2017年8月30日

約束。4

2017/8/10 8:56
8月10日。8月6日の約束の日からは4日が過ぎている。
しかし、30年目の約束は、今日から始まる。
中谷は、ギシギシいう感じの腰から背中にかけてと少し来ている頭痛に少しの不安を覚えながら、朝からバイクの整備をした。夕べはとてもできなかったのだ。仕事と、疲れで。

中谷のバイクは、この10年でカワサキのGPZ1100からイタリア製のモトグッツィV7スペシャルに変わっていた。
北海道組の中谷と白井は、10時に道の駅「マオイの丘」で待ち合わせて、東へ向かう。
天気予報は雲り。
うまくいけば振られずに済みそうだ。
しかし、今にも落ちてきそうな空模様。
2017/8/10 9:52
札幌から国道274を行くのだが、時間があまりないというのに、中谷は国道から近くの農道へと道を逸れてしまう。
昔からの彼の‟癖”だ。結果的に早く着くとしても、できればトラックや自家用車に挟まれたまま延々走りたくはない。
2017/8/10 10:02
道の駅「マオイの丘」に時間ギリギリに飛び込んで、トイレに行き、缶珈琲を買って、飲みながら白井の到着を待つ。

「少し遅れる」とメールが。

10年前は、誰もスマートフォンなんて持ってなかった。今でも中谷は「ガラケー」だ。
連絡がつくのは、便利なものだ…。
バイクでの複数の旅の心配は、まず第一に「はぐれること」なのだ。
はぐれない。はぐれても会える。会えなくてもなんとかなる。
この3つの旅のノウハウを持ってこそ、遠距離へのランデブーができた。
……そんなものは、もう昔の話で、今はすぐに連絡がついてしまう。
そして、連絡がつかない時の対処法を失っていく…。
2017/8/10 10:27
白井がやってくる。昨夜まで、かなりハードな泊まりの出張で、翌朝、即の登場だ。
会うのは、1年ぶりか。

そんな違和感も2秒もすれば消えて、さっそくルートの相談と、天気の話題に。
2017/8/10 10:36
白井と中谷は学生時代からの友人だ。学生時代は同じアパートの廊下をはさんで向かい同士の部屋で、バイク仲間でもあったから、だいたいのことはあまり話し合わなくても何とかなる。

とりあえず、白井も「水分を…」とか言いながら、缶コーヒーを飲んだ。

国道274をそのまま東へ。日高町を目指す。
2017/8/10 11:18
夕張の街の南を、国道274は東へ走っていく。
樹海ロードと名付けられたこの道は、夕張以東の山の中は、殆ど集落もない、ただ、道央と道東をつなげるために作られた「国道」だ。

情緒もあまりない。
自然の厳しさや、人間の行為の、なんというか、すごさというのか、景色に溶け込んでいないというのか…、人口力の偉大さというのか……、複雑な気分に毎回させるのが、樹海ロード、国道274だ。
2017/8/10 11:35
白井のウェアは、20年以上着ている、ゴールドウィン「GWS Euro」の上下。
今も続く、ゴールドウィンのフラッグシップウェアだ。20年物のゴアテックスは年輪なりのヤレを表面には見せつつも、まだまだ現役。
2017/8/10 11:43
白井の、決して、バイクをこじらず、無理をさせず、しかし、バイクの走りたいように走らせるその走りも、20年を越えて健在。

2017/8/10 11:56
やつはこのまま、何時間でも走り続けられる。
ちょうどお昼に日高の道の駅について、昼飯にする。

2017/8/10 12:05
日勝峠が通行止めになって1年。
この道の駅に寄る車はめっきり減った。
このパチンコ屋はいつまで円業してたんだっけ?今もしてるんだっけ?
2階のラーメン屋は今も健在。
しかし、今回は、写真まで撮ったのにここで食べない。
近所の蕎麦屋で昼にした。

2017/8/10 12:55
晴れ間が見えたり、雲が厚くなったり、空は一刻も立ち止まっていない。
帯広の駅に、17時。ホテルにチェックインして迎えに行かなくてはならない。
時間的には十分余裕はあるものの、中谷の体力に余裕がない。

用心のためにここでガソリンを満タンにして、中谷と白井は北へ。
南富良野を抜けて狩勝峠越えを目指す。
(つづく)

2 件のコメント:

  1. 奇しくも、その国道。

    実家(愛知)に走る国道247号線。。
    語呂がね、近いねw

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    1. おお、数字の一部が入れ替わっているだけなんですね。
      274は札幌圏と道東を結ぶ、下道のメインルートです。
      樹海ロードとも呼ばれています。
      3ケタ国道は、地方ごとに特色があって、いいですね。

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