2016年10月26日

秋を走る。(6)


黄葉のイタヤカエデに別れを告げ、赤井川村へと、国道393を走る。
ちょっと腹が減ってきたぞ。
ここから道の駅まではノンストップで。

2016/10/19 13:42

カエデ類が多いことから名づけられた、この国道のニックネームは「メープル街道」。
倶知安と赤井川の間の峠は最近開通した、高速、快走ワインディングだ。

もしも法規が許せば、ゆきかぜのエンジンをリミッターの当たる7000rpmまで回し切って、フルパワーでの快走が可能だ。

でも、今日もゆっくりめに。

2016/10/19 13:50

左右の山は紅葉(黄葉)を終え、散り始めているのもあり、緑の残っているものもあり、また、色づかないままに散り始めているものもあった。



2016/10/19 13:51

緒場が迫ってきた。この大きな橋を渡り、左にカーブして、長いトンネルを抜けると、赤井川側へ下っていくことになる。
秋の輝き。
山は黄色というより、茶色の枯れ色。
今年が紅葉不作といわれるのはこのゆえんだ。
この時期の気温や天候だけでなく、春先からのトータルでの天候が効いてきているらしい。
もちろん、直接には、秋の気温の変動と、天気がものをいうのだが。

さあ、トンネルを抜ける。


2016/10/19 13:54

赤井川側へ出た。
ここから下っていく。


2016/10/19 13:54

赤井川側の方が谷が深く、急坂で下る感じだ。
樹種が違うのだろう、色づき方も、倶知安側とは少し違う。


2016/10/19 13:56


どんどん下っていくと白樺の林があった。

白樺はパイオニア・プランツ。
何らかの事情で荒れ、樹々が生えない土地にまず成長する。
樹としては寿命は短い。少し土地に栄養分を与え、風よけをつくり、そしてやがて枯れていく。
もしもその土地が、ほかの木々が成長できないくらい寒かったり、土地がやせていたりする場合、白樺林の次の世代もまた白樺が育つ。
でも、もしも荒れる前にほかの樹種が、本来種として生えていた土地ならば、すぐというわけではないが、やがて白樺が回復した環境を足掛かりに、本来種がたくましく、時間をかけて成長し、元来の森に帰ることも結構ある。

ここは、周囲に白樺は多くなく、この近辺に一気に多い。
ということは、このあたりの樹が伐採されたか、台風や何かで一気に倒れたか、山火事か、なんらかの事情で荒れ地となっていたのだろう。


2016/10/19 13:56

白樺林の地帯を越え、さらに下っていくと、また、広葉樹の森にもどる。

さあ、もうすぐ道の駅だ。
今日は何を食べようか。



…と、楽しみに来たのだが、道の駅あかいがわは、トイレを除き、お休みだった。
そんなに頻繁に閉館日になるわけではないのだが、たまたま当たってしまったらしい。
こういうのもスマホを持っていれば、旅先でささっと調べて、空振りを減らせるのだろうが…。

2016/10/19 14:09
「あげいも」や「いもだんご」、「コロッケ」などを売っている小さなスタンドだけが営業していた。
もう2時も回って、このままでは血糖値が下がりすぎてよくない。
我慢せずに、食べることにする。
枝豆の入ったコロッケと、いもだんご。そして缶コーヒー。

やっぱり僕のツーリングにグルメはついてこないようだ。

今日は真狩の道の駅は混んでいるし、ニセコの高野珈琲は休みだし、道の駅あかいがわまで休みで、店ではとほほなツーリングになった。

でも。それが、全然いやではない。そういう偶然(いや、リサーチをさぼっただけだろうと、指摘されそうだが)も、旅の楽しさ。
枝豆コロッケ80円が、予想以上に美味しくて、「やった!」とにんまり。

すべてを計画し、ペースを管理し、完璧につーリングを構築していくのもよい。
一方では、行き当たりばったりで、偶然に身をゆだねるのもよい。
毎回、その両極の中でバランスが違い、その振れ幅自体が楽しかったりする。

ははは。

食べながら、カメラのレビューで今日回った湖や山、樹の写真を見直して(デジタルってそういうのできるんだよね)、ああ、いいツーリングだったなあ…としみじみ浸ったりして。

さて、帰ろう。
国道393で毛無峠を越えて、小樽市朝里方面へ。そして国道5号を札幌方面へ帰ることにする。


2016/10/19 14:44

毛無峠から見る山の紅葉も、やはり枯れ色だった。
それもまた、いいものだ。

毛無峠は、朝里川に下ってくると、中央線にガードレールが立てられ、対面通行にしないようにしている区間がある。
おそらくは雪のシーズンのスリップによる正面衝突を防ぐためだろう。
あるいは飛ばすバイクがあまりに中央線を無視して走行することが多いせいか。
中央にガードレールがあるため、一度、ガードレールのなくなっているところまで下って、安全を確認してUターンし、登ってきて道幅、路肩が比較的広く、極力通行の邪魔にならないようにゆきかぜを停めて、写真を撮った。


2016/10/19 14:44
今日もゆきかぜはよく走ってくれた。
超高速でのバトルでもしない限り、ゆきかぜの運動性能に不満を覚えることはほとんどない。

ハンドリングがまたいい。
バンクして定常旋回の状態にはいってからのライン修正や変更の自由度が高いのだ。
これは安全マージンが大きいことも意味するし、複合コーナーなど、その自由度を生かして安全にかつ楽しくクリアすることも可能だ。

めったにやらないが、本気で飛ばすと、現実的な速度の範囲内では、実は結構速い。
車体剛性が低いから、こじらないように、繊細に扱うと、またさらに生き生きと走り、必要ならペースアップも可能だ。
120km/h以下限定なら、GPZ1100よりも速く走ることができるだろう。

