2013年6月27日

ペア・スロープ 今年のカタログ

去年の秋冬と、今年の春夏のカタログ。
カタログの会社は、ペアスロープ。

国産の革製バイクウェアを作っている小さな会社だ。


カタログが届いた。
ペアスロープは一度だけ、今年の春に突如東京出張となったとき、仕事の間隙をついて訪ねたことがある。
製品が非常に丁寧に作られているのに感心した。殆ど感動したと言っていいくらいだった。


カタログの革ジャンを着ているモデルはモーターサイクルレーサーの松下ヨシナリ選手。
毎年マン島TTレースへ参加していることでも知られていた。


松下選手は今年のマン島で事故によりこの世を去った。
長くペアスロープのカタログモデルをしてきた松下氏の、今年は最後のカタログとなった。

ペアスロープの革ジャン、いつか買おうと思う。

2013年6月26日

後ろ姿


「男は背中で語る」…なんて言葉もあったけれど、ゆきかぜ(MOTO GUZZI V7Special)は僕の中ではなんとなく女性。 でもちょっと後ろ姿を眺めてみた。写真は、「1000km 赤井川」の時に撮ったものだ。



ゆきかぜの後ろ姿、なかなか好きだ。
タイヤが細いのにまず目が行く。シリンダーが左右に斜めに突き出しているのが変な感じ。
全体はスリムなのだが、シリンダーの部分は横幅が広い。そしてマフラーが横に広がっていて
意外と左右幅を取っている。
フルカウルだったGPZ1100と比べると、カウルがない分、小さく見える。(実際に小さいのだが。)
リヤフェンダーはスチール製で、弧を描いてシート下、サイドカバーの手前まで続いている。
後端が黒いプラスチック樹脂の板にさらに先に反射板がついている。これは、イタリアのナンバープレートの形に合わせた形状で、彼の地のものは縦長なのだ。梱包を開けたままの状態では日本のナンバープレートが着かない。
僕の購入元のバイクショップ「ズーム」さんでは、アルミ板を切り出して角を丸く加工し、元の樹脂のプレートにカシメてくれた。
後ろのこの位置は、意外とバイクを降りた後にライダー自身が何かを引っかけたりする場所で、ナンバープレート一枚まま固定すると、ひっかけたりして曲がりやすい。そういうことの予防にもなっている。ちなみにズームさん、お店のステッカーはナンバープレート下の黒いステッカー一枚のみで、非常に控えめだ。
ズームさんはGPZで9年お世話になったが、もともと広島で買ったGPZ1100を、本当に親身にみてくれて、おかげで12万キロ無事に走ることができた。いつもバイクの安全を考え、ユーザーの利益を考えてくれるので、とても助かる。作業についてもわかりやすく説明してくれる。その話が面白くてつい長居になってしまうことが多いのだが…。
その場での値引きや低料金を謳うショップもあるかもしれないが、適正料金で真っ当に整備してくれるズームさんは、決して高くないし、むしろ、かなり安いと思う。その安さは、これみよがしのものではない。その仕事内容に対して、非常に安いと思うのだ。真っ当な店で、真っ当なものを買いたい。現在の社会ではすべてをそうするわけにはいかないかもしれないが、自分の気持ちが優先できる場面では、できるだけそういう買い物がしたいと思う。
買い物はただの「消費」ではない。僕は「お客様」呼ばわりされるような、ただ「金を払う人」にはなりたくない。



少し斜め後ろから見た。
マフラーが幅広なのがよくわかる。
縦に細い車体であることも。
シリンダーが突き出している以外は、単気筒バイクと同じスリムさだ。
最近のバイクデザインではリヤを跳ね上げるのが流行りか、クルーザー(=アメリカン)タイプ以外は新作バイクのリヤの多くが高く跳ね上がり、リヤフェンダーは短く、雨の日はきっとライダーの背中に泥はねが盛大に飛び散ることだろうと思わせる。いや、実際にはそこまでではないのだろうが、少なくとも後方高くに水しぶきを上げることまでは間違いない。
V7は「ネオクラシック」と呼ばれるカテゴリーに入るバイクで(この先鞭をつけたのはカワサキのW650だった)、デザインが70年代あるいはそれ以前のバイクデザインを元にしているから、リヤも跳ね上がらず、造形も「クラシカル」である。(V7のデザインモチーフは1972年のモトグッチV7SPORTである。)
これを懐古趣味として、古いものが好きな輩(マーケット)に迎合したデザイン放棄の媚びた作品とみるか、現在でも有効な性能とデザインを今日的技術で再現した真面目な作品とみるか、これも諸説あるようである。



V7SPORTは、当時の旗艦。ホンダのCB750、カワサキのZ1のように、厳然たるオーラを纏っていた。
今、V7ゆきかぜに感じるのは、むしろ「かわいさ」だったりする。
現在のモトグッチの旗艦は1.2リッターエンジンや、クルーザーでは1.4リッターエンジンを積む上位機種に当たり、この750クラスは小さい方、「エントリークラス」。ビギナーや女性、街乗りをメインターゲットにしたクラスである。
したがってデザインも、仰々しくなく、かわいい、親しみを持ちやすいものにしたのだと思う。
もともとV7クラシックが出る前は、ブレバ750という、ほぼ同じエンジン、同じフレームで、
タンクやシートレール(リヤを跳ね上げる)など、デザインの今風な日常的使用では非常に高性能なモデルがあった。
V7クラシックはその外皮を昔風に「被せ替えた」、そういうモデルであるとも言える。

だが、僕はこのデザイン、絶賛はしないものの、まあまあ気に入っている。
自分の身の丈に合っているような気もするし、本来のこのバイクのパワーユニットとシャシーの持つ性能を、そのまま表しているようにも感じる。

押し出しの強くないのもお気に入りだ。
強そう、ワルそう、凄そうなデザインは、どうも僕には馴染めない。

確かに、GPZ1100には、頼れる確かなものがあった。
もしも雨の中を1000km走ってこいと言われても、こいつとなら行ける、という、確信に足りる、そんな存在感があった。

V7は、頼るのではなく、「協力してやっていく」、感じだ。
どこまで信頼し合えるか、どこまで対話できるか、それはこれからにかかっていると思うけれども。

車体が軽く、さっと跨れるV7。
見た目に凄さを感じさせないV7。
その本当の強さをどう見出していくか、乗り手の僕が問われている。

2013年6月23日

朝の散歩。

6月23日(日)
朝5時に起きて、6時から、8時過ぎまで、ゆきかぜと朝の散歩に出た。

2013年6月23日(日)6:17 札幌市南区北の沢
鹿と会った。
夜行性の鹿、お休み前のくつろぎタイムだったか。草原の中から僕を見ていた。


 

2013年6月23日7:05 札幌市南区中山峠手前
札幌は晴れていたのに、中山峠は雲の下。羊蹄山方面はさらに厚い雲と霧に覆われていた。昼には晴れるパターンだけれど、今日は朝の散歩だけ。中山峠で引き返す。

