最上のミズナラを見た後は、道道27号線を走って北見市に抜ける。
帰り道。
既に午後2時は大きく回っていて、日没までに帰るのは絶望的。
暑い。おまけに肩凝りも来ていて、つらい時間帯に入っていく。
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15:00 北見市 コンビニエンスストアにて。 |
いろんな近道や脇道も考えたが、トイレに行きたいのと、水分とカロリーを補給したいのとで、国道40号へ出て西へ。相内(あいのない)でコンビニにより、カロリーメイトとスニッカーズと、飲むヨーグルトを買って食べた。
お盆の中日ではあるが、国道はそれなりに混んでいる。
車列に従って留辺蘂から石北峠を目指す。
北見富士が遠くかすんできれいに見えたが、停まれないままに走った。
こういうところに疲れが現れる。疲れていない時は、ぱっと停まって一枚撮って、また走り出すものだが。
気持を切り替えて、メリハリをつけつつ、安全運転で。と自分にカツを入れながら、走った。
石北峠を越えたころには、また肩凝りがつらくなっていた。
1時間持たないとは。
やはり日頃の仕事の疲労蓄積が、こういうところで現れる。
石狩川の上流にかかる大きなダム、大雪ダムの管理事務所に逃げ込んだ。
疲れを取り、水分を取り、体操をして頭、首、肩、背中をほぐしたい。
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16:12 大雪湖。 大雪ダム管理事務所にて。 |
管理事務所の中に飲み物の自動販売機があった。
甘い缶コーヒーを飲んで、身体をほぐして、少し休憩する。
ゆっくり行こう。
自分に言い聞かせる。
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16:37 R39 層雲峡 |
道はすぐに層雲峡を通る。柱状節理の断崖絶壁が続く温泉景勝地。
僕は今まで、この近辺を通るといつも眠くなるのだった。その眠気に危険を感じるほどに。
いつも早朝に出発して、割と走りづめで、このあたりを走る時はたいてい昼過ぎから夕方で、疲れも来るころであり、同時に片道一車線の国道は脇道、抜け道もなく、いつも混んでいて、車列の中での走行を強いられる…そんなせいだと思うのだが。
今回も警戒して走ったのだが、まったく眠気は来なかった。
直前の大雪で休憩したのが効いていたのだろう。今まではたいてい峠の前から走り詰めで、休憩スポットらしきものもあまりないから、そのまま通過しようとしてしまっていたのだ。
やはり齢をとってくると、適当な休憩は必要だ。
石北本線や国道273の通る筋と合流する上川を過ぎると、前方、旭川方向の空が重苦しい灰色におおわれていた。
天気予報では、旭川は午後、一時的に雷雨である。
愛山(あいざん)から旭川紋別自動車道に乗ることにした。この区間は無料区間なのだ。
そうとう雲行きが怪しくなる中、高速道に入って2kmくらい走ったところで、ぽつ、ぽつと来たと思ったいきなり本降りになった。積乱雲の下だからこういう降り方である。
高速道路は路肩に車を止めてもいけないのだが、幸い、路肩が広くなっている部分がすぐにあったので、そこに止め、そこから法面の草の斜面を上がってそこで上下の雨合羽を着た。
来ている最中にパトカーが通過していったが、これではやむを得ないと思ったのか、注意もなし。
しかし、降られることは十分に予想できたのだから、高速に入る前に着ておくべきである。
カメラはケースごとポリ袋に入れたので、写真はなしだ。
雨の高速。比布(ぴっぷ)インターまで一気に走った。
比布で降りると、雨は止んでいた。その後、家まで一度も降られず。
高速道路だけの雨天走行の感想になるが、V7Special、雨天でも特に問題はない。あたりまえのようだが、そこはイタリア車。一度経験してみないと、電気がリークして火花が飛ばなくなるのではないか、インジェクションに不具合が出るのでは…など、あらぬ不安は僕とてあったのだ。
スポーツデーモンも雨天走行は初だが、まだ2000km走行だから溝はたっぷり残っている状態で、当然ともいえるのだが、非常に良好なグリップ感を得ることができた。
しかし、高速道では轍の水たまりは最大級に注意が必要だ。ハイドロプレーン現象は、タイヤがいくら高性能でも、いずれ起きるし、水深が深く数センチになる場合もあるかもしれず、その時は走行抵抗も大きく、ハンドルが強い力で振られることもある。ハイドロを起こしかけている状態でハンドルが左右に振られると、間違いなく転倒して深刻な事故になる。
轍は避けて走るのが雨天時の高速道の鉄則だ。
またやむを得ず轍を走行することになり、ハンドルが振られたら、この時ばかりは2輪車の運転原則を全て忘れ、渾身の力でハンドルを直進に保持する。加速も減速せず、車体を垂直、ハンドル直進に保って、その水たまりを通過するのだ。
幸い、今回はそんな轍もなく、安全に走っていけた。
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17:48 鷹栖町付近 |
比布で高速を降り、一般道を帰っていく。
もう、気持ちとしてはツーリングは終了している。夕方だし、雨にも打たれ、肩凝りは来ているし、疲れてもいる。
本当に体調が悪かったり、時間がない時には、僕も迷わず高速を使う。
でも、この日は降りた。
高速に乗ると、バイクで3200円。僕はETCを持たない。ETCだと1600だが。
