2015年1月26日

V7に求めていいもの(続)

「V7に求めていいもの。いけないもの。(^^;)」という記事を書きましたが、
V7に求めていいものの中で、とても大事な点を書き落としていました。




写真はライダースクラブより。伊丹氏によるV7cafeクラシック改の走り。
V7に求めていいもの。
それは、「走りの追究」です。

最高速も求められない。超絶パワーも求められない。怒涛の加速も。ひりひりするコーナリングのキレも求められない。

それでも、現実のワインディング、特に中速以下のワインディングでは、V7はかなり速いバイクです。
そして、V7を速く走らせるためには、腕がいる。
リーン方向に軽いが、縦置きクランク、シャフトドライブのエンジンはヨー方向(つまり、向きを変える方向)には強力なジャイロ効果を発揮して、ハンドリングは基本アンダー傾向。
それを見事に旋回させるには、しかもはじめて走るブラインドだらけのワインディングで速く走らせるには、力づくでバイクを倒しこむような乗り方ではだめで、コーナーの走りの組み立てから、道の読み、リーンのタイミングとブレーキのタイミングのシンクロ、など、繊細な操作が大事になります。

何をどうしようとバイクがカバーしてくれるようなものではないので、ライダーがうまく操れるかどうかは、はっきりとその走りに表れます。

ライダーがうまくなるほどに、V7はシャープな走りが可能になってきます。

ずぼらに適当にバイクを倒してコーナリングしているだけでは、100km/hを越えると、フレームがパワーに負けてゆらゆら揺れ出してしまいます。できるだけ無理を掛けず、路面を読み、ラインを読み、瞬時に切り替え、ベストの状態を作るべく、いろいろ工夫しながら走ると、同じようなバンプだらけのところでも120km/hでも駆け抜けられるようになります。

限界も低く、いつもはポコポコという音に近い2000rpm近辺で田舎道をゆっくり流している長閑なバイクがV7ですが、
本気の走りを解放してやれば、驚くべき旋回性を見せます。しかも、旋回に入ってからの旋回力を高めることも中速コーナーまでなら走らせ方で十分可能。
驚くべき切れ味を、見せてくれます。
もう何度も登場した、和歌山氏の走り。美しい。
歩行者を気にしながらの歩くようなペースでの交差点の左折から、
高速道路のランプウェイのようなアールの長い旋回路、
不規則にRの違う大小のコーナーが入れ混じった山の中のつづれ折の道、
通過速度140km程度のコーナーまで、
あらゆる道で、そのコーナリングの切れ味を楽しむことができるのみならず、
自分のライディングの腕を高めていく「修業マシン」としても、底知れぬ深さでその大役を果たしてくれます。
写真はモトグッツィのHPより。
そうしたことに深く突っ込まず、平和で楽しく、豊かなバイクライフを、願う人には、その素性の扱いやすさで十分に答えてくれます。
小さな体で大きな荷物を積んでアンデスの山の中をどこまでも運ぶロバのように、従順で、辛抱強く、そして心底頼りになる旅の相棒を、きちんと整備されたV7は勤めてくれるでしょう。

写真はモトグッツィのHPより。
二人乗りでちょっと遠くの湖までタンデムツーリング、湖畔の空いた道をちょっとだけ飛ばしてみた…。
そんなシーンでも、あれがあのロバか、と思うくらい、V7は二人を乗せてきびきびと、小気味よくコーナーを掛けてくれるでしょう。


そして、早朝の峠で、交通量のほぼ皆無の、細い県道の山道で、たった一人、自分のライディングと向き合い、単に何キロでたとかではなく、バイクで走ること、バイクでコーナリングすること、そのことに真剣に向き合いたい人にも、V7は応えてくれます。

その時、ライダーは、ロバの被り物の下に隠されていた、もう一つのV7の姿を、見つけるのです。
その美しい姿、その走り、その切れ味に、あなたはきっと驚き、感動することでしょう。
それは、走りを求め続けた人だけに訪れる、ライダーとしての至高の瞬間。

その道は易しくはなく、ことによっては適切なカスタマイズも必要になるかもしれませんが、
どうししても走りを求めてしまうライダー、見せびらかす速さでなく、バイクと自分と道とのあの濃密な瞬間瞬間を、忘れられないライダーには、V7はお奨めです。


