「フレームは、ノーマルを元に、ヘッドまわりの補強板とサイドカバーの内側にある補強板を少し変更しました。」
「補強板の変更といいますと?」
(作品中に出てくる名称はすべて架空のものであり、実在のショップ、メーカー等とは一切関係ありません。)
(今回は短いです。)
「補強板は、大まかに言いますと、ステアリングヘッドを支える部分にあるものを少し幅を広げています。高速域でのウォブルの発生を防ぐためですが、固めすぎると他に負担がかかりますし、せっかくの全体でのしなやかさが失われます。あくまでバランス補正の意味でのもので、小さな補強です。」
「田中さんなら、全く同寸でクロモリパイプのフレームを組むんじゃないかと思ったりもしたんですが」
「それも考えましたが、ちょっと硬くなりすぎるんです。低速での優しい感じも捨てがたい。ノーマルのままでも120kmくらいまでは、少々揺れても問題なく走れるレベルです。160km以上での剛性確保までを視野に入れなければ、ノーマルの方がバランスはベストです。」
「ノーマルの場合はワインディングでの現実的な実用速度は140kmくらいですよね。それ以上も170kmくらいまでは条件では十分出るけれども、ちゃんとコントロールするという感じではなくなります。このマシンの場合どこまでを求めているんですか?」
写真はV7Ⅲアニバーサリオ。出典は「motor1」より。 |
「高速道路では、もしも法規が許せば、どれくらいを想定してるんですか?」
「180km/hくらいですね。ライダーには伏せてもらわなければなりませんが。」
「それ以上は捨てているということですね。」
「はい、そこは、きっぱり割り切りました。」
函崎さんはこの会話の間、黙って男二人の話を聞いていた。
…ということは、そこまで飛ばすこともあるんだ…。…と僕は思った。
それくらいは平気でやりそうだ…。
決して乱暴な感じでもないし、キレた感じもしないのだが、
出す時は出す人なような感じを、僕は函崎さんから受けていた。
「補強をしたということは、塗装もし直しですか?」
「そうです。角川さんのところに粉体塗装をお願いしました。塗膜が厚くなり、保護性も上がっています。」
「いろは黒のままですね。でもちょっとだけ違うような…」
「はい、艶消しにしたわけではないのですが、光り過ぎないようにしてもらいました。」
「この塗装は、タンクやフェンダーなどもそうですか?」
(つづく)
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