2014年2月8日

雨とバイク。

雨の夜。前の愛車GPZ1100.2007.9.1 

雨に打たれる姿が似合うバイクがある。ライダースクラブの表紙写真を見ていて、そのことを考えた。


インフルエンザが全国的に流行し、僕の仕事は終わらず、慌ただしく殺伐たる日々が僕の周りで進んでいるのだが、昔のライダースクラブを読むわずかなひと時が、憩いの時間であることは前回も書いた。

その表紙の写真は帆足カメラマンが撮っているのであるが、それが毎回、ため息が出るほど美しい。完全に鑑賞対象になっている。



その中で、『1982年8月号、№50』は表紙がVT250F、
『1986年7月号、№97』は表紙がFZR400なのだが、
両方雨、しかも驟雨と思しき中での撮影なのである。

VT250Fは80年代のバイクブームの中で光り輝く大ベストセラー。
女性ライダーの間にも大人気となったが、登場時はヤマハの2ストローク起死回生の大傑作、RZ250の牙城を4ストエンジンで崩すという、ホンダらしい超ハイパフォーマンスを狙った作品だったのである。

また、FZR400は、当時流行していたレーサーレプリカがスポーツバイクをレーサーライクに仕上げていたのに対して、まずはレーサーを開発し、そこからロードモデルにモディファイするという、今までと全く違ったアプローチで一気に400ccパフォーマンスの王者を奪還しようとする、猛烈にへヴィなバイクだった。

つまり、二車ともに、晴れた日のサーキットこそが似合いそうな、そんな新車たちだったのである。
ちなみにVT250Fの本編記事の方の写真は坪内隆直氏が担当すると言う、超豪華な展開で、このころのライダースクラブの紙面の美しさと気品は、今ではどのバイク雑誌でも見ることができない。

FZR400の本編記事は当時社員カメラマンだった森下光昭氏が担当していて、これもまた、ライダースの伝統に恥じないものだ。

それにしても、帆足カメラマンは、VT250FとFZR400の表紙を飾る写真に雨を選んだのである。
これには、驚嘆するしかない。

引用 RIDERS CLUB 1982.8 No.50   cover photo VT250F  by hoasi terutaka 


引用 RIDERS CLUB 1986.7 No97   cover photo FZR400  by hoasi terutaka 
上の写真は2枚ともライダースクラブの表紙の写真部分を僕がカメラで撮影し、トリミングしたものであり、帆足カメラマンの本当の写真とはまるで別物のようにクォリティが下がってしまっている。帆足カメラマンには本当に申し訳なく思う。(なお、帆足カメラマンのHPはこちら。彼の経歴や一部写真を見ることができる。)

何が言いたいかというと、FZR400の方が顕著だが、もっとも雨の似合わないと思われるバイクを雨の中で(VT250Fはシャワーかもしれない)撮影し、それが、そのバイクの存在感を正しくとらえて伝えているということだ。

激しい雨に打たれるVT250F、そしてFZR400、どちらも美しく、迫力があり、走るマシンとしての存在感が痛いほどに伝わってくる。その逞しさの表現に、本当にやられてしまった。


「イタリアンバイクは電装系が弱い。」というのは、よく聞く話だ。本当かどうかはしらないけれど、そうかもしれないと思ってしまうことはある。
でも、僕のV7では雨でトラブルになったことは今のところない。

僕はバイクに乗る時に、晴れの日だけ乗るという乗り方は今まではしてこなかった。
数少ない休み。乗れる日。
雨でも行く。
雨の日には、雨の日にしか出会えない風景があるから。
できない走りがあるから。
たどりつけない思いがあるから。

だから、雨ごときで音をあげるモーターサイクルは、ごめんなのだ。



バイクが「生き方」から、健全な大人の趣味になって、余計な御託とか、そんなものがいろいろそぎ落とされたのはいいことだと思う。

でも、昨今問題視されている登山のように、手軽なレジャーとしてマーケティングされていくとしたら、それはやはり違うと思う。
登山と同じように、一歩間違うと命を落とす趣味がモーターサイクルライディングなのだ。

実際に雨の中なんて走らなくていい。
雨は視界も悪くなり、致命的なのは路面の滑りやすさが2輪の場合、転倒に直結することだ。
現在のツーリングタイヤは、冷えて濡れた路面のグリップも以前よりかなり向上している。しかし、晴れの日に比べ、危険なのは変わらない。防雨対策をしっかりしないと、服の中まで濡れて体が冷えたり、気持ち悪かったり、くさくなったりもする。

雨の日は走らない…という人が増えても、それでいいのだ。

しかし、だからといって雨の日は走れないバイクは、僕はごめんだ。


雨の中でも、風が吹いていても、高速道路でも、細道でも、土の道でも、暑くても、寒くても、大都市でも、山の中でも、
「こいつとなら走って行ける」…そう思わせてくれるマシンこそが、相棒にふさわしい。


今や、雨の日に喜んで外で遊ぶ子どもは少なくなった。
全身を雨に打たれながら、それでも心の中で雨を楽しみ、走ることを喜び、駆け抜けていく人は、
ライダーくらいになった。

雨の似合うバイク。

それはひとつの、扉を開ける鍵のようなものだ。

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