2014年10月14日

V7の楽しさ。アクセルのツキ。

前回の記事で、街乗りの楽しさの要因の一つとして、「扱いやすく、ツキのいいエンジン」の話をしましたが、今日はその続編、V7の「エンジンのツキ」がとてもいい、それが山道の安全な快走でもとても有効、という話です。

V7は、最近の17インチワイドラジアルを前後に履いた、高剛性のマシンとは違います。
前18、後ろ17インチの細いタイヤ、フレーム剛性も低く、3ケタのコーナリングで路面の外乱を受けると、車体全体がしなり、揺れ出します。


従って、コーナリングも最近のスーパースポーツのように、クリッピングまでブレーキをかけっぱなしで、かつ車体を倒していってグリッと旋回していくような、絶大なグリップと高剛性なフレームを前提とした走りは似合いません。
昔からの基本通りに直線部分でしっかり減速し、コーナー進入時、リーンする瞬間が一番遅く、あとは加速しながらコーナーを抜けていくパターンが一番気持ちいいし、安全です。

そういう走りの場合、リーンの瞬間にいかに向きを変えてしまうか、いわゆる昔のライダースクラブ流、「向き変え」の走りが重要になります。

速度を上げていくと、リーンと同時に一気に向きを変える、その走りのパターンに落ち着いていきます。当然、それ以降何もできないのでは危険なだけです。先を読み、予想と違う状況であれば、その都度対処して、速度を上げたり、落としたり、ラインを内に入れたり、もう一度向き変えを入れたりと、柔軟に対応しながら走り抜けていくことになります。
その時、重要なのが、エンジンのツキ、開けただけ得られる駆動力、つまりトラクション特性です。


写真出典は下に。
上の写真は、「MORTORSYCLES TopSpeed 2012 MOTOGUZZI V7Cafe Classic」より引用。


向き変えを鋭くし、リアステアを入れていくと、リーンの瞬間は、まるで内側にフラッと倒れ込むような、そんな感じになります。
力でねじ伏せるのではなく、バイクと一緒に内側へ倒れ込んでいくような感じ。
これが決まると、普段の常にバランスさせたまま徐々に倒していくコーナリングのイメージから言うと、曲がりすぎて内側に刺さっていくような、また、そのままバタンと倒れてしまいそうな、そんな感じを受けるほどです。

その時、アクセルを開けて、バンクを止めます。
瞬時に、狙った駆動力を発揮して、倒れ込み、内側に刺さりこんできそうなバイクを支え、ちょうどいい旋回半径に持ち込む。
そのためには、狙ったタイミングで狙っただけの駆動力がバイクにかかり、倒れてくる車体をふわっと支えてくれる、そういう状態をつくらなければなりません。
思ったよりも駆動力がかかるのが遅れると、転倒の危険さえあり、そういうバイクでは怖くて、上記の思い切ったリアステアはできません。そしてできないことを前提としてリーンするしかないので、倒し方、コーナリングの仕方が狭い幅の中で行われることになります。


写真出典は下に。
 上の写真は、「MORTORSYCLES TopSpeed 2012 MOTOGUZZI V7Cafe Classic」より引用。



対して、ツキが狙い通りに決まると、いつでも狙った力を与えられるので、アクセルで車体を起こすことを前提に、よりイン側へ体重を預けていくことも可能になりますし、コーナーの曲率が奥で小さく(きつく)なっているときでも、倒れ込まないように気をつけながらアクセルを抜けば、ラインは内側へ誘導できます。それでも足りない時には、ブレーキングして車体を立て、車線の外側まで減速しながら進んで、再度向き変えを敢行すればいい。

アクセル開度を変えることで、どれくらい駆動力を掛け、後輪荷重にし、車体に起きる力を与えるのか、が自在にコントロールできれば、街の四つ角でも、山のコーナリングでも、選択肢が増えて安全マージンが増すことになります。

