2014年5月11日

二美桜(2)



東の方角、桜の幹越しに、見えているのは新しいきれいな市道。
札幌と定山渓、中山峠を越えて洞爺湖、さらには函館方面へ行く国道230の裏道だ。
その向こう、ぎざぎざの岩肌を見せているのは、八剣山。
豊平川と山と、その間の明るい谷に、果樹園が広がる、札幌でも温暖といっていい、
不思議な一帯がこのあたりである。


二美桜は昭和6年に苗を植えられている。
それから今年で83年。ソメイヨシノの寿命は短い。100年を越えることは、本州でも難しい。
だから、もう、老木の仲間入りだ。

自力では枝を支えきれないのか、何本も「杖」を与えられている。




立て看板に説明があった。

二美桜(旧定鉄 滝の沢駅跡) 
 かつてこの地を走っていた定山渓鉄道は大正七年十月に白石から定山渓までの運行を開始した
 大正十三年一月には滝の沢に停留所が設置され昭和四年十月の電化にともない、待望の「滝の沢駅」が建設された
 昭和六年 滝の沢初代駅長の福井正造氏らが 沿線の環境美化を目的とし駅構内にソメイヨシノの苗木を植樹 桜の季節には乗客の目を楽しませた
 定山渓鉄道は昭和四十四年十月に廃線 線路がはずされ駅はなくなったが桜の樹はそのまま残されてこの地の人々に親しまれ続けてきた
 平成十一年秋 かつての定山渓鉄道線路跡に市道が建設されるにあたり この桜の樹を『二美桜』と命名し 歴史の証として末永く保存することとした  
        平成十二年五月七日
                                          二美桜 保存会




この道は山の縁を上がって行き、少し登ればそこは豊滝小学校だ。
豊滝の街と、国道230号線が高台の上に。そこから一段下りてきた河岸段丘の縁に、この樹はある。

駅舎と、ホームはどんな風情で、どちら向きであったのだろう。
そしてこの桜は、ホームにあったのだろうか、それとも駅の前庭だろうか。

路に桜の花びらが散り、道端にはまだ、解けきらない雪が少し、残っていた。


里も、山も、やさしい芽吹きの季節を迎え、若葉はやわらかく、春の空は、かすかに霞んでいた。


桜は、全身で咲く。

春の陽の下で、二美桜は、咲いていた。

            散りかけた 桜をひとり 訪ねけり
                                       和人

4 件のコメント:

  1. 樹生さん こんばんわ。
    今日はとても暖かでした。
    里山の春はこんな風に静かな土とおひさまの薫りが
    するのかしら。
    北海道は開拓以後だから、ワタシは関西生まれなので
    里山はもっとレンゲやつくし、アブラナでいっぱいなんですが、
    気候がより近い東北の里山はこんな感じに少し近いのかしら。
    静かな走りの樹生さん。里山にすーっと溶け込んでいるようです。

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    1. kaoriさん、こんばんは。
      今日は晴れて、暖かでしたね。私は部屋に籠って仕事でした。
      来週が過ぎれば、少し楽になるはずなので、頑張りたいと思っています。

      私の生まれ育った秋田の里山は、北海道とは全然違います。
      北海道はやはり、水晶のような美しさがあって、それは、本州以南の、
      ほわっとした、というか、もわっとした、というか、そうした気候や風土との
      ちがいから来るものではないかと思います。
      学生時代と、20代後半からの10年間を過ごした広島では、
      また東北と違う風景が美しもあり、さびしくもありました。
      北海道の風景もまた、私にとってはとても美しく、魅力的であるとともに
      ふるさとの風景とは違うものという、さびしさを含んだものとして胸に迫ってきます。

      春の土とお日様の匂い、また、秋の刈入れ前の芳醇な匂いや、稲わら焼きの香ばしい匂いが
      子どもの頃からずっと好きでした。

      原風景を、いつも追いかけてしまうのかもしれませんね。
      広大な自然や、にぎやかな都会よりも、人の暮らしの匂いのする田舎が、
      ツーリングしていて一番落ち着く私です。

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  2. 樹生さん ご無沙汰しております。

    NEWバイク買われたんですね!

    それもグッチ!

    おしゃれですね~

    昨年一年間、樹生さんの影響で自然を感じて走り、
    あらためてオートバイの楽しさを満喫しました。

    どこかでお会いできることを楽しみにしております。

    BMW R1100S(黄色)と、もう一台

    ワルキューレ ツアラー ⇒ 昨年秋 NRX-1800 RUNE に乗り換えました。

                                           かず



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    1. かずさん、お久しぶりです。
      GPZ君は12万キロ走ったところで、さよならになりました。18年間のつきあいでした。
      V7はモトグッチですが、GUZZI~!!という感じでなく、車体もコンパクトで、まるで中型のようです。

      BMWのスポーツライディングモデル、R1100S、
      そしてホンダのワルキューレルーン。
      羨望のラインナップですね。
      かずさん、どうぞ今年も素敵なシーズンをお送りください。

      いつか、どこかでお会いできると素敵ですね。

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