2017年2月6日

「迷走」さん「MotoGPライダーのライディングフォーム」へのレスポンス。(2)

さて、前回の続きです。
迷走さんの「MotoGPライダーのライディングフォーム」記事をネタに、妄想を続けてみましょう。
マルケス
マルク・マルケス選手の写真を見つけました。
2017MotoGPセパンオフィシャルテストから、マルケスの同じコーナーの写真です。
気になるバイクニュース」さんに感謝します。

さて、これで、ストーナー、ロッシ、マルケスと、並べて考えてみましょう。

ロッシ
派手なスライドが印象に残るマルケスですが、この写真の時に限っていうと、
スライド量の多いのは、

 ストーナー≧ロッシ>マルケス  です。

テストではマシンの性能を調べるためにさまざまな走行をするので、テスト時の一枚の写真で一概にライダーのライディングスタイルについて、確定的なことをいうことはできません。

でも、考えるのは、面白いですよね。

ストーナー
まず、この3人、今どっちの方向へ向かって進んでいるかですが、
おおむね、路面に残っている黒い筋、これは、タイヤが路面を掻いて残していく、ブラックマークですが、この筋にそって進んでいると考えて間違いないです。

個性はいろいろあるものの、サーキットにおける最速のラインは、ある程度の幅に収まるもの。3者ともかなり速く走っていますから、基本的にこのラインからあまり外れない中で走っているはずです。

リヤホイールの見え方を見ても、マルケスは車体が斜めに見えますが、ロッシとストーナーはほぼ真後ろからの角度になっています。

もしスライドしていないなら、芝生の中に突っ込んでいくような角度です。

ここで車体の向きが違っていても、コーナーから立ち上がり、脱出した時には、後ろに控える直線に向けていくことになります。


ロレンソ
道の先が最もイメージしやすいのが、ロレンソの写っている写真です。

これを見ると、イン側の縁石のラインよりも外側に向けて、旋回を続けながらも加速していくラインとなっていることがわかります。
放物線のようなラインで脱出していくんですね。

で、走行ラインに対して、車体の向きをいつ、どれくらい変えていくか、別の言い方をすれば、後輪の進行方向(=実際に進む方向)と回転方向(タイヤそのものが向いている向き)のずれからくるコーナリングフォースを、どう生かしていくか、もっとも速い加速に結び付く、コーナリングのボトムをどこに持ってくるか、の方法論の違いが、この車体の向きに現れています。
一般的にもっとも効率がよく、最速タイムを刻めるのは、もっともグリップ力が発揮できる、わずかにスライドしている状態を、そのスライドが大きくなり過ぎず、またグリップを使い切らないことがないようにしつつ、維持しながら走っていくことです。見た目は地味に見えますが、ナイフの刃の上を走っていくような、精密さが要求されます。

そう、この走り方を選び、それができるタイヤと車体のセッティングが決まった時には、絶対的な速さを見せるのが、ホルヘ・ロレンソです。条件がそろったとき、その域でトップを独走しながらじりじりと相手を離していく走りは、誰も追いつけないものがあります。



ロレンソは、派手なスライドは多用しません。常にタイヤのグリップの最大の能力を使おうとし、しかもそれをレースの最初から最後まで使おうとします。リヤのスライドで車体の向きを変えることをあまりしないので、その分、深くバンクしている時間は他のライダーよりも長めになります。また、タイヤエッジに大きな荷重をかける割合も、やや大きくなります。
それでも上の写真のブラックマークの筋の方向と、ロレンソのマシンの向きの違いをみるとわかるように、ロレンソもグリップ力を最大域に保つようなスライドは常用しています。そして、リヤのスライド量をフロントよりもやや多めにして、その分、リヤを外に出し、車体の向きを変えつつ走っています。

スライド量が大きくない、グリップの最大を使い続ける、ということは、荷重をしっかりかけ続けられるということで、荷重が大きいことは運動エネルギーの大きさを示していますから、トータルでの旋回能力も高い、ということになります。

実はこの上の写真でも、ロレンソはフルバンクでなく、車体を立て始めているところで、アクセルを開けてのリヤスライドをしています。

でも、滑らせすぎず、荷重を抜かせず、タイヤを無駄に摩耗させずに最大の仕事量をさせるために、ライダーの荷重はしっかりまっすぐかかるよう、左足、外足のつま先も車体に沿える形で閉じ、j左脚全体をマシンに圧着させるようにして、自分の体重を荷重しています。

