12月10日、実家を出て、空港へ向かう。
秋田県はこの3日間、雪が降り続き、毎日除雪の日々となった。
今回借りた車はダイハツムーヴ。軽自動車指定というだけで、車種指定まではしていないから、毎回、どんな車になるか、当日現場まで分からない。頻繁に帰り、レンタカーするので、そうしないと経済的に持たないのだ。
しかしこれが、結構楽しい。
軽に乗る機会が増えて思うのは、半径50km未満で、毎日通勤や買い物に使い、しかもほぼ市街地というのなら、軽自動車は本当に使い勝手がよく、よくできているということだ。
小回りが利き、店や銀行の駐車場に入れるのも楽。
普通に走るには何の不足もないサスペンション。
街中で通常走行なら不足を感じない加速。
圧倒的な乗り下りのしやすさ。荷物の積み下ろしのしやすさ。
ドア開口部が広く、90度完全に開く。
床の高さが適切で、高齢で要介護2の母でも、乗り降りしやすく、介助もしやすい。
車の四隅の見切りが楽で、車幅感覚もつかみやすい。
ダイハツムーヴ、
スズキワゴンR、
ホンダNboX、
どれに乗っても、実用に徹し、割り切ったその買い物車の特殊化に心地よささえ感じた。
燃費もよく、軽く。
街中最強だ。
さあ、空港へ向かう途中で日が暮れて暗くなってきた。
ダイハツムーヴは快調に走る。
パワーステイリングのアシストが、買い物車だけに非常に効いていて、軽いのなんの。
くるくると回ってしまう。据え切りも楽にできてしまうから、ちょっと注意だけど。
車重が軽いので、ブレーキへの負担が小さいのも魅力。
軽は予想以上によく止まる。
また、メーカーごとの個性がはっきりしているのも、これも意外だったが魅力だった。
中でもホンダは「いやっほー、ホンダエンジーン!」と叫んでしまうほど、エンジンが楽しい。
総合力のスズキ、ダイハツ。全体のバランスがよく、内装も使い勝手が磨き込まれていて、最高に使いやすい。
ダイハツの方がすこ~し、荒削りな感じがする(あくまで僕の感じです。)
でも、滑った時のコントロールは、たまたま条件的にそうだったのかもしれないが、
ダイハツの方がしやすかったような気がする(これも気のせいかもしれないが…)
さあ、峠が雪道になった。
結構降っている。
スタッドレス、4WDのダイハツムーヴだが、滑るの前提で、滑りながら走っていく。
この2、3年、僕の身体にも大きな変化があった。
長年の持病である頭痛、腰痛に加え、頚椎ヘルニアを発症し、左腕が中から引きちぎられるように痛む。薬と筋トレで症状を抑え、手術にならないままで、今日に至る。
さらに男性更年期障害が2年前から。
男性ホルモン、テストステロン値の急落。
最初は重度のうつ病かと思ったが、かかりつけの医者がホルモン系かもしれないと
別の内科での検査を勧めてくれ、調べるとそうだった。
定期的に注射しないと、生活できないほどの重度なのだが、
慢性的な仕事の荷重で、医者からは強制的にでも休まないと
本当に危ないぞと助言をいただくも、そこでの父の死と
母の一人暮らしの援助の開始が重なり、
休むに休めない状況になったのだった。
それでも職場の理解を得て、なんとか少しずつ休みながら仕事を続けてきているのだが、
この4月にはさらに負担の増えるポジションになった。
…で、あまり走れなく、ブログ更新の精神力も残っていない状態になったというわけだが、
まあ、人生、そういう時期もある。
そういう季節にさしかかったのだから、無理せず、自分の命をまず大切にして、
ぼちぼち行こう…と思ったのだった。
ラリードライブ経験者ならともかく、平凡なドライバーの僕には、カニ走りは不可能。
速度はできるだけ落とし、リヤが少しでも流れたら、即座に小さくカウンターを切って
姿勢を復元させる。スリップ角の大きなドリフト状態など、僕にはもってのほかだ。
そうでなくても、雪道、どうせ滑るのだ。
滑りながらも姿勢をグリップしている状況にできるだけ近づけるように小刻みにハンドルを切りながら、ゆっくり進んでいく。
大きく体調が崩れる前に、無理しないように栄養と休養を考え、先送りできるものは
先送りし、段取りを考えながらできるだけ休むようにして仕事をする。
そんな働き方は、個人的には初めてに近かった。
徹夜が連続しても、少々きつくとも、前例がなくとも、不可能に見えても、
突破口を開けて、完成度の高さを目指すことを一つのスタイルとして
数十年やってきたのに、かわし、守る仕事姿勢になってしまった。
しかし、逆にそういう時でないと見えないこともある。
どれだけのことを見過ごして、無視して、突っ走ってきたかを、今更思い知る。
