2014年12月6日

超高性能2015年モデルの発表記事を読んで。


『バイカーズステーション』2015年一月号の第1特集は、「ホンダヤマハ、カワサキ、が超高性能車を相次いで発表』だった。
 ヤマハ YZF-R1/YZF-R1M
 カワサキ H2/H2R
 ホンダ RC213V-S
を18頁にわたって取り上げている。
その記事を読んでの感想を綴ってみたのだが、文章がとっちらかって、我ながら何を言いたいのか焦点の定まらない随筆になってしまった。(すみません。)

これらのモデルについては、ウェブ上や各雑誌などでももう十分に取り上げられている情報だから、バイクに興味のある方ならもうすっかりご存知の内容だろう。



ヤマハの YZF-R1は、998ccエンジン。値段がついに約200万円に乗って(北米で16,490$)、最高出力も200ps。装備重量が199kg。 電子制御サスを加えたYZF-R1Mは、21,990$で約260万円。

カワサキのH2/H2Rはスーパーチャージャーで加給する998ccエンジン。
公道走行不可、サーキット専用仕様のH2Rは最高出力310ps。公道仕様のH2で200ps。
価格はH2は25,000$(約294万円)、H2Rは50,000$(約590万円)である。

ホンダのRC213V-SはホンダのモトGPレーサーのレプリカ。
諸元は発表されていないが、相当に本物のRC213Vに近く、価格は1500万円から2000万円ではないかと噂される、別次元、究極のレーサーレプリカだ。



バイカーズステーション誌では、YZF-R1/YZF-R1Mに8ページ。
H2/H2Rに8ページ。諸元が全く発表されていないRC213V-Sにも4頁を割き、過激な煽り文句など一つもなしに、その進化や細部、技術的特徴などを細かく掲載している。

こうした精密な写真と解説に関しては根本健氏が編集長だった時代の『ライダースクラブ』がその圧倒的なクォリティで世界のバイクジャーナリズムをリードしていたといってもほぼ間違いではないのであるが、今日では日本でここまで詳しく技術的なことを乗せるのはバイカーズステーション誌だけになってしまった。

今回の写真と解説も、現車をスタジオに持ち込んでの撮影ではなく、メーカーから提供された写真と情報に基づくものだが、それでも読み応えのある解説を書いてくれたバイカーズステーション誌には感謝したい。



それにしても、各社とも2015年のこのタイミングで、一気に次の段階へ突入するような意欲的なモデルを投入してきた。

動力性能としてはすでに市販バイクの性能は飽和状態にあると考えられて実はもう久しい。
最高時速は300km/hを超えるモデルがあるし、事実上、300km/h以上にならないように歯止めをかけているのが市販トップパフォーマーたちの現状だ。
ブレーキももう10年以上前から絶対制動力が不足するなんてことは有り得ないことになった。
今は2輪用ABSもかなり普及。すでに装備されるのはハイパフォーマンスバイクでは常識化し、制動も車体剛性や車体姿勢、コントロール性など、トータルで考える次元にすでに入っている。
有り余るパワーはコーナリングでワイドなハイグリップラジアルさえ空転させるようになり、トラクションコントロールも市販車でもかなり普及してきた。
出力モードを複数持つのも、もう誰も驚かない。
誰でもわかりやすい、「何キロ出る」とか、「0-400m何秒」とかいうデータは、既にセールス上の実効力を失って来ている。

そこにきて、今回のハイパフォーマンス、さらに進歩した電子制御、軽量化、など、コストを重視しないハイグレードモデルを今回3社が発表してきたのは、一方では生産拠点をアジアの人件費等の低い国・地域に置くことによる廉価モデルで世界戦略を図るとともに、もう一方で、技術の粋を集めた超高価でも超高性能な、選ばれた人間だけのもてるプレミアムモデルを打ち出すことで、バイクへの憧れや夢、またメーカーとしての技術力の誇示などを図ろうという狙いもあるのかもしれない。

