2022年2月28日

ミシュランロード6の評価が、専門誌で違う。「軽快」と「穏やか」


ミシュランの新しいタイヤ、「ロード6」そのタイヤインプレッションが、バイカーズステーション、ライダースクラブ、ライドハイ、3誌に載っていたのですが、バイカーズステーション誌だけ、評価が違っていました。これは…?

バイカーズステーション誌の記事執筆は、和歌山俊宏氏
ライダースクラブ誌は原田哲也氏のインプレッションを高橋剛氏が文章化。
ライドハイ誌は原田哲也氏と小川勤氏のインプレッションを高橋剛氏が文章化してる。

ライダースクラブ誌で高橋氏が執筆した原田哲也氏のインプレッションを少し引用
 軽快。
 ロード6の特徴はこれに尽きる。そしてこの軽快さは、僕の好み、ライディングスタイルにピッタリだ。
 具体的に説明すると、バイクの倒し込みがひときわ軽やかになる。スパッとバンクし、グイっと向きを変わる。あとはいち早く車体を起こして立ち上がるだけだ。(RIDERS CLUB №575、2022、3月号、p47)
ライドハイ誌での原田哲也氏、小川勤氏のインプレッションを高橋剛氏が文章化したものは以下のようになっている。
 原田さんは「ロ―ド6はよく曲がるね」と言い、小川編集長は「ロード5に比べるとロード6はスポーティーになりましたね。とにかく動きが軽い」と言う。
 ロード5には、落ち着きと安定感がある。コーナリング中に雑な操作をしてしまったり、外乱に見舞われても、何事もなかったかのようにクリアできる。
 一方のロード6は、軽快だ。原田さんは「コロンコロンと車体が傾いてくれる感じ。わかるかなあ」と笑う。「コロンコロンしてるけど、節度感があるから安心なんだよね…(以下略)」(RIDE HI №9 2022、3月 p61)
この二誌、二人のインプレッションは、乱暴にまとめると、「軽快になった」である。

さて、バイカーズステーション誌の和歌山氏は
 5と6のハンドリングは予想以上に違いがあった。それは、この日両タイヤを乗り比べたところ、公道向きの標準タイヤだと思っていたロード5が、ここまでスポーティーだったのかと驚かされた一方で、ロード6は最初はやや穏やか過ぎると感じても、しばらく走ると乗りやすく疲れないことに感心させられたことでも明白だ。
 素直に軽快にリーンしていくロード5に対して、ロード6はわずかに安定志向でリーンも穏やかである。また、ロード5ではキビキビと反応してくれる前輪は、ロード6だと落ち着いている。(BIKERS STATION №401 2022年3月 p94)
と、乱暴に一言でまとめると「穏やかになった」である。


「軽快」と「穏やか」。同じタイヤのテストで、同じロード5との比較で、一見、逆の評価が出ている。ここまで対照的な結果が出るのは、これは珍しい。




他のものも少しだけ見てみよう。
web上のものだ。

ヤングマシンのウェブ版では、大屋雄一氏がインプレッション、執筆。以下、一部を引用。

その中で両者の違いに言及すると、最初に気付くのはハンドリングだ。ロード5はわずかに早くフロントの舵角が付き、旋回中はリヤが腰高に感じられるのに対し、ロード6は前後タイヤのシンクロ率が上がったかのようで、コーナー進入からのバンキングがよりナチュラルになっている。車重が重くなるほど明確で、ロード6を履いたCB1300はバンク角の少なさがうらめしいほど。

一方、MT-07では差が小さく、旋回中の安定感はロード5の方がいいとも思えた。なお、トレーサー900ではABSやトラクションコントロールの介入を確認しながら走行したが、ドライグリップに関してはほぼ同等だ。

Webike+では、和歌山俊宏氏がインプレッションと執筆。媒体の違いでニュアンスに違いがあるだろうか。以下、少し引用。
スポーツライディングしている感じのロード5に対し、ロード6はツーリングっぽい印象です。あえてそんな写真を選んだと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。自分でも意外だったのですが、それぞれそんな写真ばかりなのです。無意識にタイヤに合った走りをしてしまっていたのでしょう。