(もちろん、これはV7オーナーである樹生の個人的な意見であり、多くの人にあてはまるものではありません。また、求める速さの質が違う人には、やはり遅いマシンという評価になってしまうでしょう。V7はおよそ見た目を裏切らないバイク。そのオーラを感じとって、カンで判断するのが一番ただしいようにも思います。ご判断はあくまで読み手の方自身が行ってください。)

7 件のコメント:

  1. takaです。

    食事も走りも、七分目が丁度いいんですよね(^-^)
    私のSRでの走りも、同じです。

    私の場合は、もう1つ。
    「誰かと比較しない」って事です。
    「誰と比べて・・・」、「あのバイクと比べて・・・」ってね。
    あくまで、「自身が上手く走れているか」「イメージ通りの走りが出来ていたか」です。
    速さよりも、コントロールを楽しむって感じかなぁ(*^_^*)

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    1. takaさん、こんにちは。
      今のSSは全力疾走すると、行動では速すぎますね。
      ちょっとの直線であっという間に200km/hまで行ってしまう性能では、
      危なくて人車ともに全力疾走…とはいきません。
      もちろん、全力疾走だけがバイクの魅力ではなく、7分くらい、または8分くらいで快走する、
      その中でコント―ルを磨く…というのも当然いいわけで、
      最近のSSが公道で走って面白くないということは全然ないと思います。
      でも圧倒的なハイパフォーマンスのバイクを操る、というのとは違う、
      丁度全力疾走したら公道での上限ぴたりというか、(これとても勝手にほざいているだけですが)
      人間の感性と合った疾走ができるというのも、中間排気量(750が?時は流れました…)のバイクの醍醐味の一つだと思います。

      どうも僕はまだ、「コーナリング」が捨てられてないようです。
      この煩悩はいつ涸れていくのか、やれやれとも思いつつ、
      この渇きのある限りは、コーナリングの楽しみを追っていきたいと思います。

      takaさんのおっしゃるように、「人と比べず」「他のバイクと比べず」…ですね。

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  2. 「走りの追求」、いいですね!!
    我が愛しの sport1000 も、そうです。
    同じDUCATIでも、水冷エンジン登載車がほとんどを占め、電子デバイスの効果と相まって、高性能を謳う中、
    「素」のバイクの楽しみを教えてくれる1台です。
    どちらかというとデザイン優先で、SSシリーズが熟成させてきたであろうバランスが失われているのでは?
    といったきらいはありますが、一つ一つのコーナーを「速くではなく、上手く・気持ちよく」回りたいと思わせる刺激は、まぎれもなくDUCATIファミリーです。
    加えて、荷物も詰めなきゃ、遠出もキツイ・・・
    ですが、とびきりの(←親バカ)すっぴん美人さんの sport であります^^

    takaさんの
    >>「誰かと比較しない」
    >>あくまで、「自身が上手く走れているか」「イメージ通りの走りが出来ていたか」です。
    素敵なコメントですね!!

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    1. Hiroshi Mutoさん、こんにちは。
      「走りの追究」ができるバイク。これが僕のバイク選びの最終的な基準でした。

      sport1000もV7も素の魅力、「すっぴん美人」的勝負にメーカーが出てきた感じが強いですね!
      デザインは双方とも昔のモデルへのオマージュ強く、その意味ではレトロ、懐古調になっていますが、
      そこで走りを妥協しないのがイタリア的発想なのかもしれません。
      実用性はどうなった!?、と聞きたくなりますが、
      「なにそれ?飯はうまくなきゃいけないし、芸術は美しくなきゃいけないし、バイクは走って楽しくなきゃいけないんだよ。その大事なところがしっかりしてたら、あとはなんとかなるでしょ。」
      とかいった声が聞こえてきそうですね。
      もちろん最新のトレンドはストラーダ系のようで、パニアやスクリーンなど、旅性能に力をいれたモデルも多くなってきましたが。

      最新鋭の満艦飾もすごい。
      でも素のよさも捨てがたい。
      これは好みの問題で、正誤でも優劣でもないと思います。
      それだけに好みの合う、「御同輩」を見つけると、うれしくなります。

      ライダーいまだ在り。走る。良き哉。です。(^^)

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    2. mutuさん、
      はじめまして、takaです。