いずれにしても、マーケティングだけで開発できるようなモデルではない。
今までのそして現在の絶えざる技術開発(イノベーション)あってこそのニューモデルである。

各社ともプライドのかかった開発であったことは間違いなく、その分、ニューモデルたちの輝き、魅力も、最近になく増していると言って良い。



…さて、で、個人としてどうか、ということになるのだが、自分が走らせている姿を想像できないのだ。
僕には宝の持ち腐れだ。

ここでよくある議論が、「そんな高性能、どこで発揮させるんだ」とか「どうせ見せびらかすだけの嫌みな金持ちの見栄道具になるのがオチだ」などというものだが、僕はその考えには与しない。

これらのマシンが教えてくれることは、
もう絶対に使いきれない十分すぎる出力があるといっても、それはエンジンのカットモデルなどから分かるように、地道な技術革新を少しずつ積み上げて成し遂げられてきたものであること。
そしてその性能を積んでも破綻しないようにする全体のバランス設計には、総合的に非常に高度な設計思想、コンセプト形成、シミュレーション技術、膨大な量の実走テストなどが欠かせない。
そうした総合力は、もうこれ以上はいらないなどと僕らが嘯いている間にも、日々磨かれ、進歩し続けてきたということだ。
もちろん、タイヤの進歩も欠かせない。現在のモトGPの60°を越えるバンク角などは、タイヤの性能アップなしには考えられないものだし、市販のタイヤの性能もここ5、6年でも目覚ましい進歩を遂げているらしい。
そうした進歩は、廉価モデル、また一般モデルの操作性・安全性の向上にも必ず寄与している。
その進歩は、望ましいことでもあるし、ノスタルジアで否定できるものではないと、僕は考える。

だが、一方でこの進歩に自分がついて行けなくなってきていることも感じている。
電子制御のオンパレードで乗りやすく安全になった、超マナーのいい猛獣は、ステルス戦闘機などを連想してしまう。
僕だって80年代の乗り始め、点火の進角も自動制御になってからのバイク乗りだ。
キックでなく、セルで始動し、分解整備も自分でせずにバイク屋さんに頼んで過ごしてきた。
そして今乗っている1970年代をデザインモチーフとするモトグッチV7だって、燃料供給は電子制御のインジェクションである。
これは50年代、60年代からバイクを愛して来た人たちにとっては、驚くべきことだろう。
同じように、この高性能を電子デバイスで制御して安全に楽しく走る現代のバイクは、HOTな日本工業製品からCOOLJAPANに時代が移ったように、時の趨勢というものだろう。


これだけ制御が進歩し、かつ基本性能が飛躍的に高くなってしまうと、
逆に「素のよさ」が注目されてきてもいいのかもしれない。
進歩した技術を駆使し、シンプルで最小限の電子装置にとどめたバイクが、
ノスタルジックな外観で僕らのような50代以上のバイク乗りの琴線をくすぐるのではなく、
初めて出たときのビモータDB1のように、素材のよさ、技術革新の伝統で洗い澄まされ、研ぎ澄まされた清々しさで、驚きの高次元な走りを披露してくれないだろうか。

例えばそれが、電子制御のほとんどない空冷単気筒500cc、45ps、車重120kg、ノンカウルまたはハーフカウル、価格120万円だとしても、正確無比でしかもライダーの感性とちょうどシンクロするしなやかさを持つハンドリング、アクセルを開ける喜びの得られる駆動力、トラクション性能と、長距離でも疲れない低振動、低騒音性を備え、シンプルで美しい外観を持っていたなら、これは買いだと思うのだが。

なんて、愚にもつかないことをたらたらと考えているのであった。
そう思うと、我がモトグッチV7スペシャル(2013)、ゆきかぜ号は、僕の好みから行ってもかなりいい線行っているのかもしれない。

V7は2015年モデルでV7Ⅱとなり、6速ミッションなど、外観はほとんどそのままに大きな変更を受けたらしい。どんな進歩をしたのか、興味のあるところではあるが、僕はゆきかぜにほとんど不満はないし、ゆきかぜと僕との間になりたっていくライディングの世界を、より自然で、ぴったりくるものに、運転技術も、また車体のカスタムの方も、徐々に進めて行きたいと思っている。