あまりにハイパワー、敏感すぎるレスポンスのマシンでは怖くてアクセルを思い切って開けられず、結果、コントロール幅を狭くし、マシンなりにコーナリングするしかなくなる場合があります。
逆に、レスポンスが鈍いと、リーンをアクセルで止めたり、瞬時の状況変化にとっさにアクセルで姿勢変化させ、逃げるということができにくかったりします。この場合も、見通しのよいところでないと、快走する気になれません。

V7は、このコントロール性が非常に高く、信頼できるのです。
アクセルを微開から、全開まで、どの角度で開けても、その角度なりに瞬時に反応し、しかも鈍くなく、鋭すぎず、最初だけドン!と来てその後飲み込む…という最悪の状態にもなりにくい。

右手のひねりでリーンを止めたり、保持したり、立ち上げたりが自在にできると、俄然コーナリング中にできることが増えて、速度を上げなくてもコーナリングが楽しくなります。

別に限界まで攻めないなら、ゆるゆると減速しながらコーナーへ入って行って、クリッピングでいちばん曲率のきつい曲線を描き、立ち上がりでも徐々にトラクションを高めて二次曲線のようなラインで走ってもいいし、多角形コーナリングをしてもいいし、もっと体のバランス感覚が研ぎ澄まされて来たら、リーンを止めるのをアクセルを開いてのエンジンパワーに頼らず、ライダーの体重の預け方だけでコントロールして、その分、旋回効率を上げていく、ということもできます。もちろん、速度をそのままにすれば浅いバンク角でバランスするので、浅いバンク角まで鋭くリーンし、そこで反動を生じさせずにピタッとバランスさせてリーンを止め、旋回…といいパターンにすれば、安全性がさらに高くなります。

時速30kmから60kmくらいのコーナーで、毎回、今回のコーナリングをどのプランで行くか、その際の身体の預け方、アクセルの開け方などを想定し、実際の走行で試し、フィードバックする…。
その楽しさは、大きく重く速すぎるバイクでも、アンダーパワーすぎてトラクションで進路を変えるほどのパワー、トルクを発生できない小排気量バイクでも味わえない、ちょうどいいバランスのバイクならではの愉しみです。


開けた瞬間、(実際には空冷ならではのわずかなタイムラグを伴いながら)エンジンが付き、望んだだけのトラクションを、右手のひねり方に比例して発揮してくれる。

バイクに対して信頼感があるからこそできる、右手コントロールのコーナリング。

それを可能にする、V7のエンジンンのツキ。トラクション能力。

それは、走っても走っても飽きさせない、V7の美点です。

8 件のコメント:

  1. 樹生さんこんばんは。
    どうも自分のコーナリングはうまくいった試しがないです。
    バンクさせないで速く回る方法はないかな~なんて考えてます。
    やっぱりコーナーの中ではバイクが重く感じるので、少しの傾きで
    コーナーを抜けることができれば安全です。立ち上がり加速なんて
    たかが知れてますから、まあ無理しないのですよ(笑)
    V7は軽いので、その点楽しめますよね!

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    1. いちさん、こんにちは。
      V7は停止時にアクセルをふかすとトルクリアクションで車体が右側へぶるん、と震えますが、走ってしまえばトルクリアクションを感じることはまずありません。左右のコーナリングにも違いは感じませんし、いちさんおっしゃるように車体が軽いので、ライン変更とか、応用が利きやすいです。
      その分、重量車ならではの落ち着きや、頼れる感、圧倒的なトルクの暑さで加速していく充実感などは感じられません。
      それでも、表情豊かで使いやすいトラクションが得られるので、いろいろやってみたくなり、その結果がまた、如実に表れるので、ライディングが楽しいです。走らせて楽しいバイクですね。

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  2. 今回の記事も興味深く拝見しました。僕のsport・ドゥカの空冷Lツインも、よく似たところが多いですね。自分のバイクで手前味噌ですが、表情の豊かさ、自在さ、気持ちよさは最新のエンジンにも勝るとも劣らない美点と思っています。

