2021年1月20日

「着いた足の左右の入れ替え」

ここ数年の樹生ライドで、リスクを減らす小さな工夫を少しずつお話していこうと思っていたのですが、webの「RIDE HI」で根本健氏が、「足つきがよくないバイクでの着いた足の左右の入れ替え」について、京本諷氏にレクチャーする動画がUPされていました。

今までとは違うやり方、説明。しかし、根本氏が1980年代から一貫して展開している方法論の延長線上にあり、数年前の「RIDERS CLUB」の説明からも変わっています。
70を過ぎてなお、根本氏はライディングについて、考え、試行し、改善して説明する…という研究を続けているようです。

その身体の使い方の根本的な方法論、そして、年齢とともに衰えるのではなく、成長していく、という面では、甲野善紀氏とも似ていると言えるかもしれません。(根本氏は1948年生まれ、甲野氏は1949年生まれ。同世代です。)


今回のポイントは、「身体の捌き」です。
これは、ほとんど古武術のレクチャーに似ています。

ライダースクラブでは数年前まで、
足つきの悪いバイクの場合、
停止時は両足でつんつんになってしまうより、
しっかりお尻をずらして、片足をべったりついてしまうことを推奨していました。
その方が安定、安心するというので。

しかし、今回(動画としては前回)ではかかとまでべったりついてしまうよりも少しかかとが浮いている感じの方が支えやすいし安定する、という展開になっています。

そして、その状態で左右の足を入れ替える時には、
例えば左足から右足に着地足を入れ替える場合、
シートの左端の方に寄せていたお尻を、右側に移動させて右足を着く、
という動作がどうしても必要になります。
この、お尻を移動させるというのを、どうやるのか、というお話です。

普通言われることが言われていなく、
そうでないことを言っている。
そしてその方が京本諷氏ができてしまえば安心できるというものです。

京本氏もメディアに出るプロですから、動画で何を求めてられているのかを十分に理解して出演していることは、前提に見るべき動画だとは思います。

しかし、そこで本当に演出0%なのか、かなり演出が入っているのか、は、この動画の場合、実はどうでもいいことだと思います。

注目すべきは、この方法論です。

作用・反作用を大きく意識しないこの動きは、バイクライディングに関しては、80年代は一人、根本氏だけが、提唱していました。

2000年代に入り、古武術の動きが様々な分野で注目されるようになってから、和歌山俊宏氏がそれをライディング理論と実践に取り入れ、やがて辻司が理論的に取り入れ、論じています。

非常におこがましく、生意気、失礼なのを承知で言えば、
片山敬済氏は、ワールドGPに参戦していた頃からそうした動きも取り入れていたものの、方法論として語る、語りの部分では、作用反作用の説明の枠内の発想になっているように見えます。
これは、私からみると、柏秀樹氏もそうです。
他の論者の方々は、ほぼ、皆さん80年代の理論のバリエーションで語っているように思えます。

個々の説明は違っても、根本的発想がそうだということです。

おっと、また脱線してしまいました。

せっかく動画があるので、これはご覧いただくのがいいかと思います。

「どっか納得いかん、うそくさい」と思ったら、実際にやってみるのがいいと思います。
「あ、いくやん。」となる人と
「やっぱいかんやん、おかしいわ」となる人がいると思います。
うまくいかないと感じた人は、無理にしなくてもいいと思います。
この方法はやろうやろうと頑張るほど、うまくできなくなるやり方だからです。

バスケットボールのレイアップシュートを初めて練習すると、たいていの場合はボードに強く当たって跳ね返っていってしまいます。
「リングの上に置いて来い」
というニュアンスは、一生懸命放り上げることをいくら繰り返してもできません。
自分の走っている速度、ボールを持って腕を振り上げていく速度、
それらを相殺するようにリングの上に「やさしく」ボールを置いてくる…というニュアンスは、逆転の発想で「できた」ときに初めて「わかる」種類の言葉であり、行動なのです。

古武術的動きも似たものがあります。
筋トレして、力を込めて入力する…という発想では、たどり着かない動き、身体の捌きなのです。

もちろん、徹底的に分析すれば、筋肉と骨格の動きの集成として還元できます。
しかし、当の本人の認識としては、そういう身体意識でないところで動く種類の動きです。

自分には合わないし、魅力を感じないという人は、無理にしなくてもいい。
そうでない、筋力によるメソッドは他に多くあり、それでも結構うまく行くのです。

でもなんだかできそうだ、
わからないけど、魅力を感じる…という人は、力を抜いて、トライしてみる価値はあると思います。

ライテクになると、何かとどちらが正しいか、どちらが間違っているかで、論争が始まることがあります。
相手をリスペクトしつつの議論は、非常に有用で楽しいものです。
ただ、相手を否定したいだけのけなし合いは、不快な思いを増大させるだけで、得るものはありません。

