樹生さん、久しぶりですね。
わあ、びっくりした。あなたですか。8年ぶり?
それくらいになりますか、さて、久しぶりにお葉書ですよ。
ああ、死語「おはがき」。なんでしょう。
「カブ乗り」さんからです。
私は、いい年をしてカブを乗り始め、
むむ、これは何台です。
樹生さん、すでに字が間違っています。お答え、大丈夫ですか?心配だなあ…
まず、カワサキのNinja250Rですが、2008年発売で、長らく空席になっていた250㏄スーパースポーツに、フルカウルのマシンをぶっこんできたという、カワサキらしい勝負車でした。このセグメント、売れなくなってきたから各社撤退していったわけで、そこに新作をぶち込むのは、相当に勇気が要りましたね。
へえ、
結果、大ヒット。250ccにカウル付きのスポーツモデル。軽量、スリムを生かした、運動性重視の流れを創り出し、カワサキ、ヤマハがツイン、ホンダはシングルという、フルカウルマシンのラインナップを呼び込むことになりました。スズキも2020年、ジクサーを投入してきましたね。そしてなんとカワサキは今年、そこに久々の4気筒エンジンをぶち込んでくるという、またもや、「売れているからそんなバイクを作って売る」ではなく、これを買って走ってみやがれ」的な、カワサキ魂を持ってきました。
でも、当たる時と、当たらない時があるんですよね、カワサキって。
そうなんです。当該記事は「リアステア4」でした。
実際のイメージは「リアステア3」がつかみやすいと思います。
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「リアステア3」 『聖地巡礼―バイクライディングin北海道』より採録。
積極的なリアステアの旋回方法について述べていきましょう。
☆注意☆
当ブログの記事は、素人の個人である当ブログ管理人が、先達のライテクに学んだことや自分自身の経験から書いたものであり、正しさが保証されているものではありません。また、当ブログと異なる考え方を否定するものでもありません。読んでの判断はあくまで読者の方御自身がなさってください。
また、言うまでもなく、バイクライディングにおいては、ライダーが自己の誇りと責任を持ってライテクを考え、実践すべきものであり、当ブログをお読みになった方の実際のライディング上のあらゆる事態について、当ブログはその責任を負いません。公道では特に気をつけてセイフティライドで。
上の写真は何度も(前回も)登場した私、樹生のライド。
1998年、ホンダ試乗会でのホーネットでの走行を妻が撮影したものです。
もう10年も前の写真ですが、ご勘弁を。
前回も、これがトラクション旋回だといいました。
そして積極的なリアステアはこの先にあると。
この写真、バイクに乗らない方には分かりにくいかもしれませんが、ライダーである私の重心は、バイクのバンク角に対して素直に沿っているのでなく、若干内側に寄っています。
右手首がやや下がってアクセルを半開にしていることが見てとれますが、この状態でクラッチを切って惰性で走ると、私とバイクはどんどんイン側に倒れ、回転半径を小さくししながら回り続けようとしますが、やがて内側に倒れこみます。
そうならないのは、アクセルが開けられ、エンジンの駆動力が後輪に伝わって、後輪が路面を蹴り、バランスしながら旋回しているからです。
駆動力(トラクション)がかかっているため、車体は「後輪支配」の状態になり、ハンドルはフリーになって、後輪と車体の行きたい方向に追随しているだけで、横方向のストレスはかからず、フロントの荷重のみを受け止めて転がっている状態です。
後輪の接地点とヘッドライトのちょっと下を結ぶ「ロール軸」が想像できるのではないでしょうか。
このロール軸の向きを内側へ内側へと向けていくことで、バイクはコーナーを旋回していきます。
これがトラクション旋回であり、リアステアの基本です。
このリアステアを、「後輪でステアしている」と感じるほどに強めるには、より重心を後輪の接地点よりも中に入れ、後輪の内向力をより高めるようにするのです。
そのための方法論を略図にしたのが下の図です。
