2020年10月22日

やさしい時間へ。(3)

 

石狩市、望来の駐車場にやってきた。
海だ。

selenさんの樹がある。

だいぶ陽は傾いたが、夕日というにはまだ時間がある。



駐車場には何台かの車と、人々。
ベンチに座ったり、立ったままだったりしたが、みなここでの夕焼けを楽しみに来たらしい。
みんなゆっくりしていた。

僕の後から入ってきた一台のバイク。
カワサキH2だった。

同年代のライダーだろうか、「こんにちは。」とだけ、あいさつをかわして。



駐車場の奥から、坂を上っていく道がある。
通れるようなので、歩いて登ってみた。



やや高いところから南の方向、石狩湾が見える。
ここにいると風はそんなに強くない。
波も静かな方だと思うが、望来の街の上に、白く潮が噴き上げられたように煙っているのが見える。
圧倒的な海風の空気層の厚さ。
風の音は、確か聞こえてくる。
ドド…というか、ゴーというか、海の鳴る音だ。


道は100mもなく、登り切ると広い牧草地だった。
自分の影も、樹々の影と並んで長く見える。


そこから振り返り、海の方を見ると、
わずか数分なのに、夕日の表情が太陽に出始めている。
空気がやさしくなっていく。





駐車場に下りていく。
車の数は少し減って、バイクも2、3台入れ替わっているようだ。
下りているうちに排気音がして、バイクが2台、入ってきた。
仲間のようだ。
談笑している。


ゆきかぜの所に戻ると、selenさんの樹の正面のベンチに、H2のライダーが腰を下ろして、夕日と海を眺めている。

左手には男女のカップル、切れているが右手には、今しがた着いたライダー2人。

夕方のやさしい時間の始まりだ。

ここで、このまま夕日を待つのもいい。
でも、僕は今日、日没を迎えたい場所があった。


そろそろ、時間が迫ってきた。
そう、夕焼けの頃は、ゆっくりした時と、あわただしい時とが、交差する。

ゆきかぜのエンジンを掛け、移動する。

どういう日の入りになるだろうか。
静かに、どきどきする。
しんみりと高揚する。

さあ、ちょっとだけ移動しよう。

(やさしい時間へ。 つづく)

2 件のコメント:

  1. OH! なんと!
    この夕日がエンディングでは無かったと。
    次の記事を、松。

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    1. tkjさん、こんにちは。
      ふふふ…。
      期待を裏切る男、樹生和人です。
      次回、最終回(?)

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