そして、周囲を威圧しないのがまたよい。あまり強そうな顔していないからだ。
音も静かで、ポコポコしてるし。

でも走ると、とても楽しい。ほんとに楽しい。

2016/10/19 14:44
石狩湾の青がほんの少しだけ、見えている。
毛無峠では秋から冬、春先まで、走行中に木々の間から海が見えることが多い。
でも停まって写真を撮ろうとすると、樹々が司会を遮って、細切れにしか海は見えない。
走っていて、樹々の姿が流れるからこそ、海の景色が見えていたのだ。

そう、たいていの場合、速く走るほどに、視野は狭くなり、見えなくなるものが多い。そして見えなくなってしまっていることにすら、意識が行かないことも。

しかし、樹々の間から見る海のように、走っていなければ見えないものもある。
速ければいいとか、遅ければいいとか、とかく2項対立的に「どっちがいいか」を決めてしまう傾向が最近あるように感じるけれど、本当のところ、いつだって「事態はそう単純ではない」のである。

働き、暮らし、そして走る。

走り、飛ばし、停まり、そのすべての過程で風景を全身で感じる。
それがモーターサイクル・ツーリングなのだ。

この峠も結構寒い。
ガードレールがなくなるところまで、さらに登ったら、またUターンして、ゆっくり下ろう。

ワインディングが終わり、混雑する市街地走行になっても、家に着くまで、「ツーリング」は続いている。街の喧騒の中に、旅の空気を見つけることができる。
それが、ライダーだ。


ヘルメットをかぶり、あごひもをゆっくり確実に締め、グローブも丁寧にはめて、ベルクロをしっかり締める。

周囲の安全を確認してゆきかぜにまたがり、ギヤポジションを確認し、イグニッションON。

さあ、ゆきかぜ、家まで、もうひとっ走り。頼むぜ。 (秋を走る。完)

8 件のコメント:

  1. どのパン食べたかなー
    どのコーヒーにしたのかなー
    って、、、
    え、えぇーーーっ!(←マスオさん風)
    道の駅赤井川 お休みだったのですか。。ザンネン

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    1. tkjさん、こんにちは。
      マスオさん風。まさにそれですね。僕本人なのにひっくり返りそうになりました。
      こういう「はずれ」もマスオさんを思い浮かべると、とっても楽しいイベントになりますね。
      いいな、マスオさん。(^^)処世術として取り入れていこうかな…。

      いや、でも残念でした。かなり楽しみだったのに。

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  2. メープル街道って名前がついてましたよね。今年の紅葉は赤い色が少なく感じませんか?黄葉の字のごとく黄色いです。食事はお店がやって無くて難儀でしたね。コロッケはいけるようですね。食べてみたいです。
    V7ゆきかぜはトラブル無しなんじゃ無いですか~!排気音も優しいので耳から来る疲れも有りませんね。ポジションは如何でしょう?大分慣れたのじゃないですか?

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    1. いちさん、こんにちは。
      そうですね。黄色は色づいたんですが、赤になる樹は、茶色く枯れて葉を落としてるみたいに感じます。

      ゆきかぜ、今シーズン一回もトラブルなしです。
      もう日本製並みに信頼できるといってもいいんじゃないかと思います。
      その発想に沿った整備をちゃんとすれば。(してもらえば、ですね。^^;)
      ポジションもすっかりなじみました。
      違和感がほとんどなくなり、以前よりも飛ばしても、ゆっくり長時間でも、OKです。
      ステップ、ハンドルの交換は成功でした。

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  3. 「さあ、もうすぐ道の駅だ。今日は何を食べようか。」から、
    「ははは」までのくだりの樹生さんらしい冷静な分析が、
    なぜかツボにハマッて可笑しくて、何度も読み返してしましました^^
    ははは^^

    一日の楽しさが伝わる連載を読み終えて、私まで心地よくなりました!
    モーターサイクルで走るっていいですね^^
    やめられませんね(^^)

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    1. selenさん、こんにちは。
      いや、さすがに腹減ってですね(^^;)、あれあれあれ、って感じでした。
      そういう、シリアスでないトラブルってわざとやったんではあざとくてしらけるんですが、
      とほほにはまっていくのって、結構自分が当事者でも面白いと思うんです。
      ちょっとしたトラブルや予想外の出来事や、予定と狂ったり、雨が降ったり……。
      「おい、どうする?樹生君よう」なんて自分に向かって声に出したりして、で、にやにやしたりする。こういうのも、ツーリングの楽しさの一つだと思います。
      今回は、「大和のイタヤカエデ」に出会えたことが、最大の収穫だったと思いますが、
      小さなことでも、楽しさは反芻されていきますね。

      本当に、バイクツーリングは、やめられません。(^^)

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  4. takaです
    ご無沙汰してます

    秋のツーリングを、疑似体験させていただいた気分です(*^^*)
    時間と天気が合わず、まだ秋らしいツーリングに行けてません(^_^;)

    そろそろ、時間と天気が噛み合うかな?
    こんな難しさも、秋ならではですよね(笑)

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    1. takaさん、こんにちは。

      「〇〇心と秋の空」とは言ったもので、天気が変わりやすいですね。
      私の場合、今年は忙しさに加えて、疲労感が抜けず、あまり走れない一年でした。
      なんとか隙間を塗って走っただけで、いろんな風景に出会えたので、
      やはりラッキーなんだと思います。

      本州では11月末までは、まだ秋という感じがしますよね。
      もう少し秋の空気を味わっていたい私です。

      takaさんも、素敵なツーリングに出かけられますように。
      天気と時間が合うといいですね。

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