スライドの大きい、ロッシ、ストーナーと比べてみましょう。


ストーナーは本当に芝生に飛び込みそうですが、実はほぼ縁石と並行にスライドしながら走っています。
ロレンソに比べると、二人とも外足のホールドががっちりしていないように見えます。
それは今、リヤを大きくスライドさせている最中なので、…つまりリヤが外へ逃げていく。ライダーからすれば、下へ沈んでいくというか、逃げていく感じになります。(もちろん、これは比較の問題であって、旋回Gで、通常以上の荷重はかかっています。)

そこで、荷重抜け~ハイサイドなどを警戒して外側からがっちり抑え込むというよりも、滑っていくリヤに体も追従して、リヤタイヤの動きに遅れず、リヤへの荷重も抜けすぎないようにします。
そのため、左足のホールドは極力、やんわりとして、太ももの内側、シート面一点から全体重がマシンに追随してかかっていくようにするのです。

だから、左足のつま先は自然な角度でステップにもそんなに荷重がかかっていないことがわかります。

しかし、人はマシンがスライドすると、反射的にシートから荷重を抜いて、ステップに体重を映すものです。荷重過多によってリヤタイヤがグリップ限界を超え、スリップしたと体が判断するからです。
この二人は、それに逆らうかのように、全身がリラックスして見えます。

ストーナーの方が車体を立て気味にし、上体を内側へ入れてバランスを取っています。
よりはやくタイヤグリップの豊富な部分を使い、よりはやく全力加速状態へとつなげるために、スリップアングルと、加速Gとスライド、たまった運動エネルギーの発散のタイミングを計りながら、旋回していきます。
車種の違いもありますが、こんなにスライドしているのに、ストーナーのリヤサスは、ロッシに比べるとかなり沈んでいます。バンク角のもっと深い、すなわち、旋回Gが縦方向に効いてサスを沈めやすい状態のロレンソと比較しても、同じくらいか、もしかしたらそれ以上に沈んでいることがわかります。
それだけ、大きな仕事をさせているわけです。


じゃあ、ロッシもそうすればよいではないか。

そう思われるかもしれませんが、これはテストです。走行中に様々なことを試みています。
ロッシも、周回ごとにいろいろやっているのではないかと思われます。

ロッシのアップ写真、リヤタイヤの右に、薄青く、タイヤスモークが上がっていることに気づかれたでしょうか。

ロッシはコーナー全般で平均的にリヤを流しながら旋回加速していくのではなく、「ここ」でリヤのスライド量を増やして、マシンの向きを変え、そこから脱出加速に移行するトライをこの周回ではトライしているように思えます。

この場所でスライド量を増やしたので、タイヤはアウトへ出て、リヤサスは伸びます。次回出す、ビニャーレスよりもロッシのリヤサスが伸びているのは、ここでスライドを利用してマシンの向きを変える走法を、今ロッシが採用したからだと思います。

ロッシのすごいところは、そうした動的状態にありながら、今回比較したライダーの中ではもっともリラックスした姿勢に見えるということです。

157kgのGPマシンが高速で走るその運動エネルギーはすさまじく、それをフル加速、フルブレーキ、フル旋回に持っていくのですから、状態を変化させるときには、さすがに筋力を使います。
現在のGPライダーはみな鋼のような筋肉をしています。しかしそれは、必要な時に必要なだけ精確に入力するためで、無駄な力みは運動性を落としてしまいます。

もっとも楽そうに見える、それは動きの精確さ、タイミングの精確さを追求し無駄な力みをどこまでも排除しようとした、37歳の大ベテランならではの「武道的な」ライディングスタイルだと言ってもいいかもしれません。

ストーナー、ロッシともに、左手が見えていて、その角度から想像するに、ハンドルは左へ切れています。今右コーナーですから逆ハンドルになっています。
しかし、それはわずかな切れ角です。そして、マシンの進行方向から考えると(今マシンは写真の右から左へ動いているわけですから)、逆半どころか、フロントタイヤはイン側へ切れていて、そこでもコーナリングフォースを生んでいることがわかります。

このステア操作、軽い力でしていますが、やりすぎると転倒やスピンなどの危険が増え、やらないとラインがアウト側にずれていきます。
ここも、とても微妙な入力を、頭で考えなくてもいいように自動化した動きで、ほぼ無意識にこなしてみせています。(我々が歩くときに両足の筋肉の動きすべてに意識をもっていかないように。)

さて、今日も長くなりました。(仕事もあります。泣)

ビニャーレスとマルケスについては、次回に。

*この記事は、ど素人の当ブログ管理人、樹生和人が勝手に考えて書いたものであり、正しさの保証はどこにもありません。いや、むしろ間違っている可能性の方がはるかに高いでしょう。
どうぞ、決して鵜呑みになさらないようにお願いします。

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