2014年1月6日

ライテクレビュー2 辻司氏・和歌山利宏氏

もしも、バイクで走ることが無上に楽しくて、バイクで走るということ、そのものに興味がわき、「どうしてこういう操作をするとこうなるのか、そもそも、バイクはどのような構造で、どう扱うのが一番理に適い、無理なく、美しく、速く、安全に走れるのか…」などと、寝ても覚めても考えるようになったら(病気です^^;)、辻司氏の本と、和歌山利宏氏の本を薦めます。
 
辻司氏は1952年生まれ。バイクジャーナリストとしては古株です。バイクライディングを理論的にとらえ、そのあり方を真摯に求め続けて来た人です。
お奨めは『ベストライディングの探究』(グランプリ出版)です。
最初に書かれたのが1985年。1989年に改訂版が出され(この数年間でバイクを巡る技術的なことが大きく変わって行きました。一番大きかったのはラジアルタイヤの普及でしょう。)
2012年に新装版が出ています。
上のリンクはアマゾンのページですが、そこの書評にもあるとおり、バイクライディングの本質を、バイクの工学的視点、だけでなく。ライダーの心理的視点からも論じていて、村井真氏のイラストもわかりやすく、現在でも通用する…というか、現在の新刊本たちは、それぞれのテクニックが個別化、モザイク化していて、バイクライディングの本質、バイクライディングの真髄はなかなか見せてくれないような気がするのですが、この本は、今でもしっかりと読んでおくべきライテク本と言えると思います。

上のアマゾンHP、ブックレビューでK6TY氏は以下のように言っています。
私もバイクに乗る間隔が開いて、「今日はあまり乗れてないな」と感じるときには、本書の内容を思い出しつつ基本操作を意識した走りをすることで、調子を戻すようにしている。 (中略) 20年以上バイクに乗り続けてきた間に、この本を始めとしてライテク本も色々読んでみた。しかし、結局のところ最初に読んだこれが最良であるという確信は今も揺らいでいない。初心者はもちろん、経験を積んだライダーでも得るものが多い本書は、今後も定番のライテク本でありつづけるだろう。
 
 K6TY氏のレビューは私も支持します。
もう一人、和歌山氏と並んで、今日の2冊は、バイクライディングを考えるにあたっては私にとっては非常に重要で、もっとも有益な本だと確信しています。
 
 
さて、名前が既に出ていますが、もう一人、和歌山利宏氏の本もお薦めです。
辻氏がバイク全般について、真剣に楽しくバイクに乗りたい一般人をメインターゲットにわかりやすく本質をとらえて書こうとしているとすれば、和歌山氏は、自分の到達した理論的地点を、そのまま書こうとしているような感じがあります。
もちろん、和歌山氏も一般読者にわかるように、論理的に、かつ丁寧に説明しています。しかし、専門的な内容がより多いのが和歌山氏なので、教則本として読もうとすると、難しすぎるように感じるかもしれません。
ただ、内容の濃さ、面白さは、現在では右に出るものはいないといってもいいと思います。
探求派は迷わず読むべきです。
 
最新のものは、DVDブックになっている『コーナリングを科学する』(内外出版)。
21世紀になって特に注目されている日本的身体の動かし方。和歌山氏は「2軸理論」「常足(なみあし)ライディング」と、最新の身体論を学びつつ、バイクの原理とライダーの身体のつくりからくる必然的なライディングの方法論を、今も探究中です。
 
本として特におすすめなのは、
『タイヤの科学とライディングの極意』(グランプリ出版)です。
残念ながら今では絶版で、中古本を求めるしかないようですが、この本では、ラジアルタイヤの特徴や性能、それを生かしたライディングが理論的に解説されていて、巷にあふれる、一見「理論は
どうでもいいんだよ。しっかりタイヤを潰して走れや」なんてうそぶく輩がいかにアホかということがよくわかります。またスリップアングルや、コーナリングフォースなど、いかにも物知り気に(つまり、私のブログなんかを指しているわけです)書いているウェブ上のページでの説明が、本当のところはどうなのか、それをしっかり説明してくれています。
 
読んでおいて損はないのが『ライディングの科学』(グランプリ出版 1990)ですが、これも残念ながら廃刊で、中古品を求めるしかありません。
 
車のドライバーとバイクのライダーの大きな違いは、ドライバーもライダーもアクセル、ブレーキ、ステアリングを操作する点は同じですが、ライダーは、自分の体重をある部分にかけたり、荷重を抜いたりして全身で操作しているということ、そして、それが安全で楽しく、効率よく、速い、コーナリングでの走りに於いて決定的な役割を担っている、ということです。
そのことを十分に、わかりやすく説明したのが「ライディングの科学」です。
和歌山氏は2007年に『コーナリングを科学する』のDVDにおいて、「ライディングの科学」の時はまだ、作用反作用で考えていた部分があり、2軸理論に学んだ今はその考えを修正している点を語っています。
しかし、だからと言ってこの本全体の価値が下がるものではありません。
バイクの動きの基本、ライダーの役割、その動きの基本と本質を考えるとき、この本の内容をしっかり理解しているか、いないかは大きな違い(優劣ではないと思いますが)を生むと言ってよいでしょう。2014年の今でも強烈におすすめする本です。
 
凡百のWeb記事を読むよりも、今日お奨めした2氏の本をしっかり、ボロボロになるまで読み、そして走ってそれを検証した方が、はるかに上手く、しかも謙虚に、ライディングの深みに触れるようになれることは、私の経験上、絶対に間違いないと断言できます。(…しかし、この記事もまた、信用ならない凡百のブログの一つですけれど。)

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