2015年2月25日

classic(9)上


それから、少しだけ話をした。
話しと言っても、冬枯れの渓谷の美しいこととか、道の荒れ放題のこと、谷の深さ、山の深さ、そして、こんな山深くまで入ることの怖さなどについてだった。
山深いことへの怖れは、僕だけでなく彼女も感じていた。
それなのに走り入ろうとしていることに、僕は不思議な気がしていた。



それから、また僕が前を走り、峠を上り始めた。
あと6kmほどで峠だ。
そうすれば、2000m近い峠から富士山の姿が見えるはずだった。

しかし、やはり山の上には雪があった。
一週間遅かったのかもしれない。
道が雪でふさがれ、峠までもう少しというところで、僕らは引き返さざるを得なくなった。
彼女はとても残念がったが、無理に進もうとはしなかった。

カメラを出して雪道と自分のバイクと、僕のGSRを撮り、「記念ね」と言った。
僕もカメラを出して同じように雪道とGSRと、彼女の白いV7クラシックを撮った。
僕がカメラで写真を撮るのは、仕事で証拠写真を撮る以外では、本当に久しぶりのことだった。
カメラは持っていたというのに。

帰り道は、彼女が先頭を走った。

噂に聞いたことのある風のV7の走り。僕は少し緊張し、少しわくわくしながら彼女の後ろを走った。

しかし、特別なことは何もなかった。
彼女のライディングは、とてもスムーズで、無理がなく、美しかった。
なだらかに加速し、アクセルオフで減速に切り替えた後、なだらかにブレーキングに移り、なめらかに減速し終わるとすうーっとカーブに入って行った。バンク角も深くない。
カーブでは中ごろからまた徐々に加速に移り、ツインの小気味よい音を立てながらきれいに旋回して立ち上がって行った。
どこにも継ぎ目のないような、本当に美しいライディングだった。

僕は少し離れて、彼女と彼女の周りの初冬の山々と川の景色を眺めながら、渓谷を下って行った。

渓谷を下る走りは、まるで水が川を下って行くように、なめらかに進んだ。

思ったよりも早く、僕らはまたヴィラ雨畑に戻ってきていた。

彼女は駐車場にV7を停め、僕も横に並んで付けた。

二人でヴィラの中に入ると、さっき雪のことを訪ねた店員の方が、声を掛けてきて、やはり雪でしたと答えると、たいそう気の毒がってくれた。

僕らは丁寧にお礼を言って外へ出た。

駐車場には、僕のGSRと彼女のV7が並んで停まっていた。
僕らはそれぞれのバイクのところまで並んで歩いた。

(つづく)




 仕事が忙しく、かなり立て込んでいます。
 夜も朝もない感じになってきているので、更新が遅れがちになると思います。
 もうしわけありません、どうぞ、気長にお待ちください。 
 

4 件のコメント:

  1. 初めまして。本州の最西端でV7クラシックに乗っている小五郎と申します。
    風のV7,いつも大変興味深く拝見しています。
    先日も昔の風のV7(女性ライダー対ブルターレの話)や、先生とブルターレも大変面白く拝見しました。
    私のV7は、ブルターレオーナーから購入しましたので、ブルターレにも親しみがありますね。
    リトモセレーノさんからメールが来たかと思いますが、私も注文した1人です。10人も注文は無いのではと思っていましたが、案の定でしたね。でも、リトモさんの努力で再生産できるとのこと、うれしい限りですね。
    私は手に入れてまだ4ヵ月、タイヤも替え(http://blog.reira-sports.com/←3月1日のV7が僕のです)、春が来るのが待ち遠しいですね。
    ゆきかぜの活躍?も楽しみにしてますよ。

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    1. 小五郎さん
      下関でV7クラシックとカブのカスタムに乗る、あの小五郎さんですね。
      初めまして、コメントありがとうございます。
      レイラスポーツさんのブログも拝見しました。
      函崎さんの「ブランカ」と同じモデルですね!(なんて、一人楽屋落ちですみません。)
      とても美しく乗られているので驚きました。

      リトモさんへは、メールをしたのですが、「クラシック」が取れた2013年モデルには
      付くかどうかわからないというご返事だったんです。
      実は、クラシックとSPecial、stoneは、シフトペダルの根本のところが若干変更になっています。
      ベビーフェイスさんは、クラシックも2013モデルも付けることは可能という返事で、
      OVERさんは、別の仕様のモデルを発売しています。
      まず付くだろうとは思ったのですが、付かなかった場合、返品は効きませんし、
      7万円を賭けるには我が家の家計がそれを許さず、それでも2月28日まで迷い続けたのですが、
      注文する勇気が出ないままに、3月を迎えてしまいました。
      もう一つ問題なのは、私、時々転倒するんです。^^;
      数年に一回なのですが、何せ林道にも行きますし、雨でも走るし、リスクは高く、技術は低く…。
      その時、リペアが利かなかったりスペアパーツがなかったりするのは、結構きついんですね…。

      ああ、しかし、リトモさんのは一番美しくて、魅力的だし、信頼できるので、購入したかったのですが…。
      …という、顛末であります。

      ステップ変更問題は、またふりだしで、まったく困っている樹生なのでした。

      ゆきかぜの冬眠明けは4月に入ってからになると思います。
      それまでに私の首(頸椎ヘルニア)が改善するか、これもなかなか厳しい闘いになってまりました。

      いずれにしても、以前のブログまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
      小五郎さん、これからもよろしくお願いいたします。

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    2. 和人さん、驚きです。その通りです。その小五郎です。
      こちらこそ、よろしくお願いします。
      まさか、カブの事までご存じとは・・ということは、ガタローさんのブログをご覧になったのですね?
      ガタローさんにはまだ1度お目にかかっただけで、V7はまだ見せていないんです。
      てっきりリトモさんのステップを注文されたものと思っておりましたが、スペシャルには合わないかもしれないんですね・・・
      私もポジションに若干の不満を持っており、なんとかするつもりではいます。
      まずは、ハンドルバーを少し狭くすると大分自然な感じになるのでは・・と思っていますが、その選定に悩むところですね。
      ガタローさんのストーンが割と自然に思えたので今度参考にさせてもらおうと思ってます。
      リトモさんのバックステップはその後になりそうですね。
      今月末に、レイラさんにてフロントの健脚をしてもらう予定です。(リアはまだ大丈夫との事)
      以前にホーネットの健脚をしてもらい、その仕上がりには驚きましたので、期待大です。
      あとはいずれ必要になるであろうタペット調整をどこに依頼するか、など・・普通のバイクとは違う悩みも出てくるモトグッチですね。
      私と同じ、白のV7クラシックに乗る彼女、どんな女性なのか、想像しながら続編も期待してます。

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    3. 小五郎さん。
      ステップとハンドルバーは私も今シーズンになんとか換えたいと思っています。
      私は身長に比して若干手が短いらしく(^^;)、以前のバイクでもハンドルバーを替えていました。
      V7に関しても、もう少し幅を狭め、絞りを若干効かせた方が私の体形には合うようです。
      ぜひやってみたいと思っています。

      仕事が忙しく、なかなか話の続きが書けません。
      どうぞ、気長にお待ちくださいませ。

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