旋回時、ライダーは自分の重心を遠心力とバンク角にバランスさせて素直にバイクに荷重するのではなく、
より内側、後輪の斜め前の路上に落とすようなつもりで重心を下げます。
この時、内足をステップで踏ん張ってしまっては体重がステップからバイクにまっすぐ荷重されてしまうので、旋回力が高まりません。
体のホールドは外足(イラストでは左足)に任せて、点線矢印「a」の方向に体をやんわりと落とし込むように意識します。
ここで同時にアクセルが開かれ、駆動力がかかって加速状態になると、ライダーの荷重は「a」方向にそのまま落ちずに、矢印「b」のように、後輪の背地点に内側から斜めにかかるように荷重されます。
リアタイヤは傾き以上に斜めに路面に押され、そこでアクセルオンによる駆動力とアンチスクワットによって、路面を蹴るときにタイヤのトレッドに横斜め方向のねじれを生じさせながら強く路面を掻き(トラクト)ます。
このタイヤの斜め方向のねじれが、ライダーには豊かなグリップ感として伝わります。
また、このねじれは、円周上でただ加速したのではなく、円の内側から外側に向けて激しく路面を蹴る感覚としてライダーに感知されます。
陸上のトラックで、カーブを走るとき、左右の足に内側から外側に向けて土を蹴った感覚がくる、ちょうどあの感覚に近いものです。
実際に、この時、リアタイヤは物理的には、傾いたことによる「キャンバースラスト」と呼ばれる内向力と同時に、タイヤの回転方向と実際の進路とのズレによって生じる「コーナリングフォース」が働いています。(この場合、スリップアングルは小さく、スライド走行のときのようなものではありませんが、トラクションによるねじれは明らかにコーナリングフォースを増大させています。)
(…と、これは、ライテクオタクのウンチクですから、飛ばして結構です。)
結果、ライダーはリアタイヤを外に蹴り出しながら、しかもリアのグリップはしっかりと感じられ、リアタイヤの接地点を支点として自分の乗ったロール軸全体が内側に回転していくような感じを受けます。
リアタイヤを支点に、車体が回転するように向きを変えていく…。
フロントタイヤは車体の一番前で、まるでスーパーの買い物カゴを乗せるキャスターの前輪のように、車体の回転に引かれるように転がって追随してくる…。
これが、リアステアです。
リアステアの旋回イメージを図にしてみましょう。
体重をより内側にかけ、アクセルを開けてその荷重を斜め前からリアタイヤの接地点にかける。
このままウィリーすれば旋回はより内側に向きますよね。
そのイメージで、リヤの駆動力を旋回力に転換し、フロントタイヤの負担を増やさずに車体の前方向を、リアタイヤを支点に内側に振り込んでいく…。
下の図も同じイメージです。
このリアステア、オンロードバイクで、グリップ走行を大原則とし、コーナリング中にもブレーキングするような突っ込みをせず、ブレーキングからバンクしたらあとは開け開けでコーナーを抜けていくので、公道でのスポーツライディングを楽しむには最適の技だと私は思います。
しかし、最近では、あまりこのリアステアという用語は聞かなくなりました。
また、リアステアは「後輪主体」の乗り方ですが、最近では前輪をより積極的に使う乗り方のほうがどうやら主流になってきています。
そのあたりについて、次回は触れたいと思います。
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以上が、リアステア3でした。
ではリアステア4も行きます。
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「リアステア4」 『聖地巡礼―バイクライディングin北海道』より採録。
前回まで3回にわたってお話してきたリアステア、私は公道でオンロードマシンのコーナリングを楽しむには最適の方法だと思うのですが、最近はライテク本の中でもあまり「リアステア」という単語を見かけなくなりました。
それはたぶん、ライテクを語るときに対象とするのが、その時代のスポーツマシンを対象とすることが多いからだと思います。
