よお、樹生。
おお、舵本。
お前のV7、元気か。
まあまあな、お前のゼファーは?
(この会話はフィクションです。)
元気だよ。
もう、かれこれ25年乗ってるのか。
それぐらいになるなあ。
距離は?
30万キロ。
30万キロ!?
あ、でも、だんだんいじってきてて、エンジンは2代目だし、フレームも違ってるから、もう最初のパーツって、ほとんど残ってないくらいだんだけど。
そんな好きなのか。
好きだね。俺さ、バイクに触れたのが、4気筒だろ、だからやっぱり直4のフィーリングが肌に合うというか、戻っちゃうんだよ。
戻る?
ああ、途中でさ、ツインのマシンを買い足したこともあるんだ。結構言うだろ?ツインの味わいがやっぱり好きだとか、人間の感性に合うとか。
よく聞くね。
でさ、俺もそうかなと思って、乗ってみたこともあったんだ。
何に乗ったんだ?
XR1200と、DB7。
ハーレーとビモータか、どちらも名車じゃないか。どうだった。
素晴らしかった。両方とも。ほんとに素晴らしかったよ。
じゃ、今も乗ってるのか?
いや、手放しちまった。
どうして。
これはなんかさ、もう、生まれの問題みたいなもんなんだよ。いや、育ちか。
どういうことだ?
ほら、どんなに金持ちになっても、味覚だけは変わらない、小さいころからなじんだ味が一番美味しいっていうだろ。
うん。
同じだと思うんだけど、俺にとってはさ、どんなに優れてて、魂を揺さぶられるようなマシンでも、でもやっぱり直4のフィーリングの方が好きっていうか、懐かしくなっちまうんだ。
うん。
ほら、どんなにいい女が目の前に現れてもさ、最初に惚れた平凡な彼女の方がずっと好きだってこと、あるだろう。
――はは。あるね。
あれだね。
じゃ、ゼファーのどこがそんなにいいんだ?なんて訊いても、意味ないか?
いや、それはまた違う。結構いいところは言える。
どんなところが好きなんだ?
ちょうどいい。
ちょうどいい?
重さも、フィーリングも。速さも。手応えも。シート高も。なにもかもちょうどいい。
それって、空冷ツインによく言われることじゃないか。俺のV7なんてそれの塊みたいなもんだ。
ああ、そうだな。レプリカやCB1300みたいなのとはちょっと違うんだ。でもツインにないものもある。
低回転のねばりか?
そう、そして、低回転で流しているときの、エンジンのフィーリング。
ああ、わかる。
樹生も4気筒乗りだったからな。キンキンに冷えたビールの泡みたいな、あのなめらかで、冷たくて、ころころしたフィーリング。
確かに、ツインは鼓動って感じで、路面を蹴る感じがする。
直4は違う。あの感じなんだよ。それが忘れがたい。田舎道をゆっくり流しているときとか、川沿いの道を川の流れに沿ってゆっくり下っていくときとか、あのフィーリングがたまらなくいいんだ。
ああ、それはわかるな。でも、舵本、いじりまくってたら、そういうフィーリングも変わってるんじゃないか?
そこは大事にしてるんだ。エンジンのボアは1mmアップしてるけど、キャブは負圧のCVのままにしてる。セッティングは変えてるけどな。クランクの芯出しと、ピストン、コンロッドの重量合わせはきっちりやった。
カムは?
カムはノーマル。
フレーム変えたって?
バカみたいだけど、クロモリでいちからつくってもらった。
誰に?
哲夫。
あいつに。よく引き受けてくれたな。
1年かかった。5作目で引き渡し。
むずかしかったのか。
硬さと柔らかさのバランスが。でも結局はクロモリ鋼にしただけで、まったく同じ径、同じ寸法で組み合わせたのが一番よかった。
あとは?
スイングアームはノーマル。前サスはノーマルと同サイズのやつをカヤバに。ホイールは軽いのをノーマルサイズで特注で作ってもらって。
バカだな。金かかり過ぎだろう。
バカだ。金掛け過ぎだ。でもまあ、一人もんだから可能なんだ、お前と違って。
あとは?
サイドスタンドとセンタースタンドはジュラルミンで。排気管とマフラーはチタンだけど形状をノーマルと同じに。
チタンにしたのに2本出しに?