そんな暇に、両方やってみて、自分に合うと思う方を自分の場合のやり方として、自分の責任でその都度、選び取っていけばいいのだと思います。

身体の動かし方や身体の変化、時に心境の変化によっても、有効なライディングの方法論は変わっていきます。

楽しみながら、より安全で、より気持ちいいライディングを自分の中にちょっとずつ構築していく。この繰り返しというか、この終わりのない成長過程をその都度、ずっと楽しめるのも、ライディングを探求していく大きな楽しみの一つです。

8 件のコメント:

  1. こんにちは。
    ご無沙汰しています。
    今、いろいろコメントを書いたのですが、
    見返そうと思い、下にある「プレビュー」をクリックしたら全て消えてしまいました。
    このブログはどうなっているのでしょう??

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    1. がたぱしゃさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      プレビューで消えてしまいましたか…。
      私も試してみたのですが、私の場合は消えませんでした。
      どうしてでしょう、ちょっとわかりません。
      すみません、せっかくコメント書いてくださったのに……。
      何回かやってみたのですが、私の場合は消えません…。
      このブログの管理人だということが関係しているのでしょうか……?

      がたぱしゃさん、すみません。

      大変お手数で、面倒な方法になってしまいますが、
      長文コメント(大歓迎です)になりそうな場合、
      「メモ帳」などのテキストエディタで書いて、
      それを貼り付ける…という手もあります。
      (私が長文コメントになるときには、そうしています。)
      (急に通信が切れたりしてもコメントがだめになってしまうので。)
      でも、本来はぱっとできるはずのものですよね…。

      がたぱしゃさん、もしよろしければ、
      断片的でも、何回かに別れても、
      書かれたコメント、もう一度していただければと思います。

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  2. こんばんは。
    消えてしまった書き込みは、私が乗っていたバイクで凄く足付きが悪いバイクはTT250くらいだったことと、
    今のV7Ⅲには、メーカーオプションの「コンフォートゲルシート」のロータイプを付けているということでした。
    シートはノーマルでもお尻は痛くなり難いのですが、シートの前方が盛り上がっていてシートの一番前に乗れず、
    タンデムすると妻が「狭い!」というので、タンデムが多い私は、前方までフラットなオプションのシートに交換しました。
    ローシートの方にした訳は、実は国内の在庫がローシートしか無かったことと、タンデム時の立ちごけ防止になると思っての購入でした。
    ローシートだと、身長172cmの私でほぼ踵まで付きます。シート幅が狭い前の方に座れることも大きいようです。
    ・・・というような事を書いたような気がします。
    あ、今回はプレビュー表示されました。何が悪かったのかな?

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    1. がたぱしゃさん、何度もすみません、ありがとうございます。
      なるほど、オプションのゲルシートは前方までフラットなんですね。
      私は今の所、100%ソロなので、シートのことをあまり考えたことがありませんでした。
      確かに、長時間、長距離でもノーマルシート、痛くなりませんね。

      …プレビュー、なんだったんでしょう…?
      お手数をおかけいたしました。

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  3. 樹生さん、こんにちは!
    是非、お礼が言いたくて、書き込みいたしました。

    私くし事、シロートライダーは「らいでぃぐナビ」で、基本を勉強しています。
    しかし、今回UPされていた「RIDE HI」は、ノーチェックでした。

    改めて、#006はもとより、他の動画も視聴すると、「らいでぃぐナビ」とは同じ内容でも、言い回しが違っていて、理解したと思っていたことが、実は、私の勘違いだったりと、新しい発見がありました。
    動画を紹介いただき、本当にありがとうございます。

    さて、本題の動画ですが、私は、左右の足を交互に踏み込む「足踏み健康器具」の動きに似ていて、股関節を上下に動かす。と、解釈しました。今までは、足先で地面を探すので、いつかは「バタッ」と行きかねませんでした。
    シロートライダーには、覚えることが、まだまだ沢山ありますね。

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    1. カブ乗りさん、こんにちは。
      なるほど、股関節を上下…、そういう動きかもしれません。
      ライテクは、プロでも考え方、教え方のバリエーションが広く、
      一見、反対のことを言っているように見えることも多々あります。
      しかし、自分でいろいろ試しながら頭を柔軟にして、自分に合った方法を見つけていくのが
      いいように思います。

      私もだんだん身体の柔軟性や筋力が落ちつつある年聯ですので、
      毎シーズン、新鮮に、ライディングを楽しみながら向上させていけたらと思います。


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  4. 私は足が病気になって10年、自然と力が抜けたため以前(R65LS)より気持ちよく操作できるようになりました、Brevaのせいかも…?
    引き起こしやタイヤ交換手組は悪戦苦闘ですけど(涙;

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    1. 熊本Brevaさん、こんにちは。
      やはり、力まない方がうまく行くということでしょうか。
      タイヤ交換自分でなさっているんですね。
      すごいなあ。

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