<追記>2014年12月7日。
この記事のコメント欄に、Hiroshi Mutoさんが以下のようにコメントしてくれました。
クルマの話で恐縮なのですが…
以前「CAR GRAPHIC TV」という番組の中で、松任谷正隆氏が、V12エンジンのフェラーリをして、「年代物のボルドー(のワイン)」と評されていたのを、妙に納得し、強く印象に残っています。
本領発揮には程遠い公道上であっても、その豊潤で奥深い乗り味は、そのクルマの血統や歴史を感じさせ、所有し、それに乗る感動を与える、という内容であったと記憶しています。
V12に比べると、V8エンジンフェラーリはまだまだ軽く、「ボージョレーヌーボー」との例えでした。 
国産のTOPパフォーマー達は、バイクの世界において、クルマでいうところのフェラーリをある意味超えているかもしれません。こんなにもレースの世界のトップカテゴリーと酷似したエンジン付きの乗り物なんて、他にないように思います。
だからこそ、公道で、そのパフォーマンスを発揮させようというのでなく、「ボルドーのワインのごとく」であってほしいと願ってやみません。
とても大切な指摘だと思います。Hiroshi Mutoさん、ありがとうございます。(樹生和人)


19 件のコメント:

  1. ワタシもおんなじ~w

    宝の持ち腐れなんて、絶対イヤなんで、今の「国内仕様」で必要十分。
    レブリミットまで使いたい(ローでね)もん。

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    1. tkjさん、こんにちは。

      僕が前の愛車GPZ1100を購入した時に国内仕様にしたのは、輸出用のパワーは使いきれないと思ったことと、パワーを落としている分、耐久性が高いだろうと考えたからでした。
      GPZ君はとても力持ちで、もっとパワーが欲しいと思ったのは英田サーキットを走った時だけで、公道上では必要ありませんでした。
      今のV7ゆきかぜは50psですが、僕のニーズでは実際にパワー不足でいらいらすることはありません。
      むしろコーナーで全開をくれて全力疾走する一体感を、久しぶりに感じているよころです。

      それにしてもtkjさん、国内仕様でも、CBR1000RRで、ローギヤでレブリミットまで回しきると、相当すごいことになってると思うのですが…。
      おそろしや。
      公道上では、十二分に速いですね。

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  2. 樹生様。お久しぶりです、ST4と申します。
    私もこの号を購入しました。油冷GSX-R1100に興味があったのがきっかけでの購入でしたが、
    最新SSの記事も読みました。
    機械の進化としては正しいのだと思います。
    ただ、心配になります。
    例えば義務化される予定のABSしか知らないライダーがパニック時に2段階ブレーキを無意識に掛けられるか。
    危険の少ない領域で小さい排気量のバイクで浮き砂、落ち葉に乗ってしまい転倒する、
    しそうになり咄嗟に足を突き起こす。危険察知する事を覚える。
    私はそこからバイクを始められました。
    ある一定の技術がないと怖くて乗れないものであった感覚があります。
    誰にも訪れるであろう危機にできるだけ会わないように危険察知する事、
    何かのきっかけでバイクが裏切る瞬間に咄嗟の対処をする機会がスポイルされ、
    とても大きい危険な領域で初めて遭遇する。ともすれば他人も巻き込む。
    私の偏見なのだと思いますが、上手くなりたいと考えるほど、
    電子デバイス等の装備を見るといつも気になります。

    ※先週の日曜日で私も今シーズン終了となりました。
    バイクが変わったり等ありましたが、とても密実なシーズンでした。
    走行距離は1万2千キロ、ライディングを常に考えながら走れたので、
    シーズンが終わった今も反省と課題で満たされております。

