我がV7スペシャル、ゆきかぜ号のブレーキシステムは、
フロントがφ320mmステンレスシングルディスク ブレンボ製 異径対向4ピストンキャリパー
リヤがφ260mmステンレスディスク フローティング2ピストンキャリパー
(モトグッチのHPによる。)
今日はブレーキについてレポートする。
フロントブレーキから。
まず、扱いやすく、わかりやすい。実用上、よく効くブレーキだと言っていいと思う。
やわらかいブレーキから、きつめのブレーキまで、握力に比例してブレーキ力が強まる感じで、街中ではとても使いやすい。
いきなりガツンと効くこともないし、力を弱めていったときに、張り付く感じもなく、ブレーキ力を素直に弱めていく感じだ。
パッドがディスクに触った状態から、少しずつ効きはじめて、だんだん効力を高めるまで、握り込む感覚で調整できる。
このわかりやすさは、街中でも、雨でも、またダートを走った時も頼りになった。
普段遣いには十分の効き方だと思う。
反面、3ケタの速度からフルブレーキすると、かなり握力を要求してくる。飛ばし始めると、減速時にもう少しブレーキングパワーが欲しくなる。
絶対力が不足しているのではなく、高速からロック寸前まで追い込むと、その時点で相当に握り込んで力を掛けているので、そこから微妙に力を抜いたり、また入れたりが難しいのだ。
もう少し軽い状態で高速からのブレーキングに対処したいと思ってしまう。
しかし、そうすると、街乗りやダート時の初期のわかりやすさ、扱いやすさは失われるだろう。
そちらを譲らなかったわけだ。
これはこのバイクのライダーを、「そんなに飛ばさない人」と想定していることを示しているだろう。
レバー、マスターシリンダーもブレンボ製。レバーに近さの調整機能はない。
レバーとグリップの間は少し広め。僕にはちょうどいいが女性には少し遠いかもしれない。
さっきも書いたが、握り込んで効いてくるタイプ。効きだしてからもレバーがストロークする。
ブレーキシステムの中には、感覚として、効きだしてから殆どストロークしないように感じるものもある。もちろん、レバーにかける力に比例してブレーキ力は強くなり、こちらのカチッとした固いタッチの方が好みというライダーも多い。
V7はストロークするタイプ。おだやかな、しかし、しっかりと効く、信頼できるブレーキシステムだ。
リヤはピンスライド式の2ピストンキャリパー。
これも使いやすい。減速にも姿勢制御にも、両方使える。
おだやかに効くが、効かない感覚はなく、すぐにロックすることもない。
感覚の鈍い足で操作するので、大雑把になるが、それでも扱いやすくてブレーキ入力をコントロールできるのは秀逸だ。
実用として十分なリヤブレーキ。
前の愛車、カワサキGPZ1100(95)では、あまりリヤを使わなかったが、今後はリヤブレーキの使用率が増えそうだ。
ステップのすぐ下を通る排気管を避けて、ブレーキペダルのロッド(?シャフト?レバー?)は上を通る。
このペダルもストロークのある方で、それが足応えもわかりやすく、やわらかい感触なのだが、
掛けやすい。
一定の足応えは、柔らかい粘土かジェルを押しつぶしていくような感覚で、気持ちよい。
かなり有効な効力を発揮するし、乱暴にしなければロックもしにくい。
街中からワインディングまで、有効に使えそうなブレーキだ。
バイクで出していい速度は、そのライダーのブレーキング技術で決まる、と言うのが僕の持論だ。
少なくとも、その速度から躊躇なくフルブレーキできる速度までしか、ライダーは出してはならないと思う。
直線でアクセルを開ければ、速度は上がっていく。へたくそでも、条件が良ければ、速度の数値を上げることはできる。しかし、それはバイクの機械としての性能。ライダーの速さではない。
同じ路面でも、80km/hと100km/hとでは、ブレーキングの時の挙動は変わる。波打ち、うねり、左右に曲がる道路の上で、全力の減速をできる範囲までしか、スピードは出すべきでないと思う。
V7のフロントフォークがふにゃふにゃだという声がネット上であったらしい。
「クラシック」のことが多いようで、この年式では改善されているのかもしれない。実のところはわからないが、ゆきかぜ号に関して言えば、Fフォークが柔らかすぎるとは思わない。
いきなりブレーキをわしづかみにすれは、ズコンッとフォークは沈むものだ。根本的にバネレートが低すぎるとか、ダンピングが効いてないなら別だが、そういう場合はブレーキングでなくても路上のうねりや段差通過などで底付きしてガツッっと突き上げられるはずだ。
ゆきかぜ号に関して言えば、このV7のFフォークは、ギャップをいなしながらも、しっかり踏ん張ってくれる。
柔らかすぎとは感じたことがない。
このおだやかなブレーキ特性で「フォークがブレーキに負ける」と感じるとしたら、それはブレーキングが雑すぎるからだ。
リヤブレーキとの連動、ライダーのブレーキング時の姿勢、体重の掛け方、正しいブレーキレバー入力などをバランスさせれば、V7のブレーキングは安定していてフィードバックも豊かで、とても楽しい。
不満なのは、高速域からのフル制動だけだ。でも、これはシングルディスクだからしょうがないと思う。
パッドの交換や、もっと奮発するならマスターシリンダーの交換で、だいぶ強力にすることはできると思う。
ただ、ブレーキは、強く効けばいいというものではなく、フィーリングが非常に大事だから、カスタムすることきはバランスを考えて行う必要があるだろう。
確かに、ブレーキにも、コストダウンの影響は感じる。効き目の強さでなく、もっと上質なブレーキを僕でさえ他にも知っている。
ただ、まずはこいつできちんとしたブレーキングを練習したほうがいい。
すくなくとも僕の場合はそうだ。
マイナスG曲線を、自分のイメージ通りに、自在に描けるように、街中の信号でも、峠でも、さりげない左折でも、練習してみるといいんだ。
V7は、教材としてもいいバイクだと思う。
僕にとっては、ね。