      コメントを褒めて頂き、嬉しいやら、恥ずかしいやらです。
      私も、過去はGPZ900RやCBR900RRでストイックにコーナーを楽しんでましたが、根っからのエンジニア気質の体育会系なので、「マシンが喜ぶ走りをしないと、申し訳ない」と考えていまして、速度が尋常じゃないレンジになっていく事に、「こんな楽しみ方ってどうなん?」って、走りながら考えるようになってしまって・・・。
      そう、虚しくなってしまいました^_^;)
      速度はエゲツナイのに、満たされないんですよぉ。

      で、数年冷却期間期間を置いて、走りの楽しみ方を見直しました。
      家族を持った事も変化に大きく影響したと思いますし、年齢を重ねた事も、影響したと思います。
      昔のバイク仲間とは、今でも交流しています。
      仲間は、若い頃と同じベクトルで楽しんでいます。
      それが悪いとは思いませんけど、同じベクトルに合わせようとも思いません。
      自分のベクトルを見つけたって感じでしょうか(*^_^*)
      それが、SR400による「アンダー100km/h、アンダー30ps」での、楽しみ。
      「30psで、いかに効率良く、スムーズに走れるか?」
      が、自分の「裏テーマ」です。
      なので、比較しないでも、イメージ通りの走りを対象とする事で、充実感が味わえるんです。

      走りは、人それぞれに、楽しめばと思います。
      スキルも、加齢も、体力も、人それぞれ違う様にね。
      考えを押し付けはしません。
      何かあったら責任は、自分。
      それが、「走り」ですからね。

      樹生さん、
      長文で、お邪魔しましたm(__)m

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  3. グッチは低回転では不等間爆発のおかげで独特のVツインの鼓動。高回転では
    振動収縮により滑らかさを増す鼓動。進行方向と平行なクランク軸とミッションシャフトと
    デフまで一直線のシャフト構造からくる慣性力は、横起きエンジンとは全く違う感触。
    この慣性がハンドリングに関わってくることで、中々曲がらないバイクになっています(笑)
    直進性が強く、常に進行方向を維持しようとするので後輪へのパワーが切れると
    横置きエンジンよりクイックに倒れやすくなる特性が有るので、逆に軽い操作でバンク
    させ易いとも言えます。
    ただバイアスを履いているので、限界は低くラジアルのような走りは無理。でも逆に
    穏やかなグリップ力なので、コントロールしやすいとも言えます。
    ツインのトルクはマルチに比べると荒々しいですが、逆にアクセルの開度と比例して
    タイヤを小刻みに動かせる(トルクを掛けれる)感じです。マルチですとこの辺を
    ずぼらにしても、極めてスムーズで何事も無く走れてしまいます。
    楽に走れるのは、疲れないですし、良いこととも思えますが、知らないウチに
    バイクにサポートされて、運転がうまくなったと勘違いさせるところで非常に危険
    だと思うのです。
    またシャフトドライブはV7の場合、昔ながらのシンプル構造ですからダイレクトに
    タイヤにパワ―を掛ける構造です。若干の緩衝材がデフ内に入ってはいるものの
    チェーンドライブの様にはいきません。
    通常のバイクと比べると非常に構造が違うので、とっつきずらくライディングが難しく
    感じますが、常にバイクから情報が送られてくるので安全なバイクとも言えます。
    正しく入力することを忘れずに乗れば、飽きることが無い程の楽しさがあります。
    駄目な入力には強烈に拒否してきますから、基本を守ってあげれば、逆にあっけなく
    従順な面もあります。常にスムーズな運転ができるように乗れるようになれば
    今度はこのバイクの別の面が見えてきます。
    それは、国民性と言うかイタリア人がバイクを作るとこう言うものなんだと伝わってくるもの。
    長い歴史で培われたものです。日本はまだまだ比べれば半分の歴史しかありません。
    確かに性能では世界を席巻しました。工業製品だから、万人に受け入れられなければ
    売れません。でもそんな人ばかりでは無いのです。
    バイクは個人の趣味が強く反映するもの。まったくの道具では無く、愛情が注がれるもの
    ですから、奥深さがあるものに魅かれるのは当然です。
    日本の工業製品は道具としては秀逸ですが、これからは文化を詰め込まないと廃れるので
    ないかと思います。集団で行動し成果を上げるのは日本人の十八番ですが、個性は無くなる。
    まだグッチには人の顔が有ると思います。カルサーノ、トンティなどの工学博士達が設計した
    ものをいまだに作り続けているのは何故か?素晴らしいからです!イタリア人の隠れた性格
    として、美味しいものは毎日でも同じモノを食べ続けるそうです。何故かと聞くと、他のモノにする必要が
    無いそうです。非常に頑固で個人が確立してます。好きなものには非常に熱狂し、イタリア走りと
    言われるくらいスピードが大好きでおおらか。また高くてもよいモノを買い、大事にします。