2013年6月23日(日)7:31 札幌市南区八剣山付近
夏至から2日。日の出は早く、朝7時にはもう、あの朝だけの空気感は失われている。
夏の朝、3時過ぎから6時頃までだけの、ドラマチックな時間。今日は目覚めたけれど、午後から忙しいから、朝早く出なかった。犬の散歩の人、ジョギングの人、自転車の人…。結構人と会った。
 


2013年6月23日7:58 札幌市中央区幌見峠。
帰りは幌見峠を通った。
山の向こう、霞んでいるのは札幌のビル群。本当に、こんな大都市の市街地のすぐそばに、こんな峠がある。路肩の土の上にゆきかぜを停めた。地面に影。周囲の緑。遠くに街。


2013年6月23日7:58 札幌市中央区幌見峠。
ゆきかぜのメッキに周囲の緑が映って、染まる。 
 


2013年6月23日8:14 
家についたら、距離計がちょうど1200kmだった。
2時間ちょっとの朝の散歩だった。

2013年6月22日

少し調整。


雨の土曜日。

午前中は家のことを少し。

バイクのことも少し。

午後は休日出勤。

夜、V7の給油に出かけた。


午前中、リヤのサスペンションのプリロードを計ってみた。

ダンパーボディに切られたネジの出ている長さで計ってみると、左側は約16.5mmといったところか。



右側、あれ?17.5mmある。左右でプリロードに1mmの違い?
ただ、このノギスの当て方を見てもわかるとおりに、僕は全くの素人で、計測自体間違っているかもしれない。
 角度を変えたり、両側を何度も計ってみると、やはり左16.5 右、17.5くらいがアベレージとなった。

車載工具に入っている専用のフックレンチで、プリロードを抜く。V7スペシャルはダブルナットでなく、厚みのあるシングルナットである。思いの外、小さな力でナットを回せた。まだ新品に近く、固着していないためだろう。


 ナットをプリロードが抜ける方向へまわして、計測。それを繰り返し、だいたい一回転弱で1mm程度緩めたり締めたりすることができるとわかった。

 右のプリロードも16.5mmに調整した。

 バイク月刊誌『バイカーズステーション』では、新型V7スペシャルの試乗を行い、スポーツ走行をするならリヤのプリロードを23mmにするのがベストと言っている。乗り心地が硬く感じる場合は22mmでもよいと。
 まだナラシの段階でもあるし、おそらくモトグッチの出荷時のセッティングに近いであろう、前後17mm前後にして2000kmまでは走ろうと思う。そのあと、徐々に調整に向かいたい。

午後の仕事を終え、夜、給油に出かけた。
スタンドはまあまあ近くにあるが、もう7年お世話になっているスタンドだ。

前回走行時から約201km、給油量は8.30lで、区間燃費は24.2km/l

家に帰る前に少しコンビニで休憩。


郊外、夜のローソン。閑散とした店内。明るい照明。


 調整はクラッチレバーの高さを、少し高めた。僕の好みの高さは、普通より少し高め。
 買ってすぐに高くしたのだが、もう一回、調整。この少しの角度の違いが操作性に与える影響は大きい。
 

右のブレーキレバーも少し上げる。こちらも高目が好みだ。
ブレンボのブレーキシステム。レバーもブレンボ製で、開き角調整機能は持たない。
手の小さい人には遠目に感じるかもしれない。僕にはちょうどいい感じだ。


 車が駐車して、少し賑わってきた。邪魔にならないうちに退散しよう。
 リヤの表情はこんな感じ。
 

 さて、明日、少しでも走りたいものだが、時間と体力がOKを出すだろうか。
 

 気がつけば夏至も過ぎていた。

2013年6月16日

1000km・赤井川


 6月16日(日)、ちょっと時間が空いた隙に、V7で少し走りに行った。行き先は赤井川村。
 僕の一番好きな村だ。
 

 今日はただ。行って、帰るだけ。

 途中で走行距離が1000kmになった。

 V7ゆきかぜは、エンジンの振動がやや丸くなり、シフトも入りやすくなった。
 シフトダウンはまだまだへたくそだけど、最初の頃のがっちゃんはかなりなくすことができた。
 足がばたついて上品じゃないのは、まだ続いている。
 足まわりは、いつかグレードアップしたくなるか。でももう少し馴らしを続けて様子を見よう。

 赤井川へは、定山渓から朝里峠を越え、朝里温泉から毛無峠を越えて入った。
 
 定山渓からサッポロ湖脇の道ではトンネルの中にいつも水があり、路面は水しぶきを上げている。非常に滑りやすいから注意が必要だ。ゆきかぜも初めてどろどろに汚れた。

 峠の手前で気持ちいい渓流があった。
 ちょっと一枚、写真を撮った。


 朝里峠、毛無峠は、ゆっくり走った。
 遅いファミリーカーの後ろ、車間を十分に取って。
 今日は、疲れているせいか、ゆっくり走りたい。
 というよりも、速く走れないのだ。
 そういう時、V7の2500rpm~3000rpmくらいの鼓動が心地よい。振動が手にも足にも来ているのに不快でないとは、不思議なものだ。同じVツインではヤマハのSRV250に乗っていたことがあるが、それとも振動が違う。(排気量が3倍もあるから当然と言えば当然なんだけど、どうも種類が違う気がする。)

 途中、山中牧場でソフトクリームを食べた。
 ベテランのライダーが一人、SRでツーリングに来ていた。年は60代だろうか。
 短い白髪。短い髭。サングラスを掛け、ウェアは黒のライダース。
 どれも決まって、どれも馴染んでいた。
 駐車場の端で、ひとり、煙草を吸っていた。
 会釈だけを交わし、互いに言葉をかけないまま。
 SRが先に出て行った。フルノーマルのSR。

 久々に惚れ込むような、そんなライダーを見た。

 僕も遅れて、ゆっくり出発する。
 せかされないエンジンに助けられて、散歩気分で赤井川に着いた。



 赤井川のカルデラ盆地を行く。
 余市側の外輪山を見ると、海霧が内陸まで押し寄せ、外輪山の低いところを越えて盆地に流れ込んでいた。
 この赤井川のカルデラ盆地は、秋のよく晴れた朝に雲海が出るのだが、海から押し寄せた霧が山を越えて流れ下るのは初めて見た。



 赤井川村は長い積雪期が終わり、畑起こしが終わって作付したての畑が多かった。
 田んぼは、田起こし、水張り、田植えも終わって、幼い苗が風にそよいでいた。


 少し走っていたら、距離の積算計が1000を指した。
 納車して、997km。生涯走行距離が1000km。
 馴らしの第2段階も前半が終了だ。
 右側、回転計はレッドゾーンの色表示がない。出ている数字は外気温計で、ボタンを押すと時刻と切り替わる。
 オイルインジケーターがついているが、これはエンジンを点けると消える。
 いったい、これから、どれくらいの距離を走って行くことになるのだろう。


1000kmに達したのは、こんな場所だった。
長閑な田園風景は、阿蘇の外輪山の内側の盆地とも相通ずる雰囲気を持つ。
 
しかし、こちらは世界一大きいカルデラ盆地の阿蘇に比べると、とてもかわいいサイズだ。
ここに来ると、気持ちがやさしくなる。
それが、都会人の無責任な感傷だとしても、来る度にそう感じる。

