行きにはなかった余裕ができて、途中何枚か写真を撮った。
12:36PM 津別町双葉地区の林道にて。 |
ゆきかぜ(=MOTO GUZZI V7Special)はオンロードバイクなので、こういう道を走ることはあまり想定していない。
しかし、そんなに走りづらいわけでもなかった。
速度は全く上げられない。タイヤがオンロードタイヤなので、急ブレーキ時にグリップしてくれないからだ。
まして買って間もない新車。倒さないように、細心の注意を払って、しずしずと走った。
林道は片道4.5kmとはいえ、体感的にはかなり森の奥深くまで入った気がする。
アップダウンもあり、細かいカーブも多く、急坂のヘヤピンコーナーもいくつかある。
熊よけに、クラクションを時折鳴らしながら走った。
林道の出口にはさっき通ったゲート。これは鹿よけだから鍵はない、掛け金を手で開けて通り、また閉める、と確実にすればよい。
ゲートを出れば舗装路まではもうすぐだ。
林道を走った後の車の状態。タイヤには思ったよりも泥が詰まっていない。もちろんオンロードの感覚で乗ってはいけないが、意外とアクセルも開けられるし、ブレーキもフロントを掛けても大丈夫なのだ。間違ってもフロントをガツンと掛けてはいけない。いきなりフロントタイヤがロックして、前輪が外れたかのように、激しく転ぶ。しかし、ダートでフロントブレーキは絶対かけるな、というのは正しくない。ロックしないように、両輪ともじわっとかけるのが安全でよく止まる。
前輪から泥はねが飛び散っている。エンジン下部、下から蓋をするみたいに、オイルパンがボルトで留まっている。もしもここを岩なんかに激しく打ち付けて割ってしまったり、合わせ目のボルトを折ってしまったりしてオイルがダダ漏れになると、漏れたオイルを後輪が踏んで転倒する(だけでなく、後続車にも危険が及ぶ)とか、オイルを失って焼きつくとか、走行不能になるので、大きな段差を越えたり、飛び降りたり、岩ゴツゴツの林道を走ったりするとき(が万一あったとしても)には、注意が必要だ。
V7はシャフトドライブなので、チェーンが何かを噛みこむ、という心配はない。
ただ、ピボットのオイル(グリース)切れや、埃、水などの侵入が心配ではある。
洗車時もあまり隙間に激しく水が当たらないように気を付けている。
泥で結構汚れてしまった。
13:48PM 最上のミズナラ近辺の林道にて。 |
双葉のミズナラは比較的すぐ見つかったのだが、最上のミズナラは、道道から町道への標識を見落としてしまい、林道に入るまでに迷い、手間取ってしまった。
午後の時間が過ぎていく。
暑さと、時間の遅れの中で少しの焦りもあった。
最上のミズナラへの道は、やはりゲートを開け、閉めて進んでいく森の中の道。
やはり時折水たまりや部分的なぬかるみなどが現れる。道の分岐点、メインと思しき左の道へターンしかけて、その道があまりに急坂なのに躊躇し、同時に分岐の標識の両方に「巨樹」の字が見えたような気がして、確認しようと、停まろうとした。
ところがそこは路面が前方が高くなっているだけでなく、右が上がり、左が下がっている斜めの路面、着地するつもりの右足が一度宙を切った。慌ててすぐに下に足を出し直して左足を着地、…と、その足元が最近撒かれたであろう細かい砂利に乗って滑ってしまった。
倒れる。
厭な感覚。何度も経験した、加速度がついて傾いてくる車体に踏ん張る足場を失って倒れる感覚が蘇る。以前、立ちごけを回避しようとして足を痛めた経験も、一瞬に脳裏を掠める。
諦めなければ倒さずに済むことも多いのが立ちごけだ。ちょっとの間、渾身の力で踏ん張ってみる。
しかしだめだった。ゆきかぜが傾いてくるのがスローモーションのように感じられる。
では、せめて少しでもダメージ少なく。
ぎりぎりまでそっと路面にタッチするように、支え続けようとする。最後は自分の体が左側に回転しながら倒れ込み、ゆきかぜも倒れてしまった。
土の上で体がくるんと一回転する。ゆきかぜはあえなく横たわる。意外なのはエンジンが止らなかったこと。すぐに起き上がってキルスイッチを切ってエンジンを停止させた。
静止状態からの立ちごけだ。
身体をチェック。どこも痛めていないようだ。
できるだけ早く、ゆきかぜを起こす。
両ハンドルを掴み、フロントブレーキを握ってハンドルを右にフルに切って引き起こす。
さすがに装備で190kg。その軽さは装備270kgで重心が高いGPZと全然違う。
