2013年6月3日

ようこそV7(4) 最初の印象

 5月26日日曜日、午後。少しV7で近くを散歩してみた。
 慣らし運転だから、慎重に。


 札幌市、南区、簾舞。GPZとも何度も訪れた場所だ。
 咲いているのは、桜ではなくきっとリンゴの樹だと思う。
 新緑の中、V7はきれいだった。

 さて、走らせての印象を少しずつ述べて行こう。
 前も話したが、とにかくGPZと比べると軽い。400ccみたいだと言うのは、車体サイズににしても、パワーにしても、重さにしても全体的にそんなふうに感じる。
 まだ新車だから各部の当たりがついていない。エンジンもそうだが、サスペンションもそうだし、シートなどもそうだ。各部摺動部分の当たりも丁寧につけていきたい。
  馴らしの仕方は別項に譲るとして、やはり改めて感じるのはリーンの軽快さ。GPZは重くて大きなクランクが横に鎮座ましましている感じだったが、V7ではその横のマスをほとんど感じない。むしろ縦に長く、自分の股の下を軸が通っている感じだ。でもこれも、半分以上はそういうエンジン形式だから…という頭で感じてしまっているのかもしれないが。
 エンジンは低速型で、最大トルクが2800rpm、最大出力は6200rpmらしい。(モトグッチのHPによる)扱いやすく、低速トルクはもりもりという感じではないが、十分に力強い。しかし、マルチエンジンのGPZが得意とした、1500rpm以下の回転でのなめらかさは、馴らし途中であることを差し引いても、期待できなさそうだ。いや、これが普通であって、GPZは特別に低速が滑らかだったのだ。大体、ほぼ無負荷で流している時で1500rpm以上。ゆるやかに加速していく時などで2000rpm以上は回していたい。最初は上限を3000rpmとした。(モトグッチの説明書には、馴らし運転の重要さは説明してあるが、回転数指示はない。)
 急開、前回はできないが、それがそれほどストレスにはならず、ちょっと硬質の振動と共に、軽やかに加速していく感じである。田舎道を選んで走ったせいもあろうが、3000rpm以下で交通の流れに対して困ったことはなかった。ちなみに計算上は3000rpmで約80km/hである。


 ハンドルは外側端(バーエンドの重り付き)で約80センチあり、国産のこの車体サイズのネイキッドに比べると若干幅広である。跨ると、非常にスリムで、これは4気筒の400ccよりスリムだろう。
ステップは思ったよりも高いところにあり、スリムさと相まってバンク角はきちんと確保されている。
そしてこのステップ。やや前にあって、確か大屋雄一氏だと思うが、「事務用の椅子に腰かけているよう」と表現していたように記憶しているけれど、まさにそんな感じだった。
 なのにハンドルは幅広で、少し前、つまり遠目にある。上体は直立せず、ごくゆるい前傾となる。 ドカティのモンスターほどではないにしろ、日本車とは少し違ったポジション設定だ。しかしこのハンドルが、力みにくい絶妙な位置と角度にあって、積極的に操ろうと状態を倒していくと、ハンドルの遠さも消えてちょうどよくなる。前で高めのステップは、減速Gには下半身だけで耐えろ!というメッセージなのだろう。シートの段差に微かにお尻の後端が当たる程度に腰を引けば、そこがコーナリング時のベストポジションだ。リーンウィズで、シュイ―ンと曲がっていくイメージだと見たが、あたっているかはまだわからない。
 


 写真の左端に右ステップが写り、ステップの上を越えて前へ出ているペダルはリヤブレーキだ。
 そのペダルの横にある穴の開いたカバーはプラスチック製で、そのカバーの奥には、なんとリヤブレーキのマスターシリンダーが横向きで納まっている。ここにシリンダーとは。日本車ではしないなあ…。

このリヤブレーキは非常に優れたコントロール性を持っていて、足での操作であるにも関わらず、ブレーキのコントロールがしやすく、減速度を自在に操作できる。これは姿勢制御にも非常に有効で、リヤを沈めることに(アンチリフト効果)にも使えるし、なによりブレーキングが気持ちよい。後輪荷重が前輪より大きいことも利いていると思うが、リヤブレーキを使う機会が増えそうだ。
  リヤはピンスライド式の2ピストンキャリパーだ。



 さて、フロントブレーキだが、まだフルブレーキングをしていないので(100キロまではするなと書いてあった)、絶対性能はわからないが、これはいきなり利くタイプではなく、やはりわかりやすい、効き味をレバーの引き込みでコントロールする感じの設定だ。