ところが、ロード6は、リヤのプロファイルはセンター部の曲率が大きく、倒れ込みが穏やかで安心感があります。一方のフロントはしっかり感があって、舵角生成も穏やかです。ですから、スポーツしようと頑張らなくても素直に曲がっていきます。リヤへの荷重の掛かり方も穏やかで、ACT+でなくても問題ありません。
前後ともに安定指向なので高速安定性も高く、高速切り返しでは自然に車体が起きてくるので、ステアリング操作もさほど要求されません。タイトターンではある意味で鈍重ながら、軽快で素直なのです。これはツーリングで快適で疲れないはずです。

新しいロード6のハンドリングは、ビギナーも含めた多くのライダーに歩み寄っていると言えます。スポーツ性の高いロード5では、その良さを引き出し切れないばかりか、楽しむこと以前に不安を覚えてしまうという面もあったかもしれません。
ストリート向きの定番タイヤであるミシュランのロードシリーズにおいて、乗り手への依存度が高いロード5に対し、乗り手への依存度を抑えたロード6が追加されたことに大きな意味を感じます。
タイヤそのものの構造やプロファイル、コンパウンド、グルーブ(溝)パターンなどの紹介はここでは省略しよう。


図は、日本ミシュランタイヤのHPより引用。https://news.michelin.co.jp/articles/20220111-michelin-2w-road6-2022-release

ミシュラン自身は、高速安定性、ウェットグリップ、耐摩耗性能のUPに力点を置いているようだ。



さて、このインプレッションの違い、どう考えたらいいだろうか。
まず、大前提として言っておくべきなのは、
ミシュランにしろ、ピレリ、メッツラーにしろ、ブリヂストンにしろ、ダンロップにしろ、
それらの主力製品に、履いて危険なものや、かなり悪いものなど、存在しないということだ。
まず、基本性能に関しては安心してよく、その進化は、著しく、僕自身は20年前とか、15年前とかとしか比較して述べられないくらい鈍いというか、違いが分からないが、この5年に限って行ってもかなりの進化があるらしい。

僕自身の感じているタイヤ性能の変化としては、まず、グリップ感が向上し、滑りにくくなっている。これは間違いない。雨の日の安心感が、20年前と現在とでは全然違う。
また、銘柄にもよるだろうが、滑り出しの過渡特性もかなり進歩していることが、僕レベルでも実感できている。
グリップの限界を超えて滑り出す時の、その滑り出しがいきなりブレークするのではなく、徐々に滑り始める感じで、その感覚がつかみやすいのだ。この違いは大きく、僕のような素人ライダーには、タイヤがブレークし始めてから、対処するまでの時間を稼いでくれ、破綻を回避する可能性を高めてくれる。

世界のタイヤは本当に進化した。
ここで、ロード5とロード6の違いについて、意見の違いが見つかったとしても、それは、どんな違いで、なぜ違ったのかを考えることを、趣味人として楽しむ程度の気にし方でよい。

気になるならば、好きな方を信じればいい。

とあるウェブ記事では、「今月初め大々的に「ロード5」と「ロード6」を乗り比べることができるバイク評論家(と称する方々)やバイク用品店担当者を対象として試乗会が行われ、ものすごくたくさんのヨイショ記事、失礼、言い過ぎかな(笑)、インプレッション記事が上がってきています。(中略)ミシュランのタイヤはこれまで固いものが多かった、なんて明らかにこれまでロード5に乗ったことのないような人が書いた記事まであるので笑っちゃいます。そんなもんですよ、評論家のインプレ記事っていうのは!」
なんて書いているのもあった。確かに、サプライヤーの宣伝文句をそのままトレースしただけのような印象を与える記事も、バイク雑誌やweb上では見かけることもあるが、「そんなもんですよ、評論家のインプレ記事っていうのは!」なんて決めつけて嘯き、冷笑している人の文章よりは、はるかに信用できるものが多いので、そんなに気にしなくていいと思う。