もうちょっとだけ散歩して帰ろう。



外輪山に囲まれた、畑と田んぼの盆地。赤井川のカルデラ。
道端のイタドリはもう、ゆきかぜと同じ背の高さまで伸びていた。
重なり合う山。遠くにいくほど、緑が薄れ、青に見える。
こう見ると、ゆきかぜもなかなか端正だ。
でも、妻は、ゆきかぜのエンジンを、「なんだかセミがくっついているみたい」と言う。
……よくわからない表現だ。

赤井川村の交番に、白バイが2台。並んでいた。
僕が帰ろうとしたとき、白バイは並んで交番を出て、毛無峠方向へ走って行った。
ぴったり横に併走する技術はさすがだが、マラソンの先導の練習だろうか。

帰る途中、4輪が1台、捕まっていた。

僕とゆきかぜは、今日は徹頭徹尾、ゆっくり走った。



 毛無峠の麓の商店で休憩をした。
 自動販売機でコーヒーを買い、腰を下ろして飲んだ。
 今日はまた、軽登山靴で来てみたが、以前よりもシフトが柔らかく入るようになったせいか、今日は以前より違和感を感じなかった。これなら、この靴でツーリングも行けそうだ。

GPZはタンクバッグで擦れた傷がタンクにたくさんついてかわいそうだった。
ゆきかぜには今のところ、タンクバッグは装着していない。(そのうちするつもりだ。)
通勤に使っているデイバッグにカメラや合羽、帽子、タオル、地図等を入れ、背負ってきた。
あまり重くないからこれもありかと思った。

カメラも代替わり。
今日の写真から『nikon1 V2』だ。
初撮影で何もわからず、取りあえずすべてオートで、ズームレンズを回してシャッターを押しただけ。画像もただサイズを直して載せただけ。

 こちらも長い付き合いになっていくと思う。

 いい旅をしたいものだと思った。

2013年6月15日

新しい緑、薫る風(4)


 新見温泉まで下ってきたら、さっきの快適交通量皆無の道を、もう一度パノラマラインの下の方に合流するところまで帰る。
 行きは誰もいなかったが、帰りは何台かの車と、山菜取りに歩いている人に会った。
 パノラマラインを離れ、ニセコの街の方向へ。
 スキー場、温泉、観光施設が点在する山麓の道。ここは既に交通量も多い。片側1車線、観光の車や、時々バス。車列に従い、一台も追い抜かずに走る。


2013年6月13日

新しい緑、薫る風(3)


 パノラマラインを下っていくと、右手に新見温泉方向へ向かう分岐が見えた。
 
 しかし、工事中で、1.7km先は未舗装だと書いてある。さすがに馴らし中にダートを延々走る気はないが、行き止まりまで行っていようと道を逸れた。
 それが、路面がよく、中速からやや高速よりのコーナーが続く道で、標識のためか、僕が走った時は交通量がほぼゼロ。結局行き止まりにはならず、舗装路のまま新見温泉へと続く道に合流していた。
 だれもいなく、見晴らしもよかったので、ちょっと飛ばした。
 バイカーズステーション2013年5月号では、新しいV7について、クラシックと比べるとトルクもパワーも上がり、レスポンスも速くなっているが、のんびりした雰囲気が薄まり、「攻めたときの車体の振れの出方が、ステアリングヘッドに集中したシャープなものになりました。」(p56より)と書いている。これは、佐藤編集長と一緒に試乗した小澤氏(オザワR&D)のコメントで、佐藤編集長も速いがやや硬質になったと評している。
 距離の積算が700kmを越え、回転自主規制値も4.500まで上げることにした。しかし、まだ全開はくれないようにし、しかし各ギアでトラクションをかけながら回転上限まで引っ張るように心がけて見ると、下りの左高速コーナーで車体が揺れ始めるのを体感した。
 GPZ1100もスチールフレームだが、ガチガチの高さは感じないものの、安定感、安心感は、サーキット走行でも揺るがなかった。(当然、僕の腕では、ということである。)このV7スペシャルは、もう少し(いや、けっこうかな…^^;)フレームが柔軟な感じがする。もちろん、ふにゃふにゃではない。揺れ始めてもその揺れは唐突にではなく、徐々に表れ、しかも深刻なものではないため、安心していられる。だが、それ以上に変な負荷はかけられないな…と感じる。限界はまだまだ先にありそうだが、運動エネルギーの大きさを、ちゃんと比例的に体感させてくれ、揺れもコントロールでき、車体もむしろ「しなやかさ」を感じるのだから、この設定は非常に好みだ。
 バイカースステーションの記事の通り…ということになるのか、確かにステアリングヘッドを中心に横に振れはじめた感じで、観ていない人には申し訳ないが映画『キリン』でチョースケのカタナのフロントが振られている、あの感じに近い。

2013年6月11日

新しい緑、薫る風。(2)

 羊蹄山をぐるっと回る道は、恰好のツーリングコースになっている。
 いつもは立ち寄る京極の名水の道の駅は、今日は観光バスが何台も停まっていし、バイクも結構見えたので、なんとなくだがパスした。なんだか一人でいたい気分の日なのである。

 北側をぐるっと走り、倶知安からニセコのスキー場街道みたいな山麓を回る道に入り、ニセコパノラマラインを目指した。

 途中、「ニセコパノラマライン通行止」の標識が。
 冬季通行止は解除になったはずだが、事故でもあったのか…と考えながら進むと、「ニセコパノラマライン、雪崩の危険のため通行止め」とあった。
 今日はニセコの山で、雪が見たい。行けるところまで行ってみよう。
 そう思いながらさらに進む。
 途中、山菜取りの車がいたるところに停まっていた。
 ふらふらと車道に人や車が出てくる可能性もある。慎重に進んだ。

 すると、だいぶ上がってきたかなあ…といゆあたりで、南から西を見下ろす斜面の向こうに、たぶん蘭越方向だと思うのだが、雲海が見えていた。



 写真を撮ろうと路肩に止める。涼しい風が気持ちいい。
 しばらく風に吹かれて、再び道を登り出した。

2013年6月10日

新しい緑、薫る風。(1)

 6月9日(日)、朝7:00。
 馴らし途中のV7に跨って家を出発する。

 距離計は約570kmを指し、先週のオイル交換から約70kmを走行。エンジンの上限を4.000rpmとして、ごく近くの馴らしのために選んだ小さな峠越えが3つあるルートを2回ほど走っていた。
 昨夜は12時帰宅。1時前就寝。本当は早起きして4時に出発しようと計画していたのだが、寝不足の危険性を考えて、7時発にし、6時半前に起きた。無理がきかなくなってきている。5年前と比べても、体力はじわじわと落ちてきている。そう感じながら。

 家を出て3キロほどで最初の峠へ。短く登り、短く下る。以前は通勤ルートだった峠だ。
 2速、3速、4速を使って馴らしをする。(注意!僕の慣らしは我流なので、もしかしたら間違っているかもしれないし、エンジンに悪いかもしれないので、これをお読みの方はご注意ください。)各ギヤで2500rpmから3500~3800rpmくらいを使う。最大トルクが2800rpmで発生するV7のエンジンは、かなりの急坂の峠でもこのくらいの回転数でストレスなく登っていく。少し開けれはきちんとレスポンスして加速する。

