予告ではV7のハンドルを握った時に感じる自分の身体とポジション設定の齟齬から話を進めると言いましたが、ちょっと角度を変えます。すみません。
和歌山利宏氏は、『ビッグマシン』誌、2015年3月号で、「リザードライディング」という理論を提唱しました。彼の長年のライディング理論の積み重ねに廣戸聡一氏の4スタンス理論を重ねて、ライディングのあり方を考察したものです。もちろん、和歌山氏ですから、机上の論理だけではなく、自ら実践し、それを踏まえて理論化しています。
次回からの運転技術(ライテク)シリーズでは、和歌山氏のリザードライディング理論を少しずつ紹介していきたいと思いますが、その前に、今日は、それを踏まえて2015年度MOTOGP世界チャンピオン、ホルヘ=ロレンソ選手の右コーナリング中の左手を見て、驚いた話です。
ただ、たぶんこれは私のオリジナルではないでしょう。『ライディングスポーツ』誌などのモータースポーツ誌でこの特徴的な左手が注目されない訳がないからです。
あいにく、私はモータースポーツ専門誌を毎月すべて読んでいるわけではなく(むしろ最近はほとんど読んでいないので)、どこでどのよう取り上げられたかを知りません。恥をかくのを覚悟の上で、世界チャンピオン、ロレンソ選手の左手について、少し書いてみたいと思います。
ロレンソ選手のツイッター、2015/4/22より。 |
その右コーナーの旋回。実に美しいフォームなのですが、その左手を見てみますと、レバーに触れていないのに、なんか指が伸びているようにも見えます。
ロレンソ選手のツイッター、2015/2/2より。 |
これが左コーナーだと、両手ともグリップを握っている感じです。
赤いグラブの右手。ブレーキとアクセルを担当しますから、グリップをしっかり掌で握っている感じですね。
イン側の左手もしっかり握っているように見えます。
ここで柏秀樹氏なら、「手首が窮屈ですね、グリップは外側から45度の角度で握りましょう」と言うかもしれません。
(すみません、もちろんジョークです。柏氏がロレンソ選手にそんなこと言うわけありません。)
(柏氏とロレンソ選手、ごめんなさい。)
でも、この握り方、確かにもう少し外側から握ったほうが、全身の動きが楽になるのではないか…とも思われます。
が、それが、違うのだ、
というのが、和歌山氏の理論では述べられていきます。
ロレンソ選手のツイッター、2015/2/6より。 |
ね、左手の角度がもう少し外から握っても…と思われるような角度でもありますよね。
(くどいようですが、それは勘違い。それは次回以降に。)
それにしても、左コーナーでは両手でしっかり握っているようにも見えます。
ロレンソ選手のツイッター、2015/2/24より。 |
バンク角と上体の位置の低さも驚異的ですが、白いグラブの左手。
なんかグリップに指先をひっかけているだけみたいな、そんな状態に見えます。
これ、たまたまではなくて、シーズン通して、こういう握りでした。
また、これはクリップ近くの旋回状態ですが、車体を起こして立ち上がり状態になると、握り直しています。
ハンドルから力を抜け、とは、バイクに乗り始めた頃に言われること。
しかし、極限のコーナリングの中、タイヤエッジに乗り、転倒しかけたような状態でそのグリップとスライドのぎりぎりの状態を維持しながら駆け抜けていく、コーナリングの最中に、この左手。
右手はブレーキとアクセルを操作しながらなので、離すわけには行きません。
左コーナーでアウト側の右手をしっかり握っているのはたぶんそういうわけです。
では、右コーナーのこの左手のほとんど握っていない、指先をひっかけてホールドしているだけのようなこの状態は何なのか。
ロッシのブレーキング時の内足外しを真似する人はいても、このホールドを真似する人はなかなかいない。
ここで、脱線するようですが、往年のケニーロバーツのフォームを見てみましょう。
(ごめんさない、出典不明です。問題ありの場合は削除します。) |
彼の両手はしっかり深く握られています。
ロレンソがあまりにも上体全体をイン側へ落とし込むために肩がイン側へ入り、しっかり握ることができなくなった、――逆に言えば、そこまでイン側へ上体を移動したから、手が外れかかっている…ということもできます。
しかし、和歌山氏の新しいライディング理論からすると、ロレンソ選手のグリップの握りとロバーツ選手のグリップの握りの違いには、二人の生まれつきの身体のタイプの違いが反映しているということになります。
どういうことなのか。
次回は、和歌山氏の理論、4つのタイプ分けの話に行きます。
(最後の最後に、私のV7のハンドルの違和感にもどってくる予定です……。)
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