私が求める運転技術(ライテク)のあり方について、以前のブログの「I'm here ライテクの目指すもの」という記事で書いたことがありました。
また、「ライテクの基本線」という記事でも書いたことがあります。
2009年と2010年に書いた記事でしたが、今読んでもあまり変わっていないようです。
今日は、スローイン・ファーストアウトの原則についてのお話です。
さて、公道上をツーリングしていく一般的なライダーである私にとっては、
ライテクが問われるステージとしての道は、
何度も往復して覚えている道ではなく、初めて通る道。
広い道、新しい道もあれば、狭い道、古い道もあります。
路面のいい道、荒れている道。
舗装路、未舗装路。
見晴らしのいい道、悪い道。
コーナーの大小、多寡。
朝の道、昼の道、夕方、夜。
春、夏、秋、冬…。
道は一つとして同じものはなく、同じ道でも通るたびに表情を変え、未知の道になります。
そんな初めての道を、安全に、気持ちよく、走り抜けて行きたい。
バイクで走る、バイクならではの世界をしっかり感じながら、
風景を眺めるのではなく、風景の中を駆け抜けていく、そうした実感を伴って、
バイク操作の実感を味わい、バイクと対話しながら、風景と対話しながら
駆け抜けていきたい。
そんな気持ちを支えてくれる、実現してくれる、そのための運転技術がライディングテクニック(ライテク)というわけです。
それは、跨る前の取り回しから始まります。
気持ちが引き締まり、かっこよく、いくぞという気持ちになるバイクへの歩み寄り方、ヘルメットのかぶり方、グローブのつけ方など、そういうところからもうライテクの一部だと言っていいでしょう。
ポジションの合わせ、レバー等の調整、発進、ギヤチェンジ、信号停止、
何げない走行でも、洗練された技術が安全性を高め、疲労度を低め、そしてそういうのって、
傍から見ていても、とってもかっこいいものですよね。
意外と重視されないこうしたシーンの大切さは、もっと注目されていいと思います。
だいたい、走って来て道端に寄せ、停止して降車するだけでも、
だいたいの腕前はわかりますよね。
そうしたこともちょっとずつ、書いていきたいと思いますが、
今回書くのは、「コーナリングについて」です。
コーナリングについても、以前のブログで散々書いてきました。(ライテクインデックスⅠ、Ⅱ、Ⅲ)
特に新しいことはないかもしれませんが、ぼちぼち書いていきます。
さて、一口にコーナリングといっても、道はさまざま。
高速コーナー、中速コーナー、低速コーナー。
角度が浅いカーブ。90°くらいのコーナー。ぐるっとまわりこむヘヤピン。
登り。下り。急な登り、急な下り。
道幅広いコーナー。狭い道。
見通しがよい、悪い。
路面状況の良し悪し。
ひとつとして同じコーナーはありません。
そんなコーナーを、同じようなやり方だけですべて限界まで攻める…なんてのは、イメージしない方がいいし、公道では無理です。
しかし、速さを競うサーキットと違って、速くなくては意味がないという訳でもありませんから、
いろんなコーナーに対して、自分で走りを組み立て、実行し、安全に気持ちよく駆け抜ける!
という、走りの満足感を得ることはできます。
どんな道でも通用するやり方…といえば、
やはり柏秀樹氏の推奨する「直ピー、カートロ」と「CKM(センター・キ―プ・メソッド)」でしょうか。
カーブは安全速度まで必ず落としてトロトロと回る。
ラインは車線の両端1mずつを省いた真ん中あたりをキープする。
これは限界走行はしませんが、十分にメリハリの利いた、バイクらしい、楽しいライディングができます。
もしライディングに自信がなかったり、峠で怖い思いを何度もしているようでしたら、まずこの二つを徹底して実践し、完全に身につけることから始めるといいと思います。
自称中級者、上級者でも、これをちゃんとできる人、きちんとしている人は意外と少ない。
特にライテクを人に教えたがる輩(私のような奴ね^^;)に、この基本が実はできない人が多い。
本人は馬鹿にしているのですが、実際にやらせるとできない。自分ができないことに気付いていないことも多いのです。
どうしてか?
