2016年8月30日

Dance with R65(1)

集合は5時10分。
札幌市街地にあるコンビニの前だった。
待ち合わせしたのは、ST4さん。
以前から当ブログにコメントくださっていたが、偶然赤井川の道の駅でばったり会ったのが去年の4月。ちゃんと会うのは初めてで、そのとき以来のことになる。
縁あって今日一日、ご一緒して走ることになっているのだった。

5時8分にコンビニ前にゆきかぜ(僕のバイクの愛称(^^;)。MOTOGUZZI V7Special)と僕が付いたとき、ST4さんと、BMWR65は、既に大分前に着いた風情で、ST4さんはストレッチをしている最中だった。

隣にV7をとめ、
「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」
と言ったものの、互いにぎこちない感じが漂っている。

通常なら、ここで、朝早いですね、とか、今日は、どんなふうに走りましょうか…とか、互いに何かほおばりながらゆっくり話し、それからおもむろに出発となるのだが、
今日は挨拶もそこそこに、走り始めてしまった。

日の出が4時50分過ぎ。
今、5時10分。まだ、朝の光が、初々しい時間帯だ。
この特別な時間帯のうちに、先日も見た札幌市の市街地からほんの数キロのところにある幌見峠から、朝日を見てみたい。

そんなわがままな僕の思惑で、ろくに話もしないままに、出発してしまったのだった。

2016/8/28 5:21
幌見峠の頂上近く、木立が切れて景色が望めるところに2台のバイクを停める。
今日は、写真を撮りたいときには気を遣わずに好きに止まってくださいと、ST4さんから言われている。
むしろ、どんなタイミングで、どんなところで、止まって写真を撮るのか、興味があるとのことだった、
でも、走り出して10分で、もう止めるなんてね。


ST4さんのBMW R65。ほぼノーマルだという。
リヤに純正のシティ・ケースが付いている。
馬力は最高45ps。
ゆきかぜの50psと、どっこいどっこいだ。

「50psって、不足感じますか?」
ST4さんが訊いてくる。
「いや、日常的には感じませんね。十分速いですし。」

そんな会話をしながら、写真を撮ったら、またすぐに出発だ。
朝の特別な空気を満喫したい。

幌見峠を越えて、次に道道82号で小林峠を越え、裏道を通って白水から八剣山トンネルを抜けて、国道230号線へ。

走りはじめなので、確実に、ていねいに、ゆっくり走る。


2016/8/28 5:42 後ろに八剣山。朝日が平野に射してきている。
ST4さんは前との車間をかなり広くとる。
前走者の僕に、変にプレッシャーをかけないようにとの配慮だろう。

ミラーに写るST4さんの走る姿は、いかにも70~80年代のBMWのそれだ。

定山渓を抜けると、中山峠にかかる。

中山峠は空いていれば、相当の速度で流れる道だ。
今日もかなり速い流れもあり、また、時々、法定速度を守る車もいるので、
すごく空いたかと思うと、ずっと長い車列ができたりする。
しかも、札幌側からは追い越し車線区間がほとんどないのだ。

標高を上げていくと、霧の中に入った。

2016/8/28 5:59
それほどの濃霧というわけではないが、早朝の峠の霧は、ツーリングの約束事のようなものだ。
特にこれからの季節は、濃霧に見舞われることも多くなる。

速度を落とし気味に、淡々と標高を稼いでいく。

2016/8/28 6:07

霧の中を抜けると、朝の光の中に、山々が見通せ、低い所に雲が帯のようにかかっている景色が見えた。

峠の手前だが、ここに停めることにした。

ちょっと車列に挟まれる感じで、自分たちのペースで走れない、この流れを切りたい気持ちもあった。

同刻
じゃりの駐車スペースだが、少し乗り入れて止める。
ST4さんは、センタースタンドをかけて止めた。

気温は12℃。
夏用のメッシュグローブの僕は、手首から冷気がウェアの中に入り込んで寒い。
朝、出かけるとき、3シーズン用のグローブが、嫁さんが眠っている寝室のクローゼットの中にあることを思い出して、起こしたくなかったので、「まあいいか、夏だし…」と思ったのだが、甘かったようだ。

「寒くないですか?」と訊いてみる。
ST4さんは「中に薄手のダウンを着ているので、大丈夫なんですよ。」と。
グローブも、おそらくはゴアテックスの防寒仕様だ。
「一ケタ(の気温)になると思っていたので」と。

今日は29℃の予想が出ているのだが、朝の寒い時にも備えたウェアリング。
小さめのシティ・ケースだが、そうした装備が入れられて、旅の戦闘力は高いのだ。



それにしてもR65は選択が渋い。
R100やR80でなく、65というのが。
「65って、今まで乗ってきたバイクの中では、雨の中最強なんですよ。」
「タイヤ(ミシュラン・マカダム)のおかげもあるかと思うんですが、雨でかなり強いブレーキングしても、ドライと変わらずに減速してくれて、安定感も崩れない。本当に安心して走っていける感じで。」

R65のブレーキはシングルディスク。V7と同じだった。
「でも、雨でフルブレーキするようになって、ブレーキディスクに穴が空いている意味が改めて実感できた。雨の中の効きはじめは、ディスクの水膜が飛ぶまで、ブレーキ効かないんです。」
R65のディスクには穴が空いていない。
70年代~80年代さいしょの頃のディスクブレーキには、まだ穴を空けることがポピュラーではなかった。
さすがのBMWもそこはコンベンショナルだったということだろうか。

今日落ち合って、まだ1時間。
話したことは、挨拶と、ほんのちょっと、数十秒の打ち合わせと、あとは、マシンのこと、ウェアのことだけだ。

でも、ちょっとずつ、2台のリズムの合わせ方がわかってきている感じがある。
今日は無理なく、でも快走も取り入れながら走れそうだ。
それが二人と2台にとって無理したり我慢したりするのでなくできそうだ。