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    1. ST4さん、おはようございます。早いですね。お久しぶりです。
      二輪では転倒の危機は常にあり、砂が浮いているだけでもかなり危険ですよね。
      私もその基本をDT50で何回も転倒しながら覚えた記憶があります。
      基本的に人間の感性、運転技術があって、本当にいざという時、機会が助けて(アシストして)くれる、それが安全装備だと思います。
      しかし、高性能に乗せられて、自分の実感のないままに相当な高い運動エネルギーのところまで行ってしまい、初めて破綻を経験するのが高速、高運動エネルギー域で、深刻な事故を起こす…というのは、現状でも起こっていることだと思いますし、今後も起こり得ることだと思います。すでに1980年代終わりに根本氏が言っていましたが、「乗りやすいから気をつけて」という時代になってきたのかもしれません。
      だとすると、ライダーの教育が非常に重要になりますね。
      教習所での教習内容とか、参加しやすく、安価で実の濃いランディングスクールのさらなる普及とか、メーカーや国、自治体などが協力して運転技術とそれ以上に本当の意味での安全意識の育成に力を入れなくてはならなくなると思います。
      そうするとやはりバイクはサイズの小さな原付で土の上で習うところから始めるのがいいのでしょうか。
      バランスの基本を体で覚えることを徹底する必要は、今までよりも高くなっていくのかもしれません。

      ST4さん、今年はスピードトリプルでしたね。1万2千キロも走られたのですね。その距離を常にライディングと向き合って走るとは、非常に濃密なシーズンだったのですね。
      シーズンオフ、来季のライディングを想像しながら今季の走りの課題や問題点を考える…、それも楽しい時間ですね。

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    2. こんにちは、ST4です。朝練の名残で早く目が覚めてしまいます。
      ST4、スピードトリプルは、楽しい!面白い!の感情を抑えれず、
      相当な速度の巡航をしてしまう為、手放しました。自分にはまだ早かったのだと思います。
      完全にバイクに支配されておりました。
      今は、BMWのR65、ジレラのサトゥルノ500他古いバイクに乗っております。
      とても充実した貧乏になっております。
      樹生さんの今シーズンは中々バイクに乗れない年のようですが、
      長いバイクライフという観点ではとても豊かにお送りされているように見えます。
      ライダーとして私もそう在りたいと思います。

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    3. ST4さん、こんにちは。R65とサトゥルノですか!また、しぶくて通好みなところですね。
      それはまた、最新のマシンとは違って走らせるのが面白そうです。ナローバイアスの仲間ですね。
      また、ハンドリングもパワー特性も違うでしょうし、面白い組みあわせですね。
      それは冬の間も、楽しそうです。

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  3. クルマの話で恐縮なのですが…
    以前「CAR GRAPHIC TV」という番組の中で、松任谷正隆氏が、V12エンジンのフェラーリをして、「年代物のボルドー(のワイン)」と評されていたのを、妙に納得し、強く印象に残っています。
    本領発揮には程遠い公道上であっても、その豊潤で奥深い乗り味は、そのクルマの血統や歴史を感じさせ、所有し、それに乗る感動を与える、という内容であったと記憶しています。
    V12に比べると、V8エンジンフェラーリはまだまだ軽く、「ボージョレーヌーボー」との例えでした。

    国産のTOPパフォーマー達は、バイクの世界において、クルマでいうところのフェラーリをある意味超えているかもしれません。こんなにもレースの世界のトップカテゴリーと酷似したエンジン付きの乗り物なんて、他にないように思います。
    だからこそ、公道で、そのパフォーマンスを発揮させようというのでなく、「ボルドーのワインのごとく」であってほしいと願ってやみません。

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    1. Hiroshi Mutoさん、こんにちは。
      僕の何が言いたいのかごちゃごちゃになってしまった記事で、言わなくてはならなかったことは、
      Hiroshi Mutoさんのおっしゃる「公道で、そのパフォーマンスを発揮させようというのでなく、「ボルドーのワインのごとく」であってほしい」ということだったのかもしれません。

      そもそも無駄かどうかという議論にしてしまえば、スポーツとしてのモーターサイクルなど、その効率主義の前には存在そのものを否定されてしまうからです。

      RC213V-Sなどはおっしゃる通りフェラーリの公道モデルを越え、レーシングマシンに最小限のモディファイを加えて公道を走れるようにしたものです。
      RC30もその思想で作られていましたが、今回のRC213V-Sはそれを越えた徹底ぶりと言えると思います。
      「本領発揮には程遠い公道上であっても、その豊潤で奥深い乗り味は、そのクルマの血統や歴史を感じさせ、所有し、それに乗る感動を与える」