 シングルの320㎜フローテイィングディスクを対向4ピストンキャリパーで締め上げる。それは絶対的減速量よりもコントロール性を重視したものに思えた。このあたりはV7が女性や街乗りも視野に入れたマシン設計であることからも妥当に思えた。


ただし、位置調整機構のないブレーキレバーは、僕が二本掛けで操作するのにちょうどいい位置で、手の小さい人には若干遠く感じると思う。タッチはソフト目だが、節度があってやはりコントロースしやすく、僕は好きだ。


 ついでにクラッチレバー側も見ておこう。こちらも調整機構はない。ワイヤー式のレバーは乾式単盤のクラッチを操作する。これは予想以上にレバーが軽く、とてもありがたかった。この位置も遠めだ。イタリア人女性は手が大きいのだろうか。

 さて、札幌市南区の国道を外れた道を走っていると、雪解け水の音も高い橋があった。一度通過してバイクを停め、エンジンを切って歩道を押して橋の真ん中まで行き、ちょっと写真を撮った。こうしたことができるのも車体の軽さが大きく利いていることは言えるだろう。

 


メッキ部分が多いのは、V7の中でもスペシャルの特徴だ。ヘッドライトケースは樹脂製だが、全体にクロームメッキがされている。




 全体にスリムなのだが、幅にメリハリがない。ドカティのようにボン、キュ、ボンとはいかないのがモトグッチだ。妻はまだ機種を決めていない頃、写真を見て、「少し野暮ったいのね。」と言っていた。鋭いね。このね、少しの野暮ったさの奥に隠された情熱の炎が、そそられるのさ。
 ステップのかかと部分にくるぶしでマシンをホールドするものがない。かかとは内側へ入り込んでしまうが、サイドカバーがピタッと面で当たり、メッキのマニホールドカバーからタンクのえぐれまで、完全にツライチではないが、下半身のマシンホールドには実に有効な面構成だ。まったく、考えているのか、考えていないのか、よくわからないデザインである。(いや、考えているんです。)
 



斜め前から見る。うん、なかなかかっこいい。強すぎず、弱すぎない。そういうのって好きだ。




 正面から見るとスリムなのがよくわかる。フロント18インチの細身のバイアスタイヤが、軽快でかつ安定感のある走りを作り出す。限界性能は高くないが、細身のタイヤでないと味わえないものがあるのも事実だ。ライトの表情はややそっけなく見える。昔のカットガラスのレンズの方が好きだが、性能はこちらが上なのだろう。あとは、クリアレンズのウィンカーも好みでないが、そこは付き合いながら考えて行こう。

 
 さてさてさて、長々と書いてきたが、肝心のことを書いていない。

 さて、このまま一週間、仕事をして、先日、6月1日(土)、馴らしに出かけ、夕方にはズームさんで早めの1回目オイル交換となった。その日のことは、少し分けて、連載形式で書いて行こう。

10 件のコメント:

  1. まったく、考えているのか、考えていないのか、よくわからないデザインである。(いや、考えているんです。)


    この一文、椅子から後ろへひっくり返りそうになりました。面白すぎです。
    こちらのブログでも楽しませていただきます。(笑)

    返信削除
    返信
    1. tkjさん、こんにちは。
      V7、見ているだけでも結構面白いです。
      どうして、こんなことしたのかなあ…、という部分が結構あって。
      それが、大胆なのか、細心なのか、本当によくわからないのですが、
      一緒に走って行く中で、徐々にわかっていくのだと思います。
      それが、とても楽しみです。
      ブログ、仕事の気分転換もかねて、頑張りたいと思います。
      無理しないように、ぼちぼちと行きます。
      tkjさん、ありがとうございます。

      削除
  2. V7でしたか! Guzzisutaの仲間入りですね。

    ご無沙汰しております、白猫#35です。
    今の850ルマンの前にこのV7の先祖、V50Monzaに乗っていました。(今は家内が)
    基本的にフレームなど車体構成は一緒です。
    ずいぶん現代的にブラッシュアップされていると聞きますがどうなんでしょうね。
    乗り比べしてみたいな。

    今後のレポートが楽しみです。

    返信削除
    返信
    1. 白猫35さん、こんにちは。
      グッチスタ、と言うのですね。ドカティスタ、ビーマー、カワサキ乗り…。
      さまざまに言い方がありますね。
      私はGPZ1100の他、GPz400F-Ⅱや、ZZR400も乗っていましたが、
      どうも私は「カワサキ乗り」というカテゴリーからはみ出しちゃってるなあ…と思うことが多くありました。
      昔からへそ曲がりなんです…。
      今回もきちっとしたグッチスタにはなれそうもありません。とほほ。
      私は完全素人なので、モトグッチ200%のような伝説のグッチと、新しいV7の違いまではさっぱり分からないと思いますが、私にとっての、V7スペシャルの在り方、私たちたちの付き合い方を、暇を見つけてぼちぼちと書いて行こうと思っています。
      どうぞよろしくお願いします。

