樹生和人、もうすぐ59歳。
生まれてこの方、「グルメ」なるものに一度も興味が湧いたことがない。
そう、だから遠くの地へツーリングに行っても、当地の名物料理を食すことはほぼなく、ひどいときはカロリーメイトと野菜ジュースで走り続けるなんてこともします。
これは、どうも子供の頃からで、あまり食に興味がないというか、風呂にしても、入らなくていいなら入りたくない、飯食わなくてもいいなら別に食いたくもないという、なんだか生きることの喜びの幾何かを放棄したような感覚の持ち主なのでした。
だから旨いもんツーリングもしないし、温泉ツーリングもしない。観光地でお土産を買うこともない。ただ走ってればいいという、味気ないというか、どうした…という感じなのです。
それは、今でも続いています。
今でも、ツーリングの食事と言えば、たいていはコンビニで買って行ったパンと缶コーヒーなんてもんで、特にコロナ禍以来、そういう傾向になっています。
それでも、去年から朝食の珈琲は妻と二人分を自分で挽いて淹れるようになりました。
味音痴な私ですが、忙しい朝に、くるくるガリガリとコーヒー豆を挽く、その時間をはやる心を落ち着かせる時間として使えるようになったようです。
インスタントでも十分おいしんですけど。
さて、そんな私ですが、子どもの持っていた漫画を借りて読んで、ちょっと、おお、と思ったことがありました。
『異世界食堂』原作:犬塚惇平 漫画:九月タカアキ キャラクター原案:エナミカツミ
1巻~4巻(完結) スクエアエニックス
2017年頃に描かれて、アニメも放映された作品らしいのですが、全く知りませんでした。
ちょっと調べてみたら、この6月からKADOKAWAの無料漫画(海賊版でなく、正式)として「少年エース」の作品として漫画家を変えて公開されていました。
いや、全然知らなかった。
元々「小説家になろう」系(ナロウ系とかいうらしいです…)のライトノベルから漫画化されたようですが、59歳の老人なりかけとしては、異世界ものといっても、その異世界がファンタジーRPGのテンプレートをなぞったものならば別に嫌いでも好きでもないというか、興味が全くないですし、グルメでもないので、全く興味なく、ただ、仕事で頭が疲れたので、ちょっと読んで見ただけだったのですが…。
これが、あなどれない。
「ああ、これなら食事が楽しめるなあ…」
とか、
「ああ、こういうふうに味わって食べると、食べた本人も作った人も幸せだろうなあ…」
とか、
「ああ、うまそうだなあ…」
とか、思ってしまったのでした。
まず、異世界食堂と言っても、食堂自体はこの世界(?)にあって、週一日、土曜日だけいろんな異世界にこの食堂(洋食のねこ屋という食堂)の扉が現れ、そこからいろんな世界の人がお客さんとしてやってきて、食べる。という、そういう作品なんですが、
でてくるメニューが普通の、カレーライスとか、コロッケとか、ビーフシチューとか、メンチカツとか、チョコレートパフェとか、カツ丼とか、普通のメニューで、特にすごいことはなく、ただ、それがとても丁寧に描かれていて、(上の絵を見てください)絵が、おいしそうなのです。
食べる時にはグルメ漫画の「文法」である、どうおいしいかを語るモノローグが続くことになるのですが、この語りが、料理が普通なので、極端でなく、そして、にもかかわらず、とてもおいしくて、食べる人はみんな幸せな気分になるという、そういう上品さも持っています。
広島在住歴が長い僕としては、お好み焼きがどうやら広島風というのも、お気に入りのポイント。
普通の料理を、丁寧に作って、それを楽しんで味わって食べる。
それがとてもおいしい、というのが、とても素敵に思えました。
物語が説教臭くないのもいい。
この比喩は我ながら笑ってしまうのですが、
「そうか、コーナリングを楽しむように、食事を楽しめばいいのか」
「ハンドリングを味わうように、その料理を味わえばいいのか」
と思ったという……。
それなら、今まで全く食に興味もなかった自分でも、「グルメ」などにならないでもできるかも、そしてそれは、楽しいかも…と思ったのでした。
なかなか、子どもに教えられることの多い年齢になりました。
それは、幸せなことかもしれません。
>59歳の老人なりかけ
返信削除はて?何の事でしょうか?
バイク乗りが “バイクに乗っている、その時” は、時間経過が止まるのですよw
あ、北海道では、冬の間は年を取るのかな?
tkjさん、こんにちは!
削除いや、ハートはそのつもりなんですが、
バイク乗ってないとき(仕事とか)の疲労度が半端なくて、
年だなあ…と、思うわけですよ。トホホのホ。
まあ、その分用心深くなったというか、老獪になって
安全マージンは増してきている……つもりですが。
今年が走りますとよ!