      そういう夢のマシンとして、これらのマシンが登場してくるのならば、僕自身が触手が動くかどうかがは全く別の問題として、その存在を肯定したくなるのは、僕も同じです。

      Hiroshi Mutoさん、ありがとうございました。
      とても大切な点を、僕の記事は落としていたと思います。

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    2. なるほど! ですね。

      高速道路のETCゲートをくぐった後、その一瞬だけでも、
      「ボルドーのワイン」ののど越しを“味わい”たいです。(ワイン音痴ですがw)
      すべて“飲み干す”のは無理だな~(もったいなくてwww)

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  4. kaori2014年12月7日 21:34

    樹生さん こんばんわ。
    寒くなりました。札幌も今夜は雪でしょうか。

    GPZ1100の後継に選ぶバイクはワタシには実は想像がつきませんでした。
    それほどカワサキインライン4を深く探究されていたように感じたからです。
    でもそれはそうではなくライディングと一体のセットで味わうさまざまなことを
    味わうことを求められていたと、今はすこしわかるようになりました。

    ワタシは40年間になるライディング生活で結局一度も70年代のバイクから
    先にも後にもいくことができませんでしたし、年齢的にいってもここで
    終止符をうつことになると思います。
    ワタシは車体の関心や情報の選択肢が少なかったからだと思います。
    今になって大排気量(といっても650ですが)OHVツインに乗り出し
    たかだか50馬力程度の40年以上前のユニットと車体ですが、
    6000回転~7000回転で垣間見せるピーク出力は、
    高速路侵入での直線加速においても 
    背筋に緊張と興奮を与えるだけの力を秘めています。
    加速タイム的には全然遅いのですが、感覚的はそうではないところが、
    機械と人との感覚の妙味なのかもしれません。
    この妙味というものが、なかなかに楽しく、不可思議で
    単車乗りをいまだにやめられないものとなっているようです。

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    1. kaoriさん、こんにちは。
      今日は積雪し、気温もマイナス5℃くらいで、久しぶりの本格凍結路にトラックなどが滑ってあちこちで渋滞を起こしていました。いよいよ来たか、冬本番、といった感じです。

      僕のオンロードのコーナリングはGPz400F-Ⅱで始まり、かなり鍛えられて、ZZR400、SRV250を経てGPZ1100で18年間と、ほぼ、カワサキ4発で成り立ってきました。ZZR400を除いては、いずれもハンドリングの評価のとても高いマシーン、しかも、ライダーが主体で曲げていくマシーンだったために、よき教材、教師として僕のライディングを育ててくれたように思います。
      僕は巷の「カワサキ乗り」や「漢カワサキ」とはかなり違う温度で走ってきましたが、カワサキの実直で本当に誠実なマシンと、その走りには常に敬意をもってきました。

      また、僕は最初のバイク、DT50以外は全て新車で購入してきました。
      バイクと一緒に進もうという気持ちももしかしたら若干あったかもしれません。そうだとしたら、それはやはり『ライダースクラブ』誌の影響でしょう。
      『ライダースクラブ』は、「バイク」という商品がいろいろあってその中から好きなものを選んで買う、というものではなく、
      それぞれのマシンがどんな思いで開発され、どんな技術的挑戦をし、その結果がどんな走りとしてマシンに結実しているか、そしてその力を解放し、生き生きと走らせるためにはライダーにどんなことが求められるか、
      を、毎月、1台1台に対し挑むような徹底した姿勢で解析し、記事にしていました。
      「バイク」という商品があるのではない。この一台には、この姿となり、ここまで来るまでの人と技術のぶつかり合いがあり、そしてユーザーに向けて届けようとした手紙なのだ、ということを、1970年後半から1980年代のライダースクラブは教えてくれたのです。

