2021年9月3日

訃報 内橋克人さん。

経済評論家の内橋克人さんがなくなりました。
急性心筋梗塞、89歳でした。

写真引用は、NHKニュースのHPから。(経済評論家 内橋克人さん死去 日本社会の経済格差を批判)
上記NHKニュースの原稿をそのまま引用する形になっていまいますが、いちばんよくまとまっていると思います。

日本社会の経済格差を批判し誰もが安心して暮らせる社会の実現を訴え続けた経済評論家の内橋克人さんが1日、急性心筋梗塞のため神奈川県内の病院で亡くなりました。89歳でした。

内橋さんは1932年、神戸市で生まれ、大学を卒業後に地元の神戸新聞社に入社し記者として勤務したあと経済評論家として活動を始めました。

日本の高度経済成長を支えた技術者らを描いた「匠の時代」などの著作を発表するとともに、現場取材に基づいた視点から日本社会や経済の在り方について批評を続けてきました。

そして経済格差を批判し企業などの利益追求を優先するのではなく、誰もが安心して暮らすことができる社会の実現を訴え続けてきました。

デジタル化、情報端末を各個人が持ち、情報操作が世界を動かし、旧モラルは有効性を失い、新モラルはいまだ確立せず、混沌とした価値観と「極端な明快さ」に解決の糸口を求めてしまう傾向が顕在化しての分断化が進む今。

JOC元会長の森さんの言動、河村名古屋市長の言動、二階さんや麻生大臣の態度やものいい…。旧世代の「男らしさ」や「偉大さ」の神話が引っぺがされて、その有効性よりも時代錯誤の醜さの方が皆の目についてきたこの頃。

一方、若い世代で影響力のあるいわゆる「成功者」の中にはその最大の武器を一見キレのよさそうな「決めつけ」と相手への「罵倒」とし、見下しの「冷笑」をばらまいている人も多い…。そういう人が目立つこの頃でもあります。
こうした「罵倒」や「軽蔑」、「冷笑」は、相手が強大で絶対に敵いそうもない時こそ、使うべき「槍」なのですが、彼らは、自分の優位性を示して、自分自身は何もしないままでただ留飲を下げるために使用します。勝てる相手にだけ使うこれらの武器とは、陰湿な「いじめ」と全く同根なのです。
かれらの背景にあるのは自分は経済的に成功した(儲けた)から、自分は正しいという、短絡的、無思考の有能感、優越感です。

しかし、一方では若い世代で本当に優秀な人たち、まじめで、誠実な人たちも増えているように、私には感じられます。


情報による革命は急速に世界のあり方を変えました。追い打ちをかける新型コロナウィルスのパンデミック、そして異常気象による災害。

この状態は、今まで数百年信じてきた貴族政治がいよいよ瓦解し、しかも、地震や火事、台風、飢饉などの災害が重ねて世を襲った平安末期に似ています。
また、今までのやり方が急にダメだと言われた、江戸末期から明治初期の日本の様子に似ています。

今までのやり方ではダメなことは明白である。
しかし、今までのやり方でのし上がってきた老人たちは、その成功体験があるために、新しい道へとチェンジできない。

新世代は、旧世代のことすべてを軽蔑し、冷笑しているが、実は時代を超えて継承すべき大切なものを旧世代の醜さの中から見つけ出して新しく作り直していくことができていない。

破壊と冷笑は、一時的に突破できるように見えても、その後に来るのは、長い混乱と混沌、残酷な長い長い苦しみの日々です。

そんな時に必要なのは、ただ旧世代の時代錯誤をあざ笑って自分の成功や自分の優秀さを誇る「ガキ」でもなく、ただ昔はよかったと懐かしんでいる若年寄や、本当の精神的年寄りでもなく、
現状をしっかり見つつ、経験に裏打ちされた知性でどこまでの冷静に、客観的に、しかし、時代が変わろうとも、己の信じる「正義」や「愛」を、己の身の丈の責任において、己の言葉で語り、訴え続けようとする、本当の意味での「大人」なのです。

旧世代のやり方はもう通用しない。
全国の政治家を見ても、若い知事たちのほうが、政治的な信条はさておき、現状と懸命に戦おうとしているようすが見て取れます。(もちろん、ご年配の知事の方々が頑張っていないというわけではありません。)現状への対応の速度、決断力、実行力は、新しい事態の下では、新しい方法論、新しい態度の方が大事なのです。

その若い世代と、旧世代に属しながらも、旧世代のやり方にただ乗って成功してきたのでなく、また、ただ反対を叫ぶことで自分は毒されていないと免罪符を買ったつもりで優越感に溺れてきたのでなく、地道に、旧世代のやり方、今までのやり方の本当の財産と、改めるべきことを考え、訴え続けてきた本当の「知性」との協力だけが、新しい時代を、開いていくことができます。

もちろん、これは人の実年齢と関連することが多いけれども、それが絶対条件ではありません。若くして旧世代のことまで理解し、思考できる人もいれば、年をとっても若い世代以上に現状を受け入れ、先を読めていく人もいるのです。

内橋さんは、
年齢的に旧世代であり、しかし、経済学者として常に新しい経済動向や状況を柔軟に受け入れ、研究し、現場の声を聞き、しかし一貫して「経済格差を批判し企業などの利益追求を優先するのではなく、誰もが安心して暮らすことができる社会の実現を訴え続けて」きました。

まだまだ現役で、まだまだ新鮮なその切り口。語り口。
これからの時代にとても必要な人でした。

ああ、いまこそ、あなたが必要なのに、あなたはいない……。

とても、とても寂しい訃報です。

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