2013年12月14日

砂利道。

僕が少年だった頃、日本にはまだ、砂利道舗装の道が多く残っていた。
アスファルト舗装の道は大きな通りや交通量の多い通りで、脇道や田舎の集落に向かう細い道は、土の路面に砂利をまいた道もまだ多かった。

しかし、僕の成長する時期と(本当はもっと前から)、アスファルト舗装が増えていく時期は重なり、どんどん道は舗装されていった。
東北の、秋田県の田舎でもそうだったのだ。



世の中のバイク乗りの中には、林道ジャンキー、ダートジャンキーと呼ばれる人たちもいる。(いた。かな?)
とにかく未舗装の林道を走るのが好きで、どんどん山の中に入って行き、林道を走り、山の中でキャンプし、また砂利道を走りついで帰ってくる。

ダート好きの中でも、モトクロスやエンデューロのレプリカに乗り、林道をぶっ飛ばすのが好きな一団と、とにかく、山の中を走って行ってキャンプするのが好きな一団がいる。もちろん、さらに競技的な世界に向かっていく人や、純粋にスポーツとしてクローズドコースで、モトクロスやトライアルに取り組む人もいる。

僕はたぶん、オンロードマシンに乗るライダーの中では、かなりダートに踏み込んでいくタイプの方だと思う。
しかし僕は、別に林道走行が特別に好きなわけではない。いや、少し好きだが。

ただ、バイクに乗っていて、大通りなどを走っていて、ちょっと枝道があったりすると、この道を行くとどうなるんだろう…と思うし、入り込みたくなる。

枝道を走っていて、山の中へ向かうダート道が、楽しげに続いていると、やっぱり入り込みたくなる。ダートだから入りたいわけではない。舗装路でもいい。
しかし、ダートだから入れない…、というのは、すこ~し、くやしい思いなのだ。


それは僕のバイクライフの出発点が、DT50という、オフバイクの原付だったことも関係しているかもしれない。自転車では行けなかったところまで行ける。その行動範囲の広さ。ダートでも、幹線道路でも、道がある限り、行こうという意志があれば行ける。そんな、世界を広げてくれる魔法の道具がバイクだった。……そういう側面もあったのだ。

18年間乗ってきた、GPZ1100は大きく重くダートに入り込むのは、かなりの勇気が要った。あるいは、ダートに入らずに引き返すために、かなりの勇気が必要だったと言い換えてもいい。

V7Specialに乗り換えて、その車重の軽さ、フロント18インチのタイヤ、アップライトな乗車姿勢で砂利道にもある程度気軽に入り込めるようになった。

こページの写真のようなフラットダートなら、別にGPZでも何の問題もないのだが、ダート道はいきなり表情を変えることも多い。ガレていたり、深砂利になったり、ぬかるんでいたりすると、GPZではお手上げだ。走行不能になる前に引き返さなけれなならなくなる。そこが急坂で、道幅が狭く、崖際だったりすると、大変な苦労をすることになる。

V7なら、なんとかなることも多い。
ちょっとした砂利道でも、それが旅の過程で、通る必然性があるなら、あえて避けるのではなくて、走り込んで行きたい。
僕のバイク旅は、そういうものだから、V7では、また、そうした旅のスタイルに、徐々に戻せるきっかけになるかもしれない。


でも、僕は林道を求めてさすらうことはしないだろうし、山深くまでV7と踏み込むことも、あまりないだろうと思う。
それは北海道に10年前に引っ越してきて、本州と北海道の林道の違いを感じてから思ったことだ。
北海道の山にはヒグマが生息し、ひとりで入り込むのは危険だ。
また本州と違い、道路が山深いところで行き止まりになることも多い。
本州とて、林道とは、山の中で林業を営むために木材の運びだしや人、機材の運搬のために作られたものだが、北海道の山の林道に入り込むと、少し行くだけで、人間が入り込むべきでないエリアに入り込んだような「違和感」を感じる。これは本州、四国、九州の林道では感じなかったことだ。
人の匂いがしない道が多いのだ。もちろん林道として管理されているのだから、人の匂いが全くしないはずがない。しかし。その山はいまだに人に手なずけられていない感じがするのだ。

遊びで、気まぐれで入り込むことが許されないような、そんな雰囲気を全身で浴びることになる。それは、「森に抱かれる」といった甘い、都会人の「自然好き」仮面をべりべりと引っぺがすような、そんな感触だ。

北海道でバイクで走ってわかったことのうちの一つは、僕は決して「自然が好き」な人間ではないということだった。
僕が好きなのは里山であって、自然の厳しさの中に一人で入り込んでいくような、そんな強さは持ち合わせていないということ。
そして、そういう勝負の場として、バイクを選んでいない、ということだった。
どんなに僕がバイクやバイク旅が好きでも、それはレジャーの域を出ない。
それを思い知らされたのだった。

来年も、V7でいろんな道を走りたい。
でも、たぶん北海道の山深くまで入り込むような走りをすることはないだろう。
そうするには、それなりの準備と、覚悟が必要だ。
どうやら僕は、現実を見ようとせず、田舎の空気にミーハーに憧れているだけの都会人にすぎない。
現実がそこなら、そこからしかスタートはできない。
山道に入る時、そのことだけは、忘れないようにしている。

2 件のコメント:

  1. 樹生和人さん、こんばんは。拙ログへの温かなコメント、心より感謝しております。
    - 聖地巡礼-バイクライディングin北海道- もこちらのブログも大変素敵ですね。
    また自然の中へわけいって行く"都会人"としての"嗅覚"を失うことなく、
    "違和感"を感じられる繊細な感受性と文章にも心惹かれます。
    私自身を含めあまりにも畏れを知らない輩が多い様な今日この頃です。

    話はかわりますが、よろしければ拙ログのリンクに、
    こちらのブログを加えさせていただければ幸いです。
    どうぞよろしくお願いいたします。

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    1. 迷走さん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。こちらこそ、『迷走Riderの眠れぬ日々』、早く、正確で深いレース情報、ニューモデル情報、それぞれのマシンやライダーへの深い洞察、そして抑制の効いた淡々とした文体…。
      落ち着いた知性の感じられるブログに、感嘆しております。
      私のブログもお読みいただき、ありがとうございました。
      勝手ながら、リンクは「マイブログリスト」に項目で一足先にさせていただいておりました。すみません。
      迷走さんのブログにリンクいただけるのは、とても光栄です。ありがとうございます。
      今後も、よろしくお願いいたします。

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