      自分が乗っているバイクだけでなく、バイクそのもの、バイクを取り巻くさまざまなものに対して関心を持って行ったのは、やはりライダースクラブを読み、そして走った、かけがえのない若い頃の濃密な時間が僕にもたらしたものだと思っています。

      技術は常に進歩し、性能はどんどん上がって行きますが、どの時点でも、あらん限りの力で開発したバイクたちは、時速がどうとか、加速Gはどうとかいう以上に、走らせると体に伝わってくるものがあると思います。

      kaoriさんのZもRSも、やはりそうなのですね。

      そういう関係性を常に感じながら、未知の風景の中を走る。
      ライダーは、そういう幸せを持った人種なのだと思います。

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  5. 樹生さん、こんばんは。
    かつてはトルク&パワーを引き出すために苦労していた
    メーカーの開発陣たちが技術やマテリアルの進歩で
    そうした呪縛から解き放たれたいま、
    メーカーの旗艦たるスーパースポーツ以外のこれからのモデル・・・・・・
    それがどの様なカタチで生み出されてくるかが気になるところです。

    自由にトルク&パワーを得られるようになった現在、
    例えばDUCATIなどはほぼすべてのモデルにトルクの谷を
    あえてつくっているように感じます。
    当然、そのほうが上の回転域でのトルク、パワー感を
    気持ちよく演出できるからです。
    面白いことにDUCATIのアクセサリーパーツであるマフラーに交換すると
    このトルクの谷は見事に消えます。

    ある種メーカーがユーザーに2種類のトルク&パワー特性のモデルを準備して、
    「自由に好きな方を選択してください。」と言っているような気さえします。

    自分のブログではおこがましいですが読者さんにも
    一緒になって考えてもらいらいと思い、
    あえて具体的記述や個人的感想は避けていますが、
    文中にdb1がひきあいに出されていたため、思わず反応してしまいました。
    何卒ご容赦下さいませ。

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    1. 迷走さん、こんにちは。コメントありがとうございます。とてもうれしいです。

      『迷走Riderの眠れぬ日々』いつも拝見しています。毎日、バイクに関する確かで新しい情報を提供し、また考えるきっかけといいますか、バイクのあり方や文化に目を向けさせてくれる迷走さんのブログには、どうしてこんなことができるんだ…!どこからこの情報を得ているんだ!、と常に驚嘆しています。
      と、同時に、抑制が効き、感情的にならず、正しい情報をフェアに与えることを第1義にしているその執筆姿勢にも限りない敬意を覚えます。
      「知ること」は「考えること」の種であり、それは「実践」へとつながっていく。その大事な役割を果たしていることには、本当にすごいと思っています。

      db1が出た当時、日本車は最高出力、最高速のUPに心血を注いでいました。
      エキサイティングな数値がニューモデルごとに踊り、僕らの胸を熱くしていました。
      そこへdb1.
      ライダースクラブの記事、そしてライダースクラブビデオ「Enjoy your Rideing」での根本健氏と片山敬済氏の走りは、今でも瞼の裏に焼き付いています。
      「勝負するなら感性だろって、奴らが言ってるような気がするわけ」という、根本氏の発言も耳に残っています。
      最高速や出力でなく、走りそのもの「2輪は感性の乗り物だ」(片山氏)という思想に基づく、ビモータ車の勝負。

      今考えても、やはり歴史に残る名車だったと思います。
      ハーレーは経営が苦しかった1970年代も、今もずっと、クルージングを基本としてバイクの感性を追い求めつづけ、これもまた独自の、自分の信じた道を進み続けています。

      全力の「素のバイク」。
      だれもが目の覚めるような、究極の基本性能。

      そんなバイクを見てみたい気がします。


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  6. 樹生さん今日は。
    もう今シーズンは雪で終了になりそうですね。もう少し走りたかったです。
    この記事見ました。驚きの性能です。で、所有したいかと言うと??です。
    バイクは部品の集合体ですが、全てを統括しどんな走り味を望むか、エンジニアのセンスが、色濃く出る物と思っています。
    自分の思うように作った物はその人間性がストレートに反映して非常に楽しい。
    多数の人間が関わると、個性が失われやすく
    つまらない物ができます。
    確かにバイクは工業製品ですが、人の息ぶきを感じる物であって欲しいですね。
    この4台は非常に似ていて、皆同じに見えます。目指す速度域が同じなんでしょうね。
    サーキットでテストしているのかな?
    同じCADシステムで設計している感じです。
    どうにも魅力を感じないのです。
    バイクの愉しさが伝わって来ないな~。