うん。
バカだな、軽量化のためじゃないのか。
ノーマルの外観を崩したくなかったんだ。それにセンタースタンドも使いたかったし。
バカだな。
シート、ステップ回り、ハンドルは、俺の体に合わせた。シート加工はノーマルベースに中のウレタンを張り替えて、俺の体に合わせてある。でも動きやすいように。ステップは
ノーマルペグを使って、シフトリンクを作動性よく、ベアリング使って。ハンドルバーはほんの少し絞って。素材はスチール。防振ウェイトは少し重くしている。
ブレーキは?
前後のマスターとレバーをブレンボにした。でも過激じゃないやつ。制動力は十分あったから、狙いはフィーリングの向上だった。レバーはやすりかけて俺の手に合わせて形を整えた。
やれやれ。外装は?
タンクはノーマル。ウィンカー、メーターもノーマル。前後フェンダー、サイドカバー、ライトケースはノーマルと同形状をドライカーボンで作った。
ああ、バカだ。何をやってる。いじり倒してノーマルの感じがかわっちゃったんじゃないのか?
いや、いちばん危険だったのはフレームのカスタムだったけど、これが思いの外上手くいってネガが殆ど出なかった。あと、エキゾーストも、内部の反転構造をストレートにしたけど、これも実は何度もテストして、違和感なくいったよ。全体で30kgくらい軽くなったが、軽快にはなったけど、ジオメトリーは全くいじっていないから、落ち着きはある。ゼファーのままにできてると思う。
乗り味はどう変わった?
できる限り変えないっていう方針だった。そこに苦労をしたんだけど、そのおかげで、変えないままに出力が少し上がって、トルクが少し増えて、そして重量が軽いというのが、素直に出ていると思う。ふわっと、すい~っと走るのも前よりももっと得意になったし、加速時や開けてトラクションかけた時にすっと前に出る感じなんかも、DBに迫る感じになった。
フレームの効果は?
高速で振られない。コーナリングでギャップを通過しても、硬すぎず、負けずで、相当に攻められるようになった。
ああ、やれやれだ。
ああ。やれやれだ。我ながら。
大事に乗るんだろ?
ああ、あと15年は乗りたいな。
そしたら70だろうが。
ああ、それくらいまでは少なくとも、こいつと走っていたいよ。あわよくば80くらいまでな。
(この会話はフィクションです。)
とんでもなく時間と労力とお金がかかってるゼファーですが、信念がステキですね…(笑)
返信削除実はGB、DTに加えて今年はGS650Gも買っちゃいました。
僕もいわゆる国産の空冷の大型四気筒というものにずーっと興味があって、迷いに迷ったんですけど。
ホントは樹生さんみたいに一台を長く大切に…っていうのが憧れなんですが、整備が出来るようになってくると安く仕入れてそこそこの値段で売るというのが出来るようになってきて、どうにも色んなバイクへの興味が尽きないので、色々迷った挙句に買いました。
今でもたまに後悔してますし二台三台をきちんとメンテナンスするのはお金も手間も気持ちの負担も大きいので、今年乗ってみてどうするかを考えますが、まあ、長いバイクライフ、色んな試行錯誤もイイかなと思っています。
この記事で書かれているような四気筒のフィーリング、僕にはどう感じるのか楽しみです。
Shin Osawaさん、こんにちは。
削除コメントありがとうございます。
まあ、妄想談義ということで…(^^;)
もし、湯水のように、際限なくお金をかけることができるとしたら、
自分ならゼファー750をどうしたいと思うだろうかと、考えてみました。
でも、我ながら変な妄想でした。……反省。
僕が1台を長く乗ってるのは、単に買い替えるお金がないということと、
バイクは本来の状態で乗りたい(乗り始めたい)ので、基本新車で買う(当然高い…)という
ところからきています。
バイク屋さんの整備でも、店によっては締め付けトルク管理がなってなくてパーツが本来あるべき位置や上体からずれていたり、ステアリングヘッドやスイングアームのベアリング管理が全然だめで、ぎくしゃくしたり、場合によっては危険なものまであります。
それでも無理やり走れば、古いから、と言い訳して売る店も(またはそういう状態であることさえわからないままの店員さんも)あるので、よほど信頼できる店(メカニック)でなければ、中古を買う気がしないのです。
とりあえず組めましたというのと、命を乗せて走らせるというのとの間には、埋めがたい差があります。その責任感を感じない店からは、新車でも中古でも、どんなに安くても絶対に買う気がしないんです。頑固で偏屈なのかもしれませんが、ここを譲ったら、僕がバイクに乗ることの根幹が崩れます。