2013年6月9日

新しい緑、薫る風。(予告)




6月9日、日曜日。



V7ゆきかぜ号の馴らしを兼ねた、半日のツーリングに行ってきました。



朝早く出るのが恒例の私のツーリングなのに、
前日までの疲れで出発は7時すぎ。
帰宅は14時過ぎ。
走った距離300km余り。



もう6月に入っていますので、「薫風」は季節が合いませんが、北海道はまさにそんな感じです。
 



羊蹄山、ニセコの山々の新緑と、薫る風、
そしてV7ゆきかぜの
少しずつ変わる表情を満喫したショートツーリング、
次回から連載します。

なまえ。

 MOTO GUZZI V7 Special が初めて我が家に来たとき、迎えてくれた妻が言った。
「今度の子は女の子だね。モトグッチだから、モト子ちゃん?」


 GPZ1100は、妻に言わせると水牛みたいだったそうだ。大きくて、長い。のろい。
 彼女は押し引きしているところと、とてもゆっくり走っているところしか見たことがないから、大きくてのろくて、でも力持ちのイメージだったんだろう。でも、水牛って、本当は速いんじゃなかったっけか。…まあ、そこんところはどっちでもいいか。

 さて、我が家にやってきたV7、その日から妻はずっと「モト子ちゃん」と呼んでいる。
 かわいい感じらしい。

 僕はバイクに一度も名前を付けたことがない。
 DT50は、「DT」と呼んでいた。
 GPz400F-Ⅱは「F-Ⅱ」(エフツー)と。
 ZZR400は「ズィーズィーアールよんひゃく」と。
 SRV250は「エスアールブイ」と呼んでいた。
 そしてGPZ1100は「GPZ」いつの間にか「GPZクン」(ジーピーゼットクン)になっていたが…。

 これらも、名前と言うのかもしれない。
 人それぞれにいろんな約し方をし、それぞれに固有の個体を呼んでいるのだから。

 今回、MOTO GUZZI V7 Special を買う時、僕の中に呼び名が既にあった。
 手元に来る前から、名前が浮かんでいたのだ。

 もう、30年近く前になると思うが、誰かのエッセーで「女の子ならともかく、男で自分のバイクに名前付ける奴って、気持ち悪くてジンマシンが出そうだ」って、読んだような記憶があるのだが、それももう定かではない。
 そのエッセーは乱暴で、全体的には取るに足りない内容がグタグダと並んでいただけのような気がするが、どうもそのフレーズだけがひっかかっていたのだった。
 なんとなく、「そうかもな…」と思えたのだ。

 何でも擬人化するのは、5歳児くらいがよくやることだ。それはそれでいいのだが、いい大人がオママゴトよろしく自分の持ち物に名前を付けるのは、確かに変な自己愛だけが肥大して周囲を見ようとしない性向があるように、感じたのだった。



 でも、今回、僕は買う前から、V7の名前が浮かんでいた。
 それは「モト子」ではない。

 だけど、彼女がそれを受け入れてくれるだろうか。
 おっと、もうV7を「彼女」なんて、擬人化している。
 それでも、なんとなくそう感じたのだ。GPZは男というか、オスだった。
 大きな救助犬とか、荷運びの馬とか、そういう感じだった。

 今度のV7は、実際に実車を初めて見たときも、乗ってみたときも、印象は「女性」だったのだ。

 ちょっとずつ、乗って、6月1日には300kmくらい走って、積算距離495kmで、最初のオイル交換をした。
 エンジン回転のリミット設定を4,000rpmにして、馴らし運転の第2段階に入った。




 今日、6月9日。
 昨夜の仕事のプレゼンと、その後の飲み(僕はアルコールは全く飲めない)で、帰宅は12時。
 今朝は少し寝坊して、朝7時にV7と家を出た。

 新緑と薫風の中を半日走ってみて、やっぱり名前は、考えていた通りにつけようと思った。


 


 ゆきかぜ。

 君の名前は、「MOTO GUZZI V7 Special ゆきかぜ」

 イタリアンの情熱の赤と、北海道の雪のような白。
 イタリア生まれの御転婆レディ。ようこそ、日本へ。ようこそ、雪国、北海道へ。

 僕の名前は「○○○○○」(本名は非公開です)
 またの名を「樹生和人(たっき かずひと)」

 ここ、北海道は、ちょっと前まで、どこの国の領土でもなかった。ネーションステートが世界中の地図を隙間なく埋め尽くす19世紀まで、ここはアイヌ民族の人たちが主に住み、北日本海交易圏を作って現在のロシアや、朝鮮半島、日本の本州などと、物々交換の交易をしつつ、また、厳しい寒さと豊かな森を持つこの土地に感謝しつつ、自然と調和して暮らしていた。
明治になって、北海道は「日本」になった。アイヌ民族の人たちに相談もなく、「日本という国家」の一部になった。僕らの先祖は、本州以南から「開拓」にやってきた。森を伐り、木材を本州へ運び、農地にした。はげ山は土砂を流し、海を汚した。伐る樹がなくなると、もっと山奥へ行って樹を伐り出した。輸送基地に街を作った。山を掘り、石炭を掘りだし、本州へ送った。巨大な炭鉱、にぎやかな街がたくさんでき、鉄道網は整備され、しかし、石油の輸入に政策が切り替わると、炭鉱は次々に閉鎖されていった。海では大量に魚が取れた、食料として食べきれないものは肥料として扱われた。本州へ、大量に送った。それが原因なのか、気候の変化か?海流の変化か?原因はわからないけれど、鰊は来なくなって、鰊漁業で栄えた街は錆びれていった。今、鰊は少しずつ、帰ってきつつあるよ。
 今、北海道は、農業と観光の土地。札幌は日本第5の大都市。美しい自然や風景は、海外にも人気だ。

 僕は、1999年に北海道にやってきた。妻と、幼い子供と、3人で。新しい暮らしをするために。
 僕も、地元の人間じゃない。
 何万年もこの地で生きてきた誇り高いアイヌ民族でもなく、苦しく厳しい開拓の生活を生き抜いた開拓民の子孫でもない。
 ただ、ミーハーな気持ちで、無責任な憧れで、北海道に移住して来たんだ。
 北海道の人はやさしく、自然は美しく、僕らは受け入れてもらえたおかげで、なんとか生きてこられた。

ここは、そういう土地だよ。

 ゆきかぜ。

 イタリア生まれの君に、日本語の名前を付けることに、少しためらいはあったんだ。

 でも君はきっと、真夏でも冬の雪の白さを忘れず、真冬の冬眠期でも真夏の情熱的な太陽を忘れない、そんな存在になってくれると思う。

 今日少し走っただけでも、カウルのない君は、僕に走ることの意味を全身に受ける風で教えてくれたよ。

 ゆきかぜ。

 イタリアンの情熱の赤と、北海道の雪のような白。

 イタリア生まれの御転婆レディ。

 ようこそ、日本へ。ようこそ、雪国、北海道へ。

 僕が君の相棒、樹生和人です。

2013年6月8日

500km、初回オイル交換。

6月1日。夕方。
V7の走行距離がほぼ500kmに達し、初回のオイル交換を行った。
交換は購入先のバイクショップ、ZOOMさんでしてもらった。
作業中の写真はない。

