところがあるから、同じコーナーでも色々な表情を見せてくれます。 私は東京ですが、購入依頼、早く帰れる日には毎週一度は首都高環状線を数周しています。

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    1. Chalisさん、こんにちは。
      『地上の飛行機』拝読しております。
      Chalisさんおっしゃるように、V7はロール方向の動きが非常に軽く、コーナーへの倒しこみが軽い車重と相まって軽快にできる、「乗りやすいのに奥が深い」、それがV7だと思います。
      その「奥」にいかに触れていくか、それがこれからとても楽しみです。

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