自分の命と人の命をないがしろにしてしまう人間はバイクにかかわってはいけないと思っています。これは、初めてバイクに乗った日から、現在まで、変わりません。
複数持ちも、十分ありだと思っています。いや、むしろ、いいなあと思います。
でも、僕はずぼらなので、複数台維持は無理かも……。
一台でも、汚くしてたりしてますからね…。(^^;)
4気筒のフィーリング。
低回転でのビールの泡が消えていくような、あのフィーリング、僕は「ベルベットクルージング」と呼んでいましたが、きちっと整備された直4マシンでしか味わえない感覚です。
GS650Gとは、渋いですね。
そのころのスズキのエンジンは丈夫で、ちゃんと普通の整備していれば、まず壊れないとまで言われていました。
どこにも引っかかりのない直4のフィーリング、ぜひ味わってください。
樹生さん返信ありがとうございます。
削除こういうとイヤかもしれませんが、僕のライダースピリッツは多分に樹生さんの影響を受けていて、特にあの弾丸ツーリングでバイクの整備に関して反省させてもらってから、「命を乗せて走るもの」という意識を持つようになりました。
それでも自分で整備すると決めた辺りは、やっぱり触るのも大好きなんだなと思います。もしくは、まだ認識が甘いか…^^;
自分で乗ると決めたバイクは全てパーツリスト、サービスマニュアルは揃えています。乗る前に基本的な部分は大体バラシて現状を把握して適切な処置をして組み直しますが、大体その辺でバイク屋さんや前オーナーの整備に対する認識みたいのが見えてきて(そもそも買う前に見ればなんとなく分かりますけど)、その辺りも面白いなと思います。
特にスイングアームピボット、ステアリングヘッド辺りは要チェックだと、僕も思っています。
さすがに全てのボルトやワッシャーを新品にはしませんが乗る前に納得のいく状態にはしておきたいなと思っています。
やはり自分の考え得る可能な限りベターな状態にしておきたいので、複数台持ちはそういう意味でも精神的にも労力的にも資金的にもちょっとハードです^^;
まああと、贅沢は敵だとか、今のバイクに飽きたのか?飽きは心の問題じゃないのか?バイクに乗る楽しみはバイクによってではなく自分から創造していくものではないのか?バイクから”享受”してるうちは変わらないのでは?とか…色々悩んでたんですが、いつか乗ってみたい大型の空冷四気筒はスズキの2バルブが良いなと思ってた折りに滅多に見れないモノが札幌で現車確認出来る在庫であったので、まあ後悔するのもアリかと思って買いました。
なんだか言い訳染みてたり、一応僕も考えてます!みたいな主張みたいで女々しいかな。
いやでも、僕なりの形で樹生さんのスピリッツを少しでも受け取って僕なりのバイクライフを、想像していきたいなと思っていて、その辺りでいつも感謝しています。
一時RC42のCB750とも迷ったんですが、せっかくなら味がありそうな方が良いなとGS650Gにしました。CBとGSでデザインの方向性は逆ですが、新しい時代へ向けた大衆車向けという意味ではどちらも販売戦略上のターゲットは同じだったのではと感じています。
「ベルベットクルージング」どう感じるか、楽しみです。
Shin Osawaさん、こんにちは。
削除誰でも、自分だけのバイクライフを送っているし、作っていくものだと思います。
Shinさんは、Shinさんの道を、歩いているのですね。
私も人に偉そうなことを言えた義理ではありません。
でも、安全に気を付けて、できるだけ、ライディングを含めてバイクそのものを
楽しみたいと思っています。
この春に向けて、トルクレンチ、買う予定です。(ほんとに買えるかはまた別の問題ですけど)
大事に、長く、走っていきたいと思います。
樹生さん こんにちは^^
返信削除今回の記事がなぜか毎日とても気になって、
仕事が終わるごとに読み返していました。
私は長らく性格が真逆の2台で走ってきました。
自分の就職祝いで買った憧れのスズキ。
走ることがすっごく楽しいのに自分の心が求めるものと何かが違うように感じ初めて、
勤続10年のご褒美で増車したHD・・・
2台の個性はそれぞれに、そんな私の心の隙間を補ってとても良いモーターサイクルでしたが、
ある時から自分の呼吸は・・・自分なりの理想の一台を求めるようなってました。
足りないものは何だろう・・・
自分が心から求めているのは何だろう・・・
そんな思いが大きくなってきて自分にとっての終のモーターサイクルを考えるようになりました。
終のモーターサイクルをずっと考えてきて・・・
