2018年8月15日

RUN,RUN,RAINRUN 2

支笏湖の北側を走り、南側へ回り込むと、すぐに道道141号線の分岐がある。
樽前山登山口まで行く道でもあるこの道は、以前はダート区間も多く残っていたが、今では苫小牧側の道は広く整備され、恰好の高速ワインディングとなっている。
今日はこの道を抜けてみよう。
(今日の記事は写真なしです。この区間は走ってばかりで、撮っていませんでした。)
(しかも、文章が長文で、くどいです。すみません。)

道道141号線は、支笏湖側から入った場合、樽前山の登山口までは1車線~1,5車線の細い簡易舗装のようなアスファルト道が、林の中をくねくねとしながら登っていく。
乗用車同士ならなんとかすれ違える道で、林の中、見通しは悪く、至る所に立つカーブミラーを頼りに進んでいく感じの道だ。

広島県の田舎道でライダーとして育った僕には、こんな道が一番「なじみ」がある。
こういう道ではゆきかぜ(=MOTOGUZZI V7Special 2012)は、
自在にくるくると向きを変え、時速30km以下の急な上り坂でもぐずることもなく、
自由に生き生きと走る。
GPZ1100ではさすがに重い巨体を慎重に運んでいく感じがあったが、
昔の400㏄のようなV7は、セローのように…とまではいかないが、
すいすいとストレスなく走ることができる。

初期が優しく、握り込むと強力に効くブレーキシステムも、
こうした道での走りやすさに貢献していると言えるだろう。

なんというか、
「水を得た魚」のようにすいすいと走っていくことができるこの走りやすさは、
実はV7の、最大の武器なのかもしれない。

道が樽前山の登山口のところまで着くと、そこで左折。
とたんに2車線の快適なワインディングに変わる。
森の中を、新しくきれいな路面、広い路肩、完備したガードレール、
快適そのものの緩やかなダウンヒル高速ワインディングだ。
ここは知る人ぞ知る、走りのスポットで、結構2輪も4輪も、飛ばしに来る人が結構いる。
もう「隠れたホットスポット」とは言えないかもしれない。
今日は、この道を独り占めだった。

タイヤの状況を確認、空気圧は大丈夫だった。

では。

少しワインディングで走りのリハビリを。
安全性に気をつけ、自分で最高速のリミット、最高回転数のリミットを決める。
ゆきかぜは各ギヤ7,000rpmで唐突にリミッターがかかるが、
今はそこまでだいぶ余裕を持った回転数をリミットにする。
飛ばし過ぎない。
走りのリズムと、ゆきかぜ本来の旋回性、自分の走りの流れが確認できれば、
それでよしとする。

また、ブラインドコーナーの向こうに車が停車していて、
写真を撮っていたりすることもままある。
実は今日も、ブランドコーナーの中で左に寄せもせず停車している乗用車がいて、
どうした!?と思って徐行してみてみると、運転席で携帯を持ち、通話していた。

インベタ、フルバンクでコーナーに突っ込むのは運試しをしているようなものだ。
とにかく安全マージンの確保を優先に。
見える範囲、見えた時にはかわせる範囲で、ライディングを試すことが大切だ。

高速側のワインディングロードの走りだが、ここで走ると、
「う~ん、やっぱりこっちが本領なのか?」と感じてしまう。
イタリア~ンな感じ(?)のゆきかぜの本領。
何と言っても、まず、リーンが軽い。
クランク縦置きツインエンジンなので、もともとロール方向へは
軽快な特性を持っているのだが、倒すだけなら、スパッと一瞬で倒せる。
ただし、旋回のヨ―運動を同時に起こしながらとなると、少しコツがいる。
基本的にリーンウィズのままが似合う車体だし、
根本健氏にしても、和歌山俊宏氏にしても、V7の走行シーンではリーンウィズだ。
そのまま、露骨な逆操舵もせず、変にステップを踏みこみもせず、
体重移動で切れ味鋭く曲がっていく。

残念ながら僕にそこまでの腕はない。
力を入れない、倒し込みと同時に旋回を始めるリーンは、
腰をずらした体勢の方が、スムーズに行くのだ。
今日は、新たなリーンの練習よりも、今までの感覚の確認を優先したい。
前後に誰もいないのをいいことに、腰をずらしたリーンインで、右、左と旋回していく。

