ああ…、なんて美しいんでしょうか。
1989年シーズン。1年間だけロスマンズホンダで走ったときの、エディー・ローソン選手です。
今日は「和歌山利宏氏のリザードライディング」、タイプA2の紹介です。
和歌山氏によると、A2タイプは、
小指の付け根に力がかかるタイプの握り。
グリップは浅く、まっすぐ(外側からではなく、90°に近い感じで)握ります。
手のひらでは小指の付け根あたりに荷重点があり、そこが動きの支点になります。
足裏でもつま先の小指側が荷重点で支点になります。
背筋を使って体を動かしていくタイプで、背筋を伸ばしたまままっすぐ前方を見つめ、身体を伸ばすようにコーナーへ入って行きます。
A2タイプの選手の代表格は、
ホルヘ・ロレンソ、
ダニ・ペドロサ、
バリー・シーン、
エディーローソン、
ケヴィン・シュワンツ選手です。
和歌山氏によると、
「ロレンソとペドロサは同じA2タイプなので、彼ら二人のバトルを見ると体の動きは見事に同じリズムでシンクロしている。」(ビッグマシン2015年3月号3頁)とのことです。
上がホルヘ・ロレンソ選手、下が、ダニ・ペドロサ選手です。
確かに、似ていますね。
特にグリップのあたりは、私の今までの印象以上に似ていて、少し驚きました。
バリー・シーン選手です。1976年、1977年の世界GP500ccクラスチャンピオンです。
和歌山氏は、A2のハンドルの握り方について
常に小指の付け根あたりでバイクに接している感覚。ハンドルは指を主体にして薬指側でしっかり握る。回内力が加わるので、グリップをまっすぐ握ることになる。(同上)と、説明しています。
上のバリーと同じタイミングではありませんが、立ち上がりのダニ・ペドロサです。
かなりスライドしていて、リヤが右に流れ、外に出てカウンターステアになってますね。
しかし、バリーと同じ流れにあることはうかがえます。
立ち上がりのホルヘ・ロレンソです。
やはりホルヘが一番A2らしいような気がします。(和歌山氏もロレンソ型と呼んでいますね)
まっすぐ体を前傾。
ホルヘは非常にスムーズなライディングに定評がありますが、見ての通り、前輪が浮き、リヤタイヤはつぶれてわずかに外へ流れつつ、コーナリングフォースを生み出して旋回加速しています。
ああ、美しいですね。
あと二人、ローソンとシュワンツです。
ケヴィン・シュワンツ選手、1993年度世界GP500ccクラスチャンピオンです。
ラッキーストライクカラ―のスズキに、ペプシカラ―の頃からのカラーリングのヘルメットを被っていますね。
もうすぐコーナーのクリッピングにつこうかというタイミングです。
シュワンツの走りはダブルアペックス的。
侵入スピードが極端に速く、コーナーに入ってからも原則を続け、奥でくるっと小さく回るや、怒涛のアクセルオンで立ち上がってくるタイプです。
ブレーキングが終了する地点と、くるっと回る地点が重なっていて、フロントタイヤの荷重が抜けません。減速荷重を瞬間的に旋回Gへ置き換えて回って行くので、その瞬間のバンク角はかなり深く、結果的に上体はリーンアウト気味になります。
1980年代とは思えないようなバンク角です。
さて、エディー・ローソン選手。1984年、1986年。1988年、1989年の世界GP500ccクラスチャンピオンです。この写真は1990年シーズンですね。
その安定した走りから「ステディ・エディ」の二つ名を持っていました。
シュワンツとは別のタイプのライダーと思われてきたと思うのですが、確かに体の使い方だけ見れば、結果としてのフォームは違っても、似ているかもしれません。
ローソンのブレーキングは人差し指1本。しかも加速状態に入ってもレバーから人差し指は離さず、さらに、このレバー、有効ストロークが短くて、いつ掛けて、いつ解放したか、見ていて非常に分かりにくいのです。