この「直ピー、カートロ」と「CKM(センター・キ―プ・メソッド)」、これはライダーのレベルによっていくらでもかさ上げされていく技術だからです。
よくバイク談義の中で「俺、あのコーナーはノーブレーキで入るぜ」とか「あれくらいのコーナーなら「ぬうわ」km/hで走れるだろ?ブレーキングなんかしないね。」なんていう人いますよね。
それはそれで事故しないように好きにすればいいのですが、コーナー手前でブレーキング不要ってことは、その前の直線でちゃんと開けてないってことなんです。(もちろん、低速コーナーから立ち上がって加速しながら次のコーナーへ向かう時などの例外はあります。)
自分がこのコーナーに入る速度を見極めているのなら、その手前でブレーキングしてもいいし、その速度より遅くアプローチしているのなら、ブレーキングしなくてもいい。(それでもあえて軽くブレーキングした方がいい場合が多いですが、それはまた別の機会に)
コーナリング手前でノーブレーキであること、それによって進入速度が速いことを自慢する人は、実は単に「ストレートが遅い人」に過ぎないのです。
むろん、公道で出してよい速度というものはあります。
ストレートだからといって、無制限に、能天気にアクセルを開けてよいものではない。
しかし、それを知って安全のためにストレートを速度をあえて押さえている人は、ノーブレーキ進入を自慢したりしないものです。
一般に、人にライテクを自慢したがるレベルまでのライダーは、ほぼコーナーへの進入速度が速すぎます。
それが他の人が50km/hで進入できているのに、自分は40km/hであっても、その人にとって速すぎることが殆んどです。
「直ピーカートロ」を徹底し、トロトロ走ったカーブの立ち上がりからメリハリのある加速をしていくようになり、ブレーキング技術もあがってくると、次第にカーブが怖くなくなってきて、本人にとって「直ピーカートロ」を徹底したまま、周りから見れば進入も結構速い…という状態になってきます。
「スローイン・ファーストアウト」はやはり至言。原則なのです。
それでも、A「最近のバイクはフロント荷重も増え、最新ラジアルタイヤで有り余るグリップ力があることから、コーナーに速く入ってブレーキを引きずりながらコーナーの頂点まで行き、そこでくるっと旋回してそこからアクセルを開けあけで立ち上がっていく、ファーストイン・ファーストアウトが主流じゃないのか」、とよく言われます。
B「フロントブレーキをかけてピッチングモーションを造りだし、前を沈めないとキャスターが立たなくてうまく旋回できない。」
とも、まことしやかに言われます。
これらの言葉も、そのまま間違いではありません。
「A」のような走りもある程度許容するのが最近のスポーツバイクです。しかし、30kmで旋回するR10くらいのヘヤピンにアプローチするときには、コーナーの入り口までに、コーナリングしながらブレーキを引きずっていってコーナーの頂点でくるっと回れる程度まで、あらかじめブレーキングを済ませておいて、あえてコーナーの中の分を残すのであって、ただ速く突っ込むのではないのです。
コーナーの中で引きずる分は、アプローチの直線部分でコーナーを読み、減速しながら調整しています。つまり、大きく見れば、速度を落としてからコーナーに入り、抜けていく、スローイン・ファーストアウトに変わりはなく、コーナーの中での速度配分を調整しているのです。
「B」も最近よく聞きます。しかし、ライディングに悩むような日常的なレベルのライダーは、それで旋回できないことはない、とはっきり言っていいと思います。だいたい、前が沈んでないと絶対に曲がらないバイクなんて、危なくて乗っていられません。加速しながらS字の切り替えしができなくなりますよね。もっというと、教習所のS字でさえ、うまく走れません。
では、Bの言説は嘘か、というと嘘ではありません。
バイクを直進状態から傾けていくと旋回が始まりますが、ペースが速くなってくると、この直進時から旋回への切り替えを素早くしないと次第に危険になってきます。曲がりきれずに道の外側に突っ込んでしまうのです。そのペースまで上げて来たとき、バイクを倒すと同時にバイクの向きが変わっていき、セルフステアで切れていくフロントの舵角に遅れが出ないようにしたいとき、このバイクの姿勢制御は意味を持ちます。(ただしこれも、バイクによって違います。)じつは低速でも、交差点の左折でもそれは起きていますし、無駄な力を抜いてバイクの動きを感じるように気を付けていれば、徐々にわかるようになります。
しかし、だからと言って「コーナー手前ではキャスターを立ててフロントを切るためにブレ―キを残しておかねばならない!」というようでは、実はあんまりわかっていない…というか、自分のバイクの動きを感じ取れていないのだと思います。
ワインディングでも、ノーブレーキでも曲がれます。フロントのステアレスポンスがほんのわずか遅れてくる(というより速くなっていない)ので、それを前提にバイクを傾けて行けばいいのです。これはツーリングで誰もが無意識に、普通にやっていることですね。
Aも、Bも、その言葉はその通りです。しかし、だからといって「スローイン・ファーストアウト」の原則が変わったわけではありません。最近の不毛なライテク談義は、すぐに「どっちが正しいか」の2択に話をもっていってしまうことに大きな原因があります。
「直ピーカートロ」、「スローイン・ファーストアウト」はやはり原則。
しかし、その上に、いろんなアレンジを加えていくことはできるし、むしろ、状況に応じてそうすべきです。
それは例えばコーナーでのラインどりにおいてもそうでしょう。
レースの基本で聞く「アウト・イン・アウト」。
2輪でも、4輪でも、例えば雨のレースで途中で晴れ、徐々にラインから乾いていくのを見ると、そのラインはコース幅に対してアウトからコーナーに入り、インをかすめて、アウトいっぱいまで膨らんでいく、原則的にそういうラインになっています。
しかし、公道では、対向車がはみ出してくるかもしれず、道の端には砂が浮いていたりもするので、
ここでも柏氏のいう「CKM(センターキ―プメソッド)」は有効です。
アウトインアウトは速く走るための原則ラインなのであって、公道上で安全に走るためのラインの基本は、2輪の場合、車線の中央を走るライン、といって間違いありません。
そして、そのラインに乗せられないようなら、そのコーナーに対して速度が速すぎるということになります。たいていの人は速すぎるのです。
辛辣な言い方をするなら、コーナー脱出でしっかり加速もしないくせに、進入時だけは我慢して速い速度でコーナーに飛び込みたがる。非常に危険な心性を持っていると言えます。
それは、バイク乗りに限らず、人の共通の心性なのでしょうか。
しかし、ここはぐっと耐えて進入を遅くする。そこからスタートするのが、一番上達が早いように思います。
公道での基本ライン、センターキ―プですが、いろんなコーナーを安全に気持ちよく走るには、やはりいくつかのアレンジを加えることも必要になります。
それはそれこそいっぱいありますが、どんな「ライン」がどんな走り方を反映しているものか、それを理解し、コーナーの中での走り方のプランを何通りも自分の中に持っておいて、状況に応じて自在に出せるようになれば、安全マージンは大きく膨らみます。
そうすれば危険も減り、怖い思いも減って走りや風景により心を持っていくことができるようになり、走りがさらに楽しくなります。
次回から、「ライン」のアレンジについて、書いていきます。(続く)
*この記事の続きはラベル「運転技術(ライテク)」の中で続くようにします。日常的には別のラベルの記事が入り込むことになると思います。
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