しかし同時に、そうして突っ走ったからこそ到達できるものがある。
そうしない限り、つかめないものがある。
そこに決して届かない今の自分の仕事に、呆然としたり絶望したりもするのだ。
やがてまた違った形で走れる時が必ず来る。
以前できていたことはおそらく二度とできない。
でも違った形でできることがきっと見つかるから、
そのために、力をためなければならない。
夜、空港について、レンタカーを返却し、出発ロビーに上がる。
アイススケートのザキトワ選手に贈った「秋田犬」から、急に秋田犬がブームだ。
ブームだからと、排卵誘発剤をメスにバンバン注射して、生まれた子どもをすぐに親から引き離してペットショップに送るみたいな「ビジネス」にならないように、祈る。
秋田犬は大切に大切に、細々と守られてきた犬種だ。たぶんそんなことにはならないと思う。
ペットの流行は、「経済動物」のあり方と、商売のあり方を、いつでも僕らに問いかける。
それにしても客の少ないお土産店だが、
12月10日、月曜日の午後6時だから、こんなものだろう。
混むときはしっかり混んでいるし、2階建ての小さな空港。それでいいような気がする。
とても使いやすく、心地の良い空港だ。
札幌行き最終便が入ってきた。
20時20分発予定。21時15分新千歳着予定だ。
自宅に着くのは、23時30分。
寝るのは25時か。
明日は朝6時50分には職場にいなければならない。
除雪車がずらっとスタンバイしている。
夜中じゅう働く車も働く人もいる。
飛行機の中で少し眠ろう。
座席は前の窓際だった。
翼に雪が積もっている。これくらいなら、なんということはないのだろうが…、
必ず雪は落とす。翼断面形状や、その滑らかさは、飛行機にとっては生命線だ。
新千歳空港では遠隔操作ノズルでやっていたが、秋田空港では手動で目視しながら
翼の雪を落としていく。
滑走路に向かってトーイングカーに押され、バックしていく。
飛行機は地上でのバック走行はできないのだ。
どんな高性能でもできないことはあるものだ。
人が必ず並行して歩きながら安全を確認する。
所定の位置でトーイングカーは外れ、そこから飛行機の自力での走行が始まる。
これから走っていく滑走路の光が客室の窓から見えた。
白く明るいのはターミナルビルの所だ。
さあ、飛ぶぞ。
ジェット旅客機の加速はビッグバイクの加速とほぼ同じじゃないかと、
毎回離陸加速時のGを背中を椅子の背もたれから離してGを感じながら思う。
若い頃の交通事故による肋膜肥大、肋間神経痛が時々襲う。
「年取ると来ますよ」と、20代の僕に医者が教えた、その通りになった。
順調にジェット機は空へ浮上していく。
秋田市のはずれ、新興住宅地の光が見える。
さらに浮上。
秋田市街の光が遠くに見える。そのまま浮上して、北へ。
一時間もしないうちに、新千歳空港へ着陸する。
長い一年が終わろうとしている。
(1)(2)と続けて拝見しました。
返信削除樹生さんのblogを長年読ませて頂いていて、更新のペースダウンは感じていました。
お仕事のご多忙だけでなく、いろいろとおありだったのですね。
お父上のご逝去、残念です。今更ながらではありますが、ご冥福をお祈りいたしております。
年齢的には樹生さんの少し後を追っかけている私ですが、体調の変化はありますね。
素敵な先輩たちがそうであるように、自分も上手く付き合いながら、バイクという乗り物に長く接していければいいなぁと思っています。
追伸
秋田空港のお土産売り場、以前「あきたこまちジェラード」を食して美味しかったのを覚えています。
まだあるのかなぁ
Hiroshi Mutoさん、ありがとうございます。
削除父は進行性胃ガンでしたが、
90歳、天寿全うと言えるのではと思います。
母の暮らしのプロデュースと、毎月の帰省、
さらに多忙化した仕事が重なり、
健康的にはぎりぎり、G線上のアリアという感じでした。
でも、少しでも走れたのが、よかったと思います。
来年は、無理しないようにしつつ
もう少し走りたいと思っています。
頭の毛もこの一年で
相当に薄くなってしまいました。
テストステロン注射の影響もあるかと思いますが、
老化は着実に来ている感じがします。
それもよい。
そういうステージでのバイクライフがあるはずで、
『風まかせ』という雑誌がありますが、あれとはまた
別の感じで、等身大のバイクライフを作っていければいいなあと
思っています。
秋田空港の「あきたこまちジェラート」まだあると思います。
いろいろ、おいしい(味濃いけど)秋田県です。