エディーローソンの速度感覚について、ケル・キャラザースは、「エディーは170mph(時速272km)の速度域での1mp(時速1,6km)の速度の違いをはっきり認識できる。」と言っていたと、昔、「ライダースクラブ」の記事か、ライダースクラブビデオか、「RIDE ON」というビデオマガジンのどこかで読んだか視聴した記憶があります。(間違っていたらすみません。)
この右コ―ナーの写真を見ても、左手の握り方は、ホルヘ、ロレンソ選手の右コーナーの左手に通ずるものがありそうです。
改めてロレンソ選手の左手も上げておきました。
現役時代から、僕が最も好きで、敬愛する選手はエディー・ローソン選手でした。
そして現役選手で走りが好きなのは、ダニ・ペドロサ選手。
マルク・マルケス、ホルヘ・ロレンソ、ヴァレンティーノ・ロッシの3選手は、なんか、好きというよりも
「すげー」という感じ。
ロレンソ選手も同じA2タイプですが、確かにローソン的走りかもしれません。
実は上のロレンソ選手の立ち上がりの写真のフォーム、ローソンの立ち上がりにそっくりです。
いや、もしかしたら、A2が好きなのではなくて、あまりにエディー・ローソン選手のライディングが好き過ぎて、似たタイプの選手の走りに無意識に惹かれていたのかもしれません。
どうも僕自身はB2タイプみたいで、外側に荷重点という点ではA2と共通していますが、前後では後ろ側、指握りのA2に対して「てのひら握り」と、タイプは違うのです。
ああ、それにしても、ローソンのライディングには惹かれます。
ちょうどこの瞬間がデッドスピード、いちばん速度が落ちている瞬間ですね。
そしてブレーキは完全にリリースされ、まさに今、アクセルを開け始めている、そんな瞬間です。
小回りさせるため、上体全体をイン側に伸ばし(ここで背を丸めないのがA2の特徴です。ここで背を丸めるとケニーロバーツ、すなわちB2型になります。)リヤ側に荷重して後輪の旋回力を生かし、まるで一輪車でタイヤをねじりながらぐりっと旋回するかのような(あくまで比喩です)、そんな旋回を生み出そうとしています。
エディー・ローソンは、メカニックの人的ミスのために高速からのブレーキング中にブレーキが効かなくなり、270km/hで大転倒したこともあります。
それでも、いつでもメカニックを気遣い、常に協力し、敬意を払って戦っていました。
勝てなかったレース後、インタビュアーがわざと「マシンが遅かったんじゃない?」と訊いても、
「いや、クルーは最大限の仕事をしてくれた。遅いのは、僕だよ…」と言っていました。
1992年ハンガリーGP。
雨の決勝で全員ヘビーレイン用のタイヤをチョイスしていたとき、カジバに乗ったローソンは一人インターミディを履くという賭けに。
そして、途中から小降りになった雨の中、30秒以上後方からの大逆転で、イタリアンメーカー、カジバに初の世界GP優勝をもたらしたのでした。
そしてそれが、エディー自身の最後のGP500優勝ともなりました。
その時の優勝インタビューでも、エディーは、
「スタッフがヘイ、エディー、インターミディのタイヤに賭けてみないかと言ってきたんだ。僕はまさか、と思ったけど、スタッフの言うとおりしてみた。最初は雨はひどくて、とても冗談にもならない状態だった、でも幸運にも、雨はやみ、そして僕はここにいるわけさ」と応えています。
その様子が収録されたビデオではナレーターの吉田鋼太郎が次のようなナレーションを読み上げています。
「むろん、その決断をしたのは、エディーだろう。しかし、もしもこの賭けが外れていたならば、彼は決してスタッフのことは口にせず、すべて自分のミスだと言っただろう。4度世界を制した真のチャンピオン、エディー・ローソンとは、そういう男なのだ。」
(次回はタイプB1です。)
ご注意
私は一素人であり、その理解や説明に誤解や間違いが紛れ込む可能性が大きくあります。読者の皆様には、私の記事をうのみにせず、ぜひ、バックナンバー等で元々の和歌山氏の原稿をお読みになり、ご自分で理解、判断なさることをお薦めいたします。
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