    こんな人達が作ったバイクには明らかに違うものが有りますよね。樹生さんも感じていると思いますが
    何でこうなのってところが有るかと驚いたかと思えば、V7の裏の顔は非常にスポーツライクなんだとの事実。
    W3、マッハ、CB750など名車は数々あれど、みんな生産終了し、魅力あるバイクは僅かです。
    みんな走りが独特で、楽しいものでしたが・・・。

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    1. V7はオーナーになってみて、本当に面白いと感じます。
      でも、イタリアンバイクについても、僕はまとめて語れるほど、乗ってみたことがないので、
      なかなか議論について行けません。(^^;)
      すみません、ホント…。

      V7の場合(ブレバの時からそうだと思うのですが)などは、最初から乗りやすく、トルクリアクションも少ないので、免許を取ってすぐの人でも、躊躇せず乗れると思います。
      難しさは、一応乗りこなせるようになったその先に、それでも満足せずに追求していったときに
      少しずつ顔を出してくる感じだと僕は感じました。

      それにしても、V7は面白いです。
      ただ、日本のバイクが無個性かといえば、スーパーカブは世界を席巻しましたし、
      CB750、ZⅠも独自のデザインでしたよね。
      種子島経『Z1開発物語』などには、バイクへの思いが込められていますし、
      スズキの横内氏、ホンダの馬場氏、本多氏などは開発リーダーとして名車を生み出してきました。
      その日本的な徹底した品質管理、向上への飽くなき追究と努力には感動を覚えます。
      そして、それであっても、「彼の作品」としてでなく、「バイクの製品」として世に出るところに、
      日本的美学を読み取ることもできるのかもしれません。

      現在まで続くレトロバイクセグメント、それを市場的に創出したのは、カワサキのW650でした。
      昔、メグロからカワサキに吸収されたトライアンフに学んだバーチカルツインを、
      ノスタルジックな外見と、新しい技術方式で開発したW650は、
      本家トライアンフに現代版ボンネビルをつくらせ、ドカティにもネオレトロシリーズを作らせるほど影響力を持ちました。
      一度規制強化で姿を消しましたが、1年後にW800として復活。15年モデルになっています。
      カワサキは、ひとつのバイク文化を送り出した(それが懐古趣味であるかどうかはまた別の話として)とも言えるのではないでしょうか。

      「もうこれ以上の速さはいらない。現実的でない速さなんて、無駄だ…」と、世界中が思い出している昨今、
      300PSのH2Rを発表、ぶつけてくるなんぞ、これはたぶんカワサキにしかできない、「ンなアホな!!」という衝撃ですね。

      ヤマハSRは35周年。日本車にも長生きなものが皆無ではない。もちろん、ホンダカブは別格としても。
      また、例えばハーレーダビッドソン社のバイクのように、アイデンティティを保ちながらも、
      エンジンや懸架方式を次々と更新し続けているメーカーもある。
      ドカティはV型横置きLツインという基本は守りながらも、革新的なことを次々と打ち出し、
      10年前のモデルが現在も販売されているということはありません。

      いちさんが書いておられるモトグッツィの素晴らしさ、おもしろさ、そしてそこから伺われる、日本人とはどう見ても違うなあ…と思われるイタリアの感性には、僕も大変魅力を感じ、彼らに対して喝采を送りたいと思います。

      でも、日本に魅力を感じないかといえば、僕は割と感じるんです。
      愛着と言った方がいいかもしれませんが。
      例えば前の愛車、GPZ1100は、ドイツ車とも違う、イタリア車とも違う、英車とも、米車とも。
      やはり、あれは、日本のメーカーにしかつくれない、僕にとってはかけがえのない性能を持った名車だったんです。

      いずれにしても、バイク談義は楽しいものですよね。(^^)

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