2013年9月5日

V7のブレーキ性能

我がV7スペシャル、ゆきかぜ号のブレーキシステムは、
フロントがφ320mmステンレスシングルディスク ブレンボ製 異径対向4ピストンキャリパー
リヤがφ260mmステンレスディスク フローティング2ピストンキャリパー
(モトグッチのHPによる。)

今日はブレーキについてレポートする。


フロントブレーキから。
まず、扱いやすく、わかりやすい。実用上、よく効くブレーキだと言っていいと思う。
やわらかいブレーキから、きつめのブレーキまで、握力に比例してブレーキ力が強まる感じで、街中ではとても使いやすい。
いきなりガツンと効くこともないし、力を弱めていったときに、張り付く感じもなく、ブレーキ力を素直に弱めていく感じだ。
パッドがディスクに触った状態から、少しずつ効きはじめて、だんだん効力を高めるまで、握り込む感覚で調整できる。
このわかりやすさは、街中でも、雨でも、またダートを走った時も頼りになった。
普段遣いには十分の効き方だと思う。

反面、3ケタの速度からフルブレーキすると、かなり握力を要求してくる。飛ばし始めると、減速時にもう少しブレーキングパワーが欲しくなる。
絶対力が不足しているのではなく、高速からロック寸前まで追い込むと、その時点で相当に握り込んで力を掛けているので、そこから微妙に力を抜いたり、また入れたりが難しいのだ。
もう少し軽い状態で高速からのブレーキングに対処したいと思ってしまう。

しかし、そうすると、街乗りやダート時の初期のわかりやすさ、扱いやすさは失われるだろう。
そちらを譲らなかったわけだ。

これはこのバイクのライダーを、「そんなに飛ばさない人」と想定していることを示しているだろう。




レバー、マスターシリンダーもブレンボ製。レバーに近さの調整機能はない。
レバーとグリップの間は少し広め。僕にはちょうどいいが女性には少し遠いかもしれない。
さっきも書いたが、握り込んで効いてくるタイプ。効きだしてからもレバーがストロークする。

ブレーキシステムの中には、感覚として、効きだしてから殆どストロークしないように感じるものもある。もちろん、レバーにかける力に比例してブレーキ力は強くなり、こちらのカチッとした固いタッチの方が好みというライダーも多い。

V7はストロークするタイプ。おだやかな、しかし、しっかりと効く、信頼できるブレーキシステムだ。



リヤはピンスライド式の2ピストンキャリパー。
これも使いやすい。減速にも姿勢制御にも、両方使える。
おだやかに効くが、効かない感覚はなく、すぐにロックすることもない。
感覚の鈍い足で操作するので、大雑把になるが、それでも扱いやすくてブレーキ入力をコントロールできるのは秀逸だ。

実用として十分なリヤブレーキ。
前の愛車、カワサキGPZ1100(95)では、あまりリヤを使わなかったが、今後はリヤブレーキの使用率が増えそうだ。




ステップのすぐ下を通る排気管を避けて、ブレーキペダルのロッド(?シャフト?レバー?)は上を通る。
このペダルもストロークのある方で、それが足応えもわかりやすく、やわらかい感触なのだが、
掛けやすい。
一定の足応えは、柔らかい粘土かジェルを押しつぶしていくような感覚で、気持ちよい。
かなり有効な効力を発揮するし、乱暴にしなければロックもしにくい。

街中からワインディングまで、有効に使えそうなブレーキだ。




バイクで出していい速度は、そのライダーのブレーキング技術で決まる、と言うのが僕の持論だ。
少なくとも、その速度から躊躇なくフルブレーキできる速度までしか、ライダーは出してはならないと思う。
直線でアクセルを開ければ、速度は上がっていく。へたくそでも、条件が良ければ、速度の数値を上げることはできる。しかし、それはバイクの機械としての性能。ライダーの速さではない。

