2016年7月14日

暑い日に。2

赤井川の道の駅を出発して、道道1022号線を、銀山方面へ。
国道5号線に合流して、稲穂峠をトンネルで越える。
稲穂峠は頂上のトンネルまで、快適な登りの高速コーナリングが楽しめる道だ。
登坂車線が充実しているから、割と安全に、快適に走れる。
ちょうど空いていたので、まあまあのペースで走っていたら、なんと後方から大型トラックが迫ってきた。明らかに三桁以上の速度で登ってきている。
最初は冗談かと思ったが、巨体を揺らしながら猛然と迫ってくるその速度に、少し危険を感じた。

こういう時は、逆に減速して左端に寄り、さっさと先行させてしまって関わらないのが正しい。
だが、このとき、僕は反対の行動に出てしまった。

先行して、視界から消える。

行くぞ、ゆきかぜ。

心の半分がブレーキをかける。
今日は乗れていない。感情に流されるのは、愚かだ。
もう半分が言う。
そんなことは、身に染みて分かっている。分かりすぎている。
絶対に転べない。絶対に事故できない。バイクで死なない、バイクで人を殺さない。
バイクに乗るたびに、必ず心に唱える。
22歳の時から、今も、必ず。
だが、何度も転んだ。一度は死にかけた。右の肋骨7本は曲がったままくっつき、頚椎と腰椎は少しずれてしまっている。鎖骨もいびつについた。肺活量は以前の3分の2になってしまった。
それでも乗るなら、走るなら、

写真はニセコパノラマライン。

走るなら、やはり唱えるしかない。バイクで死なない、バイクで人を殺さない。

パワーバンドに入ったゆきかぜのエンジンは、直線的にレブリミットの7000rpmへと吹け上がる。
GPZのカタパルトから射出されるような加速ではない。
開けると同時にリヤタイヤが路面を蹴って、一蹴り毎に前へ出る。

悪夢のように迫ってきた大型トラックは、フィルムを逆回ししたように、ミラーの中で遠ざかり、消えた。








国道5号線から、道道604号線へ。

ニセコのすそ野を縫う、快走ワインディングだ。
道路のあちこちに「二輪車事故多発」の看板が。
「この先急カーブ、速度落とせ」の看板も多い。
その看板のあるところは、確かに回り込んだカーブが多く、しかも、もう終わりだと思わせるようなところからさらに曲がり込んでいるものが多かった。
これは、調子に乗っていると対向車線にはみ出したり、路外へ飛び出してしまうことも多いだろう。


バックステップはしっかり靴底に食いつき、コントロールがしやすい。位置もちょうどいい感じで、コーナリング時のフォームが違和感なくとれる。ハンドルバーの変更も効いている。
ノーマルハンドルはストリートファイター風、またはスーパーモタード風で、上からおおいかぶさるような、オフロードマシン的ハンドルホールドが似合う。しかし、車体は後輪重視の設計になっているから、どうもピンとこない側面もあったのだ。
今回の変更は、そこがうまく収まったような感じがする。
しかし、まだジャストではない。まだ、ポジション改良の余地はあるようだった。

コーナリング中のライン変更については、浅いバンク角からはやはり自由度が高い。
バンク角をあまり変えなくても、重心を内側へもっていくだけでもラインは内側へ入ってくれる。
同様に外へ逃げるのも簡単だ。
最近の軽量なSSはもっと簡単なのかもしれないが、満タンでも190kgの車重とスリムな車体、そして前110mm、後ろ130mmの、現在ではかなり細いタイヤサイズが、この自在さに貢献している。
これは本当に楽しい。
道道604の回り込んだカーブなど、入ってからでもどうにでも処理できる。

しかし、これがペースを上げてバンク角が深くなるとライン修正は難しくなる。
(それはどんなバイクだってそうなのだが)
しかし、タイヤグリップの向上した現在では、30年前ならアクセルを戻すと内側に倒れて転倒してしまうような状態からでもアクセルを戻すと荷重が前よりになり、その遠心力で沈んだサスよってタイヤに荷重をかけるとその抵抗で緩やかに速度を落としながら、しかも内側にラインを変えていくことも可能だ。
いわゆる、閉めて曲がるという奴だ。
1980年代のライダーには、まだなじめないというか、邪道のような気がしてしまう、このライン修正も、今回のポジション変更でさらにやりやすくなっていた。

途中、3台のバイクとすれ違った。
どのバイクもかなり飛ばしていた。

行き止まりのぶつかったT字路を左へ。
道道66号線、ニセコパノラマラインに入った。

 (つづく)

8 件のコメント:

  1. 時には強い走りをするのもバイクに乗る楽しみの一つだと思っております

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    1. 緒崎松倉さん、こんにちは。
      私も、そう考えています。
      いや、そう考えているからこそ、V7を選びました。いいマシンです。

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  2. タマには上を回してカーボンを燃やしましょう。グッチは低速も楽しいですが
    樹生さんのエンジンは回す所に面白さが有ると聞いてます。
    こちらも回すのはヒヤヒヤしながら回してます。
    パノラマに行ったときは山菜採りの車でヒヤヒヤしましたが
    今回は如何でした?

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    1. いちさん、こんにちは。
      V7はV7クラシック時代は7800rpmまで許容したエンジンです。
      ストーン、スペシャルの時代になって、7000rpmでリミットを効かせるようになりました。
      7000rpmはまだまだ余裕。もっと回りたがっているところにリミットをかけている感じです。
      つまり、リミットに当てるように回しても、余裕のエンジンです。
      本当に本気で飛ばすと50pは直線の加速で遅いと感じますが、低、中速コーナーでは回し切って走っても使い切れて、かつ、速く、面白いです。
      パノラマはとても空いていました。

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  3. takaです
    トラックとの話、ドキドキしながら読みました。
    相手が『トラック』なら、マージンを持って離せますよね。
    私も、ワインディングでワンボックスが後方で大きなロール姿勢でコーナリングしているのを、バックミラーで確認することがあります(笑)
    SRって見た目が小さいから、勘違いされやすいんですよね。そんな時は、諦め易くしてあげます。確実にコーナリング速度と脱出加速は、勝りますからね(笑)

    私もアクセルオフのコーナリング、馴染むのに時間を要しました(^_^;)
    馴れないと、グリップを信用出来ませんしね。

    ステップの食い付き、早く私も走って体感したいです(^_^)

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    1. takaさん、こんにちは。
      一般道の峠の登りで、三桁の速度で猛然と迫ってくるトラックは初めてでしたので、ちょっと驚きました。
      僕は昔、GPZ1100で、荷台にバイク2台積んだ軽トラックに登りで抜かれるということも経験ししているのですが(^^;)、このときはなんか譲る気がしませんでした。
      僕は飛ばすときはあらかじめ飛ばすと決めていることが多く、急に加速してトラックをちぎるのは心の不安定さのサインかと、自分で思い、自重しなくてはと思いました。
      でも、安全マージンとしては十分以上にとってはいたのですけれども。

      コーナリングのリハビリ、僕自身のアジャストがまだまだ時間かかりそうです。

      SRのステップテスト、楽しみですね。

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  4. スピードが速くても遅くても、ワインディングは楽しい。
    ・・・だし、「楽しい」に留めるほうがイイね!

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    1. tkjさん、こんにちは。
      もう30年以経つのに飽きないって、バイクのコーナリングって何なんだろうと思います。
      体調が思わしくなくて本当に楽しい域まで走り切れませんでしたが、
      それでも十分に楽しかったです。
      早く体調を戻して、存分に走りたいです。

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