3200円は、ガソリン代を考えて走る距離まで絞る僕には、きつい金額だ。
もちろん、緊急資金として現金は持っているし、カードも持っている。
しかし、ここで高速代に3200は払えない…というのが、我が家の経済状況というか、僕の小遣い状況なのだった。
僕がバイクに乗り始めたのは貧乏学生だった頃だから、本代とガソリン代の捻出に苦労して、一時は銭湯代まで浮かして公園で体を洗っていたことすらある。服も安物のぼろぼろ。それでも、バイクで走るのは楽しかった。
僕が下道をメインに使い、旅の楽しみであるご当地の旨い飯にもあまり食指を伸ばさず、ひたすら走ってくるツーリングを続けているのも、そうした僕自身のバイクルーツに関係あるのかもしれない。
また、僕も一時期「バブル」の頃は、高速を駆使したツーリングもしていた。
澄んでいた広島から夜中に高速で出て、鹿児島まで走り、中国山中を北上してきて熊本とか福岡とかに出て高速で帰ってくるような強行軍をしていた時期もある。
でも今、僕にその経済力がない。
それなのにバイクを新車で買ったのだから、我が家の家計の負担は推して知るべしである。
あまり金を使えない。それが、僕のツーリングの一つの枠なのである。
いや、それでも、その同じ予算の中で高速を使い、煩わしい都会の混んだ道を1時間ほどでさっとワープし、田舎のいい道を楽しく走り、予約しておいた地元のおいしいレストランで食事を楽しみ、またさっと高速で帰ってくる、1日300kmくらいのプランを立てることも可能だ。
そしてそれもまた、素敵なバイクライフだと思う。
僕だってたまにはそうする。
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18:23 道道98 多度志付近 蕎麦畑が広がっていた。 |
なんだかんだ言って僕は、バイクでさすらう感覚がすきなんだろう。
ブログのサブタイトルにも書いたが、{北道逍遥(きたみちしょうよう)}、さすらう自由、それを手にした喜びが、きっと僕のバイクの原体験で、それをずっと忘れられないだけなんだろう。
今回のツーリングでも帰ってみたら760km走っていた。ガソリン代は約4600円。
距離を半分にすれば同じ値段で高速にも乗れ、時間も半分以下で済んで家庭サービスもでき、休日仕事も少し進んで、いい感じだ。
でも、それができないのが僕だ。それじゃ息が詰まる。アルプスの少女ハイジではないが、病気になってしまう。僕には、バイクでさすらう一人の時間が、まだ絶対に必要なのだ。
本当に我ながら困ったものだが、僕自身、バイクで走っているときの自分が、あらゆる自分の中で一番好きなんだから、どうしようもない。
嫁さんが分かってくれているのが、本当にありがたい。
比布からは鷹栖町の田園地帯の中を、道道520を行きながら時々外れたりして、ゆっくりゆっくり走った。
このあたりは稲の水田が広がる。
以前は寒すぎて稲には適さないと言われた北海道、今では品種改良も進み、北海道米は安くておいしいので有名だ。一面の田んぼの風景も、見慣れたものとなった。
夕暮れ時のやさしい風景の中を走るのも久しぶりで、とても気持ちがよかった。
旭川の市街地を避けて道道72号線と915号線、98号線を走りついで、道道916で小さな峠を越えて深川市に入り、線路から少し北側の道を走って妹背牛で道道47へ合流して雨竜へ向かった。
途中の峠だけ、少しコーナリングを楽しんで、あとはゆっくり走った。
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19:12 雨竜町 R275 |
夜7時には暗くなった。暑い日が続く北海道だが、日は確実に短くなってきている。
もう殆どの店が閉まっている雨竜の道の駅を通過して、雨竜町の街中のセイコーマートに寄った。
セイコーマートは北海道資本のコンビニエンスチェーンだ。
多くの店舗が朝5時から夜11時までの営業で24時間営業はしない。
本当に深夜にコンビニに助けられた経験も多いけれど、24時間開けない方針には、僕は賛成だ。
豚カルビのおにぎり一個。今日の晩飯だ。
ちょっとずつ、何回かに分けて食べ、一気に意を満タンにしないかわりに血糖値が下がって空腹を強く感じるようにもしない…。血糖値の激しい上下を抑えるのが、長時間走り続ける時にはいいらしいとは、本で読んだのだが、なんとなく、肩凝りが来ないように1時間ごとに休憩していると、こういうリズムになってしまうのだ。
肩はそれでも凝っている。
ゆっくり、休憩多めに、安全第一で帰る。
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18:45 国道275 道の駅つるぬま |
夜の国道275は比較的空いていた。
それでも車の後ろを走ると、やはり肩に来る。さっきから30分しか走っていないのに、休憩に入る。
トイレにも行き、体操をした。
ドライバーやライダーが休憩していた。
さらに国道を行き、当別で最後の休憩をして、自宅に着いたのは、午後8時40分ころだった。
V7Special(ゆきかぜ号)の慣らし。
走行性能のテスト。
ワインディングの走り。
樹への訪問。
ダートの走行テスト。
雨天時走行。
高速道走行。
夜間走行。
いろんな走りができた。
最後はさすらう感じの帰り道、心地よいさみしさを満喫して、ナイトクルーズができた旅だった。
サンキュー、ゆきかぜ。
明日、洗車しような。