宗谷岬の数百メートル側まで来ていたのに、岬の碑に寄らないのは、我ながらへそ曲がりかもしれない。もう何度も行ってはいるが、行くたびに、感慨はあるのだから。
今日寄らなかったのは、別にへそ曲がりをアピールしたいからじゃない。できれば札幌の家に明るいうちに帰りたかったから、少しでも時間を南下に使いたかったからだ。
まだ朝10時半くらいだから、そのまま帰れば、余裕(?)でたどり着くはずなのだが、今日の目論見は少し違っている。
宗谷から日本海側を南下するのではなく、オホーツク側を少し南下して、内陸を通って札幌に向かうつもりなのだ。
道道889号然で宗谷丘陵を走り、1077号線で猿払に出て、そこから海沿いを南下し、道の駅、猿払公園でトイレ休憩。
そして通称エサヌカ線に入った。
道道106号線、オロロンラインと並んで、最近ではいわゆる「絶景道」として有名になった道だ。全長は16kmと、オロロンラインの四分の一程度の長さ。が、長ければ偉いというわけでもない。
よく晴れたお昼前、ちらほらと見える人影。車とバイク。
観光シーズンの盛りを過ぎたからか、比較的空いた、エサヌカ線だった。
浜頓別からは国道275号線にスイッチする。
国道275号線は、浜頓別と札幌市を結ぶ、総延長313.8kmの道で、道内で2番目に長い国道。一番長い274号線は未開通区間があるから、全線を一気に走れる道としては道内で一番長いと言っていい国道だ。
さて、これを走って、札幌まで帰ろうという腹だ。
時刻は11時過ぎ。7時間で着けば、夕方6時に帰還となる計算だ。
いざ、参ろう。
とは言っても、朝3時に出て、食事は9時半ごろに稚内のローソンであんまん、肉まんを一個ずつ食べたのみ。
この道は、あまり店のない区間を長く走るから、店があるうちにエネルギーを掻き込んでおこう。
中頓別のセイコーマートによって、カツ丼を食べた。セイコーマートのカツ丼は、「まちがいない」選択だ。今回も旨かった。中頓別出発は正午。
ほぼ交通量のない国道275号線。
音威子府を過ぎ、美深を過ぎ、朱鞠内湖の際を走っている。
この美深~朱鞠内間は、本当に交通量が少ない。で、たまに見かける車両は、ヨーロッパの一般道を走るかのような速度で走っている。家も、街も、横道も見当たらない山の中を延々と走る区間では、それも理にかなっているかもしれない、とも思う。
どんどん走った。意外と体力は大丈夫なものだな…と思うが、アドレナリンのせいでそう思い込んでいる場合もあるから、テンションを上げ過ぎないように、慎重に、クールになるように心がけながら、淡々と距離を稼いでいく。
幌加内町の盆地に入ってきた。
今年の蕎麦の収穫はもう、終わったようだ。順調に距離を伸ばす。札幌が少しずつ、近づいてくる。
幌加内から札幌までは約150km。半分来たわけだ。
弾丸ツーリングの弊害に、疲れて帰るだけの後半は、ただ距離を稼いでいるだけ、ただ移動しているだけで、ほぼ、空間を空費してしまっていることがある。
せっかくの土地を「通り過ぎるだけ」になってしまうのだ。
これもまた、弾丸ツーリングが貧しいツーリングである由来だ。
しかし、その貧しさが、自分の貧しさならば、それもまた、よい。
今はとにかく、安全に、無事故で南へ走り続け、家に無事に着かなければならない。
そうした貧しさを選択することも、時にあっていい。自分自身の誇りを賭けた選択ならば。
さあ、先を急ごう。(つづく)
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