最近のライテク、特にコーナリングを楽しむバイクとしては、「SS」と略されてかかれることの多いスーパースポーツマシンたち、ホンダCBR、ヤマハYZR、スズキGSXR、カワサキZXRなどの名を冠した600ccまたは1000ccのマシン。
サーキットに持ち込めばそのままレースに使えそうな、非常に運動能力の高いスーパースプリンター達です。
もう去年のことになってしまいましたが、マスツーリングに出かけて、一緒に行った方のCBR600RRをお借りして、ほぼ交通量のない峠を飛ばしてみたのですが、その性能の高さに驚いたことがあります。
比較対象が95年型のGPZ1100ですから違いを感じるにも極端に感じたのでしょうが、まずは限界がとてつもなく高い!ということ。
車重の軽さもありますが、まずは減速性能が高い。
フロントをかけるだけでリヤも含めた車体全体が沈み込むように接地感を高めて減速していきます。
その減速がまた、GPZに比べると実に、自在。減速度の高さも違いますが(ホントによく止まる)、そのコントロールの幅が全く違いました。まるで高いオーディオの重い大きなボリュームダイヤルを回して音量をコントロールしているかのように、レバーの引き方で減速度の微妙な調整が可能。しかも、シャシーが音を上げることもなく、くうーっと減速していくのです。
そして旋回能力の高さ、たとえばGPZで60キロで旋回するようなカーブでも、80とか90でも旋回可能で、しかもその時点ではフルバンクしてないのです。
ちょっとした中速コーナーでは、簡単に3桁の旋回速度になってしまい、そこからの全開立ち上がり加速では、たちまち国内仕様ならリミッターに当たるような速度まで加速してしまいます。
なんだこりゃ!?
私は、驚きながらも、困惑していました。私には速すぎる。
バイクはまだすまし顔です。全然限界以下です。
ためしに、GPZでならちょっと突っ込みすぎだという速度からフルバンクに持ち込もうとしたところ、曲がりすぎてイン側に突っ込みそうになってしまいました。
なのに全然怖くない。扱いやすいのです。
さらにペースアップ。
するとさらによく曲がる。切れ味が徐々に増し、前後タイヤの横Gを感じるほどに攻めても、余裕の表情で曲がっていきます。脱出速度もさらに上がます。
高性能、上質、マナーよく、ライダーを急かさず、しかし、本領は私の腕では発揮できないまま。
それでも、かなりの速度で私はワインディングを駆けていました。
その日はそれで友人にCBRは返し、後はGPZで走ったのですが、一日、CBRでの感触が消えませんでした。
さて、そのCBR600RRの走りですが、ホールベースが短く、スイングアームが長く、重いものはエンジン回りに集中させて遠くに重いものを置かないようにし、最新のスポーツラジアルタイヤを履き、よく動く上質なサスペンションと軽量なホイールを履いていました。
そのコーナリングは、重心が前にあり、ロール軸も低く、マスが集中し、ハンドリングは両輪できれいにバランスして旋回していき、前後のタイヤで内輪差がつきにくいハンドリングです。
写真は和歌山利宏氏(出典「バイカーズステーション」07年9月号28頁)ですが、コーナー中間のトラクション旋回に入っても両輪のサスがきれいに沈み、後輪支配度は高めつつも前輪荷重もしっかり残り、後輪を支点にするというより、車体の重心位置を支点に回転していく感じの旋回がイメージできると思います。
ライダーの着座位置が前になり、重心も前よりでスイングアームが長いバイクの場合、リアステアでのリアを支点とした回転(ヨー回転)は、感じにくくなります。
むしろ、両輪がバランスしてフロントタイヤとリアタイヤが同じ軌跡を通る感じに近づきます。
出典は根本健著『パーフェクトライディングマニュアル』(出版1996年 39頁)
こちらはドカのモンスターでリアステア旋回する根本健氏。
クランク軸が比較的後輪よりにあり、スリムな車体のドカでは、リアステアはまさにどんぴしゃの旋回法といえます。