いまはやっと自分が長年求めてきたものを見つけた気がしてます。
私の年齢ではきっと最後の購入かもです(^^;
RIDERそれぞれのモーターサイクルライフ。
長年の自分の中の好みの走り方、過ごし方、感じ方・・・
シャシも含めて気持ちを乗せて走るのはとても楽しく感じます(^^)
これだったんだぁ~
なーんて思いながら万感の想いを乗せて共に走るのはいつも楽しい^^
心地良い相棒は本当にRIDERそれぞれですね^^
それぞれがいつも過ごしている大切な相棒に想いを馳せました。
selenさん、こんにちは。
削除selenさんのカタナの写真、ブログで拝見しました。
存在感がすごくて、美しくて、圧倒されました。
また、写真そのものも、そういうカタナの存在を際立たせるというか、
その存在に答えるような写真でした。
鮮烈に印象に残っています。
カタナとハーレーの2台持ちは、ある意味で理想の組み合わせの中の一つのように思います。
それでも、何か違うものを求める…。
カタナが唯一の存在になる人もいれば、ならない人もいて、
たぶんそれは、自分では選べないものなのでしょう…。
僕はいつか、直4に帰るのだろうか、それとも、V7をずっと乗るのだろうか…。
もしかして、セローに行くのか…。
それが何年後のことなのか、予想も立たず、ただ、今は、もう少しV7に乗りたい気持ちです。
GPZ1100とも、そんなふうに結局17年付き合ってきたような気がします。
「心地良い相棒は本当にRIDERそれぞれですね^^」
本当にそう思います。
例えばゼファーのように受けがある程度広いもの、
DB7のように、やや狭いもの…、いろいろあるのでしょうけれど、
相性はやはり、人それぞれ、ひとりひとり固有のものがあるのだと思います。
V7が僕にとってどんあ相棒になっていくのか、それはまだこれからで、
そのことが楽しくもあり、楽しみでもあり、ちょっと切なくもあり…。
走れる時間、走れることを、大事にしていきたいと思います。
4気筒と2気筒を今持っているんですが、設計は同じメーカーなんで、形は違えども
返信削除底辺に流れる性格は同じかな~と思っています。
結局、国産から今の外国産になったと云うのは、必然だったかな。
国産の4気筒は良く出来ているし、最近の外国産の多気筒エンジンは
素晴らしい性能で欠点は無い程の完成度。
でも、心にグッと来ないんだよね~。何故なんだろう?自分の場合、
何をバイクに求めているのかを突き詰めていくと、どうやら性能では無いみたい。
そんなにバイクの運転が上手い訳じゃないし、それよりもフィーリングや視覚、触感、音
など、どうも性能とは反対にあるものに魅かれているみたいです。
ゼファーの話ってこの辺で繋がる感じがします。確かにあの大きな4気筒エンジンを搭載
してるんでエンジンからくるものは大きいですが、全体をみた場合、バランスがいいのでしょう。
今のバイクと比べて突出したものは無いですが、シンプルで非常に真面目ですよね。
だから、このあたりが好きな方は多いのでしょうね。
ココが自分としては飽きてしまって駄目なんです。アバンギャルドなハネっかえりな面も
欲しくなってしまう・・・上手くいきませんね~(笑)
いちさん、こんにちは。
削除ベネリの4気筒、グッツィの2気筒、しかも、
2気筒の方が排気量が大きいという、そういう組み合わせですね。
「アバンギャルドな面も欲しい…。」
なるほど。
僕のV7はむしろアバンギャルドではなく、平凡な感じです。
その平凡なことに徹した非凡さでは、ゼファー(改)に
通じるものもあるかもしれません。
V7もポジションを変えて、自分仕様になってきました。
1人しかいない自分だけの、1台だけのマシン。
そういうのが欲しくなるのは、
まだ僕が、人間ができてないからかもしれません。
takaです
返信削除『ちょうどいい』
深いですね。
私のSRは、『ちょっと足りないって感じで、ちょっといい』って感じです(笑)
takaさん、こんにちは。
削除「ちょっと足りない感じで、ちょっといい」
わかるような気がします。
「全然手が届かない、手なづけられる気がしない」
そこがいい、っていう人もいるでしょうね。
「どこまで行ってみミステリアス、だからいいんだ」という人や、
「結局こっちが引くしかない。…ドカとはそういう付き合いだ」(by根本健)
ってことも。
ほんとにひと毎に、バイクとの「いい関係性」もさまざまみたいです。
SR、人車一体、協力する感じで、駆け抜けていくのが、
魅力であり、かっこいいところなのかもしれない…と思いました。
人がいて初めて完成する。乗り物って、そういうものだと思います。