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  7. いちさん、こんにちは。

      自分の思うように作った物はその人間性がストレートに反映して非常に楽しい。
      多数の人間が関わると、個性が失われやすく
      つまらない物ができます。
    バイカーズステーション誌の佐藤編集長がいちさんと同じようなことを書いていました。

    ライテクおたくでもある私から見ると、今回の3台は、ここ数年なかった「一気に上げる」ということを同時にしてきた、それも超高性能方向で値段のタガを外したかのようにやってきた、という点では同じように見えますが、各メーカーごとの個性、違いがはっきり出てきたようにも見えます。

    ヤマハは、いかにもヤマハらしい熟成路線。
    カワサキは、むちゃやろ!と突っ込みたくなる大胆さ。
    ホンダは、最先端!のパイオニア。
    まあ、こんな違いを感じるのも、「マニア」的偏愛なのかもしれませんけれど。

    カワサキの鉄フレーム、スーパーチャージャー300ps、フロントカウルがこんな上向いてて、ウィングでダウンフォースってあほちゃうか!どないなっとんのや!って感じで、実はなかなか「興奮」しております。

    外見的にも、3車とも、久々にインパクトのあるヤツが出てきやがった!とは、思っているんです。

    ただ、それに乗る自分が想像できない…。
    きっと持て余す。きっと心の底からは楽しめない。なんかマシンに対して申し訳なく感じてしまいそうです。

    (あらゆる男をひれ伏せさせるような、ものすごい美貌の女性って、たぶん見たら、おおおおおおッツ!と興奮すると思うんですよ。でも、実はそういう人は僕の好みとは違う。すごいとは思ってもその外見で恋はしない。僕にも一目ぼれはあると思うのですが、それは、すごいかどうかとはたぶん別の、僕の本能的な部分が感応して一目ぼれになると思うのです。)

    ああ、ついて行けなくなった…、オレも曲がり角を曲がったか…と、しみじみ感じている次第です。

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  8. 樹生さん、こんばんは~。
    曲がり角なんて・・早すぎですよ(笑)

    そこで私のセカンドバイクいや、メインバイクであるベネリクワトロの話をひとつお話します。
    このバイクは、とんでも無く乗りずらいです。ですが、この小さいバイクがひとたび加速に移ると
    唸りを上げるエンジン音とともに前にダッシュします。激しく咳込むようなキャブの動きが見える
    かのように、その体格に似合わない野太い《ウオオ~》と聞こえるサウンドで前に進みます。
    このエキサイティングな音の御馳走で、いつもニンマリしてしまいます。
    で、はたっと気がつくのです。乗り味が柔らかい中にもコシがあったり、スッと軽く旋回することだとか、
    思いのほか粘るエンジンの裏の顔を見つけて驚くのです。そして8000回転を越えるあたりから
    《ファアアーン》とラッパのように鳴り出す高音は国産マルチとは別のサウンドで興奮します。
    そして風景が流れる世界が始まるのです。
    やっぱオペラを生んだ国の人が作ったバイクなんだな~と思うのです。
    無理やりな部分があったり、理解しがたい工作精度の低さなどまるで関係無いと言わんばかりに、
    ベネリが作るバイクとはこういうものなんだ~と言う感じがビシバシ伝わってきます。

    いつの頃からか、バイクの楽しみであるサウンドが規制でつまらなくなってしまったのか?
    あのMVアグスタがレースから撤退した時に、ひとつは騒音規制があったそうです。
    4本のメガホンから流れるサウンドは伝説になりました。その頃から2ストマシンの音が
    出てきて、つまらない世界になりましたね。