取扱い説明書によると、初回のオイル交換は1000km時点、以降は1万km毎に交換するように指定している。

指定オイルは「eni」(以前のAGIP)。
しかし、ズームさんは、IPONEオイルを用いる。
IPONEはフランスのオイルメーカー。「イッポン」と発音する。ロゴに日の丸が入っているが、これはIPONEの社長がとても日本好きだからと聞いている。
IPONEオイルはKTMのオフロードワークスがパリダカで連続優勝していた時に使用してことで知られるが、オンロードでもヤマハフランスなどが使用。その特徴は、圧倒的高性能にある。
100%化学合成油は石油臭いにおいが一切しない。僕のGPZ1100で12万キロ、一度もエンジンを開けないで過ごせたのは、IPONEオイルのおかげも大きいだろう。ズームさんには18万キロ走ったホンダのスーパーブラックバードのお客さんもいる。とにかくエンジンを痛めず、振動が減り、ブローバイが減るためか、燃費も向上する。大々的な販売促進活動を行っていないため、日本ではほとんど知られていないが、一度使うとリピーター率がとても高いことや、別のオイルに離れてもやはりIPONEでないと…と戻ってくる人もいることから、じわじわと広まりつつあるオイルだ。
経験上、僕も強くお勧めできる。
また、IPONEはヘルメット会社のアライと同じように、ワークスに供給するスペシャルを持たない。いや、正確には、ワークスに供給するスペシャルをそのまま販売していると言った方がいいだろう。
その姿勢も好きだ。イメージを先行させるため、ごく少量のスペシャルをワークスに供給してスポンサーステッカーを貼り、一般向けにはそこそこのオイルを売るメーカーも多いと聞く。もちろん、それは悪ではない。粗悪品を売っているわけではないのだから。
だが、僕はアライやIPONEのような企業の姿勢が好きだし、応援したいのだ。もちろん、姿勢が好きでも、製品が劣っていたら買わない。アライは安全への姿勢に共感し、僕の頭の形に他のメーカーよりもあっているから使っている。IPONEは、もちろんお世話になっているズームさんが扱っているから入れてもらっている面がとても大きいが、その性能の高さに納得し、長期的に見れば高くないどころかむしろ安いと思うし、何よりバイクにいいことが実感できるので使っている。

さて、新車から500キロでのオイル交換。
モトグッチ指定のインターバルの半分だが、モトグッチの場合、結構初期に汚れが出ると聞き、早めの交換とした。しかし、500kmでは馴らしもまだ途中。これから先、各ギヤで高速回転域まで回し、負荷も徐々に高負荷にしていく、その過程でまだまだオイルは汚れてくるはずだ。そこで、IPONEオイルの中でも「M4」というオイルを入れてもらうことにした。20W-50のマルチグレード、IPONEでは珍しい鉱物油。慣らし用のオイルだ。ズームさんによると、これを入れて1600kmで別のIPONEオイルに交換するといいとのことだ。2000km時点で交換することにしよう。

モトグッチはエンジンとミッションが別体であり、ミッションギヤハウスにはミッションオイルを入れる。
これもIPONEの「TRANS4」(トランス4)を入れてもらった。SAE80W90の粘度のギヤボックス専用オイルだ。
このオイルをリヤホイールのファイナルにも入れる。

ここで確認しておこう。
元々イタリアから入れられてきたオイルは、

エンジンオイル         eni(AGIP) RACING 4T  10W-60
トランスミッションオイル    eni(AGIP)MG SAE 85W-140 
ギヤオイル            eni(AGIP)MG/S SAE 85W-90

今回の慣らし仕様、IPONEのオイルは、

エンジンオイル        IPONE M4 SAE 20W50
トランスミッションオイル   IPNE TRANS4 SAE80W90
ギヤオイル                同    上

である。

オイル交換を終え、各所ボルト類の緩みをチェックし(すべてOKだった)、アイドリングチェック等も終えて、馴らしの第1次は終了である。
この日は朝からパンク修理、夕方にはオイル交換と、ズームさんには本当にお世話になった一日だった。

オイル交換をしてもらっている時、ズームさんのお店に元同僚のご夫妻が立ち寄られた。
この夫妻ご夫婦でライダーなのだが、奥様の方が僕の元職場の同僚で、前のブログで、現実の僕とブログの上の僕の両方を知った最初の人だ。久しぶりの再会を喜びんだ。旦那さんの方もライダーで一緒に何回か走っているが、一度僕が大転倒した時、帰路を付き添って送ってくれた方でもある。
「ぜひまた一緒に走りましょう」と話をした。



作業が終わり、店頭に出されたV7。
隣にいるのは、僕の付きこの間までの愛車、GPZ1100(95)。
多分最初で最後のツーショットになるだろう。
夕日の中でシャッターを切った。

オイル交換が終わり、馴らしは第2段階に入る。

2013年6月7日

水無月朔日馴らしに走って(4)



 それから、また青山の道をポクポクと北上を続けて、「道民の森」までやってきた。
 ここは一度、雨の時にGPZクンと来たことがある。
 今日は、ただトイレを借りただけだ。

 長かった今年の冬も、もう遠くに去った。
 遠くの山並みに見えている残雪。駐車場の隅にも、消え残った雪が見える。

 V7スペシャルのタンクの白も、本当の真っ白とはちょっと違う、雪のような白さだ。
 ようこそ、日本へ。ようこそ、北の国、雪国へ。
 もう何度言ったことだろう。
 でも、まだ自分とV7が馴染んでいないためか、眺めるたびに、「よく来たなあ…」と思ってしまう。

 タンクとサイドカバーの間、インジェクターのカバーはクロームメッキされている。
 写っているのは僕だ。じかにニーシンガードを付け、そのうえからジーンズを履いている。
 足元は、GPZの時は軽登山靴のことも多かったのだが、今日は18年前のクシタニ製レーシングブーツだ。シフトペダルの操作に、つま先部分の厚い軽登山靴だと少しやり難さを感じたので、上下幅の薄いレーシングブーツを履いてきた。しかし、今度は当時あえてワンサイズ小さいブーツで本当にぴったりさせたものが、ツーリングだとややきつい。
 新しいブーツが欲しくなってきた。おいおい、もう金もないのに…。




 テールライトはフェンダーから生えている。これは樹脂製でそれにクロームメッキがされている。が、メッキがなんか薄そうな感じがする。(あくまでも僕の主観です。モトグッチのみなさん、ごめんなさい)この部分も手入れをしっかりしなくてはならないだろう。
 アイドリングでは全身をブルブル震わせるV7は、テールもリヤウィンカーも震える。ウィンカーステーがゴムで震えを逃がすようにというか、揺れるように作られているのは、振動による球切れとか、ひび割れとか、そういうものの防止のためだ。
 ワックス掛けしたリヤフェンダーの塗装部分にも空と雲が写っている。
 この赤色もなかなか好きだ。
 さて、そろそろ帰らなければならない。
 午後には予定が入っている。
 今来た道を、帰っていく。


