2018年12月4日

ロレンソ選手のRC213V(2018年11月ヘレステスト)

前記事で迷走さんが上げた写真に興味を惹かれ、マルク・マルケス選手と、ホルヘ・ロレンソ選手のフォームの違いを素人なりに勝手に考えてみましたが、MotoGPオフィシャルサイトに、シーズン末のヘレステストでホルヘ・ロレンソ選手の乗った、2019年型RC213Vの写真がいくつか乗っていました。それをちょっと眺めてみたいと思います。
写真はすべて、MotoGPオフィシャルサイトから引用しています。

ロレンソ選手がドカティ時代、マシンが自分に合わなくて、それを合わせていくのにかなり苦労したのは、よく知られたところです。2018シーズンも後半になって、やっとタンク形状をロレンソ選手に合わせるというモディファイがなされ、その途端に成績が急上昇、優勝も果たしたのは記憶に新しいですね。
2019シーズン、ホンダのワークスライダーとして走ることが決まっているロレンソ選手、ヘレステストで初めてホンダのワークスマシン、RC213Vにまたがることになったのですが、すでに、そのマシンにはロレンソ選手のためにタンク形状などのモディファイが加えられていました。
この記事の写真はすべて、MotoGPオフィシャルサイト、フォトギャラリーから引用。
タンクと言っても、前の方はエアボックスカバー、後ろの方がガソリンタンクカバーとなっているこのパーツ。
軽量なドライカーボンの地のままですね。写真右側の丸いくぼみは、ホンダのウィングマークがはまる所で、つまり、元々のタンクにいろいろモディファイを加えているということなのですが、作業跡も生々しいものですね。テスト中も何度も形状を改良したのではないでしょうか。
滑り止めの透明なシートが貼られていますが、丸の突起の中に時々「H」のものがあるのは、ホンダのHでしょうか。このドットのポッチと丸突起の比率なども、グリップの仕方についてのノウハウがあるのでしょうか。
また、シート地がただのウレタンでなくて、編目があってテクスチャーになっていることも注目ですね。
シートは、グロップだけでなく、滑りやすさ(=動きやすさ)も追求し、タンクに当たる足の内側でできるだけ広範囲にグリップしておきたい、ロレンソ選手の意向が見えますね。



この記事の写真はすべて、MotoGPオフィシャルサイト、フォトギャラリーから引用。
こちらは左サイドです。
かつて、平忠彦選手は右と左でハンドルの開き角度が違っていて、左右対称になっていなかったことで知られていますが、マシンホールドにおいても、右側と左側では全く同じになるとは限らないので、タンクの左右が完全に左右対称かどうかは、これも見てみないとわからないものです。
…この写真からはよくわかりませんが、それにしても、腕がタンクに当たる部分の形状が何度も直され、微調整されつつある段階であることは、カーボンクロスの貼り跡や傷跡から想像されます。

この記事の写真はすべて、MotoGPオフィシャルサイト、フォトギャラリーから引用。
前からの写真ですが、これもタンクにピントが合っています。上の方が若干反り返しがあるのは、これは一般的ですね。減速Gをタンクに当てた足で耐えるときに、上にずれて外れてしまわないように、返しがついている…これは、1980年代後半のレーサーレプリカの時代からあるものでした。もちろんその形状は、微妙に変化してきていますけれども。


この記事の写真はすべて、MotoGPオフィシャルサイト、フォトギャラリーから引用。
走行中の写真も見てみましょう。
左コーナー。倒し込んでいくところですね。
ロレンソ選手の内足のステップへの置き方がよくわかるショットです。
こうしないと、路面とステップの間にブーツが挟まれて、深くバンクできなくなるんですね。
白くて分厚い膝のスライダーに注目です。
おそらく、これはテスト走行最初期で、マシンに馴染んでいない頃。
ニースライダーを厚くして、これでバンク角を抑え、まずは感触をつかむ、そういう走りなのではないかと思われます。


この記事の写真はすべて、MotoGPオフィシャルサイト、フォトギャラリーから引用。
こちらの写真では、ニースライダーは薄くなっています。
そろそろ慣れてきて、スライダーも薄いものへと付け替え、ライディングも徐々に荷重をかけるように変わってきているのではないでしょうか。
そういえば、リヤカウルについてるカメラの台。上の写真では代わりのウェイト(銀色)でしたね。

低速コーナーからの立ち上がり、スライドしながらのトラクションを試しているところですね。リヤタイヤの空転が大きすぎると前に進まなくなります。しかし、適度なスライドで前進させるトラクションとスライドによる方向転換(ヨー運動)を同時に起こしたい。
そのバランスなどをチェックしていきます。
そうした場面ですので、昨日のヘヤピンのクリッピング付近、最も速度の落ちた旋回状況に比べて、積極的に荷重している様子もうかがえます。
それでも、マルク・マルケス選手の気持ちよさそうに、ザーッとスライドさせながら立ち上がっていく…ラインなんかスライド具合でその場で調整してしまう…という明るさ、おおらかさに比べると、このロレンソ選手のスライドは、後ろから見ても、フロントのマシンから見た舵角があまりついていない……4輪でいうゼロカウンターに近いものではないかと思われます。(誤解なきように、マルケス選手も得意です。)
車体から見てゼロカウンターということは、フロントもイン側に切れてスライドしている、つまりアンダーステア状態にあるということになります。それは、微妙にハンドルを切る操作を行って初めて実現する状態です。
おそらく、ロレンソ選手の舵の切り方は引き舵が中心ではないかと、思われます。
ハンドルを押すのではなく引くことで操作する方法です。
昨日見た写真にあるように、グリップを手のひらに深く当てず、指先をひっかけるように、もしくは指でつまむかのように握る傾向のあるロレンソ選手ですので、レバーを引くように、ハンドルバーも微妙に引きながらコントロールしているのではないか…と、これは本当に勝手な想像ですけれども。

*注意!!これはド素人の一個人が勝手に想像しているだけです!!読み手の皆様は決して信じることなく、ご自分で判断なさってください。!!!

…なんて、いろいろ想像するのも、楽しいものですね。
次のテストまで、どんな改良とアジャストをホンダワークスはしてくるのでしょうか。
そしてロレンソ選手は、ホンダのマシンの手ごたえを、次回のテストライドまでに、どんな身体感覚として、自分の身体に刻み、ライディングのイメージを作ってくるのでしょうか。
それらもまた、楽しみな、シーズン・オフです。

2 件のコメント:

  1. ちょうど、こんな動画を見つけました。
    URLを貼ってみます。
    https://twitter.com/motto_motogp/status/1069820270066597888

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    1. Hiroshi Mutoさん、こんにちは。
      おお、ロレンソのラップですね!
      非常に興味深いです。
      ありがとうございます!

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