根本健氏が2010年くらいから推奨しているのは、
低い回転数で大きくアクセルを開ける走り。
2,000rpmから3000rpmくらいまでの間で、アクセルをがばっと開ける。
どれくらい開けるかというと、空冷ツインやシングルなら、
全開でストッパーに当たるまで開けて、それでエンジンが付いてくるのを待つ開け方だ。
もちろん開け始めの「じわっ」は入れるのだが、全閉から全開まで
1秒もかけずに開けてしまう、そういう開け方だ。
市販バイクもエンジンのコンピュータ制御が進み、
これくらいでもエンジンが呑み込んだりしない(ってこと自体、
キャブ時代を知らない世代にはわからないかもしれないが…)ので、
広く推奨できるようになったのだ。
根本氏自身は、結構前からこういう走りをしていた…ということは、今年の3月に出た
『オートバイ乗りは‶怖がり”ほどうまくなる。』にも書いてあるのだが。

僕もゆきかぜを買って、最初の年からこの全開で待つという開け方に
少しずつトライしたのだが、V7はこれが本当にできる。
GPZ1100ではカーブの途中で深々とバンクしたままストッパーに当てるまで全開
というのはできなかった。
立ち上がりで、徐々に起こしつつ、開けていって全開に至る…という開け方だったのだ。

むろん、速度、ギヤ数、路面状況、エンジン回転数にもよるのだが、
かなり広い範囲で、この全開で待つ走行ができるのがV7なのだ。
(状況を間違うと、アウトへまっすぐ行ってしまうので、
  これはいきなり試してはいけない。)
そしてV7のすごいところは、その全開トラクション旋回の状態から、
アクセルを抜くことと体重のかけ方を変えることを同時に組み合わせると、
ラインの修正がかなり自由に効くということだ。

それに何も「全開」にこだわる必要もないわけで、
このコーナリング中のアクセルを、オーディオのボリュームダイヤルのように考えて、
開けたり閉めたりすることで、駆動力を無段階に上下でき、
それに車体がリアルタイムに反応するので、
右手のひねり方ひとつで、走りを自由に変更できる。
絞ることでラインを内側に入れたり、
開くことでインに寄りすぎないようにリーンを止めたり、
開けることと体重を預けることをリンクさせて旋回力を増していくこともできる。
道に応じて、この臨機応変に対応して走っていくのが、とても楽しい。

この余裕が、安全マージンを増やして、同じペースでも安全性の増した走りができるし、
心理的にそれが余裕となって、周囲をより見ることのできる走りとなる。
それによってまた危険要素の発見が早まるという、いいスパイラルに入れるのだ。

…といってもそれに乗じて速度が上がれば、どの道危険性は高まる。
何かあった時に襲い掛かるエネルギーは(重量)×(速度の2乗)、
つまり、速度が時速30kmから60kmの倍になれば、エネルギーは4倍になっている。
時速60kmから90kmに速度が上がると、エネルギーは2.1倍になる。

時速60km以上というのは、何かあったら死亡する速度だと考えた方がいい。
(条件が悪ければ、時速40kmでも、それ以下でも、怪我だけでなく命の危険がある。)

速度を抑えて。
限界域に近づかない。マージンを増やす方向で。

言い聞かせながら、走っていくと、
下りの左右の切り返しを繰り返す深いS字の連続区間で、
右側のガードレールの外に「死亡事故現場」と看板が立っているのが見えた。

そうだ。…こういうこともある。

この事故は、4輪か、2輪か、わからないけれど、
二輪で同じリズムで飛ばして来たら、このカーブを曲がり切れなくて
外側に飛び出すのは分かる。
前までのカーブよりも少し半径が小さく少し回り込んでいる。
どちらも少しずつなのだが、いままでの路面のよさや、見通しのよさ、
Rの美しく深すぎない設計にかまけて、同じリズムで突っ込んだら、
もしかしたら危ないコーナーだ。
ここは、もっと手前にカーブミラーを立てて
思ったよりもカーブが長いことを知らせる方が事故防止にはいいような気がする。