 少しずつ、馴らしは進んできて入る感じがする。
 エンジンの回転がまた少し軽やかになり、低回転でのトルクも少し増えたようだ。
 しかし、僕の方の馴らしが追いついていない。
 シフトダウンがへたくそだ。
 5速でワイドなギア比のツインエンジンV7を、きれいにシフトダウンできない。
 クラッチを切るのはほんの一瞬で、その一瞬でギアを入れ替え、エンジンの回転数をわずかに上げて、シフトショックを限りなくゼロに近づける。それが上手くいかない。エンジンのレスポンス、チェンジペダルの遊びやシフトストローク、クラッチのミートポイント、それらを体が理解できていないからだ。ここら辺が無意識に決まるようにならないと、攻めた走りはできない。いやいや、そんな恰好つける前に、エンジンやミッションを痛めないために、できるだけショックを消したい。
 しばらくは練習だ。


  
 
 途中、小さな谷に向かう、土の道を見つけた。
 まだまだ馴らし中だから、入り口まで100mくらい、ゆっくり慎重に走って、ちょっと停めて、写真を撮った。






   
 


 




















 新緑の本当にきれいな季節。
 同じ色の日は二日とない。
 さて、帰ったら、少し仕事をして、夕方からまた、ズームさんへ行って、最初のオイル交換をしてもらうことにしよう。

 まだまだ距離のある僕ら。ちょっとずつ、君を理解していくから、待っててくれ。

2013年6月6日

水無月朔日馴らしに走って(3)


 ズームさんを10:30頃出て、ポクポクと北へ向かった。
 当別町へ。そして当別川を遡って、ゆっくりと走る。
 やがて昨年秋に完成したばかりの当別ダムに行きつく。


 ダムの堰堤の下に黒い石碑がある。水没した地域のことを記念した碑だ。
 この道は、札幌近郊のライダーにとっては近距離の定番ルートの一つで、ダムによって水没した地域も、本当に美しい里だった。僕なんかは何にもしなかった、何の興味も示さなかった無責任な傍観者に過ぎないが、ダム湖の風景はそれとして美しくても、水没した里や川の風景の方がずっと美しかったように思えた。ダムはいつか寿命を迎える。ダム湖全体が上流からの堆積物で満杯になると、それで寿命は終わるのだ。ダムで得たもの、失ったもの。それをいまさらながら考えるのは、あまりにのんきと言うべきだろうか。僕らはすべてのことに誠実にはなれない。すべてのことに親身にもなれない。しかし、傍観者でしかない僕は、この景色の違和感に何を感じ、どう言えばいいのだろうか。自分もダムの恩恵を受けながら、ダム湖に行くたびにそんな思いに襲われる。
 凛としたV7はGPZよりも小さいが、きちっとダムと対峙している。僕は、無益に流れるだけなのか。
 (当別ダムは2012年10月に完成した。ダム建設は、推進と反対の両方の意見が激しく対立し、公共事業の在り方を巡っても論争が長く続いた。)


当別ダムに立ち寄る前、当別町のコンビニにちらっと立ち寄った。
朝、家を出てから何も飲んでいなかったので、喉が渇いたからだ。
ついでに、タイヤの写真を撮っておいた。

2013年6月5日

水無月朔日。馴らしに走って(2)

 タイヤにクギがささっているのを発見。慌てつつも落ち着けと自分に言い聞かせ、空気が抜けてこないのをいいことに、ゆっくり少しずつ札幌方面へ帰り、とうとう札幌市のバイクショップ:ズームさんのところにたどり着いた。
 朝9:30。「すみません。パンクしました。」と声をかけると、ズームさんはてきぱきとパンクを修理してくれた。

 この写真は後日撮ったものだが、クギを引き抜き、その穴に接着剤を塗ったゴムのプラグを差し込み、余分を切り取るという、ごくごく一般的なチューブレスタイヤのパンク修理だ。
 そう、このV7スペシャルには納車前にズームさんによってホイールに手が加えられていた。スポークホイールはスポークの端がホイールを貫通して内側に出ているため、通常はそこからの空気漏れを避けるため、タイヤの中にチューブを入れた構造にしなければならない。しかし、その場合のパンク修理は後輪を外し、タイヤをホイールから外し、中のチューブの穴をふさがなくてはならなくなる。このV7、リヤホイールの脱着は、独特の形状のリヤハブのダンパー構造により、独特のコツを必要とする。慣れていない人がこの脱着を行うと、いい具合に組めないことがある。そこで、ズームさんはホイールの内側に専用のテープを貼ってシーリング加工を施し、チューブレス化していたのだ。その結果、クギが刺さってもタイヤの中でチューブから空気が漏れてみるみるぺっちゃんこ…とならず、殆ど空気が抜けないまま30km以上を走って支笏湖からズームさんまでたどり着くことができたのだ。
 もしもチューブレス化加工がなされていなかったら、クギを踏んだ時点で空気が抜け、走行は不可能になっていただろう。そうなると、支笏湖までV7をピックアップしに来てもらわなければならないところだった。また、無理に走るとホイールやハブまで変形したりすることも考えられた。
 まさにズームさまさまだったのだ。
 しかし、ここで手離しにこのエピソードから結論にたどり着くことはできない。まず、今回はクギがほとんど錆びてもいず、曲がってもいないものだったという「運」の力も大きかった。もし曲がったクギが刺さっていたらクギが刺さったままほとんど空気が抜けないなどということは起きなかっただろう。
 もう一つは、このテープによるチューブレス化はリスクゼロではないということだ。何か強い力が加わってホイールがたわみ、ホイール(リム)側のスポークがテープを持ち上げて、あるいは突き破って頭を出したら、空気は急速に抜けていく。一般的にこの加工は、お奨めできる方法ではない。また施工が悪いと、最初から漏れることもあるし、リムの気密性の耐久性能が著しく低くなることもままある。正確に作業することと、ただマニュアルをなぞって作業することとでは、それこそ天と地くらいに差があるのだ。本当に他人にはお奨めしない。ズームさんはこの作業の有効性と危険性を熟知しており、しかもモトグッチでの加工歴も持っていた。元々のホイール加工の精度なども関係してくるものであるから、ただやれば性能も耐久性も上がる…と考えるのは大間違いだといってよいだろう。まして「金を払ったんだから金を受け取ったお前はちゃんとしろよ」としか思えないのなら、絶対にすべきではない。世界はそんなに単純ではないのだ。

 パンクを直してもらって、このまま家に帰るか、それとも気を取り直して馴らしツーリングを仕切り直すか、選択にちょっと迷った。ずっと仕事が混んでいたことのしわ寄せで、ずっと寝不足。先週は頭痛も結構来ていたのだ。
 しかし、明日は明日で仕事もある。今日中に走っておこう…と思い、当初向かっていた南方角ではなく、北方向へ走りに行くことにした。
 ズームさんに感謝の心を捧げ、挨拶をして、V7と僕は北へ向かった。(つづく)

2013年6月4日

水無月朔日。馴らしに走って(1)



