2013年9月14日

浅いバンク角

MOTO GUZZI V7special (ゆきかぜ号)を走らせて、気持ちがいいのは、やはりコーナリングだ。

前モデル、V7Classicの時には、コーナリングもよいが、流している時がとにかく心地よい、というのが評価だったようだ。
それが新型のV7stone、V7specialになり、エンジンが元気になった分、流す流す心地よさが薄れてしまったと、これはバイカーズステーションの記事でも、web上のオーナーのブログの記事でも見かけた指摘だ。

確かに、新しいV7はレスポンスがよく、軽い車体(装備で190kg)と相まってトップ5速で2000rpmくらいからでも、少し開けると加速しようとし、加速も減速もしない、ただ流すコントロールをするには、右手に少しの神経を配らなければならず、平和なクルージングを延々することは、苦手ではないにしろ、専門領域からは外れている感じがする。

ちょっとの加速も楽しい。右手で車体をコントロールするのが楽しいV7は、そのコントロールを積極的に楽しもうとする気持ちがないと、あまり楽しめないバイクになるかもしれない。そういう意味では、新しいV7の方が、V7Classicよりもいわゆる「イタ車度」を上げているということになるかもしれないが。


何度も登場するV7クラシックと和歌山和俊氏の走り。
たぶん、V7クラシックと新しいV7とで共通しているのは、コーナリングの愉しみ、それも、浅いバンク角での旋回コントロールの愉しみだと思う。

V7は車体構成からして現在のSSのフロント重視のコーナリングと違うリヤ主体の乗り方が向いている。
そして実際に上の写真のように、リヤ主体で乗った方がとても楽しい。

こういう浅いバンク角でのおだやかなコーナリング、無駄な力を入れないようにし、アクセルを当てながら旋回していくと、前後のタイヤがきれいにバランスして、ほとんど路面のストレスを感じることなく、リヤの接地点を軸としてフロント側がやさしく回り込んできてくれるような、そんな感覚を味わえる。
その回り込み方、内向力の強さは、体重の預け方で強弱が調整でき、それとスロットルワークを合わせると、自分できちんとコントロールして曲がっていく、操作実感の強い、安心したコーナリングができる。

これは信頼感にもつながり、神経を変に疲れさせない。
よって長距離、長時間のライディングでも、予想よりも疲労が少ない。
ただし、これは安楽で鼓動に身を預けるクルージングとは違う、ライディング本来の緊張感は持ったままなので、適切な休憩は必要だ。
タンクを満タンにしたら空になるまで走り続け、それを繰り返す…というライディングをしたら、それは夕方までにかなり疲れてしまうと思う。
しかし適度な緊張と弛緩とのリズムを、走りの合間に入れる短い休憩(1時間走ったら5~10分休憩くらいでいい)で保てば、楽しい気分のまま、一日のツーリングを走りきることができる。

そしてそうしたツーリングの中で現れるカーブを、ただ流すのではなく、浅いバンク角で、遅い速度でも、楽しんでコーナリングして走るのに、このV7はとても長けていると思う。

カーブに対して余裕のある速度で入っていくから、目を三角にすることもない。
倒し込みはどこか特定の場所にえいっと力を入れるのではなく、あくまで自然に、バイクと一緒に内側へ寄りかかるように、しなだれかかるように入っていく。ゆっくりのバンク速度でも、それが自然な弧を描いて、V7が直立から傾いた状態へと動いて行き、傾くのと同時に旋回力を生んでいって、遠心力とふわっと釣り合う感じでバンキングが止まり、旋回に落ちつく。その時にはアクセルがもう開いている。リヤタイヤを蹴り出す感じと、体重を内側へ落としていく感じを同調させて、これもおだやかに加速しながら、カーブを抜けていく。

上手く行けばどこにも突っ張らかった感じのないままに、しなやかにカーブを駆け抜け、加速していく自分達を、カーブの出口で見出すことができる。

軽い車体、ロール方向に軽い縦置きクランクのエンジンは、同じ浅いバンクまで倒すのにも、いろんな倒し方ができ、まして速度が遅いから、力でねじ伏せてもバイクは寝るし、旋回もできる。

しかし、V7の穏やかな浅いバンク角の旋回では、いかに軽やかに、しなやかに、小さな飛行機のように、または水の中の小さな魚のように、すいーっと抵抗なく旋回して行けるかがチャレンジだ。

これが楽しい。
操作の違い、体重の預け方の違いが、走りに現れるからだ。何をしても変わらず曲がるバイクではないから、操作に積極的になる。
かといって、最新のスーパースポーツのような鋭さはない。
直線の低速平和クルージングでは少々敏感気味だったレスポンスが、ちょっとしたカーブでも、それはドンピシャになる。ちょうど良い鋭さ、ちょうどよいだるさ。
右へ、左へ。
次々を現れるカーブを、すいすいといなしながら、平和に、しかし、きびきびと、楽しく駆けていく。
そういうバイクがMOTO GUZZI V7specialだ。

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