      削除
    2. 白猫#352013年6月6日 13:02

      「惚れてしまえばあばたもえくぼ」とか「恋は盲目」とか。
      そういうところのないニュートラルな見解を楽しみにしています。

      そういえばちょうどモーターサイクリスト誌でV7とV50の乗り比べしていましたね。
      樹生さんはどんなふうに表現してれるのかな。

      削除
    3. 自分の車になってしまったので、「あばたもえくぼ」「恋は盲目」モードに突入すると思います。(^^;)
      内山節と言う人がある村に住むお年寄りの女性の言葉を引いていました。
      「私は生まれてこの方、一度もこの村から出たことがない。だからわかる。この村が日本一だ。」
      内山氏はその言葉に強い印象を抱いています。
      幸せとは、そういうものかもしれませんし、人は、幸せになるためにバイクに乗るのでしょうから。
      …と、言いつつ、ひねくれた私のことですから、いろいろと妄言をV7についても吐いていくことになると思いますが、それはおそらく、客観性のあるようなふりをした、極めてセンチメンタルなものになるのだろうと思います。…ということで、残念ながらご期待に添えないと思います。申し訳ありませんが、まあいい加減な素人の書いた戯言だと思って読んでくだされば幸いです。

      削除
  3. こんにちは、樹生さん。

    納車、おめでとうございます!

    先日さんにーさんにお会いして、樹生さんの次期相棒の話にもなりました。
    気になるのでちょっと探りを入れたりもしましたが
    さんにーさんの口は堅かったです。

    グッツィですか!

    中学生の時、モトグッツィというバイクメーカーを知り
    独特のエンジンレイアウトによる「グッツィ揺れ」なる言葉を知りました。

    樹生さんの奥様が「野暮ったい」と表現されたその車体デザインですが
    僕には、その唯一無二(?)のエンジンレイアウトを際立たせる為の
    計算尽くされたデザインなのでは・・・と思われるのですが・・・
    (ちょっと知ったような口をきいてしまいました)

    情熱の国の人が造ったオートバイ。
    樹生さんの新しい相棒。

    どんなストーリーが待っているか、楽しみです。

    返信削除
  4. ソロさん、こんにちは。
    ありがとうございます。
    妻はバイクのことはほとんど何もわかりません。
    わからないからこそ、素直に思ったことを言ってくれます。
    僕なんかは変に頭でっかちになっているために、それが感性を濁らせることがままあるんです。
    また、僕と妻はまた、形や色の好みが全然違うので、それがまた面白いんです。
    今のところ、かなり好きです。このデザイン。
    そして写真でみるのと実物を見るのとでは全然違って、実物のほうがはるかにいいんです。
    このあたりも、うならされたところでした。
    さて、どうなっていくのか、自分でもまったくわからないところが、なんだかおもしろい感じで、
    その感じを今楽しんでいるところでもあります。
    これからもよろしくお願いいたします。

    返信削除
  5. 樹生さんこんにちは。
    新ブログの開設おめでとうございます。

    次のバイクはおそらくネイキッドタイプを選ばれるだろうなと勝手に思っていました。
    ネイキッドタイプが好きだという記事もありましたし。

    新しいバイクはモトグッチですか!びっくりしました。
    そして、素敵なカラーリングですね。

    北海道は、ヨーロッパと気候が似ているのでヨーロッパ車はぴったりかもしれないですね。

    残念ながらモトグッチのことはよく存じませんが、縦置きVツインエンジンをはじめと
    してデザインやメカニズム、そしてその乗り味には大変興味をそそられます

    返信削除
    返信
    1. 和休さん、こんにちは。
      ありがとうございます。このブロッガー、まだまだ使い慣れなくて、難しいですが、こちらにもV7同様に徐々に慣れていきたいと思っています。

      このカラーと22ℓ入りタンクが、背中を押しました。
      そのあと、今年バージョンで黒にイエローラインの往年の1000Sカラーが出て、「うわっ!かっこいい!」と思ったのですが、この赤白も実車を見ると、写真よりずっときれいで、こっちがやっぱりイメージだったかなあ…などど、都合のいい感想に既になっています。

      日本まで遙々来てくれたV7ですから、日本での暮らしをなんとか楽しいものにできたらと思います。

      削除