また、タイヤ選びは「賭け」なのだ。
webで事前情報を数多く集められるようになって、「失敗しない選択」をしたいという欲求がかつてなくくらい高められてしまっているように思える。

そして、大勢を占める意見に対して、「それは真実ではない」ということで、世の中への不信感が高まっていることを背景として「真実を知っているのは少数派だ」という甘いささやきに誘われる傾向が、人々にあることも否定しない。

しかしいずれにせよ、タイヤ選びは、自分のバイクと、自分のライディング、その時の天候や路面によってどうなるかに大きく左右され、やってみなければわからない「賭け」なのだ。
それは、ツーリングそのものもそうだし、就職や結婚だって、なんだってそうだろう。
事前リスクだけを並べて見つめていたら、何も出来はしない。

しかし、蛮勇を奨励したいのではない。
リスクは冷静に見て、所説をある程度見たら、自分の総合的知識、思考力、最後は理屈でない「カン」を総動員して、決定しなくてはならない。今夜のおかずから、政治的行動から、就職、結婚まで、そうなのだ。

タイヤの場合、主要メーカーの製品ならば、だいたい信じてよく、後は、好みで購入して自分で確かめ、自分で自分の賭けの結果を味わってみればよい。
きっと、何を選んでも、得るものがあり、楽しく、豊かなバイクライフが広がり、その自分の選択と、結果の反芻によって、さらに賢く、用心ぶかく、必要な時の大胆さを身につけて行くことが出来る。

安心して、好きなタイヤを選ぶ賭けを楽しむのがいいと思う。

ただ、いろいろけちをつける前に、タイヤの空気圧が適正かをちゃんと調べて、調整しておくべきだ。
空気圧が違うと、乗り心地も、ハンドリングも、ブレーキ時の安定性も、加速時のフィーリングも全部変わる。
走り屋だとかなんとかいって、サーキット用に空気圧を減らして、街中やそこらの峠で走ってハンドリングがとか言っても、自分で限界を下げて危険にしてハンドリングをめちゃくちゃにしておいて、タイヤに文句言ってるだけになる。


話を戻そう。
ミシュランロード6のインプレッションの違い。
その意味を考察するのなら、趣味的に、オタクが勝手な解釈を言い合って楽しんでいる、そういうノリを忘れずにするのがいいように思う。

僕のオタク的妄想は、かなり膨らみ、原田哲也氏と小川勤氏の走らせ方と、大屋雄一氏の走り方、そしておそらく両方でき、タイヤ開発の経験もある和歌山俊宏氏の走らせ方による違いじゃないかなあ…なんて、勝手に考えて、にやにやしてしまっているのだが、
それこそここから先は、キモチワルイ妄想領域になっていくだろうし、ライディング分析と違って根拠のかなり薄い推測の域を出ないので、今回は書くのを止めようと思う。

ああ、ただ、それにしても、1980年代のライダースクラブのように、ページ数も使い、インタビューから走行テスト、走行後の発熱やアブレーションまで解析したタイヤテスト記事は、もう読めないのだろうか。

分かりやすくライトな感じの紹介記事でなく、不必要なまでにその本質に迫ろうとする、鬼気迫る本気の記事も、まだニーズはあると思うのだが。そしてそんな情報を求める人たちは、数は少なくとも、少々値が張っても、金を払ってでも本物を読みたい!と思っている人たちは、一定数いると思うのだが…。

4 件のコメント:

  1. 通りすがりの者です。和歌山さんの評価は信じていいと思いますよ。普通のジャーナリは得にタイヤに対する自分の評価軸を持ってる事が少なく、更にタイヤ評価に対するクライテリアも無い。やはり和歌山さんは経験から来る、評価軸と自分の評価を変更された仕様から裏付けを取ってるはずですよ。