そんな感じが徐々にし始めている。

2016/8/28 6:17
中山峠でのトイレ休憩はパス、車体のコンディションも幌見峠と、今までの走り、そしてこの休憩でだいたい把握できたので、朝の貴重な時間、もう少し走ることにした。

峠の上からでも羊蹄山がきれいに見えている。
ここで停まって写真もいいのだが、リズムを優先。
峠を下る。


国道230号線、中山峠を下ってきたら、右手に「羊蹄カントリークラブ」の看板がある細い道がある。
羊蹄カントリークラブは大分前に閉鎖されており、この道もメンテがされなくなってから、急速に道が荒れてきている。

今日も通れるかどうか、不安はあったのだが、踏み込んでみた。
途中、舗装に大穴が空いて、そこから下の土が流れ出し、穴がさらに広がって…と、
すでに普通の4輪では通行がはばかられる状態になっていた。
わずかに残った平らな部分を通って、我々は先に進む。

ST4さん、路面の荒れや、細い道などを厭うタイプではないようだ。

2016/8/28 6:40
閉鎖されたゴルフ場の脇を抜けていく道。
木立の中を静かに通り抜ける、気持ちのいい道だ。
時速30kmくらいで、路面もみながら、風景を眺めたり、木漏れ日の光を楽しんだり、
樹々の間からのぞく空をちょっと見上げたり……。
スローに森林浴しながら、でも現れる小さなS字フックのようなカーブに、すこしにんまりしながら、走っていく。
僕のお気に入りの道だ。

ST4さんの走りは、安定している。
やはり車間を詰めず、しかし、互いに視界には入っているように、気を付けながら僕を追尾してくるさまは、昨日今日の走りではない。

こういうスローダンスは、V7のお得意分野でもある。
R65の方が設定された速度域はV7よりも高速寄りのように感じる。

こうした道も不得意ではないが、もうちょっとだけおおらかな道を、すーうううううっと、走っていくのが似合っているように思えた。


2016/8/28 6:53
その道は森を抜けると畑の中の道になる。
そして広い台地の向こうに、羊蹄山がそびえている。

ここも僕のお気に入りの場所だ。

道幅が広くなっているところにとめて、ちょっと休憩を。


森の中の道が気持ちよかった、と二人で話を。
羊蹄山も美しい。
すっかり秋の表情になっている。
朝早くから収穫のための大型農業機械を操り、農家の方が働いている。


2016/8/28 6:55
「少し整ってきました。」と、ST4さん。
今シーズンの走り始めは、仕事の関係などもあり、8月になったST4さん、お盆のころから、休日で走れる日には走ってきていたそうだが、やはり久しぶりのライディングでは、上半身に力が入っていたのだろうとおっしゃる。

「さっきの道で、下半身のホールドをもう一度意識してみたら、上体から力が抜けてきたみたい。」
「少しずつ、リズムが整ってきているかんじがする。」

それは僕もそうで、仕事に追われただけではなく、あまりの疲労感に体調も思わしくない日々が、特に5月から6月、7月くらいまで続き、休みになっても走り出せなかったり、走ってもほんの少しで帰ってきたりということも続いていた。

通期にはバイクを使っているので、感覚が途切れることはないのだが、ただの日常ルーティーンとしての運転は、ライディングの感性まで鈍らせてしまいがちだ。

改めてツーリングとして走ることで、日常の街乗りだけの通勤作業的感覚がリセットされ、バイクと向き合うモードに、少しずつ、ほぐれてなってきているようにも感じるのだ。

「R65、実はかなりスポーティーなポジションなんですよ。」とST4さん。
「跨ってみてください。」

ご厚意に甘えて、ST4さんのR65に跨らせてもらい、ポジションをとってみる。
すると、思いのほか、ハンドルが低く、遠く、幅が狭い。
絞り込んだハンドルは、まるでかつての僕の愛車GPZ1100に、カワサキの250ccネイキッド、バリオスⅡのハンドルを付けた、あのポジションに似ている。が、もっと上体の前傾が深い。

「意外です。そうとうにスポーツですね。」

「R65は、当時のRシリーズの中ではショートストロークで、シャープに回るエンジン、最高速の長時間、長距離のクルーズ性能というよりも、当時のBMWきってのハンドリングマシンだったんです。」

「だから、選択肢にかかってきました。時速200km以上の最高速は、実際のところ、要らない。もっと実際的な速度でライディングをスポーツしたい。」

「それと、自分の体格では国産のバイクは少しポジションが小さいというのもありました。この65は、ぴったり来ます。」

ST4さんは、身長180cmを越える長躯の持ち主。ドイツ製のこのマシンのやや大柄なポジションも、ST4さんにはぴったりくるのだった。

羊蹄山を見上げながら、畑を渡る風の心地よさに、揺れながら。
互いのマシンの話をして。

「さて、もう一つ、羊蹄山が見える場所に移動しましょう。」

今日はどうやら、走ったり、しゃべったり、走ったりだ。 (つづく)

2 件のコメント:

  1. あれ?このR65ポロピで見ました。オーナーは確かサトルノ持っていませんか?勘違いだったかな?おまけにルマン3も持っていると言っていたような・・・・。

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    1. いちさん、こんにちは。
      う~ん、コメント返しづらいですね…。
      いちさんがポロピで会った方かもしれないし、同じ方ではないかもしれませんね…。
      ゆきかぜと同じカラーリングのV7も、札幌近辺に私より前から走ってますし、
      R65も複数台あるかもしれませんね。

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