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    1. いちさん、こんにちは。
      アグスタ4発のGPでの音は本当にシビれた、と当時を知る人たちは口を揃えるそうですね。
      僕、聞いたことないんです。
      いちさんのべネリもきっと、素晴らしい音色なんでしょうね。

      僕はバイクの乗り始めが1984年。
      峠に通うのも早朝の誰もいない時間、または誰もいない田舎の無名の峠。
      僕は群がって走るのが当時嫌いだったんです。「俺サ」なんか当時は大嫌いでした。
      それでも、そんな田舎の誰もいない平日の早朝の峠で、RZ-RやRZ-RRなんかに遭遇したら、
      それは間違いなく「できる」奴でした。
      クレイジーなほどのペースで駈けぬけるRZの後ろをGPz400F-Ⅱを限界まで回して追いかけるとき、
      あの2stの音とオイルの匂いが、速度が速すぎて起こる頭の中のキナ臭い匂いと合わさって、なんとも言えない
      快感だったのを思い出します。

      それは今や50を越えた僕の若さへのノスタルジーなのかもしれませんが、
      僕のヒーロー、エディーローソンの走る映像や、僕の若かりし頃の体験、情熱の中で、
      2stの音は、「快音」なんです。
      一般的に、音楽的に、つなんなくても。

      でも、バイクの思い出や、バイクへの思い入れって、そんな個人的なものが核にあるんだと思います。
      だから、客観的にどうであれ、自分の中のいい音、を大事にできれば、それでいいのかなとも思います。
      バイクに関心のない人からすれば、2stだろうが4stだろうが、街の平和を暴力的に打ち破り、かき乱す、
      ただの騒音にすぎないのかもしれませんから。

      田舎道を散策するルートを取ることの多い僕にすれば、バイクの音は地元の人を不快にさせないような、
      でもバイクの存在を知らせて危険を回避できるような、どこか暖かくて、うるさすぎない音が、最近は好みです。

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  9. こんにちは、最新のバイクの総合性能はもうほとんどレーサーと同じ感じですね。
    確かにサーキットで性能を限界まで使い切って走るには、ホットでエキサイティングで楽しいだろうなぁ
    (まぁそれだけのテクニックがあればという前提ですが、私にはないです)

    1982年製作のSF映画「トロン」のCGでの未来バイク疾走場面がふと脳裏に浮かびました
    未来のバイクはああいうふうに直角に曲がれるようになるのかな?

    単気筒の話をされていましたね、いいですね~適度なパワーに自分で操れる操縦性能
    機械の性能で走るのではなく自分の技量で安全マージンを判断して華麗にコーナーを抜けていく...
    理想やわ(笑) 昔々に読んだ島英彦の「オートバイの科学」をまた読んでみたくなりました

    PS 先週、仕事で苫小牧に行きましたが北海道はもう寒かった~札幌市内も雪景色ですね
       風邪など引かぬようにお身体ご自愛ください

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    1. 紫電改さん、こんにちは。
      島英彦(!)、ロードボンバーですね。
      鈴鹿8時間耐久レースで4気筒勢を相手に、最高8位になったんでしたっけ。
      トロン!、トロンレガシィ―も公開されましたよね。
      残念ながら両作とも観てないんです。

      バイクはバランスの乗り物。
      パワーをアップしたら、そのパワーを制御できる車体がないといけない。
      そして、それを技量と自制をもって扱える人間がいないといけない。
      難しいですね。
      「夢のバイク」、特に怒涛のバイクは、高価でいいのかもしれません。
      db1が当時のビモータとしては破格の220万程度で販売されたように、
      怒涛のフラッグシップとは別の、その最先端の技術を日常域でのライディング性能に
      合致させた、シンプルで、且つ最先端のマシンが、納得できる(=リーズナブル)価格で販売されたら、
      ちゃんと売れるでしょうか。


      北海道いらしたのですね。
      札幌も今日は一日雪でした。
      これから3月が終わるまで、長い、雪に覆われた生活です。
      バイクはその間、冬眠しています。
      春になったら、また走り出したいです。

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