最近のMOTOGPのレースシーンを見ても、ブレーキングからの倒し込みで、荷重の抜けたリヤを外側に振り出すようにスライドさせながら車体を倒しこんでいくシーンを見かけますし、リーンしてすぐにアクセルを開けてトラクション旋回に入るのがリアステア旋回のパターンなのですが、最近では、リーンからクリッピングまではアクセルオフのままフロント荷重の状態で旋回していったり、GPのシーンでは、リーン後もクリッピングまではFブレーキを解放せず、Fタイヤのグリップぎりぎりを使いながら減速しつつ回転半径を小さくしていく乗り方をよく見かけます。
これは、ファーストイン、スロークリップ、ファーストアウトととでも呼べる走行パターンで、このところ飛躍的に性能を伸ばしているタイヤの技術を前提とし、もてるグリップ力をすべて有効に使って最速のライディングを求める結果として、必然的な流れといえます。
特にレースではストレートエンドの突っ込みで相手の前に出ることが多いので、速いスピードをキープしつつイン側に突っ込み、そこからブレーキングスライドを駆使してでもラインをイン側に寄せて旋回していく戦術が要求されるので、旋回初期での前乗り、フロント支配状態での減速旋回は重視される項目となりました。
もう一つ、オフロードバイクの乗り方では、ライダーはコーナリング時、シートの前に寄り、内側の足をFフォークに沿わせるかのように前に出し、フロントにしっかり荷重をかけてグリップさせつつバイクを倒し込み、荷重の抜けたリヤに駆動力をかけてスライドさせ、そのスライドをコントロールしながらコーナーを抜けていきます。
これはダートトラックなどでも常に用いられる乗り方です。
前に乗り、リヤをスライドさせてフロントタイヤよりもリヤタイヤの軌跡の方が外側を回っていく、カウンター状態、オーバーステアで回るこの旋回も、リアステアとは違いますが、2輪で曲がっていく方法の一つの標準的な方法とも呼べるものです。
述べてきたように、最先端のレースシーンでは、旋回初期ではフロント荷重とし、旋回も両輪荷重を生かした限界値の高いものにしていますし、オフのコーナリングでは、むしろスライドを前提とした考え方の方が現実的です。
ある意味、リアステアの旋回はコーナー進入の速度を高めず、コーナーに入ったら開け開けで回り、しかもスライドを前提としない、完全グリップ走行を前提とした旋回テクニックともいえるものです。
しかし、私の考えでは、
初めての峠道を走ったり、また、通い慣れていてもカーブの先で何が起こっているかわからない状態のブラインドコーナーの多い公道でのライディングでは、コーナーの奥までブレーキングを残さねばならないほど、進入速度を上げるべきではなく、
コーナー手前の直線区間で何があっても対応できるほどに速度を落としておき、旋回に入ってから、安全を確認しつつ速度と旋回力を上げていって視界が開けるとともに脱出加速を愉しむという、リアステア主体の旋回の方が安全性に優れ、楽しみを満たしてくれると思います。
(出典は『ライダースクラブ№103』1987年1月号、26頁写真 一部分)
一方で、根本健と片山敬済がヨーロッパのアルプスの1車線の綴れ折の道を、片山XL600(単機筒オフバイク)、根本VFR750Fで走ったとき、フルバンク、フルトラクションで追いかける根本は、片山のオンロードでのオフ乗り、つまりブレーキングスライドや、前後に荷重を大きく移動させつつ、タイヤがグリップしようがしまいが、自由にコントロールしておおらかに走っていく走法に、全くついていけなかったことも添えておかねばならないでしょう。(『ライダースクラブ№103』特集記事より。)
速さと豪快さのオフバイクライディングを愉しむか、オンロードマシンでのグリップ走行を前提とした繊細なリアステアでの旋回を愉しむか、
結局のところは、ライダー一人ひとりの選択に任せられているといったところでしょう。
今のところ、私は林道走行率が比較的高いオンロードライダーだと思いますが、ロードでの豪快さや絶対的速さはでなく、コーナリングの「華麗さ」に魅かれるので、リアステアを愉しむグリップ走行を選択しています。
さて、お答えですが…
樹生さん。
はい。
長い。既に紙幅が尽きています。ではまた次回!
えっ、これからなのに…。お、おたのしみ…(ブチッ)
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