2017年10月25日

約束。6

午後5時。帯広駅に白井と中谷の姿があった。
札幌から来る特急が帯広駅に停まる。
改札をくぐる人たち。
やがて曳地が現れ、そして広田が改札をくぐってきた。
「ひさしぶり。」
「10年ぶりね。」
「変わらないなあ」
「少しやせたよな」
いろいろ話をしながら、ポツポツと降りだした雨の中を、駅前のホテルまで。
白井が曳地の、中谷が広田の荷物を半分持って、歩いて移動した。

チェックインして、夕飯の時間を決める。
1時間の時間。
中谷は部屋で体を洗い、ウェアを点検する。
合羽を着なかったために、ウェアは濡れている。
部屋干しになるが、広げて干して、エアコンの風を当てるようにした。
気温は15℃。真夏とは思えない。
持ってきた着替えは最小限。
ジャージに履き替え、合羽の上を羽織って寒さ対策にし、ロビーに集合した。


4人そろったところで、近所の居酒屋へ移動。
夕食を摂りながら、10年分の話に花が咲いた。

「キーホルダー、10年間使ってた。」
と話すのは、白井、曳地、広田。
取り出して並べてみると、女性の広田のキーホルダーはそれほど汚れていない。
「バッグの中に入れてることが多いから」
なるほど。曳地と白井は日々使うだけでなく、バイクにも付けているから、相応にやれている。
「でも、このやれた感じがまた、いいよね」
「10年、経ったね」
そんな話をする。


中谷のキーホルダーは家に大事にしまってある。
中谷が持ってきたのは、20年前のキーホルダー。
「1997.8.6 HOKKAIDO KAIYODAI KRC」
と彫ってある。
「今年版はまだ、ないんだ。」
中谷が言う。
「開催できるか、ほんとうにぎりぎりだったから、間に合わなかった。」
2027年8月6日版を作って後日送るということで話がついた。

「会えたね」
「会えたな」
「よき来たね」
「よく来た」
「明日は開陽台だ」
「天気予報は雨だね」
「一日?」
「一日」
「何パーセント?」
「80パーセント」
「車で行くか?どうせ僕らはレンタカーだし」
「明日、決めよう」
「もう齢だし、無理しないで」
「そう、無理しないで」


居酒屋から帯広市、北の屋台村を少し散歩して、最後はホテルの最上階のバーで。
気が付くと日付が変わっている。
「もうキリがない。明日のために寝よう」
「そうしよう」
「あしたは往復500kmだからね」
「500kmか」
「雨の中」
「ほぼバカげてる」
「行って帰るだけになるね」
「馬鹿げてる」
「ばかげてるね」

どんな明日になるのだろう。
中谷はそう思いながら寝た。
(つづく)

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