同じ路面でも、80km/hと100km/hとでは、ブレーキングの時の挙動は変わる。波打ち、うねり、左右に曲がる道路の上で、全力の減速をできる範囲までしか、スピードは出すべきでないと思う。

V7のフロントフォークがふにゃふにゃだという声がネット上であったらしい。
「クラシック」のことが多いようで、この年式では改善されているのかもしれない。実のところはわからないが、ゆきかぜ号に関して言えば、Fフォークが柔らかすぎるとは思わない。

いきなりブレーキをわしづかみにすれは、ズコンッとフォークは沈むものだ。根本的にバネレートが低すぎるとか、ダンピングが効いてないなら別だが、そういう場合はブレーキングでなくても路上のうねりや段差通過などで底付きしてガツッっと突き上げられるはずだ。
ゆきかぜ号に関して言えば、このV7のFフォークは、ギャップをいなしながらも、しっかり踏ん張ってくれる。
柔らかすぎとは感じたことがない。
このおだやかなブレーキ特性で「フォークがブレーキに負ける」と感じるとしたら、それはブレーキングが雑すぎるからだ。

リヤブレーキとの連動、ライダーのブレーキング時の姿勢、体重の掛け方、正しいブレーキレバー入力などをバランスさせれば、V7のブレーキングは安定していてフィードバックも豊かで、とても楽しい。

不満なのは、高速域からのフル制動だけだ。でも、これはシングルディスクだからしょうがないと思う。
パッドの交換や、もっと奮発するならマスターシリンダーの交換で、だいぶ強力にすることはできると思う。
ただ、ブレーキは、強く効けばいいというものではなく、フィーリングが非常に大事だから、カスタムすることきはバランスを考えて行う必要があるだろう。



確かに、ブレーキにも、コストダウンの影響は感じる。効き目の強さでなく、もっと上質なブレーキを僕でさえ他にも知っている。
ただ、まずはこいつできちんとしたブレーキングを練習したほうがいい。
すくなくとも僕の場合はそうだ。
マイナスG曲線を、自分のイメージ通りに、自在に描けるように、街中の信号でも、峠でも、さりげない左折でも、練習してみるといいんだ。

V7は、教材としてもいいバイクだと思う。
僕にとっては、ね。

6 件のコメント:

  1. こんにちは、樹生さん。

    >柔いとかいう前に、まずは使い切ってみろ、口先野郎。
     イタリアの親父たちは、きっとそう思っていることだろう。

    そんな風に思われる気持、よくわかります。

    僕の場合は「日本の親父たち」ですが。
    バイク本体にもそう言われてる気がして。
    そんなわけで、僕はもうしばらく今のバイクを乗り続けるわけです。
    (お金がないとも言いますが)

    ブレーキングのお話、改めて勉強になります。
    「Y先輩」のお話し、また読みたくなりました。

    下手くそな僕はラジポンに替えて、だいぶ助けられています。

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    1. ソロさん、こんにちは。

       柔いとかいう前に、まずは使い切ってみろ、口先野郎。
       イタリアの親父たちは、きっとそう思っていることだろう。

      このフレーズ、書いた後ですぐ、
      「いや、そんなふうに書いたら、むしろイタリアのエンジニアに失礼か…」
      と思って消したのですが、一歩遅かった(^^;)ようです。
      すみません。ちょっとこのフレーズは、取り消したいと思います。

      V7もまた、GPZ1100と同じように、走ること、いろいろ工夫して乗ることが楽しいバイクで、
      ライダーが工夫すると、それに応えてくれるバイクです。
      ブレーキに関して、私の感想が当たっているのか、的外れなのかはわかりませんが、
      ブレーキングも楽しく、また、シフトダウンも伴うので、そのショックを限りなくゼロに近づけたい、もっともっと、うまくなりたいと走る度に思う、そんなバイクです。

      ソロさんも、ライディング、探究し続けて、楽しみ続けていらっしゃいますね。
      ラジアルポンプのマスターシリンダー、フィードバックが豊かで、コントロールが楽しくなる…と聞きます。
      そうした違いを楽しむのも、またバイクの楽しみの一つですね。

