2015年11月28日

和歌山利宏氏のリザードライディング理論(5)B1

和歌山利宏氏のリザードライディング理論、5回目は、4つのタイプのうち、「B1」タイプです。
この代表選手は、あのヴァレンティーノ・ロッシ選手。
他にも、平忠彦、ウェイン・レイニー、ワイン・ガードナーと、かっこよくてスタンダード、美しく、かつ戦闘的なライディング(荒いという意味ではありません。)をするファイターが揃っています。

まず、B1型の特徴を押さえておきましょう。


「B1]型。
 親指の付け根に力がかかるタイプの握りです。
 グリップは深く、まっすぐ握ります。

B1型
B1、B2に共通の特徴は、かかと、股関節、肩関節、手首が支点(あまり動かない点)となり、各支点に挟まれる関節が動点となります。
また、コーナリングへの体重移動は、身体を沈めるようにするのが特徴です。
(伸びあがるようにするA1、A2とは逆になりますね。)
肘は軽く開き気味で、グリップはまっすぐ深く。
背筋を伸ばし、背筋主体で体幹を動かす。
アウト側の肩関節と股関節を近づけるようなイメージで体重移動する……そうです。


和歌山氏によるB1型選手は、先ほども言いましたが、
バレンティーノ・ロッシ、平忠彦、ウェイン・レイニー、ワイン・ガードナー

みな、美しいです。



ロッシ選手。これは今年ですね。
ロッシ選手はGPキャリアの中で速く走るためにフォームを何度も変えてきています。
今年は昨年までからまた少し換えてきましたね。一昨年から以前の頭を中心に残し気味にして下半身で大きくハングオフする形を変え、上体全体をイン側へオフセット、頭の位置を下げるようにしてきました。昨年はそれをさらに進行させていましたが、今年、2015年シーズンは、マシンの許容バンク角がさらに深くなり、エッジグリップも格段に向上したこともあって腰のオフセットは昨年よりも少な目になっています。
グリップは確かにまっすぐめに見えますね。
上体も伸びあがる傾向というよりも沈み傾向に見えます。


右コーナー。
この2年くらいで頭を垂直に立て、水平、垂直を感じる平衡感覚を保とうとする…という理論が、モトGPのトップライダーたちにあてはまらなくなってきました。
ロッシも、ロレンソも、マルケスも、頭が傾いてもお構いなしという感じで、ぐいぐい上体を中へ入れ、バンク角を深めています。
この写真では、ロッシは既にフルバンク状態は終えていて、バイクを起こしながらアクセルを開け、電子制御とシンクロしつつ、最大限の旋回加速を得ようとしています。
このコーナリングパート、特にフルバンク近辺でのギリギリのグリップを引き出し続けることが超人的に上手いのがホルヘ・ロレンソ選手です。
そしてハンドリングのヤマハ、コーナリングのヤマハの伝統を生かし、限界域でのコーナリングの安定と切れ味を追求したヤマハのマシンとのコンビネーションで、ロッシ選手とロレンソ選手は今年のチャンピオンシップの1位、2位を占めたのでした。



左コーナーの平選手、これは1989年の日本GPでしょうか(ちがっていたらすみません)。
私はずっと平選手とローソン選手のフォームは似ていると思っていたのですが、和歌山市の分類に従うと、肘を張りながらもグリップはまっすぐ気味に深く握り、伸ばした背をそのまま沈めるようにしてコーナーへ入って行くのは、ロッシと似ているかもしれません。



平選手の右コーナリング。これは鈴鹿の8耐ですね。
やはりB1の特徴、まっすぐのグリップ、伸ばした背筋、それを沈めるようにコーナリングしていく感覚…とよく示していると思います。

85年、ケニーロバーツと組んでトップを独走、残り27分でまさかのエンジンストップによるリタイヤ…。
それ以降、鈴鹿8耐の平選手は、勝てそうで悲劇的に何かが起こって勝てない年が続きました。
1990年、エディーローソンと組んで、ついに優勝。
その時の興奮は、今でも覚えています。


1990~1992年、3年連続GP500チャンピオン、ウェインレイニー選手です。
レイニーのフォームはまさに教科書のように美しく、切れ味鋭く、走りも安定してきれいで、スライド走法もグリップ走法もお手のものながら、スライドもロスの少ない控えめなもの。直線からズバッと切り込んで定常旋回をフルバンクで回り、理想的な弧を描いて脱出加速していくという、非の打ちどころのないライディングでした。

私の応援するローソン選手のチームメイトにして最大のライバル。
ローソンがステディと呼ばれながらも人間味あふれる繊細さと情熱でマシンを駆るのに対し、レイニーはクールビューティー的。機械のように正確に、ライディングする。
マシンを下りても笑顔爽やかに、明るく、自身と厳しい自律に支えられた優等生的振る舞い。
まるで「ナイト」(騎士)のように、礼儀正しく、貴族的で、しかも勇敢でフェア。そんなライダーでした。

レイニーはガードナーやローソンを頂点からひきずりおろしたのでした。そして時代はレイニー対シュワンツの時代に。



ガードナーの左コーナー。
常に低く構え、どんどんアクセルを開けていく、超攻撃的ライディングのワイン・ガードナー。まさにファイター。彼は自身のライディングを解説した本の中で、コーナリングに入ってしまえば前輪はいらない、とまで言っていました。(1980年代の発言です。)
彼も言われてみればB1の特徴をよく備えているようです。
1987年、GP500の世界チャンピオンになりました。





左ヘヤピンの走りを正面から。
確かに体の使い方は似ています。
レイニーの方がグリップを外側から握っているように感じますね。
しかし、レイニー右手のレバーにかかった人差し指のとなり、しっかり深く握りしめた中指は、彼がB1タイプであることを示しています。B2タイプなら、この中指よりも薬指、小指の方がギュッと握りしめることになります。

平選手、レイニー選手、ガードナー選手ともに頭は垂直に保つタイプ。中では平選手が若干斜めにしても平気なタイプで、手足が長いこともあって、ロッシ選手と一番近いタイプです。


私の印象の中では、このB1タイプが一番スタンダードというか、王道的、教科書的な感じがします。
先に述べましたが、ロッシ選手は、何度も大幅にライディングフォームやライディングの方法論を変えてきています。その超人的な適応能力とにも驚きますが、そのフォーム改造を可能にしたのは、ロッシ選手がこのB1タイプだったからではないかと思うのです。
もっともスタンダード、王道を行っているだけに、応用が効きやすい。

これは和歌山氏は言っていません。
私の勝手な推測です。
全く見当はずれかもしれませんが、結構当たっているのではないかと思っています。

私の主観では、世界で最も美しいライディングフォームを持っていたのは、エディー、ローソン。
よく言われるのは、ケニー・ロバーツの美しさです。

平選手の美しさも言われますが、
ロッシ、レイニー、ガードナーなどのこのB1タイプは、まさに標準、理に適っていて、だから突出した美しさ、妖しげな美しさはあまり発散しないのではないか。
そんなふうに、なんとなくですが、感じるのです。

次回は、B2タイプです。

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