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    1. 匿名さん、実のところ、私も和歌山氏の評価を一番信頼しています。
      和歌山氏だけが「タイヤ開発」のプロとしての経験を持っていますしね。
      まあ、しかし今回は、
      「僕のオタク的妄想は、かなり膨らみ、原田哲也氏と小川勤氏の走らせ方と、大屋雄一氏の走り方、そしておそらく両方でき、タイヤ開発の経験もある和歌山俊宏氏の走らせ方による違いじゃないかなあ…なんて、勝手に考えて、にやにやしてしまっているのだが、
      それこそここから先は、キモチワルイ妄想領域になっていくだろうし、ライディング分析と違って根拠のかなり薄い推測の域を出ないので、今回は書くのを止めようと思う。」
      ということで、記事上はそれ以上のことは書きませんでした。それこそ、この考察の裏がとれませんので。経歴だけで人の評価を低く見るのはあまり上品でない決めつけになりかねませんから。
      匿名さん、今回のような面倒な長い記事をお読みいただき、コメントいただいて、ありがとうございます。

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    2. だいぶ遅れてインプレッションをお話しします。
      ロード5と6はかなり違います。
      自分はBMWのR1250Rを初期型、後期型と2台乗り継いでます。初期型はロード5、後期型はロード6を納車時から指定して装着しました。
      乗り心地は甲乙付け難いのですが、コーナリングの安心感が圧倒的にロード6の方が上です。
      自分のオートバイに合っているのでしょうか。2台とも新車時から5と6を履いてますが、その納車時から6はお店から出て最初の信号を左折する時から、安心感が全く違いました。
      私のオートバイの普段使いはほぼ東京23区内が80%なのですが、交差点での右左折時の安心感たるや、今まで経験した事がないほどロード6が素晴らしいのです。
      自分は68歳でオートバイ歴は52年になりますが、そんなに上手いライダーではありません。しかしタイヤには常に気を配ってきました。私のオートバイ人生でこれほど良いタイヤに出会った事はありませんでした。
      フィーリング的にはフロントの舵に自然にリアが付いてくるような感じがします。ライフについてはまだコメント出来ませんが、ロード5と同等かそれ以上だと思います。
      はっきり言って私はミシュラン党です。しかしながら今まで100%ミシュランを信じていた訳ではありません。
      ただ68歳のジジィライダーが240キロ以上あるオートバイで都内23区走行がほとんどで、前後タイヤの端っこ指一本まで使えている、と言う事がこのタイヤの性格、並びに評価をお伝えできるのではないでしょうか。

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    3. 匿名さん、ROAD6のインプレッション、ありがとうございます。
      匿名さんの半世紀を超える経験の中で、「今まで経験したことがないほどロード6が素晴らしい」、「私のオートバイ人生でこれほど良いタイヤに出会ったことはありません」というのは、相当に素晴らしいタイヤなのですね。ハンドリングが自然で、かつ安定感がある…というのは、和歌山氏のインプレッションに近い感じですね。

      前回書かなかった私の解釈を申しますと、タイヤ開発の経験もあり、テスターとして長い経験を持つ和歌山市は、タイヤをあらゆるシーン、乗り方を想定していろいろする中で、そのタイヤの総合的性格と、最も良い点を引き出してインプレッションしているのではないでしょうか。
      対して、原田氏は元GP世界チャンピオン、小川氏もレーシングライダーではありませんが、スポーツ志向の強いテスター。二人ともサーキットのテストに於いて、かなり攻めた走りをして、ハードブレーキングからの倒し込みなどをテストしているため、安定性が増してかつ素直になった(進歩した)ロード6の持つ運動性ポテンシャルの高さを「軽快」と評価したのではないかと思います。
      テスターの中では、大屋氏が最も一般人に近い(大屋氏もバイクのプロとしての技量は非常に高い)ところで評価を執筆しようとしており、和歌山氏と原田、小川氏の中間的な評価になったかと思います。

      それにしても!
      匿名さん、御年68で240kgを越えるR1250Rを都内でお使いとは、昨年やっと還暦を越えた私にも、まだまだ日和るのは早いと、勇気を与えてくださいます。

      匿名さん、どうぞ、これからも愛車とともに、豊かなMCライフをお送りください。
      インプレッション、ありがとうございました。

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