      僕も練習しなきゃ。
      Y先輩の教え、僕の中でまだ、生きています。
      昔の記事も覚えていていただいて、とても光栄です。

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  2. あはは、耳が痛いです(笑)
    タイヤのグリップ力の限界を探るのはブレーキングにしろコーナリングにしろ、バイクでは結構おっかないですね。
    最近はあまりスピードを出さずに、フロントフォークとリアサスの動きを感じられるようになろうって練習の方が多いです。こっちは怖くないです。でもなかなか感じられません^^;

    「風のV7」を読み返して、滑らかさを意識するようになりました。サスの動きに無駄が無いように綺麗で大きな弧を描くコーナリングはGBにも合いそうな気がしてます。

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    1. かねしんさん、こんにちは。
      広い安全なところで、直進で走行状態からクラッチを切り、リヤをロックさせるのはさほど危なくもなく、比較的簡単にできます。ただし、始めは低い速度で。ロックしたら緩めます。それを繰り返しながら、ロック手前の感覚をつかみます。フロントは本当にロックさせての練習はすぐにはできません。最後までできなくてもいいです。問題は、ブレーキングにまじめに取り組むかどうかです。段階を踏んで、タイヤのグリップ感をつかみながら徐々にブレーキの感覚を磨いて行きます。
      しかし、これもすべて車両が変な状態でないことが条件です。ゆがんだフレーム、左右の突き出しが合っていないFフォーク、チェーンの遊び調整でリヤタイヤの直列が出ていない…、ステップの極端なゆがみ、ハンドルの不適切な取り付け…、きちんと作動しないサスペンション…。きちんとした整備がされていないと、危険なことはありますし、まともなライディングはできません。咄嗟の危険回避の時に破綻して避けられる事故が避けられずに、自分が大怪我をしたり、人を傷つけたりてしまいます。
      バイクで飛ばすと、自分が死んだり、人を殺したりするリスクは、必ずついてきます。でもそれでもバイクで走りたいのなら、せめて安全に対しては本当に真摯でなくてはならないと私は考えています。
      私にとってブレーキ練習は、バイクで公道を走る資格が自分にあるかどうか、姿勢と言う意味での資格試験です。

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  3. 以前というか今もV7が欲しいのですが、夢を叶えられていません。V7のブレーキですが試乗したときに感動しました!『コリャ、最高のブレーキだ!』ディスクとパッドがどれだけ擦れ合っているのか掴めるんですよ!
    現在、ドゥカティモンスター797を乗ってます。V7は資金が足りなくて、中古でドゥカティ史上最も不人気で安かったから購入しました。
    同じブレンボでもV7とフィーリングが全く違い、その謎を考えていましたが、読ませて頂き速度設定が理由なのだと思いました。ありがとうございます。あろ、愛車のお名前『ゆきかぜ』素敵ですね!
    車体の画像を見てピンときました。宇宙戦艦ヤマトの地球防衛軍のゆきかぜ級と同じカラーリングだからじゃ無いですか?

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    1. 匿名さん、コメントありがとうございます。お返事遅れて申し訳ありません。
      モンスター797,空冷エンジンにに交換トレリスフレーム、モンスターの原点に返った、知る人ぞ知る名車ですね。カタログスペックだけでバイクは語れない。設定速度はモンスターの方がはるかに高速寄りだと思われます。それにふさわしいフレーム、足回り、ブレーキの構成です。硬派だが現実(ロード)に根ざしている、理解し、乗りこなす価値のある一台だと思います。どうぞ、素敵なドゥカティライフを!
      ところで、ゆきかぜの名前は、赤白の白がゆきのような色であること、元々の日本海軍のゆきかぜがどんな過酷な戦場でも沈没することなく生還していること、私の故郷である雪国の吹雪とまではいかない、風とともに降りしきる雪の美しさ、そして、名前を口に出したときの響き…等々、さまざまなファクターからそう名付けています。

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