2017年10月9日

洗い流すのに


洗い流すのに、どれくらいかかる?



走り出してすぐに、無になれるわけじゃない
日常の感情に縛られたままで
走り出しても、まだしがらみの中
簡単に振り切れるような、やわな関わりじゃない
ホントはどんなに走っても、そこからは逃げられない
そんなことは 分かりきっている


ほんのひと時、離れるだけでいい
瞬間、忘れるだけで
いや、忘れられなくても
頭の中心から少し背景に退いてくれるだけで


誰でもない自分に 
自分そのものに
戻っていく

その自然な呼吸を取り戻すのに
どれくらいかかる



たぶん時間だけじゃないけれど
時間も必要だ
エンジンの鼓動、車体の振動、加速、原則のG
それらと身体が同調してくるまで


例えば街を脱出して、郊外の道を30分
例えば高速道路を延々と数時間
例えば海岸沿いの国道を流し続けて300km


いやわずか、5分の街乗りでさえ、
後方にかさぶたのような自分を置き去りにすることは可能かもしれない

札幌の街を抜けて、当別町から道道28号線を北上し、ダムを越えたあたりから、道道11号線で月形方向へ。


霧の中、秋が深まる山道を走る。
ウェアが濡れて、シールドが水滴で見えなくなるほどの霧だけど、
レインウェアを着るほどとは違って。


明日からは寒くなって、雨が続くそうだ。


月形のコンビニに寄る。


こんなもんばっかり食ってたら、体に悪いだろうなあ…。
でも、ウンチクごと喰わされる自然食品よりも、ウンチクなしのコンビニ飯の方がいい時だって、たまにあるのさ。


コンビニフードをほおばりながら、ゆきかぜのエンジンを眺める。
シリンダー丸見えで、左右に斜めに突き出すって、なんか不細工だよなあ…。
隙だらけというか…。
インジェクションと空冷、OHVバルブ機構。
750ccで7000rpmまでしか回らないエンジン。
不思議なマシンだよなあ…モトグッツィ、V7。


でも、僕にはいいかもしれない。
とにかく、走っていると生き物にまたがっているみたいな感覚になる。
機械に過剰に思い入れるのは危険だし、オーバーな思い込みは無意味なだけでなく閉鎖的な思考を呼び込む。

しかしこいつは、そんなふうに作られている。
あけすけにいえば、エンジンレスポンスの調節が抜群に上手い設計ということになるのだろう。
そして、すでにこの域は、最新のスーパースポーツバイクでも実現されている。
本当にテクノロジーの進歩はすごいものだが、最後の仕上げはテストライダーが乗っての感応検査。
ここで個性の違いがやはり残るのだろう。
ゆきかぜ号は日本語名を付けたが、こいつは日本車とは違う、やはりイタリアンだと思うのだ。


広いコンビニの駐車場、人目につく正面をさけて、横面のところで行儀悪くも地べたに腰を下ろして昼食タイムとさせてもらった。

さあ、つかの間、休憩を取らせてもらった。
洗い流すとまではいかないにしても、
まとわりつく日常を、ほんのひと時、ほぐしてゆるめて、
ゆきかぜと逃避行。
その目論見は、どうやら僕の中で達成されたようだ。

では、帰ろう。


帰りは岩見沢市北村経由で。
途中、北村の「不動尊記念保護樹木」に立ち寄った。

巨木はミズナラやイチイなどが多い中、これはポプラで、しかも、明治以降に人の手で植えられたものだ。


ポプラは寿命が短く、100年持たないものも多い。
すぐに大きくなるが脆く、大枝が雪や風で折れたりする。
だから、最近はあまりポプラを並木に使わなくなってきている。
ポプラといえば、北大のポプラ並木などが有名だ。

セイオウハコヤナギの名の通り、ほうきのように上に向かって枝を伸ばす姿が印象的だが、この樹は普通の樹のような枝ぶりだ。

さて、寄り道しながらも、札幌の街中まで帰ってきた。


札幌の大通を行けば、テレビ塔がそびえて。
「大通公園」は幅100mの大通の北側(東行)と南側(西行)に挟まれた広い緑地帯。
今日も多くのイベントが催され、また、家族連れや観光客が思い思いに散歩したり、芝生で遊んだりしていた。


慌ただしい街中。
明日からはまた、慌ただしく、仕事の毎日だ。

今日の走行は120km。
4時間だけのバイク散歩だった。

6 件のコメント:

  1. 纏わりつく行き場所のない感情・・・
    走り出しても、なかなか振り払えませんから(^^;
    MCに跨る前の、時間の過ごし方が、大切だと思うようになりました。

    呼吸するように、走ったり過ごしたり・・・
    心地良いと思うのは、自分の呼吸に合っているひと時かも。
    急かされず、同じ呼吸で走れる相棒との時間は、
    何か違う世界を教えて貰える時があります。

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    1. selenさん、こんにちは。
      走る前の時間の過ごし方大切……なるほど、そうですね。
      かなり影響しますね。若いころのようには行かなくなってきました・

      呼吸に合っているってとても大事だと思います。
      生粋のスプリンターは、たぶん僕の呼吸には合わなくて、
      とことこ走れるんだけど、そのまま1千km以上の
      ロングツーリングにも出られるような、
      そんな呼吸が好きです。

      呼吸って、大事だと、最近さらに思うようになりました。

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  2. 週末のツーリング、初めて最後まで気乗りしないツーリングになりました。
    まあそういう時もあるのでしょうか。
    でも、最後までそんな気分だと、次は大丈夫かなと少し不安になりました。

    出身が篠路で、ポプラと言えば石狩街道のポプラ並木を思い出します。
    学校の校歌でもポプラ並木を歌っていました。
    思い入れの深い樹です。

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    1. Shin Osawaさん、こんにちは。
      生活や、自分の心、仕事、いろんなもののリズムの合い方、ずれ方で、
      そういうこともあるかと思います。
      あと、やはりマシンに気になるところがあると、乗れませんね。
      身体のセンサーはすごく高性能なので。

      僕は体調悪くて全くだめで帰ってきたことが2回ほどあります。
      でも、原因を見つけて対処すれば、また楽しく走れました。

      石狩街道のポプラ並木、見事ですね。
      特に名所にもどこにも取り上げられていないようにも思うのですが、
      毎回通るたびに、でかいなあ…長いなあ…と思います。

      故郷の山や、海や川、
      大きな木や並木などは、ずっと思い出に残りますね。

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  3. 仕事の多忙さにお疲れモード一杯の様でバイクどころではない感が伝わって切ないですね。
    でも、乗るんですよね。秋の風の中、バイクを走らせて行く先は巨木の下。
    自分は湖の畔かな(笑)

    生き物みたいなグッチのエンジンは絶妙な味付けで道中を愉しませてくれます。
    速く走る時はスムーズに、低速はドコドコと鼓動感満載です。

    秋も中盤なのでライディングに向く天気の良い日はバイクで走りましょう。

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    1. いちさん、こんにちは。
      いや、やっぱり疲れモード全開ですか?申し訳ないです。(^^;)
      疲れると走り出すのも大変なのですが、
      それでも走らずにいられない種類の疲れというものもあって…。

      「秋も中盤」。そう。もう一月ありますね。
      秋の風の中を走りたいものです。

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