ゆきかぜは、時速120kmを越える速度でコーナリング中にギャップなどで振られると、
フレームがうねるように揺れる。
この時、無理に抑え込まずに、揺れ幅が過大にならないように注意する程度で、
揺らしてやったほうがすぐに収束するし、走りが破綻しない。
今日はもちろん、その速度域まで上げることはしない。

遥か手前で、リヤタイヤで路面を外側へ外側へと蹴りながら、身体を内側へ入れていく。
下りのワインディングでは進入で十二分に速度を落として、
カーブに入ったら開け開けで曲がっていけるようにするのが基本だが、
ライン修正は先ほど述べたように、コーナーの中でも可能だ。

ブレーキもとてもよく効く。
握り込めば、シングルディスクとは信じられないほどの減速Gを
身体に感じさせて、路面にめり込むような減速を見せる。
また、なめるように軽く当てると、それに応じて柔らかく姿勢を変え、
路面を擦りながら速度を落としていく。
高い消しゴムを滑らかな机の上でこすりつけているような、
気持ちのいいブレーキングができる。
このあたりのセッティングはさすがだ。
もっと効くブレーキはたくさんあるだろうが、ブレーキングが気持ちいいという、
こういうセッティングにしてきている。

楽しんでいるうちに、苫小牧についてしまった。
ここから国道36号を白老へ。
そこから道道85号で大滝方面へ。
今日はワインディングをつないで走る。
(つづく)

4 件のコメント:

  1. タルキンまで行ったんですね。ここのコーナーは気持ちいいですが、速度域が高速になるにつれて、逆バンクやカーブの回り込みの難しさが出てきます。
    パワーの限界まで引き出すのはちょっと怖いね。元々グッチの高速は豪快過ぎて400マルチの様な気軽さは無い。良いようで悪いかもしれません(笑)
    V7はその点、現代の味付けでストレス無さそうです。操縦性も余裕マージンが在ってこれは安全面がかなり高いみたいですね。

    今回はコースも良く気持ちよく走れたみたいですね。日頃のうっ憤はかなり解消されたのでは(笑)

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    1. いちさん、こんにちは。
      道道141号線は、走りやすい道ですが、
      本気で飛ばすとやはり速すぎるように思えました。
      元来、公道上でいたずらに速度の数値をあげていくような走りは
      非常に危険だと思います。

      V7はスモールブロックで、ルマンや1000Sのようなビッグブロックとは違い、
      フライホイールも小さく、トルクリアクションも殆ど気になりません。
      超高速域での安定性はビッグブロック群に遠く及びませんが、
      中速以下のコーナーなら動きの軽さが有利かもしれません。

      それにしても、V7はやはり結構本気(いたずらにではなく、むやみにでもなく)で飛ばすことを
      念頭に置いて作られたバイクだという気がします。
      そういう域に入ると、俄然表情を変えて生き生きと走ります。
      はやりヨーロッパ車、特にイタリア車は、そういう文化の下で作られているのでしょうか。

      よく知りもしないことを、知ったかぶって語るのは恥ずかしいことですが、
      V7はとことこ走ることも念頭に置きながら、本気走りも「本領」にしている感じがするのです。

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  2. 支笏湖-苫小牧…次の北海道ツーリング(時期未定)には、苫小牧に宿を取り支笏湖を巡る所存です。

    今年は9月下旬に東北を少し回ります。下北半島を一周して八戸に宿泊します。
    大間崎で再びの津軽海峡を眺め、八戸で苫小牧への航路(ひょっとしたら片道使うかも知れない)に想いを馳せる…としますね。

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    1. tkjさん、こんにちは。
      返信遅くなってすみません。

      また北海道へお越しの際は、ぜひ、少しでもご一緒したいですね。

      東北もいいですよね。
      実は秋田生まれなのに、18歳で街を出てからは
      住んでいたことがないので
      東北はほぼバイクで走っていないのです。
      2009年の南東北・北関東のあのツーリングを除けば。
      下北半島、私もいつか、一周してみたい半島です。
      どうぞお気をつけて、いい旅を!

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