支笏湖真駒内線を行く。遠くに恵庭岳。新緑がきれいだった。

 6月1日土曜日。今日は我が家に来たモトグッチV7スペシャルの馴らしをしに、ちょっと走ってみることにした。
 早い時なら朝3時に起きて、4時には家を出て、どびゅーんと距離を朝のうちに稼いでしまうのが僕のパターンなのだが、何せ仕事疲れでふらふらのうえ、忙しすぎるせいか、激しい頭痛にこの一週間見舞われていた。そこでいつものパターンは止め、朝ご飯を妻と一緒に食べ、朝7時に出発した。
 まずは支笏湖を目指す。
 
 裏道を繋いで真駒内支笏湖線に合流すれば、あまり信号に引っかかることなく支笏湖までいける。馴らし中であるから、ゆっくりと走る。速い車には左に寄って道を譲り、速いバイクにも道を譲りながら、新緑の中をV7で駆けて行った。
このコース、ある程度の速度で走れば、ハンドリングやサスペンションのいいテストになるのだが、今日の走りはそれ以下の速度域だ。
 感じるのはサスペンションがちょっとチープなこと。少しばたばたとする。いまさらながら、GPZ1100とフロント:ハイパープロスプリング+IPONEフォークオイル、リヤ:WPモノショックサスペンションの能力の高さを思い知る。バネ上が重いGPZ1100はもちろんサスにかかる仕事量は大きいが、対バネ下比では大きくなるからバネ上が落ち着きやすい。V7はもともとの軽さが圧倒的に優位になるが、バネ下が重い分、ばたばた感は出やすい。しかし、やはりこの差はサスペンションのコストの差のように思えた。
 しかしサスペンションとて馴らしは必要だ。本来の性能を発揮できるようにし、また、僕に合わせたプリロード調整などもしてからこの議論はすべきだろう。走っての安心感は大きいから、これはすぐに弱点といってしまうのは早計だろう。2000キロ時点で再報告したいと思う。
 
 

朝の『支笏湖は静かだった。漁船が湖面に出ていた。
 ハンリングは軽快だ。
 特筆すべきは、馴らしで車体任せで走っている時、という前提付きになるが、ハンドリングのニュートラル域が広い。直線からの倒し込み時に、微速でも、車の流れに乗る速度でも、フロントの切れ込みは全く感じない。Uターン時でも切れ込んで来たり、重心の高さからぐらっと来る…なんてことはなく、非常に安心感が高かった。後ろ17インチ、前18インチ、タイヤ幅は前100、後130で、スリムで前が大径。ナラシの制限速度内なら、切れ込みもなく、Fタイヤに舵角がつかない、アンダー傾向も感じることなく、素直に倒した分だけ内側へと曲がっていく感じで、非常にわかりやすいのだ。安心できるハンドリングと言える。
 スリムな車体ゆえ、自然とリーンウィズのままシートに体重を預けてリーンしたり、立ち上がったりしながら進んでいくことになる。このハンドリングは疲れないし、うきうきする。それはタイヤの接地面の感触がGPZ1100+メッツラーとかなり違うからだ。その違いは次回に詳しく述べたい。


支笏湖畔にバイクを停める。恵庭岳が湖面越しに聳えている。朝の湖は空気が凛としていた。
  まだフルトラクションでの旋回はしていないが、バンク角自体は、バイクなりに倒して旋回してみただけでも、けっこうあることが分かる。ゆっくり走っても、低速コーナーでは遅くないのだ。リーンに不安が少ないのと、力が要らず、すいっとバンクさせられるために、コーナリングは飛ばさなくてもとても楽しい。荷重を掛け、気合を入れてそれっ!ゴワアアアアアアアァァァァァァァ……、!!と曲がって行ったときに充実感を得られるGPZとは、ここでも性格が違うのだ。
 エンジンの振動は2500~3000rpm近辺でも少し硬質なものがステップ、ハンドルにも来る。しかし、シャフトドライブの癖は、走っていればほとんど感じない。停まってアイドリングしているときに空ぶかしするとサイドスタンドで立てていた車体がぶるっと右にお気上がろうとして、ああ、シャフト車だなあ…と思わせるものの、いざ走ってしまえば、そうした癖は感じなかった。
 このあたりも雑誌で書いてある通りだった。

湖の気温は10度。川霧のような朝靄がかかっていた。空気はひんやり感じられ、やや肌寒いくらいだった。
朝早くから多くの車とバイクと人でにぎわいを見せる支笏湖畔の駐車場公園、ポロピナイを避け、湖畔の道で少し休憩した。
 湖が美しい。安全なPスペースにすぐ移動し、前後タイヤに触ってみる。程よい熱の入り方。Z6よりも熱くなっているのには、さまざまな理由があるだろう。バイアスタイヤでタイヤ全体がたわむので熱が全体に入りやすいこと、接地面積が狭いことからくる面圧の強さ=変形量の多さ=発熱、という感じもあるのだろう。
 リヤのハブに当たる「ファイナルケース」(エンジンの駆動力を後輪に伝えるために、回転しているシャフトの力を車輪を回す力とするため、ギヤで減速しつつ90度、力を方向転換する.)も、思ったよりも熱くなっていた。
…と、そこでリヤタイヤに刺さるクギを発見!GPZで走った18年間で一回もなかったことだ。
(驚いてしまって、クギの刺さった写真は撮っていない。)
 リヤタイヤの空気は手で押してみた範囲では抜けていないように感じる。
 もしもクギに似ているただのボタン状の短い金属片ならタイヤを貫通していないだろうから、撮っちまってもいいのだが、もしも本物のクギなたきっと貫通している。これを抜くと、空気が一気に抜けて方向不能になってしまう。
 他の個所も急いでチェックするが、リヤの右側以内は異常なしだった。
 さて、どうする?
 
 跨ってみると、やはり空気は抜けていないように感じられるのだ。
 結論は、気を付けて、慎重にゆっくり走ってみる。その方角は、札幌方向、もしも空気が抜けているなら、そのままの乗り続けるのは極めて危険。
 細心の注意を払って、そうっと走る。
 異常vは感じない。抜けていないのか?
 ちょっと走って止まる。タイヤのチェックする。
 数キロ毎にそれを繰り返しながら、じわじわと札幌に帰るのだ。
 抜けてきたら、危険な状態になるまえにすぐに停止して、「ズーム」さん(このバイクを売ってくれたバイク屋さん)に電話しよう。そわそわしながら、ちょっと走っては停まり、走っては停まりして、札幌へ帰ってきた。なかなか空気が抜けないようだ。
 僕のことをうそつきだと思う人もいるかもしれない。「V7クラシックのスポークホイールは、チューブタイヤだから、釘を踏み抜いたら即座に空気が抜けて走れなくなるはずだ」というものだ。その推測は正しい。しかし、今回のケースでは外れだ。それは、僕にこのバイクを売ってくれた、ズームさんのある加工によるものだ。(以下続く。)