すぐ起こすことができた。
13:50PM 最上のミズナラ近辺の林道にて。 |
ギヤは1速に入っている。
サイドスタンドで安定して自立していることを確認して、
ああ、と嘆息しながら車体をチェックする。
それが、殆どどこも傷ついていなかった。
シリンダーヘッドのプラスチックカバーに設置痕が少しついたが、へこむとか、そういうのではない。
ハンドルバーエンドに土がついている左ミラーの先にも土がついているが、曲がるとか、そういうものは全くなかった。しかし、もちろん接地痕は少しついている。
タンクは全くどこも接地していなかった。前後ウィンカーも無傷だ。いや、前の左ウィンカーの先に土がついていたが、傷というものではなかった。
マフラーも、後端近くの一番太い所に土がついていたが、ホールドが曲がった気配もないし、大きな擦過痕もない。
左ステップは先端部分のアルミ地とゴムの間に土が挟まっていた。
可倒式だが、やわらかい土の上に、倒れずにこれが少し埋まりつつ減衰してくれたようだ。
こういう場合はまずシフトレバーが曲がるものなのだが(数えきれない転倒経験があるのでね…。)、全く曲がっていなかった。
冗談みたいな、超軽傷。ほぼ「無傷」と言える状態だ。
一瞬、ブログに書かないでごまかしてしまおうか、なんてこずるい考えが浮かんだくらいだ。
平らなところまで慎重に戻し、ギヤをニュートラルに入れて、エンジンを掛ける。
…普通にかかった。アイドリングも安定し、何の異常もない。
ああ、…ほっと一安心。
落ち込んだまま、もう一度車体各部を再チェック。
大丈夫のようだ。
まったく、ゆきかぜには申し訳ないことになってしまった。
不得意な林道を走らされた挙句に土の上に倒されるとは。
それにしても、乗り手孝行な車だ。
これで自走不可能になったら、それはもう目も当てられてない状況だったのだが。
現金なもので、たいしたことないとわかると、心の傷も軽く感じる。
「ゆきかぜ、ごめんな、俺ってこういう奴なんだよ。」
なんて言いながら、さらに慎重に右の正しい林道をさらに700m、最上のミズナラを目指すのだった。
13:54PM 津別町最上地区 最上のミズナラ前。 |
数分でつくことができた。
またクラクションを長く鳴らし、熊よけをする。熊、および周辺の動物、植物のみなさん、申し訳ない。お邪魔します。さっと見て、さっと帰るからね…。などと、弱気になって妙に慎重にゆきかぜを降りた。
小さな木の看板の向こう、大きく手を広げたような形の、何か巨大なものが見える。
どうやらこれが、最上のミズナラらしい。そのレポートは次回に。
14:07PM 最上のミズナラのすぐ近くの林道にて。 |
イタリアから遙々やってきた我がV7Specialゆきかぜ号だが、早くもトホホで無謀なオーナーの洗礼を浴びることになってしまった。
申し訳ない。
これで嫌にならずに付き合ってね。
と、ひどいオーナーぶりは早くも全開なのだった。(つづく)
こんにちは、樹生さん。
返信削除最後の写真。
ゆきかぜさん「もうカクゴは決まった。トコトンよろしくね」
てなことを言わんとしてるような・・・・
(イヤ、ジョウダンデス)
ライダーさんもバイクもご無事で何より。
ホント、不動になったらかなり厄介そうな場所なんで・・・
いやしかし、本当に「どこへでも」バイクで行っちゃうんですね!
以前の記事などで存じ上げてはいましたけど・・・
なんだか改めて、GPZくんは幸せだったんだなぁと思いました。
ゆきかぜさんも、そんな幸せな相棒になって行く(もうなった)のだろうなとも思います。
ソロさん、こんにちは。
削除私には今流行りの「アドベンチャー」タイプ(BMWのGSを代表とする…)が、たぶん用途的には一番合っているんだと思います。
でも、例えばGSの、身も蓋もない万能ぶりには、どうも魅かれないところがあります。
どこへでも行きたいけれど、コーナリングはオンロードバイクのあの「感じ」を味わっていたい…という、わがままな私なのです。
ちなみにあそこで動けなくなった場合、道脇に駐車して徒歩で4km道道へ戻り、何とか帰宅して、後日取りに行くことになったと思います。
ああ、でも、やっちゃったなあ…。…って、いずれやったと思うのですが…。
ゆきかぜには諦めて付き合ってもらわなくてはならないなと思います。
GPZもそうだったんですよね。
僕に乗られると、バイクは受難のようです。