2024年10月8日

G310GSのハンドリングについて考える(1)

MOTOGUZZI V7special(2013)モデル、我がゆきかぜ号のコーナリングに関していうと、前後サスで唯一調整可能なリアのスプリングプリロードを少しいじるだけで、ハンドリングがかなり変わるという特性を持っている。
プリロードを上げると、バンク角が減少し、フロントの舵角が素早く入るようになる。
プリロードを下げると、フロントの舵角がつきにくく、バンク角で旋回する感じになる。
そのあたりが敏感なのだ。
さらに言えば、タイヤの空気圧でもかなりハンドリングは変わる。
概して、ハンドリングに関して敏感なバイクだと言える。

※注意!! 筆者はただのバイク好きの一素人であり、この記事の内容も素人の創造に過ぎず、正しさは保証されません。読者の皆様は決して鵜呑みにすることなく、素人の個人意見としてご覧ください。


対してBMWG310GSでは、試乗の際にサスや空気圧は一切いじらなかったが、とにかくどんな状況でも非常に安定していることを感じた。
コーナリング中にFブレーキをかけても、あまり立ち上がってこずに旋回を続けながら減速していくことには驚いた。
また、コーナリング中に路面の凸凹を通過すると、ドスンと硬めの衝撃は伝えるものの、進路が乱されないことにも驚いた。ショック通過時にフロントが左右にパパッと振られる、あの感覚がないのだ。



もちろん、ハンドリングには車体のすべての要素が絡まっていて、何か一つを取り上げてその要因だとするのは間違っている。
だが、今日はそのスイングアームから話を始めよう。




二車を比べた時に、感じるのは、スイングアーム長の違いだ。
そしてそれはエンジンの前後長からも来ていることがわかる。
ゆきかぜのエンジン長は長い。クランクが縦置きであるーミッションも縦置きになるーなど、エンジン長を縮めるには縦置きクランクは向いていない。

対してG310GSは、エンジンの前後長が短い。その分、スイングアーム長が長い。
さらに、もしも車体全体をコンパクトにしたいなら、この状態からスイングアームを短くしてリヤタイヤを少し車体側に近づけることも可能だったことがわかる。リアサスとフレームの間の隙間などを見ても、かなり余裕がある。

スイングアームを長くするのは、アクセルを開けて駆動力を掛けたときに起こるアンチスクワット、または車体側のリフトとなる反力のレバー比を大きくして、姿勢変化を抑える効果がある。また、パワーが大きい場合には、そのことでリヤタイヤのグリップを失わせない効果ももたらす。

一方、短いスイングアームのV7はコーナーで「開けた」時のトラクション効果がぐっと体感できる。垂れ角は少ないものの、パラレバーなどを有していない、素のシャフトドライブのトルクリアクションが、開けるとスイングアームを下に押し付けようとし、その反力で車体を持ち上げようとする。これが、トラクション旋回時に内向力の高まりを感じ、さらに開け方、体重の預け方によっては、さらにラインを内側への入れていける卓越した操作性に結び付いている。

G310GSは、逆に徹底的に安定性を保とうとしている。
長いスイングアームと180㎜の長大なストロークは、ドライブチェーンにも長さと大き目な「遊び」を要求する。
そのため、スイングアームにはチェーンスライダーを上下につけねばならず、しかも、シングルエンジンのコッキングが感じられるような2,000rpmでの加速時には、頻繁にチェーンがスライダーを叩く。


そうしてまで得たかった安定性なのだ。



スイングアーム長を長く取るには、エンジンの前後長を短く、かつエンジンをできるだけ車体の前に積みたい。

1980年代に、エンジンをできるだけ前に積み、スイングアームを長くし、かつ、吸排気効率も高めようとしたのはYAMAHAのFZ750、「ジェネシス」コンセプトだった。
これはシリンダーを45℃前傾させて積み、クランク、ミッション、ドライブの3軸をおむすび状に3角形に積むという配置で市販エンジン形態に革命を起こした。

対して今回のG310GSは、逆にシリンダーを後傾させ、後方排気としている。
吸気をダウンドラフトとしてフロントタイヤとエンジンとの間隔をクリアし、
排気は長く取るスイングアームのピボット後ろを通して処理するという方法論。
この後傾シリンダーは必然としてクランクが車体の前方へ配置されることになる。

エンジンの構成部品の中で最も重いクランク。しかもそれが高速回転すれば、ジャイロ効果でスタビリティが大きく働く。
その安定成分を車体の前方、比較的低い位置に置き、スリムで背の高い車体の走行時の安定性を保とうとしている。
安定性だけなら、実はもう少し高い位置のほうが増す。だがそうすると今度はリーンアクションの際に重さを感じたり、接地面が外へ逃げるような感覚をもたらす。
このクランク軸の位置が、ロングスイングアームとハンドリングの核になっているのではないだろうか。

さらに、このエンジン、312㏄のリプレイスメントで、ボアストロークは80 mm x 62.1 mmと、ショートストロークである。
国産250㏄の短期等が軒並みロングストロークでトルクを稼いでいるのと比べると、クランクマスをあまり大きくせずに回転でパワーを稼ぐタイプのエンジンだ。
にもかかわらず、バランサーを装備して振動を軽減、さらにクランクを逆回転させ、4軸構成としている。

クランクの回転慣性は、特にその速度を変える時に車体に影響力を及ぼす。
縦置きのBMWやMOTOGUZZI では、クランクが時計と反対回りをしてるために、
開けると反力で車体は右に傾こうとし、閉じると左に傾こうとする。

横置きクランクの場合、正回転では進行方向に転がるようにクランクが回転しているため、開けると車体はフロントを持ち上げる方向で、閉じるとフロントを沈める方向で力が働く。
有り余るパワーをいかにデリバリーするかが課題となっているMOTOGPの世界では、開けた時のウィリーをいかに防止するかもテーマのひとつで、逆回転クランクによってその効果を狙っている。

G310GSの場合も、アクセルを開けた場合の車体の安定性を狙い、4軸構成にしてまで逆回転クランクを搭載したと思われる。
一軸増えた分若干とは言えエンジン長が長くなる、そこでそれを相殺するのが後傾シリンダーを採用してクランク軸を前に出し、ドライブスプロケットの位置をできるだけ前方に持ってくるということだったのだ。


……、という、素人の勝手な妄想でした。
さて、次回は、ディメンジョンについて。

※注意!! 筆者はただのバイク好きの一素人であり、この記事の内容も素人の創造に過ぎず、正しさは保証されません。読者の皆様は決して鵜呑みにすることなく、素人の個人意見としてご覧ください。

0 件のコメント:

コメントを投稿