2013年6月3日

ようこそV7(4) 最初の印象

 5月26日日曜日、午後。少しV7で近くを散歩してみた。
 慣らし運転だから、慎重に。


 札幌市、南区、簾舞。GPZとも何度も訪れた場所だ。
 咲いているのは、桜ではなくきっとリンゴの樹だと思う。
 新緑の中、V7はきれいだった。

 さて、走らせての印象を少しずつ述べて行こう。
 前も話したが、とにかくGPZと比べると軽い。400ccみたいだと言うのは、車体サイズににしても、パワーにしても、重さにしても全体的にそんなふうに感じる。
 まだ新車だから各部の当たりがついていない。エンジンもそうだが、サスペンションもそうだし、シートなどもそうだ。各部摺動部分の当たりも丁寧につけていきたい。
  馴らしの仕方は別項に譲るとして、やはり改めて感じるのはリーンの軽快さ。GPZは重くて大きなクランクが横に鎮座ましましている感じだったが、V7ではその横のマスをほとんど感じない。むしろ縦に長く、自分の股の下を軸が通っている感じだ。でもこれも、半分以上はそういうエンジン形式だから…という頭で感じてしまっているのかもしれないが。
 エンジンは低速型で、最大トルクが2800rpm、最大出力は6200rpmらしい。(モトグッチのHPによる)扱いやすく、低速トルクはもりもりという感じではないが、十分に力強い。しかし、マルチエンジンのGPZが得意とした、1500rpm以下の回転でのなめらかさは、馴らし途中であることを差し引いても、期待できなさそうだ。いや、これが普通であって、GPZは特別に低速が滑らかだったのだ。大体、ほぼ無負荷で流している時で1500rpm以上。ゆるやかに加速していく時などで2000rpm以上は回していたい。最初は上限を3000rpmとした。(モトグッチの説明書には、馴らし運転の重要さは説明してあるが、回転数指示はない。)
 急開、前回はできないが、それがそれほどストレスにはならず、ちょっと硬質の振動と共に、軽やかに加速していく感じである。田舎道を選んで走ったせいもあろうが、3000rpm以下で交通の流れに対して困ったことはなかった。ちなみに計算上は3000rpmで約80km/hである。


 ハンドルは外側端(バーエンドの重り付き)で約80センチあり、国産のこの車体サイズのネイキッドに比べると若干幅広である。跨ると、非常にスリムで、これは4気筒の400ccよりスリムだろう。
ステップは思ったよりも高いところにあり、スリムさと相まってバンク角はきちんと確保されている。
そしてこのステップ。やや前にあって、確か大屋雄一氏だと思うが、「事務用の椅子に腰かけているよう」と表現していたように記憶しているけれど、まさにそんな感じだった。
 なのにハンドルは幅広で、少し前、つまり遠目にある。上体は直立せず、ごくゆるい前傾となる。 ドカティのモンスターほどではないにしろ、日本車とは少し違ったポジション設定だ。しかしこのハンドルが、力みにくい絶妙な位置と角度にあって、積極的に操ろうと状態を倒していくと、ハンドルの遠さも消えてちょうどよくなる。前で高めのステップは、減速Gには下半身だけで耐えろ!というメッセージなのだろう。シートの段差に微かにお尻の後端が当たる程度に腰を引けば、そこがコーナリング時のベストポジションだ。リーンウィズで、シュイ―ンと曲がっていくイメージだと見たが、あたっているかはまだわからない。
 


 写真の左端に右ステップが写り、ステップの上を越えて前へ出ているペダルはリヤブレーキだ。
 そのペダルの横にある穴の開いたカバーはプラスチック製で、そのカバーの奥には、なんとリヤブレーキのマスターシリンダーが横向きで納まっている。ここにシリンダーとは。日本車ではしないなあ…。

このリヤブレーキは非常に優れたコントロール性を持っていて、足での操作であるにも関わらず、ブレーキのコントロールがしやすく、減速度を自在に操作できる。これは姿勢制御にも非常に有効で、リヤを沈めることに(アンチリフト効果)にも使えるし、なによりブレーキングが気持ちよい。後輪荷重が前輪より大きいことも利いていると思うが、リヤブレーキを使う機会が増えそうだ。
  リヤはピンスライド式の2ピストンキャリパーだ。



 さて、フロントブレーキだが、まだフルブレーキングをしていないので(100キロまではするなと書いてあった)、絶対性能はわからないが、これはいきなり利くタイプではなく、やはりわかりやすい、効き味をレバーの引き込みでコントロールする感じの設定だ。

 シングルの320㎜フローテイィングディスクを対向4ピストンキャリパーで締め上げる。それは絶対的減速量よりもコントロール性を重視したものに思えた。このあたりはV7が女性や街乗りも視野に入れたマシン設計であることからも妥当に思えた。


ただし、位置調整機構のないブレーキレバーは、僕が二本掛けで操作するのにちょうどいい位置で、手の小さい人には若干遠く感じると思う。タッチはソフト目だが、節度があってやはりコントロースしやすく、僕は好きだ。


 ついでにクラッチレバー側も見ておこう。こちらも調整機構はない。ワイヤー式のレバーは乾式単盤のクラッチを操作する。これは予想以上にレバーが軽く、とてもありがたかった。この位置も遠めだ。イタリア人女性は手が大きいのだろうか。

 さて、札幌市南区の国道を外れた道を走っていると、雪解け水の音も高い橋があった。一度通過してバイクを停め、エンジンを切って歩道を押して橋の真ん中まで行き、ちょっと写真を撮った。こうしたことができるのも車体の軽さが大きく利いていることは言えるだろう。

 


メッキ部分が多いのは、V7の中でもスペシャルの特徴だ。ヘッドライトケースは樹脂製だが、全体にクロームメッキがされている。




 全体にスリムなのだが、幅にメリハリがない。ドカティのようにボン、キュ、ボンとはいかないのがモトグッチだ。妻はまだ機種を決めていない頃、写真を見て、「少し野暮ったいのね。」と言っていた。鋭いね。このね、少しの野暮ったさの奥に隠された情熱の炎が、そそられるのさ。
 ステップのかかと部分にくるぶしでマシンをホールドするものがない。かかとは内側へ入り込んでしまうが、サイドカバーがピタッと面で当たり、メッキのマニホールドカバーからタンクのえぐれまで、完全にツライチではないが、下半身のマシンホールドには実に有効な面構成だ。まったく、考えているのか、考えていないのか、よくわからないデザインである。(いや、考えているんです。)
 



斜め前から見る。うん、なかなかかっこいい。強すぎず、弱すぎない。そういうのって好きだ。




 正面から見るとスリムなのがよくわかる。フロント18インチの細身のバイアスタイヤが、軽快でかつ安定感のある走りを作り出す。限界性能は高くないが、細身のタイヤでないと味わえないものがあるのも事実だ。ライトの表情はややそっけなく見える。昔のカットガラスのレンズの方が好きだが、性能はこちらが上なのだろう。あとは、クリアレンズのウィンカーも好みでないが、そこは付き合いながら考えて行こう。

 
 さてさてさて、長々と書いてきたが、肝心のことを書いていない。

 さて、このまま一週間、仕事をして、先日、6月1日(土)、馴らしに出かけ、夕方にはズームさんで早めの1回目オイル交換となった。その日のことは、少し分けて、連載形式で書いて行こう。