    バリバリ伝説・しげの秀一先生の「イニD」の中で、主人公が友人の「エンジンはクルマの心臓」という言葉に対して、「(エンジンは心臓と言うよりは)どちらかというと、脳みそだと思う」とぼそっと呟く表現がありました。言いえて妙だなぁ、と思いました。

    樹生さんの記事、実は、FBなどでシェアさせて頂くことがあるのですが (勝手に申し訳ありません)、ちょっと報告がありまして。
    自分の投稿に上げさせていただきました^^;;

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  3. Hiroshi Mutoさん、こんにちは。
    SPORT1000、Hiroshi Mutoさんの愛車は、おそらくV7以上に、そうした操作感覚に満ち溢れているはず…。
    そんな想像をしてみるだけでも、相当に楽しいです。
    京都や滋賀、兵庫の山を駆け巡る楽しさ、それに日本の四季の美しさが加わって、本当にいいですね。
    いい国に住んでいると思います。特に秋には。

    いつも「FB」や「g+1」、ありがとうございます。
    ブログには記事毎にページが開かれた数を調べるカウンターがついているのですが、
    Hiroshi Mutoさんがチェックやシェアをして下さると、その直後からどっとアクセスが来ます。
    それまではすろ~~~なペースなのに。
    とても助かっています。というか、とても感謝しています。

    さて、今回のご報告、ブログを拝見(右のサイドバーから「piccola macchina」でHiroshi Mutoさんのブログへ飛べます。)して、仰天、狂喜乱舞しました。ありがとうございます!

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  4. 本日、阿蘇で九州モトグッチ&マーニミーティングがありました。
    そこで樹生さんと同じカラーのV7乗りの方と話す機会があったのですが、ボクがどうしても気になっているアクセルに対するエンジンのツキの良さについて聞いてみました。
    その方も最初はギクシャクしていたそうですが、慣らしが終わったらギクシャク感が無くなったという事を仰っていました。
    それを聞いて購入へ向けて気持ちが1歩前へ進んだボクなのでした(^^♪
    新型のABS&トラコン付きよりも今のモデルがあるうちに欲しくなりましたよ・・・・
    お金も無いのに困ったものです(+o+)

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    1. シャモンさん、こんにちは。
      やっぱり馴らしが終わるとぎくしゃくしなくなるのはそうだったんですね。
      僕だけじゃなくてよかった。
      扱いやすく、柔軟性とパワーと両面があって、いい感じに仕上がってきたように思います。
      最初から仕上がっているのではなくて、馴らしをしていくことでオーナーが仕上げる、という点も、
      なかなかいいなと思います。
      服でも靴でもバイクでも、自分で使っている内に馴染みができて、馴らしが進んで自分仕様になっていく
      それが元来、モノと人との関係のような気がしています。
      それにしてもグッチ&マーにミーティング、濃そうですね!
      記事拝見しました。お天気にも恵まれたようで、よかったです。

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    2. 返信ありがとうございます。
      本当に快晴の阿蘇は最高のロケーションでした(^^♪
      色々なV7乗りの方のブログを拝見しておりますが、馴らしとともに角が取れていくのは間違いないようですね。
      今回は実際に乗っている方から直接伺う機会に恵まれて確信をいたしました。
      人とモノとの歩み寄り。
      素敵です。
      また一歩購入に近づいている感じがします・・・・・・

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    3. 私の場合、馴らしに5000km以上かかりましたが、それは高回転域の馴らしが十分にできていなかったからかもしれません。
      6月8日の「空と雲と風と」のツーリングで高回転まで結構ぶん回してから、特に、ツキがよくなり、かつ、角が丸くなって乗りやすくなりました。
      ブレバと比べるとどうかはわかりませんが、僕の場合、V7は付き合うほどに、じわじわと魅力を増しつつあります。もっと魅力的になって行きそうな予感です。

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